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2024年基準地価3年連続の上昇!観光地・再開発・企業誘致などによる商業地の上昇が目立つ

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

国土交通省や各都道府県は2024年9月17日、2024年の基準地価を公表しました。全用途の全国平均は、前年比+1.4%。バブル期の1991年以来の上昇率となりました。コロナ禍では一時下落に転じましたが、コロナ禍からの回帰が顕著に見られた昨年の上昇率も上回り、上昇は3年連続となっています。とくに観光地や再開発が進んでいるエリア、半導体企業の誘致があったエリアでは、商業地の地価上昇が目立ちます。

基準地価とは?

基準地価とは、各都道府県が7月1日時点における基準値の1㎡あたりの価格を調査し、公表するものです。基準地価は、価格の査定や地方公共団体などによる買収価格の算定規準となります。1月1日時点の地価が評価され、3月に公表される「公示地価」と比較することで、半年間ごとの評価の動向を見ることもできます。


公示地価基準地価
調査主体 国土交通省土地鑑定委員会都道府県
調査地点都市計画区域内の標準地都市計画区域外も含まれる基準地
鑑定方法2人以上の鑑定士が鑑定1人以上の鑑定士が鑑定
評価時期1月1日7月1日
発表時期3月中旬〜下旬9月中旬〜下旬

・「2024年公示地価」に関する記事はこちら
2024年公示地価、3年連続上昇!「アフターコロナ」顕著に

地方四市を除く地方圏の全用途平均も32年ぶりの上昇

ここ6年の基準地価動向を見ると、2020年、2021年はコロナ禍の影響を受けてマイナスになったエリア・用途が多かったものの2022年から徐々に回復し、この3年はほとんどのエリア・用途で上昇率が拡大しています。

2024基準地価 全国の地価動向

全用途平均


2019年2020年2021年2022年2023年2024年
全国0.4▲ 0.6▲ 0.40.31.01.4
三大都市圏 2.00.00.11.42.73.9
東京圏2.20.10.21.53.14.6
大阪圏1.90.0▲ 0.30.71.82.9
名古屋圏1.9▲ 0.80.51.82.62.9
地方圏▲ 0.3▲ 0.8▲ 0.6▲ 0.20.30.4
地方四市6.84.54.46.78.16.8
その他▲ 0.5▲ 1.0▲ 0.8▲ 0.40.00.2

住宅地


2019年2020年2021年2022年2023年2024年
全国▲ 0.1▲ 0.7▲ 0.50.10.70.9
三大都市圏 0.9▲ 0.30.01.02.23.0
東京圏1.1▲ 0.20.11.22.63.6
大阪圏0.3▲ 0.4▲ 0.30.41.11.7
名古屋圏1.0▲ 0.70.31.62.22.5
地方圏▲ 0.5▲ 0.9▲ 0.7▲ 0.20.10.1
地方四市4.93.64.26.67.55.6
その他▲ 0.7▲ 1.0▲ 0.8▲ 0.5▲ 0.2▲ 0.1

商業地


2019年2020年2021年2022年2023年2024年
全国1.7▲ 0.3▲ 0.50.51.52.4
三大都市圏 5.20.70.11.94.06.2
東京圏4.91.00.12.04.37.0
大阪圏6.81.2▲ 0.61.53.66.0
名古屋圏3.8▲ 1.11.02.33.43.8
地方圏0.3▲ 0.6▲ 0.7▲ 0.10.50.9
地方四市10.36.14.66.99.08.7
その他▲ 0.2▲ 1.0▲ 1.0▲ 0.50.10.5

地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)を除く地方圏は、2023年までほぼ上昇が見られませんでしたが、2024年は全用途平均がプラスに転じました。これは実に32年ぶりのことです。

三大都市圏では、コロナ禍の収束が見られ始めた2022年から継続して全用途平均・住宅地・商業地ともに基準地価が上昇し続けていますが、今年はとくに商業地の上昇が目立ちます。経済活動の再開やインバウンド需要の回帰により、都市部では商業施設やホテルの需要も堅調で、オフィスの空室は低下し、賃料上昇が見られます。大規模な再開発が進むエリアでは期待感も後押しし、地価の上昇が続いています。

変動率上位は観光地や半導体誘致のエリアが目立つ

住宅地の変動率上位10の地点は、すべてが沖縄県と北海道です。商業地の変動率上位は、熊本県や長野県の企業誘致のエリアや観光地が目立ちます。

2024年基準地価 変動率上位ランキング(全国)

