夫婦で住宅ローン
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夫婦で住宅ローンを組む場合のメリット、デメリットは?審査や控除についても解説

執筆者プロフィール

海老原政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー

国内の生命保険会社にて生命保険募集人業務に携わるなかでライフプランの重要性に目覚め、生活者視点を活かしたFP業務を開始。千葉で、家計相談や執筆業務、個人・企業向けマネープランセミナーをおこなう。生命保険見直しや住宅ローンの借り換え、貯蓄ができない家計の体質改善アドバイスなど、わかりやすい情報提供が好評。

ざっくり要約!

  • 夫と妻がそれぞれ一定以上の勤労所得を得ている場合、夫もしくは妻が単独で住宅ローンを組み持ち家を購入するケースや夫婦でペアローンを組むケース、収入合算するケースなどがある
  • 夫婦ともに安定した収入があり、かつ将来においても住宅ローン返済が負担にならない程度の収入見込みがある場合、ペアローンは有力な選択肢となる

今や1200万世帯を超える共働き世帯。住宅購入に際し「夫婦で住宅ローンを組むこと」は珍しいケースではなくなりつつあります。また、「ペアローン」に代表されるように、住宅ローンの選択肢も増えています。ここ数年、夫婦でどのように住宅購入資金を分担し、どのような住宅ローンを組むべきか悩む人も増えたのではないでしょうか。そこで今回は、夫婦で組む住宅ローンについてパターン別にみていこうと思います。

夫婦で組む住宅ローン4パターン

夫と妻がそれぞれ一定以上の勤労所得を得ている場合、夫もしくは妻が単独で住宅ローンを組み持ち家を購入するケースや夫婦でペアローンを組むケース、収入合算するケースなど住宅ローンにもバリエーションが出てきます。
4つのパターン別に概要や向いている人、それぞれのメリット・デメリットについてみていきましょう。

単独で住宅ローンを組む

記事の冒頭で共働き世帯の推移について触れましたが、共働き世帯が増えたとはいえ、日本は諸外国に比べて男女の賃金格差が大きい国です。夫のほうが妻より収入が高い場合が多いのではないでしょうか。

夫婦間の収入差が大きい場合はやはり、世帯の大黒柱と呼べるどちらか一方が契約者となって単独で住宅ローンを組むほうが話はシンプルです。

この場合、住宅ローン契約が1本で済み、諸費用も抑えられます。契約者の万一の事態にも団体信用生命保険によりローン残債が弁済されるため、残された家族の暮らしの拠点であるマイホームは無事守られます。

デメリットがあるとすれば、ペアローンや夫婦合算を選んだ場合と比較して借り入れ可能な金額が下がることと契約者のみ住宅ローン控除が受けられることぐらいでしょう。

単独での住宅ローンが向いているケース

夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むのに向いている代表例は、夫と妻の収入差が大きいケースです。あるいは、現状は夫婦共に同じくらいの年収であっても、将来夫婦のどちらかの働き方が変わることが想定される場合も単独ローンのほうがよいでしょう。

たとえば、妻が将来パート勤務で夫の扶養に入るかもしれない、第2子出産後に退職して専業主婦になる可能性があるなら、はじめから夫単独で住宅ローンを組むことをおすすめします。

どうしても夫婦でローンを組みたいという場合は、なるべく夫の借入金額を高めに設定し、妻の住宅ローンは小さな借入金額、かつ短めの借入期間で(例:住宅ローン控除を利用する目的で10年から15年程度)無理のない範囲で組むことをおすすめします。

ペアローンを活用する

ペアローンは購入物件に対して夫婦共同でローンを組む方法です。
夫と妻それぞれが独自のローン契約を持ち、互いに連帯保証人として保証し合う形式をとります。

この方式の大きなメリットは、双方の収入を合算してローンを組むため、単独ローンでは手が届かない物件であってもペアローンで借り入れを起こすことで購入できる可能性が高まること。とはいえ、夫婦で長期ローンを組むことから、夫婦双方が安定した職に就いていること、金融機関の収入要件を満たすことが必要です。

