日本では65歳以上の人口が3,500万人を超え、高齢者の医療や介護の需要が伸び続けており、高齢者の支援が課題です。
高齢者が自分らしい暮らしをできる限り長く続けられるように構築されているのが「地域包括ケアシステム」です。システムのひとつとして、高齢者や当該家族を支える地域の窓口である「地域包括支援センター」が全国各地に設置されています。
しかし、地域包括支援センターがどういった役割を果たしているか、ご存じない方もまだ多いのではないでしょうか。
本記事では、地域包括支援センターを基礎からわかりやすく解説します。支援が必要な高齢者の方や、高齢者に関わる家族、地域の住民の方はぜひご覧ください。
記事サマリー
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、保健師、社会福祉士、ケアマネージャーといった専門職が連携を取り、高齢者や家族の生活をサポートするために設置された地域の窓口です。
複数の専門家が連携して、高齢者が長く住み慣れた地域で暮らしていくための支援を行っています。
対応している分野は幅広く、福祉、健康、医療といった各方面の相談を受け付けています。住まいや疾病の予防、生活支援を一体となって提供し、地域全体での総合窓口として機能している点が特長です。
現在、高齢者の数や地域の高齢化の進行状況には地域差があります。各地域が抱える課題を認識しつつ、市区町村や都道府県が特性に応じたサポート体制を整えているなかで、地域包括支援センターの活躍の場も広がってきました。
令和4年4月末現在、全国で5,404の地域包括支援センターが設置され、地域に密着したサービスを提供しています。
地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターは、多方面から支援を展開しており、主な役割は4つあります。
- 総合相談支援業務
- 権利擁護業務
- 包括的、継続的ケアマネジメント支援業務
- 介護予防ケアマネジメント
どういった業務を行っているか、1つずつ解説します。
総合相談支援業務
高齢者本人や当該家族、地域で見守る方たちの総合相談窓口として機能しています。
はじめて介護が必要になった家族や介護に関する悩みを抱える方へ、サービスの案内や、高齢者の不安・悩みを聞き、適切なサービスを案内するのが地域包括支援センターの役割です。
ほかにも、近隣の高齢者の様子に不安があり相談先がわからないといった悩みにも幅広く対応しています。福祉サービスの制度がわからない方や、どういったサービスを使うか悩む方に向け、地域のネットワークを駆使して解決に導きます。
権利擁護業務
高齢者の財産を守り、虐待の不安に対処し、権利を守るための支援も実施しています。
物忘れが増えてきてお金の管理に不安が出てきた方や、詐欺に騙されてしまった方へのフォローも支援の範囲内です。事件への対処に加え、被害が未然に防げるようにフォローしてもらえるため、金銭関係のトラブルに悩む方は相談してください。
また、頻繁に怒鳴り声が聞こえてくる、激しい物音がするといったように高齢者虐待の可能性がある場合は、地域の方々も相談できます。高齢者が追い詰められて深刻化する前に火種を潰し、サポートしてくれる施設です。
長い介護に疲れてしまっているご家族の方には、負担を減らすためのサービスや支援の案内もしています。介護による負担を一人で抱え込まず、ぜひ地域包括支援センターを頼ってみてください。
包括的、継続的ケアマネジメント支援業務
高齢者が暮らしやすい環境を作るために地域全体でネットワークを構築し、医療機関や関連する機関への連携を主導するのも地域包括支援センターの役目です。
地域に在籍するケアマネージャーへの指導や多職種が協働しやすい状態を作り上げ、高齢者に関わる方達が円滑に仕事をできるように、主に次のような支援を行っています。
- 勉強会や連絡会を通じて介護支援専門員間のつながりを作る
- 関係機関の連携体制を構築する支援を行う
- 介護支援専門員の実践力を向上する
上記の役割を担い、専門員のニーズ把握や情報提供、ルールの整備などを進めます。
介護予防ケアマネジメント
