ざっくり要約!
- マンションの売却時に利益が発生しないときは税金(譲渡所得税)がかからない
- 3,000万円特別控除や軽減税率の特例などを適用すると税金が優遇される
マンションを売却すると利益に対して税金(譲渡所得税)がかかることがありますが、かからないケースもあります。
税金がかかる場合は、原則として確定申告が必要です。売却の際は、利益や税額を適切に計算し、必要に応じて適切に確定申告をすることが大切です。
今回は、マンション売却時に譲渡所得税がかかるケースとかからないケース、譲渡所得や税額の計算方法、税負担を軽減できる制度などを解説します。
記事サマリー
マンションの売却で税金がかかるケース・かからないケースの違いは?
マンションを売却すると、住民税・所得税・復興特別所得税が課税されることがあります。これらの税金はまとめて「譲渡所得税」と呼ばれます。
売却時に譲渡所得税がかかるケースとかからないケースは、以下の通りです。
税金がかかるケース
譲渡所得税がかかるのは、基本的にマンションを買ったときよりも高い価格で売り、売却益(譲渡所得)が生じたときです。
購入価格と売却時の諸費用の合計よりも売却価格のほうが高いと譲渡所得税がかかります。
たとえば、売却価格4,000万円、購入価格3,000万円、売却時の諸費用300万円の場合「4,000万円−(3,000万円+300万円)=700万円」が課税対象となります。
譲渡所得が生じるときは、マンションを売却した翌年に確定申告が必要です。確定申告の期間は、例年2月16日〜3月15日です。※土日祝によって前後します。
税金がかからないケース
マンションを売却しても譲渡所得が発生しない場合は、譲渡所得税はかかりません。売却価格が、購入価格と売却時の諸経費の合計を下回り譲渡損失が発生している場合、納税は不要です。
譲渡所得が生じる場合でも、譲渡所得に関する特例や特別控除や特例を適用すると税金がかからない場合があります。ただし、特例や特別控除を受ける場合は確定申告が必要です。
マンション売却の「譲渡所得」と「譲渡所得税」の計算方法
マンションを売却したときの譲渡所得や譲渡所得税の計算式と税率をみていきましょう。
譲渡所得(課税譲渡所得金額)の計算方法
課税の対象となる譲渡所得(課税譲渡所得金額)の計算式は次の通りです。
- 課税譲渡所得金額=総収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除
総収入金額や取得費、譲渡費用に該当するものは以下をご確認ください。
内訳 | |
---|---|
総収入金額 | ・マンションの売却金額 ・固定資産税・都市計画税の精算金 |
取得費 | ・マンションの購入金額 ・購入時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・不動産取得税など) |
譲渡費用 | ・売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税など) |
特別控除 | ・マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円特別控除) ・公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 など |
購入金額のうち建物の取得費については減価償却費を差し引きます。減価償却とは、資産が経年劣化によって減少したと考える価値分を経費として計上する会計処理のことです。
取得費の計算時における減価償却費の計算式は、以下の通りです。
- 減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
※経過年数の1年未満の部分は、6月以上は1年、6月未満は切り捨て
償却率は建物の構造によって決まります。マンションの構造は基本的に鉄筋コンクリート層または鉄骨鉄筋コンクリート造です。売主自身が住んでいるマンションを売却する場合、耐用年数は70年、償却率0.015となります。
・「減価償却」に関する記事はこちら 不動産の減価償却とは?耐用年数や定額法での計算方法をわかりやすく紹介 |
譲渡所得税の計算方法と税率
譲渡所得税の計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率
税率は、マンションを売却した年の1月1日時点の所有期間に応じて決まります。
所有期間 | 税率 |
---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(住民税9%・所得税30%・復興特別所得税0.63%) |
5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(住民税5%・所得税15%・復興特別所得税0.315%) |
所有期間5年以下よりも、5年超のほうが税率は低くなります。
・「譲渡所得税」に関する記事はこちら 不動産売却にかかる税金の計算方法・控除特例・支払い時期を解説 |
マンション売却で使える控除特例
マンションを売却したときは、特例や特別控除を適用することで税負担を軽減したり、納税を先送りにしたりできます。
ここでは、マンション売却時に適用できる代表的な特例や特別控除を紹介します。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)
3,000万円特別控除は、マイホームを売却した際に生じた譲渡所得を最大3,000万円まで控除できる制度です。3,000万円特別控除を適用できると、譲渡所得3,000万円を超える部分にのみ譲渡所得税が課税されるため、税負担が大幅に軽減されます。
3,000万円特別控除を受けるためには、所定の要件を満たす必要があります。以下は、要件の一部です。
- 自身が住んでいる(または住んでいた)マイホームを売却すること
- 住まなくなってから3年後の12月31日までに売却すること
- 売却した年から前々年までの過去2年間にマイホームの買い替えやマイホームの交換の特例を適用していないこと
- 親子や夫婦など特別な関係がある人に売ったものでないこと など
3,000万円特別控除を受けるためには、必要書類をそろえたうえで確定申告が必要です。また、買い換え特例など一部の制度とは併用ができない点に注意しましょう。
・「3,000万円特別控除」に関する記事はこちら 3,000万円控除とは?制度の概要、適用条件や具体的な計算方法も解説! |
軽減税率の特例
軽減税率の特例は、所有期間が10年を超えるマイホームを売却すると税率が軽減される制度です。この特例を適用できると、譲渡所得金額6,000万円以下の部分の税率が以下の通りに軽減されます。
譲渡所得金額 | 税率 |
---|---|
6,000万円以下の部分 | 14.21%(住民税4%・所得税10%・復興特別所得税0.21%) |