ペアローンは住宅ローン契約を2本結ぶことになります。よって、それぞれいくら借り入れを起こすのか、借入期間は何年にするか、一方は固定金利プランで組んで、もう1本は変動金利プランで短めの借り入れを起こすなど、夫婦の事情に合わせた住宅ローンを組めるメリットがあります。

ただ、契約が1本のみの場合より住宅ローンにかかる諸費用が膨らみます。またリスク要因として、あまり考えたくはありませんが「離婚に伴う物件取り扱いの困難さ」が挙げられます。

ペアローンと離婚は契約的に別物ですので、離婚後もそのままローン返済が続きます。夫婦どちらかが債務を引き受けるにしても金融機関の審査が必要になりますし、物件を売却して財産分与しようとしても販売が難しく、いずれも困難な対応が求められがちです。

ペアローンが向いているケース

夫婦ともに安定した収入があり、かつ、将来においても住宅ローン返済が負担にならない程度の収入見込みがある場合、ペアローンは有力な選択肢となり得ます。

ただ、これから妊娠・出産予定の世帯は要注意です。将来のキャリアプランのぶれは住宅ローンの破綻につながりやすいもの。出産後の職場復帰のしやすさなどを見定めたうえでペアローンを選ぶようにしましょう。

収入合算契約(連帯債務型)を利用する

収入合算契約(連帯債務型)は、夫婦の収入を合算して1つの住宅ローンを組む方法です。

一方が主たる債務者、もう一方が連帯債務者となり、夫婦ともに債務者となるため、持ち分割合などによって二人とも住宅ローン控除を受けることが可能になります。

ただし、このタイプの住宅ローン契約は夫婦連生型商品を除き、主たる債務者が団体信用生命保険に加入するため、連帯債務者の万一に備えて別途生命保険に追加加入するなど対応をとる必要があります。

夫婦連生型商品を選べる金融機関、あるいは全期間固定金利タイプにはなってしまいますが【フラット35】を検討してみるのも一案です。

収入合算契約(連帯債務型)が向いているケース

「住宅ローンは1つにまとめたいが、住宅ローン控除は夫婦で受けたい」そんなご夫婦に向いています。ただ、長期にわたる、高額な借り入れを起こすことが想定されますので、審査を考えると一定程度以上の安定した収入が夫婦双方に求められます。

ペアローンもそうですが「夫婦で住宅ローン控除の恩恵に浴する」ことを目的に、頭金なしで高額な借り入れを起こすことはおすすめできません。

将来の収入変動や物件価格の下落等に備え、住宅購入後も毎月貯蓄できる家計のゆとりを確保するようにしてください。

収入合算契約(連帯保証型)を利用する

いわゆる“収入合算”ときいてみなさんの頭に思い浮かぶイメージがこちらのタイプではないでしょうか。収入合算契約(連帯保証型)は、夫婦の一方が債務者となり、もう一方が連帯保証人として組む住宅ローンです。

債務者が契約する住宅ローン1本ですので、団体信用生命保険への加入も債務者のみ、住宅ローン控除も債務者のみが受けられます。

収入合算契約(連帯保証型)が向いているケース

ひとりだけの収入では住宅ローン審査に通らないことが想定される場合によく利用されます。

夫婦のもう一方の収入を加えることで借入可能額が上がるため、安定した収入を持つ債務者とその連帯保証人として家計を補完的に支えるパートナーに向いています。

夫婦で住宅ローンを組むメリット・デメリット

ここまで主に共働き世帯が組む住宅ローンのパターンをまとめてきましたが、以下にそのメリット・デメリットをあらためてまとめておきます。住宅ローン選びの参考になりましたら嬉しいです。

