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持ち家ありの夫婦に必要な老後資金はいくら?貯め方や家の活用方法も解説

高齢化が進み「人生100年時代」と言われる昨今、老後資金に不安を抱えている方は少なくないでしょう。

本記事では、持ち家がある夫婦に必要な老後資金の目安や必要額の求め方、老後資金の貯め方を紹介します。

リバースモーゲージなど、持ち家を活用して老後資金を確保する方法もあります。持ち家がある夫婦、老後について考え始めた方は、ぜひ参考にしてください。

夫婦に必要な老後資金の目安を紹介

総務省統計局の「家計調査年報(2020年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は255,550円で、収入は年金などが含まれる社会保障給付で、平均219,976円でした。

この調査では、老後生活で毎月約36,000円が不足する計算です。

毎月36,000円不足すると考えた場合、不足額は以下のようになります。

  • 老後が20年の場合:36,000円×12ヶ月×20年=8,640,000円
  • 老後が25年の場合:36,000円×12ヶ月×25年=10,800,000円

毎月の項目別の平均支出額は、以下のとおりです。

項目支出(月平均)
食料65,804円
住居14,518円
光熱・水道19,845円
家具・家事用品10,258円
被服及び履物4,699円
保健医療16,057円
交通・通信26,795円
教育4円
教養娯楽19,658円
そのほかの消費支出46,753円
非消費支出31,160円
合計255,550円

この調査では、住居費が平均14,518円という結果でした。これは、住宅ローンを完済した世帯などが含まれているためだと考えられます。住宅ローンを完済していない場合や、賃貸の場合、住居費はさらに高くなるでしょう。

なお、持ち家の場合は住宅ローンを完済していれば住居費の負担は少ないですが、住宅ローン完済後も固定資産税や修繕費などはかかります。

必要な老後資金の額を調べる方法

実際に、自分たちの老後に必要な資金を調べる方法を紹介します。以下の手順で算出しましょう。

  1. 家計の支出を概算する
  2. 将来もらえる年金額を把握する
  3. 収支をもとに必要な老後資金を試算する

1. 家計の支出を概算する

まずは、毎月何にいくら使っているのかを項目別に把握します。把握した現在の支出をもとに、老後にかかる生活費を概算しましょう。

例えば、教育費は子供が独立すると減少します。実際には、出産した年齢などにもよるため、ご自身の家庭に当てはめて考えましょう。

また、老後は自由な時間が増えるため、娯楽や旅行などの費用は高くなる可能性があります。

「年に1回は旅行に行きたい」「〇〇を習いたい」など、どんな老後生活を送りたいのかを考えて試算しましょう。

持ち家の場合はリフォーム代や修繕費もかかる

持ち家の場合は、毎月の生活費のほかに、定期的にリフォーム代や修繕費がかかる点も考慮します。持ち家にかかる維持費の例は、以下のとおりです。

  • 外壁の塗り替え
  • 水回りのリフォーム
  • 給湯機の交換
  • バリアフリー化

定期的にまとまった金額が必要になるため、毎月積み立てて備えることが大切です。

また、持ち家がマンションの場合は、毎月の修繕積立金や管理費、駐車場代などがかかります。

2. 将来もらえる年金額を把握する

次に、老後に受け取れる年金の額を把握しましょう。

厚生労働省の「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2019年度末の国民年金受給者の平均年金月額は56,049円、厚生年金の平均年金月額は、65歳以上の男性が171,305円、女性が108,813円でした。

ただし、実際に受け取る年金の額は、加入期間や厚生年金の加入有無などにより異なります。

毎年届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用して、将来受け取れる年金額がいくらくらいなのか、把握しましょう。

ねんきん定期便は、毎年誕生日月に日本年金機構から届く、年金の記録がまとめられたお知らせです。

50歳以上の方は、60歳まで現在の年金に加入した場合、いくら年金がもらえる見込みなのかを確認できます。

50歳未満の方は年金見込額ではなくこれまでの加入実績に応じた年金額が記載されるため、ねんきんネットもうまく活用しましょう。

ねんきんネットは、年金記録の確認や将来の年金見込額を調べられるインターネットサービスです。

現在の条件のまま、60歳まで年金に加入した場合の年金額などを試算できます。詳細な条件を入力して試算することも可能です。登録は必要ですが、無料なのでぜひ利用してみてください。

