住宅性能評価書とは、完成してからでは確認できない住宅の性能を、国に登録した第三者機関が客観的に数値化し、評価したものです。
この記事では住宅性能評価書を取得するメリットだけでなく、デメリットや性能評価10項目 (新築住宅の場合)、実際の流れも紹介していきます。
記事サマリー
住宅性能評価書とは?
住宅性能評価書とは、2000年(平成12年)4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって創設された、住宅性能表示制度により定められたものです。
国が設けた住宅の品質に関する基準に対して、第三者評価機関が客観的、かつ公正に評価した内容を書面化したものになります。
第三者評価機関とは国土交通大臣に登録した機関に限定されていて全国共通のルールに従って公正な立場で評価するので、消費者にとって住宅購入する際の安心材料になります。
また、第三者評価機関(登録住宅性能評価機関)は全国に120ほどあり、お近くの評価機関を選ぶことができます。
住宅性能表示制度は設計段階で図面を確認する設計性能評価と、住宅完成後に確認する建設性能評価の2つの種類があります。
評価基準は10分野にわたり32項目あります。申請をして検査を受け、一定の基準を満たしていなければ評価書は取得できません。ちなみに評価は等級や数値で表示され、数字が大きいほど性能が高いということになります。10分野については後半で詳しく紹介します。
住宅性能評価は任意の制度であり、取得は必須ではありません。また評価書を取得するかは消費者である受託購入者の判断になり、費用は消費者の負担になります。
住宅性能評価書を取得するメリット
ここでは、いくつかある住宅性能評価書を取得するメリットについて解説していきます。
住宅の性能が分かる安心感を持てる
一番大きなメリットは、住宅の性能について第三者の評価を数字で確認できることです。
マイホーム購入は人生で何度も経験することではないため、住宅の良し悪しを自己判断することは難しいものです。
売主からの説明を鵜呑みにすることなく、第三者の評価を判断材料とできることは安心材料となるでしょう。
また実際設計段階と建設の段階で評価を受けることになります。建設主は基準を満たさなくてはならないため、より慎重に建設することになり、欠陥住宅の抑止力にもなります。
また住宅を評価する材料となるため、売却の際にもプラスに働き、売却価格によい影響が働く可能性があります。
住宅ローンの金利引き下げ /地震保険の割引 がある
住宅性能評価書を取得した住宅は、住宅ローン借り入れや地震保険に加入する場合に優遇を受けられる可能性があります。
金融機関によって異なりますが、住宅ローンの金利が優遇される可能性があります。例えばフラット35では新築物件の住宅ローン審査で必要になる検査を、一部省略できるメリットなどがあります。
フラット35を利用する場合、長期優良住宅であればフラット35Sという金利引き下げメニューを利用することができます。最大当初10年間金利が0.25%低くなるというプランです。(2023年3月31日までの申し込み分に適用)
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地震保険 に関しても、住宅性能評価書に記載されている耐震性能に応じて、地震保険の割引を受けることができます。具体的には以下の通りです。
保険始期 2014年6月30日以前 | 保険始期 2014年7月1日 以降 | ||
免震建築物割引 | 30%引き | 50%引き | |
耐震等級割引 | 耐震等級3 | 30%引き | 50%引き |
耐震等級2 | 20%引き | 30%引き | |
耐震等級1 | 10%引き |
なお地震保険は単独では加入できないため、火災保険の特約として加入する必要があります。
すまい給付金の申請に使用できる
すまい給付金とは、住宅を取得者する人の消費税の負担を軽減するために、国土交通省により創設された制度です。住宅取得者の収入や建物の面積によっては給付を受けられませんが、収入が775万円以下の人を対象に最大50万円を給付される制度です。
すまい給付金の申請時に、基本的には住宅性能評価書(写し)が必要になります。中古物件の場合でも建設後10年以内 であって、建設住宅性能表示を利用している場合は同様に住宅性能評価書(写し)が必要になります。
すまい給付金は中古物件でも対象となるため、セカンドオーナーも対象となります。しかし元々消費税の負担軽減が主旨であるため、課税されない個人が売主である中古物件は対象となりません。
対象となるのは売主が宅地建物取引業者である中古物件のみ になります。(中古再販物件)
なお消費税が引き上げられた2014年4月以降に引き渡しされた住宅 から、2021年12月31日までに引き渡し及び入居した住宅を対象にしていますが、一定の期間(※1)に契約した場合は、2022年12月31日までに引き渡し及び入居が完了した住宅が対象です。
※1:新築の注文住宅の場合:2020年10月1日から2021年9月30日まで
分譲住宅や中古物件の場合:2020年12月1日から2021年11月30日まで
贈与税の非課税枠が拡大する
2022(令和4)年1月1日から2023(令和5)年12月31日の間に、父母や祖父母からの贈与により得た金銭により、自己所有のために住宅を購入(新築・取得・増改築を含む)する場合、一定の要件を満たす住宅は次の通り住宅取得等資金の贈与が非課税となります。
省エネ等住宅:1,000万円まで
その他の住宅:500万円まで
ここでの「省エネ等住宅」とは、次の基準のいずれかに適合する住宅です。要件を満たしていることを証明するために住宅性能評価書を贈与税の申告書に添付する必要があります。
・断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物
・高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
出典:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁 (nta.go.jp)
指定機関にトラブル対応(紛争処理)を申請できる
設計性能評価と建設性能評価の両方を取得した住宅は、万が一売主・買主間で締結した請負契約書や売買契約書に関することでトラブルになった場合、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)へ相談することができます。
