不動産売却,確定申告,いつ
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不動産売却の確定申告はいつまでにする? 年をまたぐ場合も解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 不動産を売却することで利益が発生した場合は、翌年に確定申告する必要がある
  • 確定申告が必要なのは不動産売却で利益(譲渡益)が発生したときと税金の特例を利用するとき

譲渡所得とは、土地や建物を売却して得た所得のことです。所得に対しては譲渡所得税がかかりますが、一定の条件を満たすことで特別控除を使える可能性があります。

ただし、控除の適用を受けようとするときは、翌年に確定申告をする必要があり、譲渡所得が発生しない場合でも確定申告をしなければなりません。

今回は、不動産売却後に確定申告はいつまでにすべきか、また確定申告が必要なケースと不要なケースについて解説します。

譲渡所得税の計算方法も紹介しますので、不動産売却に備えて、納める税金について理解を深めておきましょう。

不動産売却と確定申告の基本

不動産売却と確定申告の基本

不動産を売却して売却益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税がかかります。自宅などは一定の条件を満たすことで、特別控除(最大3,000万円)が使えるため、譲渡所得税がかからないケースが多いでしょう。

しかし譲渡所得税がかからない場合でも、特別控除の適用を受けるときは一定の書類を添えて確定申告をする必要があります。

不動産売却後は確定申告が必要なことが多いため、翌年の確定申告を忘れないように注意してください。事前に必要書類についても確認しておきましょう。

確定申告の必要書類一覧

  • 譲渡所得の内訳書
  • 確定申告書B様式(第一表・第二表)
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 売却した不動産の登記事項証明書
  • 不動産購入時の売買契約書(写し)
  • 不動産売却時の売買契約書(写し)
  • 取得費用を確認するための領収書(写し)
  • 譲渡費用を確認するための領収書(写し)

出典:A4-1 申告手続き(譲渡所得関係 申告書添付書類)|国税庁

そもそも確定申告とは? いつまでにすべき?

確定申告とは、1月1日~12月31日の1年間の所得額を、翌年の2月16日~3月15日までに税務署に申告し、納税する手続きのことです。

会社員は通常、勤務先が年末調整をするため、基本的には確定申告をする必要はありません。しかし給与所得以外に年間で20万円以上の収入があるときや、給与収入が2,000万円以上の場合は確定申告が必要です。

したがって不動産を売却することで利益が発生した場合は、翌年に確定申告する必要があります。

なお確定申告は本人が申告する場合は問題ありませんが、確定申告は税理士業務にあたるため、家族であっても代理して行うことはできませんので注意しましょう。

不動産売却で確定申告が必要なケース・不要なケース

不動産売却で確定申告が必要なケース・不要なケース

不動産を売却しても、確定申告が不要な場合もあります。この章では、確定申告が必要なケースと不要なケースについて解説します。

確定申告が必要なケース

確定申告が必要なのは、不動産売却で利益(譲渡益)が発生したときと、税金の特例を利用するときです。

自宅の売却で一定の条件を満たす場合は、譲渡益から3,000万円まで控除できる特例があります。したがって実際には譲渡所得税がかからないケースが多いものの、特例を利用する場合は確定申告が必要です。

そのほか、軽減税率や買い替え特例を利用する場合も同様です。不動産売却後に確定申告する必要があるケースが多いため、よく確認するようにしましょう。

ここでは、不動産売却で使うことが多い3つの特例を紹介します。

3,000万円特別控除

マイホームを売ったときに、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円まで控除できる特例です。

一定の条件を満たす必要がありますが、利用できれば譲渡所得税がかからないケースが多いでしょう。

たとえば現在住んでいない家屋を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却する必要があります。

家屋を解体したとしても、1年以内に売買契約を締結し、住まなくなってから3年を経過する日が属する12月31日までに売却すれば特例の適用を受けられます。なお駐車場として貸し出してしまうと、特別控除は使えなくなるので注意してください。

