ざっくり要約!
- 住宅ローンが残っていても条件によっては売却でき、住宅ローンを返済しながら賃貸できるので引っ越し可能
- 新居への引っ越しを希望する場合、家を売却して得た資金で住宅ローンを完済してから引っ越すのが一般的
住宅ローンが残っていても、引っ越しは可能です。多くの方は住宅ローンが残っている状態で家を売り出しています。
しかし、住宅ローンを残したまま所有権を移転できるわけではありません。引き渡し前に完済するか、ローンを乗り換えるか、金融機関に了承を得る必要があります。
今回は、住宅ローンが残っていても引っ越しできる3つの方法と、引っ越し前に住宅ローンを完済する4つの方法を解説します。
売却方法を決めるまでの流れや、注意すべきポイントも紹介します。引っ越しを予定している方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
住宅ローンがあるけど引っ越したい|家の売却・賃貸は可能?
基本的に住宅ローンが残ったままでは売却できず、原則として住宅ローンを借りたまま賃貸物件として貸し出すことはできません。
「基本的」「原則」としたのは、条件によっては住宅ローンが残っていても売却でき、住宅ローンを返済しながら賃貸できるからです。
たとえば住宅ローンが残っている物件は抵当権が設定されているため、万が一買主がそのまま購入すると、売主が住宅ローン返済を怠れば競売にかけられることになり、買主は家を手放すことになります。
家を手放すことになりかねない物件を、購入する人はいません。したがって通常は、引渡し前までに(決済日までに)抵当権を抹消することを条件に売買契約を締結します。
つまり住宅ローンが残っていても、決済日に完済できれば売却は可能で、多くの方がこの方法で売却しています。
決済日の流れとしては、買主が売主へ売買代金を支払い、売主は受け取った代金で住宅ローンを完済します。司法書士は抵当権を抹消したうえで、買主へ所有権移転登記をします。
では、住宅ローンが残った家を、賃貸物件として貸し出すことはできるのでしょうか。
金銭消費貸借契約にあるように、住宅ローンの資金使途は住宅購入に限ります。したがって住宅ローンを借りているかぎり、基本的には賃貸物件として貸すことはできません。
しかし例外的に、賃貸が認められるケースがあります。詳しくは次の章で紹介します。
住宅ローンがある状態で引っ越す方法3選
住宅ローンが残っている状態で他の住居に引っ越す方法として、おもに3つの方法が考えられます。ここでは、それぞれの方法を解説します。
1.家を残して引っ越し住宅ローンの返済を続ける
転勤などやむを得ない理由で一時的に引っ越しする場合は、例外として賃貸物件として貸し出すことを認めてもらえることがあります。
ただし、金融機関に同意を得る必要があります。もし住宅ローンを不正に利用したと判断された場合、金融機関から一括返済を求められることがあります。必ず事前に相談するようにしてください。
なお単身赴任などで契約者だけが引っ越した状態で、家族がそのまま住む場合は問題ありません。
2.家を貸して引っ越し住宅ローンは乗り換える
転勤のように一時的な引っ越しではない場合は、住宅ローンを借り続けることはできません。
金融機関によって商品名は異なりますが、不動産担保ローンやアパートローン、フリーローンなどに借り換えたうえで引っ越しをし、家を賃貸物件として貸し出しましょう。
なお住宅ローンに比べて不動産担保ローンは金利が高いため、月々の返済額は増える可能性があります。しっかりと返済計画を立ててから、実行に移すようにしましょう。
3.家を売却して住宅ローンを完済し引っ越す
新居への引っ越しを希望する場合、家を売却して得た資金で住宅ローンを完済してから引っ越すのが一般的です。
家を売却した代金で住宅ローンを完済できれば、自由に引っ越すことができ、あらたな住宅ローンを借入れすることもできます。
自宅が売れず次のステップに移れない場合は、買取サービスの利用を検討してみましょう。
仲介による売却よりも安くなる可能性はありますが、不動産会社が買主の場合はローン特約により契約を解除されることがないため、引き渡しまでのスケジュールが確定するのがメリットです。
不動産会社によっては、仲介による売却が難しい場合に備えて、買取サービスを用意しています。仲介を依頼する際は、買取サービスの有無も確認しておきましょう。
住宅ローンを引っ越し前に完済する方法4選