3. 収支をもとに必要な老後資金を試算する

上記で試算した支出・収入をもとに、必要な老後資金を試算しましょう。計算式は以下のとおりです。

(家計の支出-年金額)×老後期間

老後資金の使用開始年齢を65歳とした場合、65歳時点の平均余命は男性が20年、女性が24年(※)であるため、老後期間は20~25年を目安に試算すると良いでしょう。

(※)出典元:厚生労働省令和2年簡易生命表の概況

老後資金を準備し始めるタイミング

公益財団法人生命保険文化センターが令和元年に行った「老後保障に対する私的準備状況」の調査によると、老後のために何らかの私的準備をしている割合は全体で65.9%でした。

男性の場合は、以下のとおりです。

年代(男性)準備している割合
20代49.8%
30代64.9%
40代68.7%
50代70.4%
60代69.3%

また、女性の場合は以下のとおりです。

年代(女性)準備している割合
20代47.2%
30代63.2%
40代66.2%
50代74.2%
60代73.0%

男性・女性ともに、20代でもおよそ2人に1人が何らかの備えをしていることがわかります。

男性の場合、40代以降は約7割の方が備えをしているという結果でした。また、女性の場合40代までは男性よりやや低めですが、50代以降は7割以上の方が老後に備えています。

子供の教育費など計画以上にお金が必要になるケースもあり、老後まで毎月同じように貯蓄や資産運用ができるとは限りません。そのため、早くから備えるに越したことはないでしょう。

なお、老後資金に備える手段は、「個人年金保険・変額個人年金保険や生命保険」が44.7%と最も多く、次に44.2%の「預貯金」が多いという結果でした。

老後資金の貯め方

老後資金への備えはなるべく早くから行いたいものですが、どのように準備をすれば良いのでしょうか。

ここからは、老後資金の貯め方を紹介します。

  • 健康であるうちは働く
  • 家計を見直す
  • 資産運用を行う

健康であるうちは働く

長く働くほど、老後生活に必要なお金を多く用意できます。定年後も、健康であるうちは働き続けることを検討しましょう。

なお、年金を受けながら働き続ける場合、一定の収入を超えると年金が減額されため、注意が必要です。

老後の収入が増えれば、年金の繰下げ受給も検討できます。繰下げ受給とは、年金を65歳で受け取らず、66~75歳の間に繰り下げて受け取れる制度です。

年金の受け取り開始を繰り下げれば、繰り下げた月数×0.7%分年金が増額されるため、老後の収入を増やせます。

これまでは70歳までしか繰り下げられませんでしたが、2022年4月より75歳までに延長されています。

家計を見直す

家計を見直して、支出を減らすことも大切です。

変動費をいきなり大きく減らすのは簡単ではありませんが、毎月必ず発生する固定費を節約できれば、継続的に支出を軽減できます。以下のような見直しを行いましょう。

  • 従来の携帯電話から格安SIM会社へ変更
  • 電力会社やガス会社の乗り換え
  • 家賃が安い物件への引越し
  • 住宅ローンの借り換え
  • 保険の見直し など

資産運用を行う

日本は長い間超低金利が続いており、預金だけで資産を増やすのは難しい状況です。資産運用を行うことも検討しましょう。例えば、以下のような方法があります。

  • 個人年金保険
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
  • つみたてNISA

個人年金保険

個人年金保険は、公的年金では足りない部分をまかなうために加入する私的年金保険です。一定の年齢まで保険料を払い込み、その後一定期間にわたり年金が受け取れます。

保険料を自動引き落としにできるため、貯蓄が苦手な方も備えやすいのが特徴です。また、払い込んだ保険料は条件を満たせば個人年金保険料控除の対象になるため、節税できます。

