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「建蔽率(建ぺい率)」と「容積率」って何?建築前に知っておきたい基礎知識を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

住宅購入を検討する際、「建蔽率(建ぺい率)」や「容積率」といった言葉をよく耳にします。建ぺい率や容積率は敷地の中に建てられる建物の規模を決める規制であり、土地の価値にも影響を及ぼす重要な数値です。

建ぺい率や容積率とは、具体的にはどのような規制なのでしょうか。この記事では「建ぺい率」と「容積率」について解説します。

家を建てる前に知っておきたい「建ぺい率」と「容積率」

「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。建築面積とは、端的に言うと建物を上から見たときの面積を指します。

そして「容積率」とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことです。延床面積とは、各階の床面積を合計した面積を指します。

建ぺい率も容積率も、いずれも敷地面積に対する割合のため、「パーセント」で指定されます。例えば、建ぺい率なら60%、容積率なら150%といった形です。

建ぺい率と容積率はセットで表現されることが多く、(80%、400%)といった表現であれば建ぺい率が80%、容積率が400%となります。かっこ内の数値は、先(左側)に建ぺい率、次(右側)に容積率が記載されるのが一般的です。

「建ぺい率」がある理由

建ぺい率は、敷地内に一定割合以上の空地を設け、日照や通風などを確保するためにあります。

前述のとおり、建ぺい率とは建築面積の敷地面積に対する割合のことです。建築面積は建物を上から見たときの面積ですので、建ぺい率が小さいほど敷地に建物以外の空間があるということです。

例えば建ぺい率が50%で指定されている住宅街があるとします。土地の広さが50坪の場合、多くの家は敷地の25坪を建物に利用し、残りの25坪を庭や駐車場に利用するのが一般的です。建ぺい率が50%の住宅街は、それぞれの家が庭を広く確保しているため、ゆったりと建てられた家が多くなります。「なんとなく立派な家」が建ち並び、街区全体も高級感が出やすいです。

一方で、建ぺい率が60%で指定されている住宅街は、若干ですが家が詰まって建っている印象が出てきます。建ぺい率が高い住宅街は、隣接住戸も近く、隣戸からの騒音も聞こえやすいです。

また、建ぺい率は建物の耐火性能とも関連しています。建ぺい率が高くなれば隣接住戸との距離も近くなってしまうため、火災が発生したときに周囲に燃え広がりやすいです。

そのため、木造住宅が多い日本では、戸建て住宅街の建ぺい率は50%〜60%と低めに設定されています。

商業地・商業地域の建ぺい率

住宅地域に対して、商業地の建ぺい率は高い数値で設定されていることが多いです。ターミナル駅周辺などの繁華性の高いエリアで、隣のビルと接するぐらいに敷地いっぱいに建てられたビルを見たことがある人も多いと思います。

また、繁華性の高い商業地は「商業地域」と呼ばれる用途地域に指定されていることがほとんどです。用途地域とは、建築物の用途に着目して区分された地域の規制のことを指します。

商業地域の多くは、建ぺい率が80%で指定されています。そしてさらに、商業地域には「建ぺい率が80%かつ防火地域内にある耐火建築物は、建ぺい率の制限がなくなる」という規制があります。建ぺい率の制限がなくなるとは、つまり建ぺい率が100%でも建築できるということです。

この「防火地域」とは市街地の防火対策のために都市計画で指定された地域を指します。「耐火建築物」とは、火災が自然鎮火するまでの間、放置されても倒壊するほどの変形や損傷がなく、延焼もしないで耐えることができる建築物のことです。鉄筋コンクリート造の建物などが耐火建築物に相当します。

ターミナル駅周辺は、建ぺい率が80%かつ防火地域に指定されていることが多いため、耐火建築物とすることで敷地いっぱいに建物を建てられます。都市部で隙間なくビルが建っているのは、建ぺい率が実質的に100%となっているからです。

なお、一般的な戸建て住宅街は、通常、防火地域には指定されていません。防火地域や準防火地域(防火規制が防火地域よりもやや緩い地域)でなければ、建物には高い防火性能が求められないため、木造のような建築コストの安い材料を選択することができます。