住宅ローンを完済しなければ、基本的には家を売却できません。ここでは、引っ越し前に住宅ローンを完済する方法を4つ紹介します。
1.家の売却代金で返済する
まずは住宅ローンの残債を、家の売却代金で一括返済することを検討しましょう。
住宅ローンの残高が売却代金より少なければ(アンダーローン)、残代金決済日に買主から受け取る売買代金で完済できます。金融機関の繰り上げ返済手数料が発生しますが、最も一般的な方法で、家計に負担をかけずにすみます。
不動産会社に査定を依頼しておおまかな売却価格を確認し、売却代金で完済できるのか確認してみましょう。
ただし査定価格は売却想定価格であり、かならずしも査定価格で売却できるとは限りません。また売却には印紙税や仲介手数料などの諸費用もかかるため、余裕を持って資金計画を立てましょう。
2.自己資金で補填する
住宅ローンの残高が、不動産会社の家の査定額を上回るときは(オーバーローン)、売却代金だけでは返済しきれない分を自己資金で補填する方法があります。
もし残債額が少ないのであれば、事前に自己資金で完済しておくことを検討しましょう。住宅ローンは基本的には重ねて借入できません。事前に住宅ローンを完済しておくことで新たな住宅ローンを組みやすくなり、新居を先におさえること(買い先行)も可能です。
3.住み替えローンを組む
住宅ローンを売却代金で完済できず、自己資金を充当するのも難しい場合は、住み替えローンの利用を検討しましょう。残っている残債を、新しく組む住宅ローンと合算して返済していく方法です。
ただし、新しい家の担保評価に対して借入額が高くなり、月々の返済額が高くなるため、比較的審査は厳しくなります。
また返済額によっては家計の負担になる可能性もあるので、無理のない範囲で住み替えを計画しましょう。
4.ダブルローンを組む
自宅の住宅ローンを完済せず返済を続けながら、新居を購入するために追加で住宅ローンを借りることをダブルローンといいます。
気に入った新居が見つかっていて、買い逃したくない場合や、仮住まいする必要がない「買い先行」したい人に向いています。
しかし毎月の負担額が大きくなるため、通常のローンよりも審査は厳しく、だれでもダブルローンが組めるわけではありません。基本的には短期間の借入を想定してダブルローンを組むことになります。
自宅の売却が長引いた場合でも、返済を続けられるだけの資力が必要です。またダブルローンを扱っている金融機関は一部のみのため、借入先を見つけるためにもなるべく早めに相談しておきましょう。
・「ダブルローン」に関する記事はこちら ダブルローンとは?デメリットはある?住み替え時の注意点を解説 |
住宅ローンがあるけど引っ越したいときの流れ
住宅ローンが残っているけれど引っ越ししたいときは、どのように方向性を決めていったらよいのでしょうか。この章では、おおまかな流れを紹介します。
1.融資元の金融機関に相談する
まず、住宅ローンを借りている金融機関に相談することから始めてみましょう。
たとえば転勤の間だけ自宅を貸したい場合や、新居へ引っ越したあとに賃貸物件として貸し出したいときは、金融機関に了承を得る必要があります。無断で賃貸すると、一括返済を求められることもあるので注意が必要です。
また新居を購入するために、住み替えローンやダブルローンを検討している場合は、事前に審査をしてもらい、希望する金額を借入できるのか相談しておきましょう。
ほかにも住宅ローンの返済が厳しく、家を手放したいと考えている場合は「任意売却」を検討するという方法があります。
競売に比べて高く売却できる可能性があり、返済条件について相談できることもあります。
2.住宅ローン残債の正確な金額を把握する
次に、住宅ローン残高の正確な金額を確認しましょう。売却代金で完済できるのか、足りない場合はいくら自己資金を充当しなければならないのかを確認するために、住宅ローン残高を確認しておく必要があります。
住宅ローン残高は、返済予定表やローン明細書、残高証明書で確認でき、ネットバンキングを利用している場合は、ウェブサイト上でも確認できます。
3.住宅ローンがある家の査定を受ける
不動産会社へ査定依頼し、売却する予定の家がどれくらいで売却できるのか相談します。
不動産会社によって、査定額が異なることがあります。少なくとも2~3社へ査定依頼して、査定額だけでなく査定額を算出した根拠や、近隣の類似物件の売れ行きなども聞いておくとよいでしょう。
複数社の査定額を参考にすることで家の価値を判断しやすくなり、売却価格についても納得しやすくなります。
