ざっくり要約!
- 一般的に、郊外とは都市近郊の「ベッドタウン」のことを指す
- 郊外への「移住」だけでなく「二拠点生活(デュアルライフ)」も注目されている
郊外とは「都市部に隣接した地域」を指します。都市部に近く、通勤や通学の利便性が高い一方で、家賃相場や住宅の相場が都市に比較して安く、自然が多いことが大きな魅力です。近年では、郊外への移住や郊外と都市部の二拠点で生活をする人も増えているといいます。
今回は、需要が高まっている郊外での暮らしのメリットデメリットを考察し、おすすめのエリアもお伝えします。
記事サマリー
郊外とは都市に隣接した地域のこと
郊外とは「都市部に隣接した地域」を指すのが一般的です。とはいえ、どこからが郊外で、どこまでが都市部といった明確な定義があるわけではありません。
郊外と都市部の違い
郊外と都市部の違いは、一般的に地理特性や環境によって区別されます。郊外は、都市中心部から離れた場所に位置し、豊かな自然環境に恵まれています。穏やかな生活はしやすいですが、都市部と比べると商業施設や娯楽施設の数は多くありません。
対照的に、都市部は大都市の中心に位置し、人口密度が高いエリアです。緑が多いエリアもありますが、その多くが人工的なもので、利便性が高い一方でどうしても喧騒から逃れることが難しい生活になります。
郊外と田舎の違い
郊外と田舎の区別も必ずしも明確ではなく、両者の境界や定義に厳密な基準は存在しません。一般的には、都市部や郊外に分類されない地域を田舎と呼びます。
一般的に郊外は都市中心部からやや離れたベッドタウンを指し、都市への通勤が可能な範囲内にあります。自然環境が豊かでありながら、エリアによってはスーパーマーケットや薬局といった日常生活に必要な商業施設も整っています。
一方、田舎は都市部への通勤が困難な地域を指すことが多く、より遠隔地に位置します。徒歩圏内で生活必需品を扱う商業施設がすべて揃うことは少なく、日常の買い物には車での移動が不可欠です。
郊外への移住が増えている背景
東京都3月・4月合算値の転出者数
総務省のデータによれば、コロナ禍の2020年から2022年にかけて、東京都から転出する人が増加しました。2023年はコロナ禍前に戻っていますが、昨今では国をあげて地方移住を推進していることもあり、郊外移住者は増えているといわれています。
郊外移住者が増えている理由としては、次の2つのことが考えられます。
テレワークの普及
コロナ禍では、テレワークという働き方が一般的になりました。「出社」は、これまでの私たちの暮らしと切っても切り離せないものでしたが、自宅にいながら、旅をしながら、どこでも仕事ができるようになった方も少なくありません。
都心のオフィスに出社する必要がなければ、住む場所も自由です。完全にテレワークに切り替わっていなかったとしても、職住近接の優先度が下がれば郊外移住の実現可能性は高まります。
暮らしの多様化
近年は暮らし方が多様化し、住環境やワークライフバランスへの関心が高まっています。
内閣官房の調査によると、地方移住者が最初に移住を意識したきっかけは「将来のライフプランを考えたこと」が首位で「現在の生活や仕事への違和感や限界」という回答が2位でした。(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査」)
また、移住・交流推進機構が東京圏の20〜30代若者を対象に行った調査では、移住に興味を持つ理由として「自然豊かな魅力的な環境」が最も多く、次いで「子育てに適した自然環境」という回答が見られています。(一般社団法人 移住・交流推進機構「『若者移住』調査【結果レポート】」
郊外に住むメリットは?