ただし、途中解約すると払い込んだ保険料を下回る可能性が高い点には注意が必要です。長期間使う予定のない資金で加入しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金の上乗せとして受け取れる私的年金制度です。掛金を拠出して運用を自分で行い、将来年金として給付が受けられます。

掛金は毎月最低5,000円から拠出できます。拠出できる上限額は、加入している年金区分により異なります。

iDeCoの特徴は、掛金が全額所得控除される、運用益が非課税になるなど、税制上のメリットが大きいことです。

なかには元本が保証されている商品もありますが、投資信託で運用する場合は、元本を下回る可能性もあります。原則として60歳になるまで引き出しができない点にも注意が必要です。

つみたてNISA

つみたてNISAとは、一定の基準を満たした投資信託の運用から得られる分配金や、譲渡益が非課税になる制度です。毎年40万円までつみたてNISAを利用して投資信託が購入でき、最大20年間非課税になります。

手数料が低いなどの条件を満たした投資信託だけが対象であるため、投資初心者でも始めやすいのが特徴です。

投資信託は預金とは異なるため、元本を下回るリスクがある点を理解しておきましょう。

持ち家を活用して資金確保する方法もある

持ち家を活用して、老後資金を確保する方法もあります。

  • リバースモーゲージを利用する
  • リースバックを利用する
  • 賃貸としての活用を検討する

以下で詳しく解説します。

リバースモーゲージを利用する

リバースモーゲージとは、高齢者向けの貸付制度の1つで、自宅を担保に借入れができます。自宅に住み続けながら毎月利息を返済し、亡くなったときに自宅を売却することで元金を返済するのが一般的です。

毎月利息のみを返済するため、返済額を抑えられるのがメリットです。一方、長生きした場合、借入額が限度額に達してしまうリスクがあるため、計画的に利用する必要があります。

リバースモーゲージは、年齢や資金使途などの条件を満たした場合のみ利用可能です。

リースバックを利用する

リースバックとは、自宅を売って現金化し、買主と賃貸借契約を結ぶことで、そのまま住み続けられる制度を指します。

売却した後も今の住まいに住み続けられるのがメリットです。また、自分の所有でなくなるため、税金などがかからなくなり、維持コストを抑えられます。

ただし、賃貸借契約になるため、毎月家賃を支払わなければなりません。

また、修繕などを自由に行えなくなる点や、契約によっては退去させられるリスクがある点にも注意が必要です。

賃貸としての活用を検討する

自宅を貸し出して、賃料収入を得る方法もあります。

賃貸に出すためには、ハウスクリーニングや設備点検などのさまざまな準備が必要です。また、管理が必要な点、修繕費などがかかる点にも注意しなければなりません。

賃貸としての活用を検討してはいるものの、専門的な用語も多く、不安に感じる方も多いでしょう。自宅を貸したいと考えているなら、まずは信頼できる不動産会社に相談してください。

早いうちから老後資金を準備しよう

夫婦に必要な老後資金は家庭により異なりますが、大きな金額であることに変わりはありません。個人年金保険やiDeCo、つみたてNISAなどを活用して、早いうちから備えましょう。

持ち家の活用を検討するのも一つの方法です。持ち家を活用して老後生活に備えたいと考えているなら、まずは不動産会社に相談し、最適なプランを提案してもらいましょう。

この記事のポイント

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の目安は?

総務省統計局の調査「家計調査年報(2020年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は、平均255,550円でした。
一方、社会保障給付は平均219,976円であり、この調査では毎月約36,000円が不足する計算です。

詳しくは「夫婦に必要な老後資金の目安を紹介」をご確認ください。

実際に必要な老後資金の額はどうやって調べる?

以下の手順で、老後に必要な額を計算しましょう。

  1. 家計の支出を概算する
  2. 将来もらえる年金額を把握する
  3. 収支をもとに必要な老後資金を試算する

詳しくは「必要な老後資金の額を調べる方法」をご確認ください。

この記事の監修

松崎 観月
資格情報: CFP認定、FP2級、日商簿記2級

大学卒業後、金融機関にて個人営業を担当。資産運用の相談・保険販売などを経験する。退社後CFP認定を取得し、フリーのFPライターとして活動を行う。

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