住宅地

順位標準地番号 都道府県 標準値の所在地2024年基準地価格/㎡変動率(%)
※かっこ内は2023年の変動率
1恩納-1 沖縄県国頭郡恩納村字真栄田真栄田原36番外 31,60029.0(28.9)
2宮古島-15 沖縄県宮古島市伊良部字池間添下桃山219番 14,50026.1(21.1)
3千歳-3北海道千歳市栄町5丁目3番外内 121,00023.5(30.7)
4宮古島-3沖縄県宮古島市平良字西里アラバ1537番3 21,60023.4(23.2)
5千歳-1沖縄県千歳市東雲町5丁目52番95,00023.4(30.5)
6宮古島-13沖縄県宮古島市上野字上野ソバンメ394番15 12,00020.2(20.2)
7宮古島-11 沖縄県宮古島市下地字上地ツーガ家502番6 20,20020.2(20.0)
8富良野-3 北海道富良野市北の峰町1981番62 40,60020.1(20.3)
9宮古島-8 沖縄県宮古島市城辺字保良村内507番9,42019.5(23.1)
10宮古島-7沖縄県宮古島市城辺字砂川島中原102番 10,50019.3(17.3)

住宅地の変動率上位を北海道・沖縄県が占めている理由は、コロナ禍の収束と移住や二地域居住の推進などにより、観光地やリゾート地の人気が高まっていることによるものと推測されます。

住宅地

順位標準地番号 都道府県 標準値の所在地2024年基準地価格/㎡変動率(%)
※かっこ内は2023年の変動率
1大津5-1熊本県菊池郡大津町大字室字門出176番4 120,00033.3(32.4)
1大津5-301 熊本県菊池郡大津町大字大津字拾六番町屋敷 1096番2外 88,00033.3(-)
3菊陽5-301熊本道菊池郡菊陽町大字津久礼字石坂2343番2 110,00032.5(-)
4白馬5-2 長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020番 837外 52,20030.2(27.3)
5大津5-2 熊本県菊池郡大津町大字引水字三吉原750番 2外70,40028.0(27.9)
6高山5-4岐阜県高山市上三之町51番 385,00027.1(9.8)
7菊陽5-2  熊本県菊池郡菊陽町大字津久礼字平ノ上11番8 166,00025.8(25.7)
8台東5-17東京都台東区西浅草2丁目66番22,300,00025.0(11.5)
9千歳5-3 北海道千歳市北栄2丁目1345番27127,00024.5(30.8)
10千歳5-2北海道千歳市末広2丁目122番2外内 118,00024.2(30.1)

商業地の上昇率トップ3を占めている熊本県の大津町や菊陽町は、台湾の半導体企業TSMCが進出したエリアです。9位、10位にランクインしている北海道千歳市には、同じく半導体企業のラピタスの工場が建設されています。

4位の長野県白馬村、6位の岐阜県高山市は、国内外から人気を集める観光地です。8位の東京都の浅草は、コロナ禍で一時、観光客が減少したものの、最近では観光客が戻っています。

関東圏 2024年地価変動率

住宅地


2019年2020年2021年2022年2023年2024年
全国▲ 0.1▲ 0.7▲ 0.50.10.70.9
東京都2.50.20.21.53.04.6
神奈川県0.1▲ 0.9▲ 0.20.82.13.2
千葉県0.3▲ 0.20.01.02.53.2
埼玉県0.7▲ 0.3▲ 0.10.81.51.6
茨城県▲ 0.4▲ 0.7▲ 0.50.00.30.7
栃木県▲ 0.7▲ 1.3▲ 0.9▲ 0.7▲ 0.5▲ 0.4
群馬県▲1.0▲ 1.2▲ 1.2▲ 1.1▲ 0.9▲ 0.5

商業地


2019年2020年2021年2022年2023年2024年
全国1.7▲ 0.3▲ 0.50.51.52.4
東京都6.81.3▲ 0.32.04.58.4
神奈川県2.50.20.81.94.36.2
千葉県2.81.40.42.03.75.0
埼玉県1.80.0▲ 0.31.02.02.7
茨城県▲ 0.2▲ 0.7▲ 0.20.30.61.4
栃木県▲ 0.6▲ 1.5▲ 1.0▲ 0.8▲ 0.6▲ 0.4
群馬県▲0.1▲ 0.9▲ 0.9▲ 0.8▲ 0.40.2

関東圏の住宅地・商業地は一都三県に加え茨城が上昇しているのに対し、栃木県はいずれも下落、群馬県は商業地のみ上昇しています。地価が下落しているエリアも、下落幅は縮小しています。