都市部に隣接している郊外エリアは、利便性の高い暮らしができる一方で、家賃や取得費用が抑えながら自然豊かな環境で暮らせることが大きな魅力です。
住宅にかける費用が抑えられる
郊外エリアは、都市部と比較すると家賃や住宅の相場が低いため、住みやすいことが特徴の一つです。都市部と同程度の家賃や取得費を支払った場合、都市部よりも好条件の部屋に住むことができるでしょう。
東日本不動産流通機構によれば、2024年1〜3月期の東京都区部の中古マンション価格の成約平米単価は111.33万円であるのに対し、東京都多摩は57.12万円と約半分でした。(引用:東日本不動産流通機構)一方、2024年3月の東京都区部のファミリー向け賃貸住宅の平均賃料は約21.2万円、東京都市部は約10.0万円と、こちらも2倍ほどの差があります。(引用:LIFULL HOME’S マーケットレポート(2024年3月掲載))
郊外は物価も都市部と比べて安価な傾向にあるため、生活の拠点として郊外を選択するのはメリットが大きいと考えられます。
自然豊かで広々とした環境で生活できる
郊外の魅力の一つは、豊かな自然環境です。都市部が大規模なオフィスビルや商業施設で占められる一方、郊外では森林や公園などの緑地が多く存在します。自然豊かな環境がリフレッシュ効果をもたらし、心身の健康維持にも寄与するはずです。
さらに、郊外の住宅は庭付きの物件が多いのも特徴です。これは、小さなお子さんがいる家庭やペットを飼育している世帯にとって、とくに魅力的な点といえるでしょう。庭があることで、子どもの遊び場やペットの運動スペースを確保でき、より快適な生活環境を創出できます。
住宅街がメインの郊外は治安も良く、閑静なエリアが多いため、どのような年代の方にとっても生活を送る場所として適しているものと考えられます。
郊外に住むデメリットは?
郊外に住むのは、メリットばかりではありません。次のようなデメリットも想定されるため、あらかじめ認識しておきましょう。
資産価値の下落が早い・大きい可能性がある
郊外は都市部と比べて安価に住宅を取得できますが、資産価値の下落が早く、大きい可能性があるため注意が必要です。不動産は、基本的に需要と供給のバランスで価格が決まります。人口が維持・増加するエリアは、不動産価格も維持もしくは高騰すると推測されますが、ほとんどの郊外エリアは長期的に人口が減っていくと予測されています。
都市部の不動産は郊外と比べると総じて高額ですが、資産価値の下落率が低ければ大きな損失にはなりません。たとえば、都市部で5,000万円の住宅を購入し、10年後に売却するときに4,000万円で売ることができれば1,000万円のマイナスです。
一方、郊外で3,000万円で住宅が取得できたとしても、10年後に売るときに1,500万円になってしまえば、マイナスは1,500万円となってしまいます。
通勤・通学に時間がかかる
郊外で、都市部ほどの交通利便性を得るのは難しいものです。エリアによっては、都市部と比較すると通勤や通学に時間がかかる可能性があります。テレワーク中心、あるいはリタイア後や職住近接の方は大きな問題ではありませんが、都市部にお勤めの方は職場とのアクセスの良さも考慮して物件を選ぶようにしましょう。
また郊外は、公立の学校の学区も都市部と比べて広い傾向にあるため、お子さんの通学時間が伸びてしまうこともあるでしょう。
商業施設や病院が少ない・遠いエリアも
交通利便性だけでなく、生活を送るうえでの利便性も都市部と比べて低い可能性があります。郊外では、特定のエリアにスーパーや飲食店、病院などが集中している傾向にあるため、立地によっては買い物や通院に不便を感じてしまうでしょう。エリアによっては、車を所有しなければならないケースもあります。
コミュニティ形成・ご近所付き合いに苦労することも
都市部では、良くも悪くも近年ではご近所付き合いが希薄になっている傾向にあります。「隣にどんな人が住んでいるかわからない」といったことも少なくありません。一方、郊外エリアでは、都市部と比べて近隣住人のコミュニティが形成されやすく、活発に活動する自治会や町内会も見られます。
深い人間関係が構築できることが良いと思う方もいれば、ストレスを感じてしまう方もいるはずです。コミュニティとの関わりや人間関係にストレスを感じてしまう方は、自治会や町内会、マンションの管理組合などの様子も把握したうえで転居を検討するようにしましょう。
