ざっくり要約!
- 家賃の値上げは、法的に認められた正当な理由があれば可能
- 値上げを行う際は、文書での通告が必須であり、借主への事前の説明が重要
- 値上げが拒否された場合の対処法として、さらなる交渉のためのアプローチ方法や、法的手段に訴える選択肢も検討する必要がある
- 交渉の成功には、両者の利益を考慮した合理的な提案と、オープンなコミュニケーションが鍵となる
「家賃の値上げをしたい」と思った場合、入居者との値上げ交渉は可能なのか、気になっている賃貸物件オーナーの方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、オーナーと入居者の間で行われる家賃の値上げ交渉について、文章での通告方法や、拒否された場合の対処法、交渉の成功法などを詳しくお伝えしていきます。
記事サマリー
家賃の値上げ交渉は正当な理由を満たせば可能
家賃の値上げをする際は、法律で定められた「正当な理由」が必要です。家賃を上げるためには、借地借家法に基づく正式な手続きや契約が求められ、これには複雑な交渉が伴うこともあります。そのため、弁護士や賃貸管理会社に相談することをお勧めします。
一方で、家賃が上がることは入居者にとってメリットがないため、理由が明確でない場合、値上げに納得してもらうのは難しいかもしれません。この記事では、家賃を上げる際の正当な理由や必要な手順、注意点、リスクなどを紹介します。値上げ交渉をスムーズに進めるためのポイントを抑え、トラブルなく進められるようにしましょう。
家賃の値上げ交渉における正当な理由とは
管理物件の維持費や税金の増加
土地や建物の価値が上昇すれば、それに比例して固定資産税も増えます。税額の見直しは3年ごとに行われるので、将来的には税金が上がることも考えられます。また、マンションのような分譲物件では、経年変化に伴い修繕積立金や管理費が上がることもあります。これらの増加が家賃の値上げの正当な理由として認められることがあります。
建物及び土地の価格上昇
地域が再開発されたり、建物がリノベーションされたりすると、その地域の住宅需要が高まります。これにより、土地や建物の価格が上がることがあり、周辺の類似物件と比べて家賃が低い場合、貸主が受けるべき利益が減少することがあります。これも家賃を値上げする正当な理由として認められることがあります。
近年続いている物価の値上がり
近年、生鮮食品やエネルギーを含む物価指数が上昇しています。2023年6月では前年同月比で3.3%、2年前と比べて5%以上上昇しています。これに伴い、新築物件の建築コストも上がっており、家賃値上げの必要性が増しています。実際、新築マンションの価格はバブル期を超える水準にあり、家賃を値上げする正当な理由とされる場合があります。
周辺の家賃相場との乖離
物件の条件が周辺の類似物件と比較して低い家賃である場合、値上げの根拠となります。複数の類似物件を比較し、値上げの正当性を明確にすることが大切です。このように条件によって異なるため、具体的な値上げの正当性を確認することが重要です。
家賃の値上げ交渉が認められない事例とは
周辺の家賃相場から大きく逸脱した値上げ
家賃を相場より大幅に高く設定することは許されません。もし市場価格を大きく超える家賃を設定すると、賃貸市場の公平性が損なわれ、法的なトラブルに発展する恐れがあります。そのため、家賃設定は近隣物件との比較を行い、適正な価格にすることが必要です。
賃貸人の収入を増やすためだけを目的とした値上げ
市場価格に変動がないのに収入増加を目的とした家賃の増額は不当とされます。このような場合の家賃値上げは賃借人にとって不公平であり、問題を引き起こす可能性が高いです。値上げを検討する場合は、正当な理由が必要です。
賃貸借契約書に家賃の値上げを行わないと記載がある
賃貸借契約で家賃の固定が合意されている場合、契約期間中の家賃値上げは不可能です。契約により家賃が一定期間固定されることは、双方の公平な関係を保持し、契約の信頼性を高めるため重要です。社会状況が変化しても、契約を遵守することが求められます。
家賃の値上げ交渉の進め方
家賃の値上げの金額と値上げを行う時期を決める
家賃の値上げを決定する前には、周辺の物件との比較分析を行い、維持管理費の増加も調査する必要があります。新しく設定する家賃は、入居者が納得しやすい額でなければならず、同時に近隣の家賃相場にも適合する必要があります。値上げを伝えた後は、入居者が新しい家賃をじっくりと検討できるように、適切な時間を設けるようにしましょう。
