「フードロス」という言葉を聞いたことがありませんか?ニュースや報道番組などでフードロスが取り上げられるようになっています。飲食店の休業や、営業時間の短縮要請などに伴って、大きく取り沙汰されるようになりました。
今回は、フードロスという言葉の意味や、その改善に向けての対策について解説します。
記事サマリー
フードロスとは本来まだ食べられる食品を捨ててしまうこと
まずは、「フードロス」とはどういう意味なのかについて、見ていきましょう。
フードロスとは、「食べられたはずの食品」を捨ててしまうことを呼びます。「フードロス」のほかに、「食品ロス」と呼ばれることもあります。骨付き肉を食べたあとの骨や、果物の皮など、食べることができない部分を捨ててしまうことは、フードロスとは呼びません。
日本では年間、食品廃棄物が2,531万t出ていて、そのうち1/4ほどの600万tがフードロスによる廃棄物だと言われています(平成30年度推計値)。
家庭で出るフードロス
食品廃棄物、というと食品を扱う企業や飲食店のイメージがありますが、家庭からもフードロスは出ています。
例えば、たくさん作りすぎて食べきれず捨ててしまう料理や、賞味期限が切れて捨ててしまう食材もフードロスのうちのひとつです。調理するとき、野菜の皮を厚く剥きすぎて可食部まで取り除いてしまったり、茎など食べられる部分を捨ててしまったりすることも、フードロスにあたります。
600万t出ているフードロスのうち、半分近い276万tが一般家庭から出るフードロスと言われています。数字が大きすぎてわかりにくいという方は、毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているイメージをしてください。日本人一人あたりに換算すると、それだけの食品を廃棄してしまっていることになります。
企業や店舗で出るフードロス
一方で、フードロスとして出ている食品廃棄物の半分以上は、企業や店舗から出ています。
販売業では、賞味期限が近くなった食品や、傷がついてしまったものや形や見た目がよくない野菜などの規格外品、新商品の販売に合わせて撤去された古い商品を販売せず、廃棄してしまうことでフードロスとなります。
飲食業では、客に提供したものの食べ残された料理や、仕込みをしたものの提供できなかった食材などが廃棄されてしまいます。衛生面から見ると仕方がないとはいえ、これらもフードロスになってしまいます。
フードロスが増えることで発生する問題点
フードロスが増えると、一体どんな問題が発生するのでしょうか?フードロスによって引き起こされうる問題点について、詳しく見ていきましょう。
家計の負担になる
まず、家計の負担になってしまうことが挙げられます。購入した食品を食べずにそのまま廃棄するのは、フードロスになるだけでなくお金も無駄にしていることになります。
また、人によっては、「もったいない」という心理的な圧迫を感じてストレスになってしまうこともあります。個人の観点からしても、よいことは何もないと言えるでしょう。
環境汚染の原因につながる
フードロスは、個人の問題だけではありません。焼却や埋め立てなど、食品廃棄物を処分する過程で発生するガスには、温室効果があると言われています。
2014年にFAO(国際連合食糧農業機関)が行った調査によれば、フードロスによって廃棄・処理されて発生するガスは、全体の約8%を占めています。
このように、フードロスは環境汚染の原因にもつながってしまいます。
食料不足問題の深刻化につながる
さらに、食料不足問題の深刻化につながる恐れもあります。
世界で生産されている食料は、全人口を十分に賄うことができると言われています。しかし、実際には、食料が満足に行き渡っているとは言い難い状況です。
これは、フードロスが一因とも言われています。先進国に有り余るほどの食材があり、捨ててばかりいると、途上国で食料が足りなくなるということが起こります。このままフードロスを放置すると、世界規模で食料不足問題が深刻化してしまう可能性があるでしょう。
個人でできるフードロス対策
フードロスを放置しないためには、何をすればよいのでしょうか?まずは、個人でできる対策について見ていきましょう。
買い物に行く前に冷蔵庫をチェックしよう
毎日の食事のために買い物に行く前、冷蔵庫の中身を確認して必要なものをピックアップし、買いすぎないようにしましょう。
これは、食べきれずに捨ててしまう食品が出にくくなるだけではありません。冷蔵庫に食品を必要以上に詰め込みすぎないようにすると、中身の見通しがよくなり、食べ忘れを防ぐことにもつながります。
