借りた部屋を貸す 又貸し
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賃借人が借りた部屋を貸し出す「又貸し(転賃)」とは?又貸しに関する基礎知識や賃貸人及び賃借人が注意すべき点を徹底解説!

執筆者プロフィール

狭井八矢日

フリーランスライター&WEBディレクター。「初心者にもわかりやすい記事づくり」をモットーに、不動産投資・金融関係・ライフスタイル・IT関連・著名人インタビューなど、幅広いジャンルでライティングを行う。その他、企業メディア運用のライティング関連の編集・指揮・監修実績多数。

ざっくり要約!

  • 又貸し(転賃)とは、賃貸物件を借りた後に賃借人が他人に再度貸し出す行為
  • 又貸しは法律的および契約上の制約が多く、適切な手続きがなされていない場合には、多くの問題を引き起こす可能性がある
  • 又貸しは複数の借主が関与することで複雑性が増す
  • 賃借人が物件を他人に貸したいと申し出があった場合、賃貸人は法的制約と契約の条件を理解し、必要な許可と手続きを遵守することが重要

複数の借主が関わることから複雑さが増す「又貸し(転賃)」は、賃貸物件を借りた後に、賃貸人が他人にその部屋を再度貸し出す行為を指します。この方法は法律や契約上の制約が多く存在し、適切な手続きを経ていない又貸しは大きな問題を引き起こす可能性があります。

この記事では、又貸しの基本的な定義から、なぜ行ってはいけないのか、そして、オーナーである賃貸人が注意すべきポイントについて徹底解説します。又貸しについて基礎知識を持っていなかった賃貸人の方や、又貸しを検討していた賃借人の方は、是非こちらの情報を参考にしてください。

借りた部屋を貸す「又貸し(転貸)」をしてはいけない理由とは

そもそも契約違反となってしまう

賃貸物件を又貸しすることは、基本的には大家さんや管理会社の明示的な許可なしにはできません。許可なく又貸しを行うと、契約違反とみなされることがほとんどです。

契約違反が発覚すれば、強制退去を命じられたり、高額な違約金を支払わなければならないこともあります。さらに、重大なトラブルに発展すると、法的な訴訟に発展するリスクもあり得ますので、十分に注意が必要です。

民法及び国土交通省で禁止事項とされている

民法では、賃貸人の同意なく賃借権を譲渡したり、物件を又貸しすることは禁じられています(民法612条)。さらに、国土交通省が示す「賃貸住宅標準契約書」でも又貸しは禁止事項と明記されています。そのため、契約書に又貸しに関する記載がなかったとしても、又貸しを行うことは契約違反に該当します。

転借人が過失を起こした場合転貸人に責任が問われる

又貸しによって何らかのトラブルが発生した場合、賃借人への責任は又貸しを行った借主(転貸人)に帰属します。たとえば火災や水漏れが起きた際には、その対応や責任はすべて借主(転貸人)にあり、近隣住民への迷惑も考慮しなければなりません。

このような大きなトラブルが生じた際、その対応には多大な労力が必要となります。また、損害賠償の責任も借主が負う必要があり、精神的、財政的な負担が大きくなるため、軽はずみな又貸しは避けるべきです。

借主・貸主ともにリスクを被ることになる

又貸しには、借主だけでなく貸主にも大きなリスクが伴います。通常の賃貸では発生する問題は貸主と借主で直接対話を通じて解決を試みますが、又貸しの場合、問題が発生した際には実際に住んでいるのは第三者であるため、問題解決が困難になります。

もし何かトラブルが起こった場合、借主が直接対応することが難しい状況になるため、問題は複雑化し、解決が遅れがちになる傾向があります。

借主と又貸し相手との人間関係が破綻する可能性がある

又貸しを行うことで貸主と借主の間の信頼関係が損なわれる恐れもあります。特に、管理会社や大家からの信頼を失うと、将来的に他の賃貸契約を結ぶ際に影響を受ける可能性があります。場合によっては、不動産会社のブラックリストに載ることもあり、その後の住居選びに大きな支障を来すことになります。
また、又貸しをした相手との個人的な関係も破綻するリスクがあります。通常、又貸しの相手は親しい人が多いため、トラブルが発生した際にはその関係にひびが入ることが予想されます。たとえ長年の友人であっても、金銭問題が絡むと人間関係が壊れやすくなるため、最初から又貸しを避けるのが賢明です。親しい間柄だからこそ、トラブルを避け、関係を維持するためにも又貸しはしない方が良いでしょう。

万が一、借りた部屋を貸す行為がバレたらどうなる?

