ざっくり要約!
- 修繕積立金の相場は、建物が20階未満の場合252円~335円/㎡・月
- 20階以上の高層マンションにおいては338円/㎡・月
- 修繕積立金は相場が変わったり計画外の修繕が発生したりすることなどにより値上がりすることがある
分譲マンションなどの集合住宅と戸建住宅のランニングコストは異なります。集合住宅特有の費用としては、管理費や修繕積立金が挙げられます。管理費は賃貸にお住まいの方にもなじみ深いと思いますが、では修繕積立金とはどのようなものでしょうか?
今回記事では、修繕積立金と管理費の違いや費用相場、積立の見積もりの根拠である長期修繕計画などについてまとめていきます。分譲マンション購入を検討されている方はぜひ最後までご一読ください。
記事サマリー
修繕積立金とは?
修繕積立金とは、分譲マンションの住環境を維持するために将来かかるであろう建物や敷地内設備の修繕・部品交換費用を、区分所有者皆で積み立てて備えるための資金です。
マンションのモデルルームに出かけたことのある方は、建築図面などとともに長期修繕計画といった文書をご覧になったかもしれません。修繕積立金を見積もる根拠がこの長期修繕計画になります。見やすい資料ではないかもしれませんが、必ず一度目を通すことをおすすめします。
管理費との違い
住宅ローン以外に毎月出ていく固定的支出といえば管理費と修繕積立金です。ではその違いはなんでしょう。
管理費はマンション内外の住環境の維持にかかる費用です。具体的には、エレベーターやゲストルーム、エントランスや駐輪場など共用施設の清掃や点検などにかかる費用に使われます。そのほか共有部分の光熱費や電球などの備品代、建物周りに配置された植栽の剪定、マンション管理人に支払う報酬などに支払われます。
一方、修繕積立金は名のごとく、今まさに必要な出費ということではなく、数十年先にかかると見込まれる大規模な修繕工事費のための資金です。建物の外壁やベランダなどの塗装工事や共用部分の修繕費用、各戸までの引き込み配管の交換工事費、エレベーターや敷地内立体駐車場など設備の修繕・入れ替え費用などに備える準備金というわけです。
新築物件では大規模修繕工事は随分先になりますので、購入時点で意識しない方が多いでしょう。しかし分譲マンションに住むあいだ何十年と積み立てていくお金ですので、購入を決断する前に、修繕積立金がトータルでどれくらいかかるのか、いつごろ大規模修繕を行う計画なのかなどは必ず調べておきたいものです。
修繕積立金の相場について
気になる修繕積立金の相場ですが、立地と集合住宅の総戸数により当初の金額は大きく差が出ます。一般的には、地価の高いエリアに建つマンションほど、また総戸数が少ないマンションほど修繕積立金は割高になりやすいとご理解ください。
また、共有施設が充実しているほど維持管理にお金がかかります。たとえばエレベーターが複数機ある、駐車場が自走式ではなく機械式である場合も修繕積立金が上がる要因です。
修繕積立金には、基金のように住宅購入時に一部をまとめて支払い、居住後も毎月積み立てていくケースがあります。
また、積み立ての方式にも2種類あり、長期修繕計画全期間で必要な資金をならして均等に毎月払いしていく「均等積立方式」と修繕費がかさむ後半に向けて段階的に積立金額を上げていく「段階増額積立方式」があります。
初期に支払う修繕積立金額で毎月の居住費を考えていくと、将来困ることもありますので、先々「修繕積立金がアップするのかどうか」住宅販売の担当者に確認してみましょう。
修繕積立金の適正金額
国土交通省のまとめたガイドラインによると、専有面積当たりの修繕積立金額(月額)の平均は、建物が20階未満の場合252円~335円/㎡・月、20階以上の高層マンションにおいては338円/㎡・月とさらに上がります(機械式駐車場にかかる割り増し費用除く)。
仮に、購入したマンションの専有面積が80平方メートルだとすれば20160円~26800円/月となります。検討段階ではざっくり「修繕積立金として毎月2,3万円かかる」と考えておきましょう。
出典:マンションの修繕積立金に関するガイドライン
戸数から考える修繕積立金
共用施設の差について考慮しなければ、ペンシル型の小規模マンションのような50戸以下の高層マンションがもっとも割高で、逆に広い敷地に何棟もの中低層マンションが連なる団地タイプで100戸以上のまとまりをもつ物件が割安と言えます。
エントランスや管理人室など、20戸でも1,000戸でも必要な共有施設があり、その維持にかかる経費の多寡は、割り戻す戸数次第だからです。
築年数から考える修繕積立金
新築のマンションで30年以上、既存のマンションでも25年以上の期間で計画立案が望まれる長期修繕計画。当初の計画通りに修繕費用が済むかどうかは誰にもわかりません。
定期的に長期修繕計画の見直しをしない古いマンションであっても、大規模な修繕工事を実施する前に計画や費用見積もりを見直すことは少なくありません。15年から20年に1度大掛かりな修繕工事が計画されるケースが多いため、築年数20年以上のマンションにおいて修繕積立金の相場は上がりやすいと考えるのが妥当です。
ライフプランと修繕積立金
結婚、子育て、マイホーム購入。人生100年時代のライフプランから住宅のイニシャルコストを考える視点も重要です。
仮に、30歳で35年支払いが続く住宅ローンを組んで新築マンションを買ったとしましょう。築20年で最初の大規模修繕工事が起きたとき、あなたは50歳です。働き盛りのこの時期であれば、長期修繕計画の変更により修繕費用の追加負担が発生したとしても対応がつくことでしょう。
しかし、さらに15年が経ち、2回目の大規模修繕が起きたときはもうあなたは65歳、年金世代です。修繕費用が想定外に高くつき、住民への追加徴収が決定されたら、果たして支払いきれるでしょうか。住み続ける限りかかる修繕積立金は定年後の家計にとって大きな負担になる可能性があります。
新築よりも中古の方が高くなることも
管理費や修繕積立金は固定費ではないため、管理会社が変わった、修理が利かず予期せぬ設備交換工事が発生した等で長期的には修繕コストが上がる傾向にあります。同規模マンションでも中古物件のほうが管理費・修繕積立金が高くなることは珍しくありません。住居費のランニングコストも考慮して購入を検討するようにしましょう。
修繕積立金が値上がりする理由とは?