都市部と郊外の二拠点生活(デュアルライフ)という選択肢を選ぶ人も
コロナ禍を経て、私たちの暮らし方・働き方は大きく変わりました。テレワークの普及もあり、近年では都市部と郊外の二地域で居住する「デュアルライフ」という選択をする方も増えつつあります。
二地域居住とは、主な生活拠点とは別に特定の地域に生活拠点を持つ住まい方を指します。都市部と郊外の二つの拠点を持つことで、両者の長所も堪能でき、暮らしの幅が広がります。
二地域居住をしている人は「デュアルライフ」をしているということで「デュアラー」と呼ばれています。現在は、国をあげて二地域居住を推進する動きも見られており、補助金制度も充実しています。
・「二地域居住」に関する記事はこちら
「二地域居住」促進へ!関連法改正で住まい・仕事・コミュニティの整備推進
二拠点生活とは? メリットや注意点、始める手順をわかりやすく紹介
住みやすい郊外の特徴
ここまで郊外に住むメリット、デメリットを挙げてきましたが、都心にしか住んだことのない方にとっては、移住先にどのような場所を選べばいいのか不安も多いのではないでしょうか。
ここからは、住みやすい郊外の特徴を解説します。安心して居住できる住みやすい郊外の特徴は、次の3つです。
都市部までの移動がスムーズ
仕事などで月に数回、都市部に行く必要がある場合は、都市部までスムーズにアクセスできる移住先を検討するといいでしょう。所要時間が長くても、乗り換えが少なければ移動の負担は軽減されます。
ただし、新幹線や特急列車が停車する駅周辺は、家賃や住宅相場が高くなる傾向があります。費用対効果を考慮して住む場所を検討しましょう。
商業施設が近い
郊外では、商業施設が幹線道路沿いや駅前などにまとまって建てられていることも少なくありません。こうしたエリアの近くに住めば、都市部と変わらず便利な生活ができるでしょう。
とはいえ、近年はあらゆるものがネットショッピングで購入できる時代です。毎日の暮らしに欠かせないスーパーやドラッグストアなどが生活圏内にあれば十分という見方もできます。
生活圏内に医療機関がある
近年はWeb診断などのサービスを提供する病院もありますが、やはり近くに病院やクリニックがあると安心です。お子さんがいる家庭は小児科、持病がある方はその治療ができる医療機関が近隣にあるかも確認しましょう。
商業施設にも言えることですが、医療機関は利用する人および働く人がいてこそ経営できます。人口が減っていくエリアでは、患者数とともに医師や看護師、薬剤師などの人材の確保も難しくなることから、医療機関が減っていく可能性もあります。
首都圏の住みやすい郊外エリア
首都圏近郊は、人も多く、商業施設や医療機関も充実していることから住みやすいエリアだといえるでしょう。ここでは、人気の高い4つの首都圏近郊エリアを紹介します。
東京都立川市
東京都立川市は東京のほぼ中心に位置し、多摩地区の中でも利便性が良く、商業施設も充実しているエリアです。その一方、国営昭和記念公園や玉川上水など緑豊かなスポットも点在しています。
人口は、2023年1月1日時点で約18.5万人。近年、増加傾向にあります。立川駅は、新宿駅から30分程度、東京駅から40程度とアクセスもよく、JR中央線、青梅線、南武線、西武拝島線、多摩都市モノレール線が乗り入れるターミナル駅です。
立川駅北口は再開発を促進する地区として位置付けられており、2016年には新タウン「立川タクロス」が誕生。商業・業務・住宅の大規模複合施設は、立川の新たなシンボルとなっています。
・「立川」に関する記事はこちら
【立川】にぎやかさとあたたかさが織り成す街、立川駅周辺のおすすめエリアをゆったりと歩く
・東急リバブル「立川市の不動産情報」
東京都町田市
東京都町田市は、東京都の最南端に位置します。人口は、約43万人(2024年1月1日時点)。東京都では、23区、八王子に次いで3番目に人口が多い市です。
町田駅は、JR横浜線、小田急小田原線が乗り入れており、東京だけでなく、横浜方面へもアクセスしやすいエリアです。また、江ノ島や鎌倉、箱根も1時間圏内。山や海、温泉地などへも気軽にいけることから、豊かな郊外暮らしが叶います。