強制退去となる可能性がある

民法612条に基づき、賃貸契約では通常、貸主の明示的な同意がなければ又貸しは禁止されています。この規定に違反した場合、貸主は契約を解除し、借主に退去を命じることができます。
これが発覚すると、ただちに契約解除が行われる可能性が高く、その結果として借主は住居を失うことになります。また、契約期間が満了していない場合、違約金が請求されることもありますので、特に注意が必要です。

違約金を請求される場合がある

又貸し行為が発覚した場合、貸主は違約金を請求する権利を持ちます。賃貸契約は双方の信頼関係に基づいて成立しているため、その信頼を裏切る行為は重大な契約違反とみなされます。その結果、借主は高額な違約金を支払う羽目になることがあります。
さらに、この問題が法的な争いに発展すると、訴訟による時間的・経済的な負担も強いられる可能性があることを覚えておきましょう。違約金の額は状況により異なりますが、通常は家賃の数ヶ月分に相当することが多いです。

設備破損や家賃不払いも補填しなければならない

又貸しによって入居した第三者が起こす設備の破損や家賃の未払いなどの問題も、名義上の借主である人物が責任を負うことになります。
そのため、借主は又貸し先の第三者が原因で起こったトラブルに対して、修理費用や未払い家賃の対応を求められることになります。このような場合、金銭的な負担だけでなく、精神的なストレスも非常に大きくなり得ます。

カップル同棲やルームシェアも又貸しと判断される場合があるので注意

カップルの同棲や友人とのルームシェアが事実上の又貸しと見なされることもあります。居住する人が変わった場合には、新たな同居人についても貸主から許可を得る必要があることを覚えておきましょう。
無許可で人が変わると、それもまた又貸しとみなされるリスクがあります。特に人間関係が変化することで生じるトラブルは、金銭問題に発展しやすいため、事前にしっかりと対策を講じることが重要です。

民泊で自分の借りた部屋を貸すのは又貸しになる?

民泊 又貸し

賃貸物件の場合

自分の居住部屋を他人に有料で泊める行為や、借りた部屋を誰も住まわせずに貸し出す行為は、どちらも賃貸借契約における重要な違反となる可能性が高いです。

自宅でのホームステイ型の宿泊提供

自分が住んでいる部屋で、たとえばホームステイのように他人を有料で泊める行為は、民泊と見なされることがあります。賃貸契約が「居住用」としてのみ許可されている場合、このような商業活動は契約違反にあたる可能性があるのです。住居目的以外での利用は、原則として貸主の許可が必要です。

自分が使わない部屋の貸し出し

自身が借りているものの使用していない部屋を、他人に貸す行為も問題となります。これは、明確な転貸行為として契約違反となり得るため、大きなリスクを伴います。たとえば、自分が長期間家を空ける場合や、投資目的で部屋を借りている場合でも、無断での転貸は許されません。
どちらのケースも、契約書に「民泊事業」や「転貸」が許可されていない限り、契約の解除理由になります。特に、無断で行われた場合、契約解除の対象となるだけでなく、違約金や損害賠償の請求の対象にもなる可能性があるので、大家さんや管理会社と事前にしっかりと相談し、必要な許可を取ることが非常に重要です。

所有している一軒家やマンションの場合

自己所有の一軒家やマンションを民泊として貸し出す場合、一般的にこれは又貸しには該当しません。自己所有物件の活用は私法上特に制限がなく、自由に貸し出すことが可能です。しかし、その活動の性質によっては公法の規制が適用されることがあります。
例えば、不動産を商業的に貸し出す場合は、宅地建物取引業者としての活動と見なされるため、宅建業法に基づく規制を遵守する必要が出てきます。また、宿泊施設として一軒家やマンションを提供する形で民泊を営む場合には、旅館業法の適用を受けるため、該当する法律に基づいた許可や規制の遵守が求められます。
つまり、自分の不動産をどのように使用するかによって、宅建業法や旅館業法などの公法規制を意識する必要があります。不動産を宅建業として運用する場合や、民泊として宿泊施設を提供する場合には、適切な手続きを踏み、法的な要件を満たすことが重要です。

サブリース契約は又貸しにならない?

サブリース契約は、単純な又貸しとは異なる形式の契約です。この契約形態では、不動産会社が物件の所有者から物件を借り上げ、その後、別の借主に転貸します。このプロセスで、不動産会社は所有者に対して定期的に家賃を保証する金額を支払います。この保証があるため、所有者にとっては空室リスクを心配する必要がなく、安定した収入を得ることができます。
サブリース契約は、不動産会社と所有者が正式な転貸借契約を結ぶため、法的に認められた手続きを踏んでいます。契約の際には重要事項説明を行い、所有者にとって賃貸人が実際に不動産会社であること、そしてその不動産会社が別の借主に物件を転貸する構造であることを明確にします。
このように、サブリースは一定の法的枠組みの中で運用されるため、単なる又貸しと区別されます。又貸しは契約違反や不許可の転貸を意味することが多いですが、サブリース契約ではすべての関係者が契約の内容を理解し、同意のもとに進められるのが一般的です。

レンタルオフィスは又貸しにならない?