親族間の売買や、別荘などセカンドハウスの売却には利用できません。また売却した年の前年、前々年に3,000万円控除やマイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例を受けている場合は利用できません。

さらに売却した年、前年および前々年にマイホームの買い替えや交換の特例を利用している場合も利用できません。

また3,000万円の特別控除を利用した場合、新居の購入時に住宅ローン控除を利用できないため、どちらが得か試算しておく必要があります。判断が難しい場合は、税務署や役所の税務相談会、不動産会社などに相談してみましょう。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

軽減税率特例

売却した年の1月1日に所有期間が10年を超えるマイホームについては、長期譲渡所得税に対する税率よりもさらに低い税率になる特例があります。

長期譲渡所得に対する税率は、所得税15%・住民税は5%ですが、この軽減税率の適用を受けることで、課税対象となる長期譲渡所得金額の6,000万円以下については所得税10%・住民税4%に軽減されます。

家屋を取り壊した場合は、解体した日の属する年の1月1日において、所有期間が10年を超える必要があり、現在住んでいない場合は住まなくなった日から3年が経過する年の12月31日までに売る必要があります。

マイホームを売却した年の前年、および前々年に同じ特例を利用している場合や、マイホームの買い替えや交換の特例などほかの特例を受けていないことが条件になります。

なお、住宅ローン控除と3,000万円の特別控除は重ねて利用できます。

出典:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
出典:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁

買い替え特例

マイホームを売却して新居に買い替えた場合、一定の要件を満たすことで譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べできます。

特定の居住用財産の買い替えの特例といい、2年間延長され、2025年12月31日までになりました。

居住期間が10年以上であることや、買い替える建物の面積が50㎡以上、売った年やその前年および前々年に3,000万円の特別控除を利用していないなどの要件がありますが、この特例を利用することで譲渡所得に対する課税を次回の買い替えまで引き継ぐことができます。

ただし税金が軽減や控除されるわけではありません。

出典:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

確定申告が不要なケース

不動産を売却しても、確定申告が不要な場合もあります。

不動産を売却したときの価格よりも、購入したときの価格が高ければ、そもそも利益が発生していないので確定申告は不要です。

ただし3,000万円の特別控除を適用した結果、譲渡所得がマイナスになった場合は確定申告が必要です。不動産売却によって利益を得たのに確定申告しなかったとみなされ、「無申告加算税」が課されることになるので注意しましょう。

出典:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

不動産売却が年をまたいだ場合はいつ確定申告する?

不動産売却が年をまたいだ場合はいつ確定申告する?

確定申告は1月1日~12月31日までの所得について、翌年の2月16日~3月31日までに申告します。

では年内に売買契約を締結し、年を明けて残代金決済・引渡しをした場合はどうなるのでしょうか。

この場合は「不動産の引渡し日=譲渡した日」とするのが原則です。ただし「売買契約を締結した日=譲渡した日」とすることもでき、申告する人にとって有利な方を選べます。

引き渡し日を譲渡した日にすることで、長期譲渡所得になり、税率が低くなることがあります。どちらを選ぶかについては、慎重に考えた上で決定しましょう。

出典:No.3102 譲渡所得の申告期限|国税庁

譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得税額の計算方法を、3つのステップで紹介します。

譲渡所得額を計算する

まず、以下の計算式で「譲渡所得額」を計算します。

譲渡所得=譲渡価額(売却代金+固定資産税等精算金)-譲渡費用-取得費

不動産を売却したことで得た収入から、不動産を購入・譲渡するのにかかった費用をマイナスしたものが「譲渡所得額」になります。

譲渡費用となるのは、売却する際に不動産会社へ支払った仲介手数料や印紙税、建物を解体した場合はその解体費です。

取得費は、購入したときに納めた登録免許税や印紙税、不動産取得税などが該当します。

課税譲渡所得額を計算する

次に、課税譲渡所得額を以下の計算式で計算します。

課税譲渡所得額=譲渡所得額-特別控除

3,000万円の特別控除が適用されるときは、譲渡所得額から差し引きます。
課税譲渡所得額がゼロ(マイナス)になる場合は、譲渡所得税はかかりません。

譲渡所得税額を計算する

最後に、譲渡所得税額を以下の計算式で計算します。

譲渡所得税額=課税譲渡所得×税率

税率は、不動産の所有期間で異なります。売却した年の1月1日に所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得になります。

