更新日:  

介護保険制度の仕組みや対象者となる条件、受けられるサービス内容を紹介

介護保険という言葉は聞いたことがあるものの、具体的にどのような制度なのか理解していないという方もいるでしょう。

介護保険は、介護が必要になった方を支える保険制度です。日本は高齢化が進み、介護を必要とする人口が増加傾向にあることから、介護保険制度を利用する方が増えています。

今回の記事では、介護保険制度の基本的な仕組みや対象となる条件、受けられるサービス内容について解説します。介護保険制度の利用を検討している方はぜひご覧ください。

介護保険は高齢者を社会全体で支える制度

介護保険制度は、社会全体で高齢者を支え合う仕組みとして、2000年に施行されました。

介護を必要とする方が介護サービスを受けることができ、サービスを受けるための費用の一部を給付する制度です。

介護保険制度が導入された背景には、日本社会の高齢化が関わっています。高齢化が進み、要介護高齢者の増加や介護期間の長期化など、介護ニーズが増えています。

さらに、核家族化の進行にともなって、かつてのような子や孫と同居する家庭が減少し、家庭内で要介護高齢者を支えることが難しくなっている状況もあります。

このような背景から、社会全体で支え合って介護の負担を軽減することを目的に、介護保険制度は導入されました。

介護保険制度の仕組み

介護保険制度は、以下のような考え方のもとに創設されました。

自立支援介護が必要な高齢者の身の回りの世話をするだけでなく、高齢者の自立を支援する
利用者本位利用者の選択で、保険医療サービス、福祉サービスを受けられる
社会保険方式給付と負担の関係を明確にするために社会保険方式を採用している

また、3つの役割によって成り立っています。

  • 保険者:全国の市町村。被保険者の管理を行う
  • 被保険者:介護保険料を支払う、40歳以上の人。年齢で第1号被保険者と第2号被保険者に分けられる
  • サービス事業者:介護保険制度において、介護保険サービスを提供する人

被保険者は、第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳以上64歳までの方)の2つに分類されます。

介護保険の費用は税金と保険料で、それぞれ50%ずつ負担しています。

税金の内訳は以下のとおりです。

  • 国:25%
  • 都道府県:12.5%
  • 市町村:12.5%

被保険者は介護保険サービスを利用する際、費用の一部を負担します。

自己負担分は1~3割となっており、残りの7~9割は上記の財源によってまかなわれています。

介護保険の対象者の条件

介護保険サービスは、40歳以上になれば誰でも利用できるという制度ではありません。

第1号被保険者と第2号被保険者のいずれかに該当し、それぞれ異なる受給要件を満たす必要があります。それぞれの受給要件について、詳しく見ていきましょう。

第1号被保険者

65歳以上の方が該当する第1号被保険者の受給要件は、原因を問わず、要介護認定において要介護または要支援状態であることです。

第2号被保険者

40歳以上64歳までの方が該当する第2号被保険者の受給条件は、第1号被保険者の条件と異なります。

まず、全国健康保険協会や市町村国保などの医療保険加入者であることが条件です。

そのうえで、以下の老化に起因する特定疾病によって、要介護または要支援状態でなければ受給資格を得られません。

  1. がん(末期)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

要介護認定によって受けられるサービスが決まる

介護保険サービスを利用するためには、認定調査を実施して、要介護認定を受けなければなりません。これは、要介護度によって使用できるサービスや利用できる上限金額が異なるからです。

要介護度には、「日常生活に支援が必要な要支援状態」と「寝たきりや認知症などで介護が必要な要介護状態」があります。

それぞれの状態について確認していきましょう。

要支援

要支援状態は、身体または精神上の障害によって、日常生活で支援が必要な状態です。

厚生労働省が定める期間(6ヵ月)に、継続して支援が必要だと見込まれる状態にある人が該当します。要支援の区分は、介護の必要度に応じて要支援1と要支援2の2段階に分かれます。

要介護

要介護状態は、身体または精神上の障害により、食事や入浴、排泄などの日常生活に欠かせない基本的な動作で、介護が必要な状態です。

要支援状態の判定と同様に、厚生労働省が定める期間(6ヵ月)に、継続して介護が必要だと見込まれる状態にある人が該当します。要介護の区分は、介護の必要度に応じて要介護1~要介護5の5段階に分かれます。

なお、要支援・要介護はともに数字が大きくなるほど、より介護度が高い状態であることを示しています。

介護保険で受けられるサービス

介護保険で受けられるのは、福祉施設利用や訪問介護などの多様なサービスです。要介護認定で要支援と判定された方は予防給付、要介護と判定された方は介護給付が受けられます。