続いて、修繕積立金の値上がりの主な理由を考えてみます。
修繕費自体の相場上昇
円安や社会情勢の変化などで、近年住宅建設コストは上昇基調です。海外から住宅設備を運ぶ物流コストも上がっています。建築現場の働き手が不足するようになれば、人件費も上がる可能性大です。同じ内容の修繕工事でも費用は上がりやすくなっていると考えましょう。
計画外の修繕が追加される
多くの物件において長期修繕計画は30年以上のスパンで作られています。そのため資材交換部品が手に入らなくなるなど修繕で計画していたものが交換工事になる、15年は維持できるはずの外壁が潮風などの影響で工事の時期が早まるなど、計画外の修繕が発生する可能性は十分あります。人件費がアップしていく可能性もあります。
計画外ですので積立金だけでは賄いきれなくなる場合もあるでしょう。そうなると修繕積立金が値上がりすることもあります。
最初の設定金額が低め
家を買いたい人が気にすることと言えば、「毎月いくらお金がかかるだろう?」というランニングコストでしょう。販売側のランニングコストを抑える一法として、当初の修繕積立費が低めに設定された物件もあります。
長く住み、複数回管理費、修繕積立金の値上がりを経験した方の相談事例もあります。一区分所有者であるあなたがいくら値上がりを拒否したとしても、マンションにお住まいの方の大勢が「値上がりもやむなし」と判断した場合、値上げを拒むことはできません。
値上げがなかった場合、将来、修繕積立金が枯渇して必要な修繕すらままならない可能性もあります。居住者にとって、どちらのケースも良い結果を生むことはないでしょう。
長期修繕計画の内容は妥当か、長期的にどのように積立金額が変わるのか、毎月の修繕積立金が低いと感じた物件ほど注意が必要です。
修繕積立金で注意したいこと
最後に、修繕積立金で抜け落ちがちな注意点についてもまとめておきます。
返金されないことを前提に考える
終の棲家と考えて購入したマンションであっても、将来どうなるか本当にわかりません。途中で持ち家を売却する事態も考えられます。
“積立”という言葉から、住まいを途中売却した場合、自分の支払った修繕積立金が返金されると思う方もいるようですが、管理規約の条項を確認するとわかる通り、一般的に修繕積立金は返金されないので注意しましょう。
専有部分の修繕費用の積立も考えておきたいもの
修繕積立金の計画および資金用途はあくまで「共有部分」に対するものです。専有区分内の保守・修繕、設備交換工事代はすべて持ち主負担となります。キッチンやトイレの配管など部屋内の配管などで不具合が出れば、居住者が対応せざるを得ません。
紛らわしいことに、共有部分でありながら、もっぱら部屋の居住者が使用する「専用使用部分」、具体的にはバルコニーやベランダ、1階居住者であれば専用庭などが相当します。トランクルームや玄関ドア、窓周りの建具などもそうなります。
専用使用部分の維持管理や修繕は、通常の管理規約であれば区分所有者が行います。
「修繕積立金をちゃんと納めているから大丈夫」と油断していると危ないのです。
住宅ローンの返済プランだけでなく、居室内の修繕費用も、まずは10年後をめざし、購入直後から修繕費用をコツコツ積み立てておくと安心です。
この記事のポイント
- 修繕積立金とはどんなもの?
修繕積立金とは、分譲マンションの住環境を維持するために建物や敷地内設備の修繕・部品交換費用を区分所有者皆で積み立てて備えるための資金です。
詳しくは「修繕積立金とは?」をご覧ください。
- 修繕積立金の注意点は?
マンションの購入後に持ち家を売却することもあるでしょう。購入後は積立し続けることになりますが、途中売却した場合でも一般的に修繕積立金は返金されないので注意しましょう。
また、修繕積立金の計画および資金用途はあくまでマンションの共有部分に対するもので、専有区分内の保守・修繕、設備交換工事代は修繕積立金とは別途、すべて持ち主負担となります。詳しくは「修繕積立金で注意したいこと」をご覧ください。
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