町田駅周辺では、2024年6月から大規模な再開発も予定されています。開発コンセプトは「いつだってまちだ」。視認性の高い駅前空間や多くの人が憩える滞留空間の創出、IT・デジタルの導入などにより、町田の新たな魅力を向上させていくとしています。
・東急リバブル「町田市の不動産情報」
埼玉県さいたま市
東京都に隣接する埼玉県さいたま市は、人口約135万人(2024年6月1日時点)、郊外エリアのなかでも非常に人気があります。さいたま市が2023年に行った市民調査によれば「さいたま市は住みやすい」「さいたま市に住み続けたい」と答えた市民はいずれも8割を超えており、住まう人の満足度が高いエリアです。
市内には、未来遺産に指定されている「見沼たんぼ」や2000年以上の歴史がある「氷川神社」「氷川参道」など、緑豊かなスポットが多くあり、農業もさかんです。Jリーグの浦和レッズや大宮アルディージャの本拠地としても知られており、埼玉スタジアムやさいたまスーパーアリーナなどスポーツイベントが開催される大型施設も点在していることから、スポーツ都市でもあります。大宮駅周辺では、大規模な再開発も進んでいます。
・「大宮」に関する記事はこちら
【大宮】再開発が進む埼玉県トップクラスの繁華街・大宮駅周辺で暮らすなら?おすすめの街を歩きながらご紹介
・東急リバブル「さいたま市大宮区の不動産情報」
神奈川県鎌倉市
神奈川県鎌倉市は、人口約17万人(2024年6月1日時点)、三浦半島の西側に位置する街です。言わずもがな、山と海に囲まれ、歴史や情緒を感じさせてくれるエリアとして非常に人気があります。
観光地としても人気な鎌倉市ですが、鎌倉駅はJR横須賀線、湘南新宿ライン、江ノ島電鉄が乗り入れており、新宿駅までは約1時間、横浜駅までは約30分と、都市部へのアクセスも良好です。
コロナ禍を経て、湘南エリアなどへの移住者も増えているといいます。鎌倉駅周辺は景観地区に指定されており、建築物の高さや屋根・外壁の色彩などが制限されています。閑静な住宅街も見られることから、美しく、自然や歴史を感じられる街並みのなかで穏やかな暮らしが叶います。
・「鎌倉」に関する記事はこちら
【鎌倉】日常の中に非日常が溢れる、海と山に囲まれた「鎌倉」の魅力とおすすめの地域を紹介
・東急リバブル「鎌倉市の不動産情報 」
まとめ
都市部に近く、豊かな自然も身近になる郊外での暮らしは、コロナ禍を経てあらためて注目が集まっています。近年では、郊外に移住する方や二拠点居住をする方も増えつつあるようです。
暮らし方や働き方が多様化する中で、これまで主流だった「職住近接」という住まい方にも変化が見られ始めています。また、一昔前までは「永住」を意識して住まいを選ぶ人が多かったものですが、これからはライフステージに応じて住む場所を変えるという暮らし方も一般的になっていくかもしれません。
この記事のポイント
- 「郊外」とはどのようなエリアを指しますか?
明確な定義があるわけではありませんが「都市部に隣接した地域」を指すのが一般的です。「田舎」より人口が多く、商業施設も充実しているエリアもあります。
詳しくは「郊外とは都市に隣接した地域のこと」をご確認ください。- なぜ郊外へ移住する人が増えているの?
コロナ禍を経て、暮らし方・働き方が変わったことが大きいでしょう。移住だけでなく、二拠点居住する方も増えつつあるようです。
詳しくは「郊外への移住が増えている背景」をご確認ください。- 郊外に住むメリットは?
都市部へのアクセスも良く、住宅にかける費用を抑えながら、緑豊かな環境で暮らせることがメリットといえるでしょう。
詳しくは「郊外に住むメリットは?」をご確認ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
郊外は、都市部と比べて住宅の賃料・価格が安く、緑が多く住みやすいというメリットがありますが、やはり暮らしに不便を感じることは多いものと考えられます。とはいえ、快適な暮らし、豊かな暮らし、幸せな暮らしの価値観は、人それぞれです。暮らし方も働き方も多様化している時代です。「都市部が便利」「郊外は不便」という先入観や常識にとらわれず、自分たちのライフスタイルにあった住まいを選びましょう。
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