手前から商品を取るように推奨されていますが、場合によってはフードロスにつながる可能性もあります。買った当日に食べるのであれば、賞味期限が近いものでも大丈夫でしょう。しかし、使うまでに日があるなら、賞味期限が長いものを選ばないと結局捨てることになってしまうかもしれません。冷凍庫で保存する際にも、消費期限が近いものから手前に置いておくなど、ちょっとした工夫で期限切れを防ぐことができます。
食べ切れる量だけ調理するようにしよう
食べ切れない料理を捨ててしまうことがないようにするのも、個人でできる対策です。食べ残しが出ないように調理できるのがベストですが、なかなか難しいでしょう。
きっちり食べ切るように作ることができなければ、あらかじめ「おかわり用」にすることにし、別の容器に取り分けておくようにしましょう。
箸を付けなければ料理も傷みにくく、冷蔵庫に入れておいて次の日に食べたり、お弁当にしたり、冷凍して後日食べたりということがしやすくなります。
また、毎日調理していると、たまには失敗してしまうこともあるでしょう。焦げてしまって食べられなくなったものを廃棄してしまうのは、仕方がない部分もあります。その時はレシピや手順をしっかり確認して、次は失敗しないようにしよう、と意識することも大切です。
外食はフードロス削減に取り組んでいる店を選ぼう
外食をするときには、フードロス削減に取り組んでいる店を選ぶことも大切です。「食べきれなかった分はテイクアウトできる」や、「小盛りや小分けのメニューがあり、食べ残す可能性が低い」という店を選ぶだけでも、フードロス削減に貢献できるでしょう。
もちろん、食べ切れるだけの量を注文することも大切です。
安く食品が購入できるフードロス削減の通販サイトの利用を検討する
フードロス削減に取り組んでいる通販サイトを利用することも、フードロス対策のひとつです。
賞味期限が近いものや、傷がついたり破損してしまったりなどで規格外となってしまったものを、割引して販売している通販サイトもあります。このような商品を買うだけでもフードロスを減らすことができるうえ、安く購入することもできます。
お得に商品を手に入れることができるうえ、フードロス対策に貢献できるのは、一石二鳥と言えるでしょう。
国が行っているフードロス対策
それでは、政府や機関では、どんなフードロス対策が行われているのでしょうか見ていきましょう。
食品ロス削減推進法
「食品ロス削減推進法」は、2019年10月に施行されました。都道府県や市町村などの地方自治体、企業、消費者に至るまで、すべての人がフードロス削減に協力することに関する法律です。
フードロスの削減の基本的事項や方針、施策を盛り込み、総合的なフードロス削減の推進を目的としています。
食品リサイクル法
2001年5月に施行され、2007年6月に改正された「食品リサイクル法」という法律もあります。
こちらはフードロスを抑えるだけでなく、発生してしまった食品廃棄物を、飼料や肥料などの原材料として再生利用するための法律です。主に製造や流通、外食などの食品関連事業者を対象としています。
フードロス削減に個人でできることから取り組んでみよう
フードロスは、「まだ食べられるのにもったいない」という感情の部分だけでなく、環境汚染や食料不足問題の深刻化など、世界規模のさまざまな問題につながってしまう可能性があります。
フードロスを削減するには、国や政府、機関の対策だけでなく、企業や個人の対策や協力も必要です。
必要以上に食品を買いすぎない、消費期限を意識して食品を使う、作ったものを食べ切るようにするなど、家庭でできることもフードロス対策になります。まずは、個人できることから始めてみましょう。
この記事のポイント
- 日本ではどのくらいのフードロスが発生している?
日本では年間、食品廃棄物が2,531万t出ていて、そのうち1/4ほどの600万tがフードロスによる廃棄物だと言われています。その半分近い276万tが一般家庭から出るフードロスと言われていますが、フードロスとして出ている食品廃棄物の半分以上は、企業や店舗から出ています。
詳しくは「家庭で出るフードロス」「企業や店舗で出るフードロス」をご確認ください。
- フードロス問題、個人でできることはありますか?
個人でできることとしては、買い物に行く前に冷蔵庫をチェックしたり、食べ切れる量だけを調理したりすることで食材の無駄を省くことです。また、安く食品が購入できるフードロス削減の通販サイトの利用を検討したり、外食時はフードロス削減に取り組んでいる店を選んだりすることもフードロス問題の貢献につながります。
詳しくは「個人でできるフードロス対策」をご確認ください。
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