レンタルオフィスは、又貸しに仕組みが似ていますが、この形態では法的な違反にはなりません。
レンタルオフィスサービスは、完全に設備が整ったオフィススペースを、通常のオフィス賃貸よりも低コストで提供します。このシステムでは、運営会社がビルの一部またはワンフロア全体を借り上げ、それをさらに小分けにして、複数の企業に部屋を提供します。
ここでのポイントは、運営会社がビルオーナーと正式な契約を結んでおり、オフィスを複数のテナントに転貸するビジネスモデルであることが明確に認識されていることです。ビルオーナーはこのビジネスモデルを承認し、それに基づいて契約を締結しています。
このため、レンタルオフィスの運用は合法的であり、通常の賃貸借契約とは異なる形での転貸となっています。この形式では、個々の企業が直接ビルオーナーからではなく、運営会社からオフィススペースを借りるため、又貸しとしての違反には当たらないのです。

賃貸事務所の同居申請のやり方について

賃貸事務所に複数の企業が共同で入居する場合の手続きは次のように進めます。
①まず、賃貸物件を共同で使用する予定の企業数を事前に貸主に通知することが重要です。この段階で、どの企業が物件を共有するか明確に伝える必要があります。

②契約を結ぶ際、代表となる一社が契約名義人として全体の代表者となります。この企業が他の共同入居者と共に契約を行い、賃貸借契約書に署名します。ただし、契約書自体は通常の形式で結ぶことが多いです。

③さらに重要なのは、同居申請書の提出です。この申請書には、契約名義となる企業と共に同居する各企業の名称を記入し、必要な印鑑を押印します。この申請には、各社の登記簿謄本や印鑑証明書などの公的な書類も添付する必要があります。

④貸主からは同居承諾書を受け取ります。この承諾書には貸主の承認印が押され、これにより正式に共同での使用が認められます。
これらのプロセスを遵守することで、問題なく複数企業での事務所共同利用が可能となります。

まとめ

又貸し(転賃)は、多くの法的・契約上の制約が存在し、手続きを怠ると重大な問題に発展することがあります。
借りた部屋を他人に再度貸し出す行為には、契約の違反や法的な問題が伴うため、注意が必要です。特に、貸主の許可なく行う又貸しは、強制退去や違約金の請求、さらには訴訟のリスクも含みます。
もし又貸しを考慮していた賃借人の方は、この記事で解説した点をよく理解し、適切な手続きと許可を得ることが極めて重要です。法律や契約を遵守し、安全に賃貸活動を行いましょう。
また、物件オーナーをされている賃貸人の方も、この記事を元に賃借人の又貸しのリスクを理解し、そのような行為が許可なくされていないかチェックすることの重要性を理解していただければ幸いです。

この記事のポイント

賃貸している物件の部屋を用いて民泊するのは又貸しになるのか?

賃貸物件の場合、自分の居住部屋を他人に有料で泊める行為や、借りた部屋を誰も住まわせずに貸し出す行為は、どちらも賃貸借契約における重要な違反となる可能性が高いです。

詳しくは「民泊で自分の借りた部屋を貸すのは又貸しになる?」をご覧ください。

サブリース契約は又貸しになるのではないか?

又貸しは契約違反や不許可の転貸を意味することが多いですが、サブリース契約ではすべての関係者が契約の内容を理解し、同意のもとに進められるのが一般的となっています。

詳しくは「サブリース契約は又貸しにならない?」をご覧ください。

レンタルオフィスが又貸しにならない理由は何なのか?

レンタルオフィスは、運営会社がビルオーナーと正式な契約を結んでおり、オフィスを複数のテナントに転貸するビジネスモデルであることが明確に認識されているため、違反行為としての又貸しにはなりません。

詳しくは「レンタルオフィスは又貸しにならない?」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

賃借人の方は、又貸し(転賃)を考慮する前に、必ず現在の賃貸契約を再確認し、貸主との間で明確な許可を得ることが重要です。契約書に記載されていない内容や疑問点については、不動産専門家や法律の専門家に相談し、合法的かつ倫理的に問題のない方法で手続きを進めるようにしましょう。オーナーである賃貸人の方も同様に、賃借人の又貸しによって生じるリスクを避け、安心して不動産を活用するためには、情報収集が不可欠です。

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