6,000万円超の部分 | 20.315%(住民税5%・所得税15%・復興特別所得税0.315%) |
通常、長期譲渡所得の税率は20.315%ですが、軽減税率を適用できると14.21%にまで下がり、売却時の税負担が軽減されます。
また、3,000万円特別控除との併用ができるため、2つの制度を適用することでより大きな節税効果を得られるでしょう。
軽減税率を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 自身が住んでいる(または住んでいた)マイホームを売却すること
- 住まなくなってから3年後に属する12月31日までに売却すること
- 売却した年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間が10年を超えていること
- 売却した年から前々年までの過去2年間にこの特例の適用を受けていないこと など
軽減税率の特例を受けるためには、他の特例や特別控除と同様に確定申告が必要です。
買い換え特例
買い換え特例は、マイホームを売却して新居に買い替える際、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べることができる制度です。この特例を適用できると、買い替え先の住宅を売却するときまで、譲渡所得に対する課税が繰り越されます。
税金が免除されるわけではありませんが、売却時の税負担が減るため、新居を購入する際の自己資金や家具・家電の購入資金などをより多く確保できる可能性があります。
以下は、買い換え特例の要件の一部を抜粋したものです。
- 2027年12月31日までにマイホームを売ること
- 自分が住んでいる(または以前住んでいた)家屋とその敷地や借地権を売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 居住期間が10年以上かつ売却した年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間が10年を超えていること
- 買い替える新居の床面積が50㎡以上であり土地面積が500㎡以下であること
買い換え特例は3,000万円特別控除との併用ができません。また、特例を受けるためには確定申告が必要です。
・「買い換え特例」に関する記事はこちら 居住用財産の買換え特例とは?併用できない特例と適用要件をわかりやすく解説 |
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続や遺贈(遺言で相続人ではない人に遺産を贈ること)で取得した財産を一定期間内に売却したときに受けられる特例です。この特例を適用できると、支払った相続税の一部を売却した財産の取得費に加算できます。
取得費が増えることで譲渡所得が減るため、譲渡所得税を軽減する効果が期待できます。
取得費加算の特例の主な要件は、以下の通りです。
- 相続や遺贈で財産を取得したこと
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- 相続開始から3年10か月以内に売却していること
取得費加算の特例を受ける場合も確定申告が必要です。
【シミュレーション】マンション売却で譲渡所得が出たときの税金はいくら?
マンションを購入時より高い価格で売却した場合を想定し、譲渡所得税がいくらになるかシミュレーションしてみましょう。主な条件は以下の通りです。
- 購入したマンション:新築マンション(売主の居住用)
- 所有期間:6年
- マンションの購入金額:4,000万円(建物2,800万円・土地1,200万円)
- 購入時の諸費用:300万円
- マンションの売却金額:6,000万円
- 固定資産税精算金:20万円
- 売却時の諸費用:300万円
上記の条件で、3,000万円特別控除の要件を満たしているものとして、譲渡所得税を試算します。まず、マンションの取得費を計算します。
- 減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
=2,800万円×0.9×0.015×6年=226.8万円
- 建物の取得費=購入代金−減価償却費
=2,800万円−226.8万円=2,573.2万円
- 取得費=建物の取得費+土地の購入代金+購入時の諸費用
=2,573.2万円+1,200万円+300万円=4,073.2万円
続いて、総収入金額と課税譲渡所得金額を計算します。結果は、以下の通りです。
- 総収入金額=売却金額+固定資産税清算金
=6,000万円+20万円=6,020万円
- 課税譲渡所得金額=総収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除
=6,020万円−(4,073.2万円+300万円)−3,000万円 ≒0円
よって、今回のケースでは譲渡所得税は発生しません。
税制の仕組みを知って賢くマンションを売却しよう
マンションの売却時に譲渡所得が生じていないのであれば、譲渡所得税は課税されません。特別控除や特例を適用したことで譲渡所得税がかからなくなるケースもあります。
合法的に税負担を軽減しながら、譲渡所得税を適切に計算するためにも、マンションを売却するときは税制の仕組みをよく理解することが大切です。
この記事のポイント
- マンションの売却で税金がかかるケースとかからないケースがあるのですか?
マンションを売却すると、住民税・所得税・復興特別所得税が課税されることがあります。これらの税金はまとめて「譲渡所得税」と呼ばれます。
売却時に譲渡所得税がかかるケースとかからないケースについて、詳しくは「マンションの売却で税金がかかるケース・かからないケースの違いは?」をご覧ください。
- 「譲渡所得」と「譲渡所得税」はどう計算すれば良いですか?
マンションを売却したときの譲渡所得や譲渡所得税の計算式と税率について、「マンション売却の「譲渡所得」と「譲渡所得税」の計算方法」にて詳しく説明しています。
- マンションを売却した際に使える控除はありますか?
マンションを売却したときは、特例や特別控除を適用することで税負担を軽減したり、納税を先送りにしたりできます。
詳しくは「マンション売却で使える控除特例」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
譲渡所得税がかかるにもかかわらず、税額の計算を間違えて税金が0円であると思い込み、確定申告をせずにいると、加算税や延滞税が課せられる恐れがあります。また、特例や特別控除を受けるためには所定の要件を満たす必要もあります。税金の専門知識がない方にとって、税額を正確に計算し確定申告を適切に行うのは、難しいものです。マンションを売却する際は、税理士や最寄りの税務署、不動産会社などにサポートを依頼することをおすすめします。
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