要支援と要介護、それぞれの判定を受けた場合に利用できるサービスについて、詳しく見ていきましょう。

要支援者が受けられる介護予防サービス

要支援者が予防給付を利用して受けられるサービスは、大きく2つに分かれます。

  • 介護予防サービス
  • 地域密着型介護予防サービス

具体的なサービス内容は、以下のとおりです。

介護予防サービス

  • 介護予防訪問入浴介護
  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防通所リハビリテーション
  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 介護予防短期入所生活介護
  • 介護予防短期入所療養介護
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 介護予防特定施設入居者生活介護

地域密着型介護予防サービス

  • 介護予防小規模多機能型居宅介護
  • 介護予防認知症対応型通所介護
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護

要介護者が受けられる介護サービス

要介護者が介護給付を利用して受けられるサービスは、大きく3つに分類されます。

  • 施設サービス
  • 居宅サービス
  • 地域密着型サービス

具体的なサービス内容は、以下のとおりです。

施設サービス

  • 介護福祉施設サービス
  • 介護保険施設サービス
  • 介護療養施設サービス
  • 介護医療院サービス

居宅サービス

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 通所介護
  • 訪問リハビリテーション
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 居宅療養管理指導
  • 特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売

地域密着型サービス

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 地域密着型通所介護
  • 夜間対応型訪問看護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

介護保険サービスを利用したときの費用

介護保険サービスを利用した際は、かかった費用のうち、1~3割を利用者が負担します。

ただし、給付額減額措置を受けている場合は、そちらが優先されます。負担割合は利用者の所得に応じて異なり、所得が多くなるほど割合が大きくなります。

なお、介護保険サービスはいくらでも自由に使えるわけではありません。

居宅サービスを利用する場合は要介護度別に定められた支給上限があり、支給上限を超えて介護サービスを利用する場合には、費用の全額が自己負担となることを把握しておきましょう。

ただし、所得の低い方や、利用料が高額になった場合は、別に負担の軽減措置が設けられています。

支給上限内で介護保険サービスを利用したいときには、ケアマネジャーに相談して利用するサービスを決めるのがおすすめです。

介護保険の申請の流れ

介護保険サービスを利用するには、介護保険の被保険者証がなければなりません。利用する本人が住んでいる市区町村の窓口で、要介護認定の申請を行いましょう。

介護保険を申請する流れは、以下のとおりです。

認定調査・主治医に意見書の作成を依頼する

お住まいの市区町村の窓口で要介護認定を申請すると、後日、市区町村などの調査員が訪れ、認定調査が実施されます。認定調査は、利用者本人や家族などに心身の状態を確認する調査です。

そして、市区町村の担当者が利用者本人の主治医に依頼し、心身の状態に関する意見書が作成されます。

認定調査と主治医の意見書の結果をもとに、専門家(保健・医療・福祉の学識経験者)で構成された介護認定審査会による、介護度の判定が行われます。

判定結果を確認する

要介護度の判定結果は、申請から原則30日以内に本人に通知されます。

ただし、地域の窓口や認定調査が立て込んでいるときには、これよりも長い期間がかかることもあります。

ケアプランを作成してもらう

要介護度が通知されたら、サービスを利用するためにケアプランを作成しましょう。ケアプランは「介護サービス計画書」といわれ、どのような介護保険サービスを利用するのかを決める計画書です。

介護保険サービスを利用するためには、ケアプランを市区町村に必ず提出しなければなりません。ケアプランは自己作成も可能ですが、 ケアマネジャーに依頼して最適なプランを作成してもらうのが一般的です。

ケアプランが受理されれば、サービスの利用開始となります。

介護保険を上手に活用しよう

介護保険は、社会全体で高齢者を支え、介護保険サービスを受ける際にかかる金銭的負担を少なくする制度です。サービスの種類は多数あり、利用者本人の要介護度によって受けられるサービスが異なります。

そのため、心身の状態に合わせた最適なサービスを利用することが重要です。介護保険を利用する際には、必要書類や認定されるまでの期間もあります。予定を立てて計画的に申請を行いましょう。

この記事のポイント

介護保険制度の仕組みとは?

介護保険制度は、以下のような考え方のもとに創設されました。

  • 自立支援
  • 利用者本位
  • 社会保険方式

詳しくは「介護保険制度の仕組み」をご確認ください。

介護保険の対象者の条件とは?

介護保険サービスは第1号被保険者と第2号被保険者のいずれかに該当し、それぞれ異なる受給要件を満たす必要があります。

詳しくは「介護保険の対象者の条件」をご確認ください。

シニアの住まい選び 専用相談窓口

ご自宅の売却からお住み替え先のご紹介、介護・資金のことまでまるごとお答えいたします。

リバブル シニアの住みかえサロン