単独で住宅ローンを組む場合

単独で住宅ローンを組む場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

単独でローンを組む場合、夫婦の一方の収入のみで住宅ローン審査されるため、シンプルで必要書類など手続きも比較的スムーズです。

将来的に離婚などの問題が発生した場合でも、不動産の売却など住宅ローンの整理はしやすいと思われます。

デメリット

夫婦のどちらか一方の収入で住宅ローンの借入限度が審査されるため、物件価格が高額になると購入が厳しくなるかもしれません。

契約予定者が転職した直後である、高収入だが不安定な場合など、審査に通らないリスクも収入合算ケースに比べると高いのではないでしょうか。

ペアローンの場合

ペアローンを組む場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

ペアローンを利用することで、夫婦の収入を合算できるため、より高額な物件を購入することが可能になります。

また、借入割合や借入期間、金利タイプなど世帯の働き方の実情に合わせた住宅ローンを設定できるため、収入状況の変化に合わせやすいと言えるかもしれません。

実利面でも双方が住宅ローン控除を受けることができ、税制上のメリットも享受できます。

デメリット

ペアローンは夫婦別々に2本の住宅ローンを組むことから諸費用がかさみます。また、夫婦どちらかの死亡時のリスクヘッジをしっかりしておかないと、残された人のローン返済、家計のやりくりが厳しくなります。

さらに離婚時の物件売却やローンの整理(所有権移転やローンの一本化など)が難しい可能性大です。

収入合算契約(連帯債務型)の場合

収入合算契約(連帯債務型)を組む場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

収入合算契約(連帯債務型)では、夫婦の収入を合算することで、単独ローンに比べてより高い金額の借り入れが可能になります。

また、持ち分などによっては1本の住宅ローン契約でいながら夫婦共に住宅ローン控除の適用を受けることもできます。

デメリット

夫婦双方が連帯して債務を負うため、一方が支払い不能になった場合でも、他方が全額を返済する義務があります。

夫もしくは妻の万が一に備えて夫婦連生型ローンを選ぶ、生命保険を積み増すなどの対策が必要です。

また、ペアローン同様離婚時の取り扱いが難しいことも頭の片隅に入れておいてください。

収入合算契約(連帯保証型)の場合

収入合算契約(連帯保証型)を組む場合のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

収入合算契約(連帯保証型)は、主たる債務者の収入だけでは借入が難しい場合に、連帯保証人の収入を加えることで借入が可能になります。

また、連帯保証人がいることで、ローンの審査が通りやすくなる場合があります。

デメリット

団体信用生命保険によって債務者の万一には備えられても、たとえば債務者がガンにり患して働けない状況に陥った場合など返済不能になった場合、毎月のローン返済がすぐ行き詰る可能性があります。

夫婦で住宅ローンを組む場合の審査や控除は?

夫婦で住宅ローンを組む場合、ローン審査は夫婦の属性(職業や額面収入、信用情報など)をもとに行われます。

ペアローンや収入合算契約(連帯債務型・連帯保証型)を利用する場合、夫婦の収入を合算して審査が行われるため、高額な借入が可能になる反面、どちらか一方の信用情報に問題があった場合、審査が通らないことがあります。

互いのカードローンや自動車ローンなどについてもあらかじめ知っておく必要があります。

住宅ローン控除についても、単独ローン、収入合算契約(連帯保証型)を除き、基本的に夫婦それぞれ控除を受けることができますが、控除ありきで無理な借入をしないようくれぐれもご注意ください。

ペアローンや収入合算契約など夫婦で住宅ローンを組む場合は、二人三脚で長期にわたって返済する覚悟が必要です。事前にしっかりと2人の今後のキャリアプラン・ライフプランを話し合い共有することをおすすめします。

この記事のポイント

夫婦で組む住宅ローンにはどんなパターンがある?

夫と妻がそれぞれ一定以上の勤労所得を得ている場合、夫もしくは妻が単独で住宅ローンを組み持ち家を購入するケースや夫婦でペアローンを組むケース、収入合算するケースなど住宅ローンにもさまざまなバリエーションが出てきます。

詳しくは「夫婦で組む住宅ローン4パターン」をご覧ください。

夫婦で住宅ローンを組むメリットは?

夫婦で組む住宅ローン(ペアローン)を利用することで、夫婦の収入を合算できるため、より高額な物件を購入することが可能になります。

また、借入割合や借入期間、金利タイプなど世帯の働き方の実情に合わせた住宅ローンを設定できるため、収入状況の変化に合わせやすいと言えるかもしれません。

詳しくは「夫婦で住宅ローンを組むメリット・デメリット」をご覧ください。

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