地域包括支援センターを利用できるのは、すでに介護が必要になった方だけではありません。将来的に介護が必要な状態にならないための予防や、健康づくりのためのアドバイスも行っています。
高齢者が長く住み慣れた地域で生活できるように、サービスの案内や生活の仕方への助言も受けられるので、将来に不安があり対処したい方も相談可能です。
地域包括支援センターでは、要支援1、2に認定された方の予防サービスも紹介しています。予防に向けたプランの作成や適切なサービス利用に向けたサポートが受けられるでしょう。
なお、介護サービスや介護予防サービスを利用するには、お住まいの市区町村に事前の申請をして認定を受けたあと、介護予防ケアプランの作成が必要です。
要支援者の場合のプラン作成は地域包括支援センターが対応しているため、認定を受けた方は足を運んでみてください。
地域包括支援センターに在籍する専門家
地域包括支援センターには、主に3つの職種の方が在籍しています。
- 保健師
- 社会福祉士
- 主任介護支援専門員
保健師
保健師が主に担当するのは医療的なサポートです。担当介護サービスの相談に応じ、医療機関を始めとする関係機関の紹介や調整を行なっています。
ほかにも高齢者の家庭訪問や健康づくり教室を主催し、高齢者と直接関わりながら地域のサポートとつなぐ役割を担っています。
社会福祉士
社会福祉士は、地域包括支援センターの相談窓口であり、福祉サービスの相談を受け、調整やアドバイスを行うことが主な役割です。
また、介護予防プランを立てる、権利を守るための相談を受ける業務も中心となって対応します。
主任介護支援専門員
主任介護支援専門員は、実際に個別の介護をする介護支援専門員からの相談を受け、サポートするのが主な業務です。介護支援専門員の研修や個別の指導を通じて地域の介護支援専門員のスキルアップに努めています。
また、実際に高齢者の自宅に訪問し、適切な支援を提供するように働きかけも行います。
地域包括支援センターの活用方法
地域包括支援センターの活用方法として、実際の相談事例を紹介します。
以下はすべて実例ではありますが、地域によって活用方法は異なるため、居住区域ごとに確認してください。
福祉制度やサービスの申請
地域包括支援センターでは、適切な制度の案内を受けたり、サービスの申請を行ったりできます。
利用できる制度を教えてほしい、身寄りがなく地域との関わりがないため孤独感があるなどの悩みを持つ高齢者や当該家族の方は、ぜひ利用してください。
独身高齢者への見守り支援
地域の方からの相談を受け、独身高齢者への見守り支援も行なっています。
近隣に住む高齢者の様子が気になる地域の方や、高齢の居住者が家賃を支払えていない大家の方も地域包括支援センターで対応可能です。
身近に生活に困っていそうな高齢者がいる方はご自身で解決しようとせず、一度相談してください。
くらしの助け合い
庭の草取りから、スーパーでの買い物、話し相手、掃除洗濯、移送、散歩まで、介護保険でできないことを、協力会員(ヘルパー)による支援を得ながら提供できるサービスもあります。
地域包括支援センターは高齢者を守る総合窓口
地域包括支援センターは、高齢者や当該家族を守る地域の総合窓口です。介護に関する悩みに限らず、高齢者の権利やトラブルに関する内容も支援しています。
より暮らしやすい地域を構築するための幅広い活動を行なっているので、高齢者の方はもちろん、近隣の高齢者の様子が気になる方も相談可能です。在籍する専門家が連携し、解決に導いてくれるでしょう。
この記事のポイント
- 地域包括支援センターの役割とは?
地域包括支援センターでは、高齢者や当該家族の支援相談を請け負います。ケアマネジメントや介護サービスの紹介など幅広く相談可能です。
詳しくは「地域包括支援センターの役割」をご確認ください。
- 地域包括支援センターの活用方法は?
福祉制度やサービスの申請、独身高齢者への見守り支援、くらしの助け合いなどさまざまな活用方法がありますが、地域によって異なるため、事前に確認が必要です。
詳しくは「地域包括支援センターの活用方法」をご確認ください。
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