家賃値上げの正当な理由を文書化する
家賃の値上げを行いたい場合、まず値上げの理由を明確にし、それを文書に記録します。税金や管理費の上昇が理由なら、それらを証明する書類が必要です。入居者に納得してもらうためには、値上げが妥当であることをしっかりと説明し、文書で示すことが大切です。
家賃値上げの請求を賃借人に通知する
家賃の値上げを実施する際は、法律上、特に通知期間の規定はありませんが、入居者が十分に検討できるよう、早めに通知するのがベストです。これにより、急な通告によるトラブルを避けることができます。
賃借人との値上げ交渉を実施する
入居者が家賃の値上げに反対する場合、個別に交渉を行い、値上げの理由とその妥当性をわかりやすく説明する必要があります。適切な資料を用いて交渉を進め、お互いの理解と合意を目指しましょう。
話し合いが無事にまとまったら合意書を作る
家賃の値上げについて入居者と合意が得られた場合、その合意内容を詳細に記載した合意書を作成し、両当事者が保持することが求められます。これにより、将来的な誤解や紛争発生のリスクを防ぐことができます。
家賃の値上げ交渉を賃借人に拒否されたらどうする?
家賃の値上げを賃借人と交渉し、拒否されてしまった場合、基本的には値上げすることができません。これは、借地借家法には、賃借人の権利を保護する面もあるためです。
対処法として、複数回にわたっての借主との話し合いや、裁判などが挙げられますが、いずれの方法も長期的な対応が求められます。貸主と借主の立場が対等であるという点で、交渉には双方の合意が必要であることが、値上げ交渉の難しさといえるでしょう。
家賃の値上げ交渉を行う際に配慮すべきリスクとは
裁判に発展してしまう事例も存在する
家賃の交渉が決裂し、双方の意見が折り合わない場合、最終的に裁判に発展することがあります。裁判が行われると、多額の裁判費用や長期間の手続きが必要になります。また、裁判が進行中は、新しい家賃の適用が停止されるため、オーナーは収入の増加を見込めません。裁判を避けるためにも、事前のコミュニケーションを丁寧に行うことが重要です。
賃借人に退去されてしまって空室が増える
家賃の値上げが入居者にとって受け入れがたいものであれば、他の類似物件のほうが条件がよいと判断された場合、賃借人が退去してしまう恐れがあります。すると、新たな賃借人が見つかるまでの期間は空室となるため、収入が途絶えることになります。すぐに新しい賃借人が決まるような人気物件でない場合は、空室期間が長引く恐れがあります。入居者との良好な関係を維持し、合理的な家賃設定を行うことが、退去リスクを低減します。
家賃の値上げ交渉を成功させるためのポイント
賃借人が納得できる理由を文書などで丁寧に説明する
家賃の値上げを通知する際には、なぜ値上げが必要なのかを、具体的かつ客観的なデータと共に詳しく説明することが重要です。例えば、固定資産税の増額や維持管理費の上昇を明示し、これらが直接家賃に影響を与える理由を丁寧に解説します。また、賃借人の疑問や懸念に対して、公平かつ開かれた態度で応答し、理解と共感を得る努力が必要です。
賃借人に何らかのメリットがある条件を付与して交渉する
家賃の値上げを受け入れやすくするためには、入居者にも何らかのメリットを提供することが効果的です。例えば、設備の改善やサービスの向上を提案し、これらの改善が家賃の値上げに見合う価値があることをアピールします。更新料の割引や一部サービスの無料提供など、具体的なメリットを提示することで、交渉が前向きに進む可能性が高まります。
賃借人から反感を買うほどの過剰な家賃の値上げは避ける
値上げの金額は、現実的かつ妥当な範囲内に保つことが重要です。市場の家賃相場を踏まえた上で、合理的な範囲の値上げを提案するべきです。大幅な値上げは入居者に強い反感を買う原因となり、最悪の場合、退去につながることもあります。値上げの提案は慎重に、そして公平に行う必要があることを覚えておきましょう。
家賃の値上げ交渉を行うことをなるべく早い段階で通知する
家賃の値上げを計画している場合、なるべく早い段階で入居者に通知することが望ましいです。これにより、入居者は値上げに対して十分な時間をもって検討し、必要に応じて質問や懸念をオーナーに伝えることができます。早期の通知は信頼関係を保ち、交渉を円滑に進めるためにも効果的です。
家賃の値上げ交渉を賃貸管理会社に丸投げはできる?