税率はそれぞれ以下のとおりです。該当する税率を乗じて、譲渡所得税を計算しましょう。

所有期間所得税復興特別所得税
住民税合計税率
短期譲渡所得5年以下30%2.1%(0.63%)9%39.63%
長期譲渡所得5年超15%2.1%(0.315%)5%20.315%
10年超の軽減税率
(6,000万円以下の部分)
10年超10%2.1%(0.21%)4%14.21%

※2037年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%がかかります。

不動産売却による確定申告後の税金はいつまでに納付する?

不動産売却による確定申告後の税金はいつまでに納付する?

不動産売却で譲渡所得税を納める場合、所得税(復興特別所得税)と住民税では納付方法や納付期限が異なります。それぞれの納税方法を、事前に把握しておきましょう。

所得税

譲渡所得について2月16日~3月15日に確定申告をしたら、同期間中に納付します。

税務署や金融機関から納付する方法以外に、振替納税やダイレクト納付、クレジットカード納付などができます。

振替納付を希望する場合は、確定申告の際に「預貯金口座振替依頼書」を提出します。年度によって多少異なりますが、4月20日頃に指定口座から引き落とされます。

ちなみに国税の猶予制度の利用が認められれば、分割して納めることも可能です。一定の条件を満たす必要がありますが、延滞税は軽減又は免除されます。

住民税

給与所得者(特別徴収)は、勤務先が毎月の給与から天引きして住民税を納付することになるため、自ら納付する必要はありません。

自営業者など普通徴収の場合は、確定申告した年の4~5月ごろに自治体から送られてくる納付書を使って、年4回に分けるか一括して納付します。

納付方法はコンビニや金融機関、納税課の窓口から納める方法があり、自治体によって多少異なります。詳しくは納付書を確認しましょう。

ライターからのワンポイントアドバイス

ライターからのワンポイントアドバイス 不動産売却,確定申告,いつ

税金の特例が適用できるかどうかの判断は、ケースによっては難しいことがあります。わからないことがあれば自己判断せず、税務署や役所の税務相談会などを利用して相談しましょう。

また不動産売却にともなう税金については、不動産会社の担当者にも相談することも可能です。確定申告や税金面も含めて、安心して相談できる不動産会社に売却を依頼しましょう。

この記事のポイント

不動産売却が年をまたいだ場合、確定申告はいつすればいいですか?

年内に売買契約を締結し、年を明けて残代金決済・引渡しをした場合は「不動産の引渡し日=譲渡した日」とするのが原則です。ただし「売買契約を締結した日=譲渡した日」とすることもでき、申告する人にとって有利な方を選べます。

引き渡し日を譲渡した日にすることで、長期譲渡所得になり、税率が低くなることがあります。

詳しくは「不動産売却が年をまたいだ場合はいつ確定申告する?」をご覧ください。

不動産売却による確定申告後の税金はいつまでに納付すればいいですか?

2月16日~3月15日に確定申告をしたら、同期間中に所得税を納付します。

住民税は、給与所得者(特別徴収)の場合は勤務先が毎月の給与から天引きして納付することになるため、自ら納付する必要はありません。

一方で自営業者など普通徴収の場合は、確定申告した年の4~5月ごろに自治体から送られてくる納付書を使って、年4回に分けるか一括して納付します。

詳しくは「不動産売却による確定申告後の税金はいつまでに納付する?」をご覧ください。

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