つまり、住宅街は「建ぺい率が低い」という制限を受ける代わりに、木造でコストを抑えながら建物を建てられるメリットがあるのです。

建ぺい率を調べる方法

建ぺい率は、市町村役場の「都市計画課」や「まちづくり課」と呼ばれる担当部署に聞けばすぐに知ることができるでしょう。

住宅地図を持っていき「ここの土地の規制を教えてください」と言えば、建ぺい率のほかにも、容積率や用途地域、防火地域であるか否かなど、基本的な公法上の規制をすべて教えてもらえます。

役所も公法上の規制は頻繁に聞かれるため、たいていの場合、窓口カウンターの一番手前に座っている担当者がすぐに対応してくれます。特に複雑な手続きや申請は不要で、窓口カウンターで声をかければ先方も親切に応対してくれるでしょう。

担当課がわからない場合は、役所の1階の総合受付などで「建ぺい率(もしくは用途地域)について知りたいです」と伝えると、「〇階のここに行ってください」と指示をもらえるでしょう。

また、すべての市町村には当てはまりませんが、大きな自治体ではインターネットで都市計画情報を閲先で述べたとおり、容積率とは敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。建ぺい率が建物の平面的な規制であるのに対し、容積率は建物の立体的な規制になります。覧することも可能です。

例えば、検索サイトで「横浜市 用途地域」と入力すると、「横浜市行政地図情報提供システム」という横浜市のサービスサイトが出てきます。該当する地図を選択し、地図上で場所を指定していくと、建ぺい率などを含む都市計画情報が表示されます。

出典:横浜市行政地図方法提供システム|横浜市

「容積率」とは何か?

先で述べたとおり、容積率とは敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。建ぺい率が建物の平面的な規制であるのに対し、容積率は建物の立体的な規制になります。

容積率は、建ぺい率とセットで指定されることで、自然と建物の階数が抑えられる仕組みになっています。具体的にどのような形になるのか見ていきましょう。

・建ぺい率と容積率が(50%、100%)と指定されている土地の例
建ぺい率を最大限消化した場合、1階あたりの床面積は敷地面積の50%です。

一方、容積率は100%ですので、建築できる面積はあと50%残っていることになります。そこで、2階も1階と同じ面積にすると、1階で50%、2階で50%となり、100%の容積率を最大限消化できます。

よって、建ぺい率と容積率が(50%、100%)と指定されている地域では、2階建ての建物が多いです。

・建ぺい率と容積率が(60%、150%)と指定されている土地の例
建ぺい率を最大限消化した場合、1階あたりの床面積は敷地面積の60%です。

2階も1階と同じ面積にすると、1階で60%、2階で60%となり、150%の容積率のうち120%を消化することになります。この場合、容積率は30%を余らせた状態です。

建ぺい率や容積率はあくまでも上限値であり、最大限消化する必要はありません。容積率を余らせて2階建てを選択する人も多いです。

もちろん、建ぺい率を余らせて、1階あたりの床面積を敷地面積の50%とすることもできます。

さらに、1階を50%、2階も50%、3階も50%とすれば、150%の容積率を最大限消化することが可能です。よって、建ぺい率と容積率が(60%、150%)と指定されている地域では、2階建ての戸建て住宅や3階建てのアパートなどが出てきます。

このように容積率は建ぺい率と組み合わさることで、建物の階数が自然に決まるのが特徴です。

建ぺい率と容積率の計算方法

その土地で利用できる原則的な容積率の上限(基準容積率)は、前面道路の幅員が12メートル未満の場合、道路幅員に法定乗数を乗じて得た数値と指定容積率を比較し、いずれか低いほうの数値となります。指定容積率とは自治体が指定した容積率のことです。

法定乗数は以下の数値になります。

0.4:住居系の用途地域
0.6:住居系以外の用途地域

基準容積率の計算例は以下のとおりです。
(前提条件)

用途地域:第一種住居地域(住居系の用途地域であるため、法定乗数は0.4)
前面道路幅員:4メートル
指定容積率:200%

(計算)

法定乗数による容積率=前面道路幅員×法定乗数
          =4メートル×0.4
          =160%
法定乗数による容積率160%と指定容積率200%を比べると、法定乗数による容積率のほうが低いため、基準容積率は160%となります。