家賃の値上げ交渉は、借主と貸主の間で行う重要な行程です。賃貸管理会社はこの行程においてサポートする役割を担いますが、法的な交渉そのものを完全に代行することはできません。借地借家法などの法的要素が絡むため、実際の交渉には法的知識を持つ弁護士が必要とされることが一般的です。
賃貸管理会社の役割と限界
賃貸管理会社は、家賃の値上げに関する交渉で有用なサポートを提供します。具体的には、賃貸人と賃借人の間を取り持ち意向を取り次ぐことや、交渉に必要な市場データや物件の状況に関する詳細な情報を提供することが主な役割です。これにより、双方が納得できる解決策を見つける手助けをします。
しかし、交渉そのものを賃貸管理会社が直接行うことは「非弁行為」とみなされる可能性があります。このような活動は法律で禁止されており、違法な行為に該当する恐れがあるため、注意が必要となります。そのため、法的に複雑または敏感な問題については、弁護士などの法的資格を持つ専門家に相談することが重要です。
賃貸管理会社の選び方
家賃の値上げ交渉に際して賃貸管理会社を利用する場合は、その実績や取り扱い経験を重視して選ぶことが大切です。実績が豊富な会社であればあるほど、交渉の際に必要となるデータの提供や、賃借人とのスムーズなコミュニケーションのための戦略を効果的に提案できる可能性が高まります。
また、賃貸管理会社を選ぶ際は、その会社が法律を遵守しているかどうかも確認しておくと安心です。適切な法的な手続きを理解し、適法なサービスを提供しているかどうかが、トラブルを避けるために重要となります。
まとめ
家賃の値上げは、適切な理由の説明と法的な行程を遵守することで実現可能です。値上げを行う際は、正当な理由を文書化し、入居者に十分な通知期間と説明を提供することが必要です。
この記事では、家賃の値上げを成功させるための具体的な手順と交渉技術を詳しく説明してきましたので、ぜひ参考にしてください。
この記事のポイント
- 家賃の値上げ交渉における正当な理由とは?
管理物件の維持費や税金の増加・建物及び土地の価格上昇・近年続いている物価の値上がり・周辺の家賃相場との乖離などが挙げられます。
詳しくは「家賃の値上げ交渉における正当な理由とは」をご覧ください。
- 家賃の値上げ交渉を賃借人に拒否された場合はどうすれば良い?
家賃の値上げ提案が入居者に拒否された場合、貸主はただちに家賃を上げることはできませんが、すぐに諦める必要はありません。交渉の継続・法的手続きの検討・裁判所での調停や訴訟などによって解決できる可能性があります。
詳しくは「家賃の値上げ交渉を賃借人に拒否されたらどうする?」をご覧ください。
- 家賃の値上げ交渉を成功させるためにはどうするのがベストか?
賃借人が納得できる理由を文書などで丁寧に説明する・賃借人に何らかのメリットがある条件を付与して交渉する・賃借人から反感を買うほどの過剰な家賃の値上げは避けるなどの手段が考えられます。
詳しくは「家賃の値上げ交渉を成功させるためのポイント」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
家賃の値上げを検討している場合、入居者との透明性と正当性を保つことが重要です。値上げの理由と計画を明確な文書にして提示し、入居者には理解と同意を得るために十分な説明と反応の時間を与えるようにしましょう。対話と協力を基に交渉を進めることで、互いの信頼関係を維持しながら合意に達する可能性が高まります。
いくらで貸せるの?無料賃料査定
「貸す」も「売る」も相談できる!
賃貸管理プランが充実の東急リバブルにご相談ください。
東急リバブルの賃料査定はこちら
東急リバブルが買主となり、
ご所有不動産を直接購入いたします
リフォームいらず、最短7日間で現金化!
リバブル不動産買取はこちら