4.売り先行か買い先行か決める
資金計画を立てたら「売り先行」にするか「買い先行」にするか決めましょう。
家の売却方法には、自宅を売ってから新居を購入する「売り先行」と、新居を購入してから自宅を売却する「買い先行」があります。
新旧の家を同日に決済することは難しいため、どちらかを選択するのが一般的です。
それぞれにメリット・デメリットがあります。どちらにするか迷ったら、不動産会社に相談してアドバイスしてもらいましょう。
売り先行
メリット:売却価格が決定してから新居を購入するため、資金計画を立てやすい
デメリット:住みながら売却することになり、新居に引っ越すまで仮住まいが必要
買い先行
メリット:仮住まいの必要なく、買い替え先を買い逃すことがない
デメリット:売却できるまで売却価格がわからない。住宅ローンが残っている場合は、月々の返済額が大きくなる
住宅ローンがあるけど引っ越したいときの注意点2つ
住宅ローンが残った状態で引っ越す場合、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。最後に注意すべきポイントを2つ紹介します。
1.金融機関には最初に相談する
引っ越しを検討する場合、できるだけ綿密な資金計画を立てることが重要です。まずは住宅ローンを借りている金融機関に、住み替えの資金計画について相談しましょう。
住み替えローンやダブルローンの借入が可能かどうか相談し、自宅を賃貸物件として貸し出したい場合は、了承を得られるのかについても確認しておきましょう。
2.住宅ローン控除は諦める
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築や購入をした場合に、年末の住宅ローン残高に応じて10年間所得税の控除を受けられる制度です。
単身赴任などやむを得ない事情であれば、引き続き住宅ローン控除を受けられます。もし家族全員が一緒に引っ越した場合は適用外になりますが、自宅に戻ってきた際に再適用の手続きをすることで、残った控除期間についてはローン控除を受けることは可能です。
住まいを買い換えた場合でも、一定の条件を満たす必要はありますが、再度住宅ローン控除を受けられます。
しかし売却した家について3,000万円の特別控除を利用する場合、住宅ローン控除とは併用できません。どちらが節税になるのか試算して、節税効果が高くなる方を選択しましょう。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローンが残っていたとしても、売却代金で完済できれば売却できます。また売却代金だけで完済できない場合でも、自己資金を充当もしくは住み替えローンを利用できれば、売却は十分可能です。
つまり住宅ローン残高の有無に限らず、家族が引っ越ししたいと思ったタイミングで住み替えすることは可能です。まずは住宅ローン残高を確認し、不動産会社に査定を依頼しましょう。
住み替えは資金計画を間違えてしまうと、資金繰りに苦労することになりかねません。家の売却と新居の購入は同じ不動産会社に依頼するようにし、資金計画についてよく相談しておくことをおすすめします。
この記事のポイント
- 住宅ローンがある状態で引っ越す方法は?
住宅ローンがある状態で引っ越す方法はいくつかありますが、たとえば転勤などやむを得ない理由で一時的に引っ越しする場合、例外として賃貸物件として貸し出すことを認めてもらえることがあります。
ただし、金融機関に同意を得る必要があるので、かならず事前に相談するようにしてください。
なお単身赴任などで契約者だけが引っ越した状態で、家族がそのまま住む場合は問題ありません。
詳しくは「住宅ローンがある状態で引っ越す方法3選」をご覧ください。
- 住宅ローンを引っ越し前に完済する方法は?
まずは住宅ローンの残債を、家の売却代金で一括返済することを検討しましょう。
住宅ローンの残高が売却代金より少なければ(アンダーローン)、残代金決済日に買主から受け取る売買代金で完済できます。金融機関の繰り上げ返済手数料が発生しますが、最も一般的な方法で、家計に負担をかけずにすみます。
不動産会社に査定を依頼しておおまかな売却価格を確認し、売却代金で完済できるのか確認してみましょう。
詳しくは「住宅ローンを引っ越し前に完済する方法4選」をご覧ください。
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