また、2つの異なる建ぺい率と容積率が指定されている土地にまたがっている場合、面積案分(加重平均)によって建ぺい率と容積率を計算します。

(前提条件)

全体の敷地面積:300平方メートル
敷地Aと敷地Bにまたがっている状況(前面道路幅員は12メートル)

敷地A
面積:180平方メートル
建ぺい率、容積率:(50%、200%)

敷地B
面積:120平方メートル
建ぺい率、容積率:(60%、400%)

(計算)

敷地全体の建ぺい率=50%×(180÷300)+60%×(120÷300)
         =54%
敷地全体の容積率=200%×(180÷300)+400%×(120÷300)
        =280%

用途地域ごとの建ぺい率と容積率について

用途地域は全部で13種類あります。それぞれの地域で指定できる建ぺい率と容積率の数値は下表のとおりです。

1低2低田住1中2中1住2住準住近商準工商業工業工専
建ぺい率30
40
50
60
50
60
80
60
80
50
60
80
8050
60
30
40
50
60
容積率50
60
80
100
150
200
100
150
200
300
400
500
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
1100
1200
1300
100
150
200
300
400

用途地域については下記記事をご覧ください。
用途地域|東京リバブル

建ぺい率と容積率が緩和されるケース

建ぺい率は、角地だと10%加算されます。また、防火地域内に耐火建築物を建てる場合にも緩和があります。

建ぺい率が緩和されるケースをまとめると下表のとおりです。

【1】指定角地+10%【1】【2】の重複
+20%
防火地域内の耐火建築物【2】建ぺい率が80%の地域外+10%
【3】建ぺい率が80%の地域制限なし

容積率には「特定道路への接続による前面道路の幅員加算」という緩和規定があります。緩和を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

【1】敷地の前面道路が特定道路(幅員15メートル以上)に接続している
【2】敷地の前面道路の幅員が6メートル以上12メートル未満となっている
【3】敷地が特定道路から70メートル以内にある

加算される容積率の計算方法は以下のとおりです。

Wa:前面道路に加算する数値
Wr:前面道路の幅員
L:特定道路から敷地までの距離
Wa=(12-Wr)×(70-L)÷70
緩和後の容積率
(Wr+Wa)×法定乗数

そのほかで知っておきたい建築制限

そのほかで知っておきたい主な建築制限は下表のとおりです。ぜひ住宅を建てる際の参考にしてください。

建築制限内容
道路斜線制限道路周辺の日照、採光、通風などの環境を確保するために建築物の高さが一定勾配の斜線の内側に収まるようにする規制
隣地斜線制限隣地の採光、通風などを確保するために、建築物の高さが一定勾配の斜線の内側に収まるようにする規制
北側斜線制限住居系の用途地域の日照を確保するために、建築物の北側の高さを制限する規制
日影規制中高層建築物が近隣の敷地に日影を落とす時間を制限し、近隣の日照条件の悪化を防ぐための規制

この記事のポイント

「建ぺい率」と「容積率」とは何?

「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。建築面積とは、端的にいうと建物を上から見たときの面積を指します。

そして「容積率」とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことです。延床面積とは、各階の床面積を合計した面積を指します。

建ぺい率と容積率は組み合わさることで、建物の規模や階数が自然に決まるのが特徴です。

建ぺい率と容積率は、市町村役場の「都市計画課」や「まちづくり課」と呼ばれる担当部署にヒアリングすれば簡単に知ることができます。

詳しくは『家を建てる前に知っておきたい「建ぺい率」と「容積率」』をご確認ください。

ほかにも気をつけておいたほうがいい規制はある?

建ぺい率や容積率のほかにも、建物を建てるうえでは、道路周辺や隣地の環境を良好に保つための「道路斜線制限」や「隣地斜線制限」に気をつけなければなりません。いずれも、建物の高さが一定勾配の斜線の内側に収まるようにする規制のことです。

また、このほかにも「北側斜線制限」「日影規制」といった建物の高さに関する規制があります。

詳しくは「そのほかで知っておきたい建築制限」をご確認ください。

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