裁判となると高額な費用がかかるうえに解決までに時間を要しますが、指定住宅紛争処理機関では安価な手数料(1件1万円から)で相談することができます。また比較的迅速に対応してもらえることから、早期の解決も期待できます。
住宅性能評価書を取得するデメリット
住宅性能評価書を取得するデメリットは、まず費用がかかることです。一般的に相場は10万円から20万円と言われています。建設会社によっては住宅建築費用にあらかじめ含めて計上している場合もあります。
例えば、すべての評価で上位の等級を得ようとすると、使用する建材や仕様をよくする必要があり、作業が増えれば、結果その分の建築費がかさみます。
また、陽当たりを重視して窓を大きくすると、耐震性が下がるように相反するような評価もあり、すべての項目を最上位とすることは非常に難しいといえます。
住む人や建築地の条件などにより、重視すべき項目は異なります。すべてにおいて上位の等級を目指すのではなく、平均的に等級を認定されるような建築計画を立てることをおすすめします。
性能評価10 項目(新築住宅の場合)
新築住宅における性能評価は以下の10の項目になります。
①構造の安定に関すること(構造の安定)
地震による建物への影響を評価します。等級が高いほど地震に対して建物が倒壊しにくく、損傷を受けにくいことを意味します。地震以外にも強風や大雪に対する強さの評価もあります。ちなみに等級1であっても、建築基準法上の強度はクリアしていますのでご安心ください。
②火災時の安全に関すること(火災時の安全)
住宅内で火災が起きた時の燃え広がりにくさや、避難のしやすさなどに加えて、隣家からの延焼のしにくさを評価します。
③劣化の軽減に関すること(劣化の軽減)
経年により土台や柱が劣化しないようにするために対策が取られているか、またその耐久性について評価します。
例えば木造の場合は土台や柱が腐らないようにするための対策がされているか、鉄筋コンクリートの場合は、柱や梁の耐久性、鉄骨造は鉄の部分の錆びにくさなど、構造によって多少評価の仕方が異なります。
鉄筋コンクリート造の場合は主に柱や梁のコンクリートがもろくならないための対策を評価し、鉄骨造の場合は主に鉄の部分が錆びにくくする対策を評価します。
④給排水の配管の維持管理・更新への配慮に関すること(維持管理・更新への配慮)
水道管や排水管、ガス管などの配管類の点検や清掃のしやすさや、故障した場合の補修や更新のしやすさを評価します。
配管類は構造の躯体よりも早い時期に修繕が必要なため、評価項目にあげられています。
⑤温熱環境やエネルギー消費量に関すること(温熱環境・エネルギー消費量)
冷暖房を効率的に使うための、外壁や床、天井などの断熱効果を評価します。等級が高いほど、省エネルギー住宅だという評価になります。
⑥空気環境やシックハウスに関すること(空気環境)
接着剤や建材に使われる薬剤でシックハウスの原因となる、ホルムアルデヒトの使用状況を評価します。また有害物質を外へ排出するために必要な換気がどのように行われているか評価されます。
⑦光・視環境に関すること(窓の面積)
窓がどのくらいの大きさで、東西南北と上のどの方向に設けられていて、どの程度光が取り込めるのかを評価します。
⑧遮音対策に関すること(音環境)
主に共同住宅の場合の評価ですが、真上や真下の住戸や隣家への音の伝わりにくさを評価します。(オプションになります)
⑨高齢者等への配慮に関すること(高齢者等への配慮)
階段勾配を緩やかにした、出入り口の段差を解消するなど、高齢者が暮らしやすいよう配慮がされているかを評価します。また障害のある人への配慮がされているかも評価対象です。
⑩防犯対策に関すること(防犯対策)
防犯に有益である部品や雨戸等の設置により、不審者の侵入防止対策がされているか評価します。
住宅性能評価を受ける流れ(新築住宅)
住宅性能評価書を実際受け取るまでの流れを紹介します。
1. 事前相談
電話で予約を取り、正式な申込を行う前に事前の打ち合わせをします。申請に必要な書類や記載する内容、手続き、スケジュールなどを確認します。
2. 設計性能評価の申請
まず設計性能評価の申請をします。申請書と必要書類を提出します。
3. 図面の修正等
評価機関で内容を審査します。「質疑表」という形で結果が送られてきます。確認事項が出た場合には対応します。
4. 建設性能評価の申請
第一回現場検査前に建設性能評価の申請をします。申請書と必要書類を提出します。
5. 評価の実施
申請後に問題がなければ、評価の実施となります。設計住宅性能評価は設計図面などにより、基準に適合しているかの審査が行われます。建設住宅性能評価は、工事中にその工程ごとに現場の検査が行われます。
住宅性能評価書には、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価の2つがあり、それぞれの評価が行われます。
もし軽微な補修によって評価をクリアできるような場合は、再度検査を受けることができます。
6. 評価書の交付
通常設計内容の評価後に設計住宅性能評価書が交付されますが、新築の住宅については検査済証の交付後に住宅性能評価書が交付されます。
この記事のポイント
- 住宅性能評価書ってなに?
住宅性能評価書とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって創設された、住宅性能表示制度により定められたものです。
評価基準は10分野32項目あり、申請をして検査を受け、一定の基準を満たしていなければ評価書は取得できません。また、住宅性能評価は任意の制度であり、評価書を取得するかは消費者である受託購入者が判断し、費用も消費者の負担になります。
詳しくは「住宅性能評価書とは?」を確認ください。
- 住宅性能評価書を取得するメリットはなに?
住宅性能評価書を取得すると、主に下記5点のメリットがあります。
- 住宅の性能が分かり安心できる
- 住宅ローンの金利引き下げ/地震保険の割引がある
- すまい給付金の申請に使用できる
- 贈与税の非課税枠が拡大する
- 指定機関にトラブル対応(紛争処理)を申請できる
詳しくは「住宅性能評価書を取得するメリット」をご確認ください。
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