一都三県の詳細は後述しますが、茨城県は県南部を中心に地価の上昇が見られます。とくに、つくばエクスプレス沿線エリアが地価上昇を牽引している形です。

32年連続で住宅地の地価が下落している栃木県も、宇都宮市やリゾート地では地価の上昇が見られています。2023年8月に開業した次世代型路面電車「宇都宮ライトレール」は、2024年9月時点で早くも利用者が500万人を突破しました。沿線の地価も上昇しています。

群馬県の商業地の地価が上昇するのは、32年ぶりのことです。商業地の変動率上位のエリアには、観光地として人気な草津町や再開発が進む高崎駅周辺などが挙げられます。

首都圏 2024年地価動向

首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)は、すべての都道府県で住宅地・商業地ともに地価が上昇しました。

東京都

住宅地 商業地
2023年 2024年 2023年 2024年
区部 4.2 6.7 5.1 9.7
多摩地区 2.1 3.0 2.9 4.4
(単位:%)

区部、多摩地区ともに、全用途・住宅地・商業地の上昇率が拡大しています。東京都の住宅地の地価上昇は12年連続で、商業地は3年連続です。島部を除くすべての市区町で住宅地・商業地ともに地価の上昇が見られます。

コロナ禍からの回帰が鮮明になってきたことで、都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)のオフィス入居率はこの1年、5〜6%で推移しています。2024年に入ってからは、継続して6%を切っている状況です。国内外の観光客もコロナ禍前に戻りつつあるため、商業地は住宅地以上の上昇率が見られます。

移住や二地域居住などがトレンドになっているものの、2024年1月1日時点の東京都の総人口は昨年と比べてプラス7万人以上。都心一極集中の様相は変わりません。

神奈川県

住宅地 商業地
2023年 2024年 2023年 2024年
横浜市 2.5 3.4 5.3 7.4
川崎市 2.4 4.4 5.6 8.4
相模原市 2.1 3.2 3.7 5.7
その他の市 2.0 3.0 3.1 4.4
(単位:%)

横浜市・川崎市・相模原市は、すべての区で住宅地・商業地ともに地価が上昇しました。横浜市は、中心部に加え、2023年3月に開業した相鉄・東急直通線沿線エリアでも地価の上昇が顕著に見られています。

川崎市では、2023年6月に竣工した市役所の新たな本庁舎周辺のオフィスや店舗の需要が上がっており、地価も上昇傾向にあります。相模原市は、リニア中央新幹線の開通による期待感から、橋本駅周辺地価上昇が継続しています。

千葉県

住宅地 商業地
2023年 2024年 2023年 2024年
東京圏 3.7 4.6 5.2 6.8
地方圏 ▲ 0.5 ▲ 0.5 ▲ 0.1 0.0
(単位:%)

千葉県では、東京に近い東京圏と地方圏の格差が目立ちます。東京圏では、栄町と富津市を除くすべての市区町で住宅地・商業地の地価が上昇していますが、地方圏で上昇が見られるのは一宮町や茂原市など限定的です。

県内で最も住宅地の上昇率が高かった流山市は、つくばエクスプレスで都内に出やすいことに加え、近年は子育て政策に力を入れていることもあって、初めて県内トップの上昇率となりました。商業地の上昇率トップは、インバウンド需要が拡大している浦安市です。

埼玉県

住宅地 商業地
2023年 2024年 2023年 2024年
さいたま市 2.6 2.3 3.7 4.5
川口市 5.0 4.9 5.2 6.9
戸田市 5.2 5.2 7.5 8.3
(単位:%)

埼玉県の基準地価は、県全体で見ると住宅地・商業地ともに昨年と比べて上昇幅が拡大しており、17年ぶりの伸び率となっています。一方で、さいたま市や川口市では、住宅地の上昇幅が縮小しています。

住宅地で最も上昇率が高かったのは、東京にも出やすく再開発が進む浦和駅や川口駅周辺のエリアです。商業地の上昇率が高かったエリアは、再整備によって「ウォーカブル空間形成」が推進されている北戸田駅前でした。

まとめ

2024年の基準地価は、総じて全国的に昨年を上回る上昇率が見られました。とくに商業地の上昇が目立っていることから、コロナ禍からの回帰を決定づける結果となったといえるでしょう。

日本銀行は7月、政策金利の引き上げを発表しました。これに伴って、直後から株価や円相場の乱高下が見られましたが、基準地価の評価は7月1日時点のため今回の地価には影響していません。とはいえ、現在も緩和的な状況は継続しており、他国のような金利上昇やオフィス空室率の悪化、治安の乱れなども見られないことから、今後も安定的に地価は上昇していくものと推察されます。

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