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熟年離婚を考えたときに知っておきたいこととは?メリットや準備について解説

熟年離婚は増加傾向にあります。実際に昭和60年と令和3年のデータを比べてみると、20年以上の結婚生活の後に離婚した夫婦は約2倍、35年以上の後に離婚した夫婦は約6倍に増えています。

今回の記事では、どのような理由で熟年離婚する夫婦が多いのか、また、熟年離婚にはどのようなメリットやデメリットがあるのか解説します。熟年離婚を考えたときに準備すべきことも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

熟年離婚とは

熟年離婚とは、一般的におよそ20年以上の結婚生活の後に離婚することを指す言葉です。

昭和60年と令和3年の婚姻・離婚状況を比較すると、20年以上の結婚生活後に離婚した夫婦は約2倍に、35年以上の結婚生活の後に離婚した夫婦は約6倍に増えています(※)。

また、昭和60年では離婚する夫婦のうち、熟年離婚と呼べるのは約12%でした。

しかし、令和3年では約21%に増加しています。このことからも、かつてと比べると熟年離婚する夫婦は珍しくないようです。

(※)出典:厚生労働省|令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況

熟年離婚の主な原因

法務省の「協議離婚に関する実態調査結果の概要(※)」によると、離婚の主な原因は、性格の不一致や精神的な暴力、不貞行為、暴言暴力などです。特に性格の不一致を原因として挙げる方は多くいます。

また、別居した後ではなく、いきなり離婚する方が多いというデータもあります。そのため、配偶者の気持ちに気付けていない場合は、いきなり離婚を言い渡されたように感じるようです。

(※)出典:法務省|協議離婚に関する実態調査結果の概要

熟年離婚を選択することで得られるメリット

熟年離婚はつらい選択と思われがちですが、場合によってはそうとはいえません。実際のところ、熟年離婚を選択することで良いことも多数あります。
よくあるメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 結婚生活による悩み・ストレスから解放される
  • 配偶者の親の介護が不要になる
  • 別の相手と結婚できる

それぞれのメリットについて解説します。

結婚生活による悩み・ストレスから解放される

配偶者から言葉や身体的な暴力を受けていた場合は、解放されて、生活を楽しめるようになります。また、浪費や浮気などに悩まされていた場合も、ストレスが軽減するでしょう。

もともと共同生活よりも一人暮らしのほうが向いているという自覚がある方の場合、離婚して住まいを別にすることで、快適度が大きく向上することもあるでしょう。

配偶者の親の介護が不要になる

配偶者との関係を絶つことで、義理の親との関係も絶つことができます。義理の親と折り合いが悪く、悩まされていた場合も、離婚をすることで縁が切れれば解決につながります。

また、年齢が高くなるにつれ、親の介護の問題も抱えるようになります。婚姻関係を続けている限り、自分自身の親だけでなく、義理の親の介護も考える必要があるでしょう。

しかし、離婚をして婚姻関係を解消すれば、義理の親との関係も解消されます。介護の問題で揉めていた場合も、離婚を機に解放されるでしょう。

別の相手と結婚できる

重婚は違法なので婚姻期間中は、ほかの人と結婚することはできません。

離婚せずに配偶者以外の相手と関係を深めると、不倫となり、配偶者や不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されることにもなります。

別の相手と結婚したいときは、現在の婚姻関係を解消してからとなります。離婚をすることで合法的に別の相手と結婚できるようになり、新しい暮らしを始めることができます。

熟年離婚によって想定されるデメリット

熟年離婚にはデメリットもあります。よくあるデメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 不健康な生活になる恐れがある
  • 経済的な負担が高まる傾向にある
  • 孤独感を味わうことがある
  • 不動産を含む財産分与でトラブルに発展する可能性がある

それぞれのデメリットについて見ていきましょう。

不健康な生活になる恐れがある

配偶者に食事を作ってもらっていた場合は、熟年離婚により食生活が不規則になり、栄養バランスが崩れて不健康になる恐れがあります。

また、離婚により一人暮らしを始める方もいるでしょう。家族が誰もいない状況では、生活リズムが不規則になったり、活動量が落ちたりして不健康になるケースも考えられます。

特に定年退職後に離婚をする場合は、生活にメリハリがなくなり、一気に体力と気力が衰えることにもなりかねません。

経済的な負担が高まる傾向にある

例えば住宅費は、家族で暮らしても一人で暮らしてもあまり変わりません。また、食費や光熱費なども家族が多ければ増えますが、人数に比例して増えるわけではないため、家族と暮らすほうが一人あたりの生活費は安くなります。

離婚をし、一人で暮らすことになると、経済的な負担が高まる場合があります。定年退職後の熟年離婚の場合、使えるお金が限られることで、さらに経済的に苦しくなる可能性もあるでしょう。

孤独感を味わうことがある

一人で暮らすことで孤独を味わう可能性もあります。子どもがすでに独立して家庭を持っている場合には、自分が退屈だからといって何度も家に押しかけていると、子どもからも愛想をつかされる可能性があります。

離婚をしたことで子どもや孫との関係にも影響が生じ、疎遠になることがあるかもしれません。また、夫婦で仲良くしていた友人や、家族ぐるみで付き合いがあった知人、親戚などとも疎遠になり、人生が味気ないものになるケースもあります。

不動産を含む財産分与でトラブルに発展する可能性がある

一般的に、離婚するときには婚姻期間中に生じた財産を二人で分けます。

しかし、どちらかが財産を隠していたり、分けることを拒否したりする場合には、スムーズに財産分与できずトラブルになることもあります。

なお、原則は1/2ずつ財産を分けますが、配偶者が浪費家であったり、片方の才覚によって財産を築いたりした場合は、弁護士に依頼して交渉したり離婚調停の申立てをしたりすることで、分け方を変更できることもあります。

また、DVや浮気があった場合は、慰謝料を請求できることがあります。1/2ずつの分与はおかしいと思うときは、離婚に詳しい弁護士に相談しましょう。

また、財産分与には合理的理由なく配偶者の一方に極端に多額の分与をしない限り贈与税はかかりません。あくまでも、もともと有していた潜在的な持ち分を受け取る行為のため、不動産などを所有していて財産が多い場合でも安心して受け取ることができます。

熟年離婚を考えたときに準備すること

配偶者に対して不満が高まったときも、衝動的に離婚するのはおすすめできません。熟年離婚には次の準備が必要です。

  • 経済的に生活が成り立つかシミュレーションする
  • 離婚理由について再度考える
  • 財産分与について考える

後悔しないように万全の準備をしてから離婚をするようにしましょう。

経済的に生活が成り立つかシミュレーションする

離婚後の生活について具体的にシミュレーションすることで、経済破綻を防ぐことができます。持ち家がなく家賃が発生する場合は、月々の負担が大きくなるので注意が必要です。

また、シミュレーションは厳しめにしておくことがポイントです。甘く見積もっていると、経済的に生活が成り立たなくなることもあります。

ただし、自分や子どもがDVやモラハラなどの身体的・肉体的暴力を受けている場合は、経済的事情にかかわらず早めに離婚したほうがよいでしょう。

このような問題があるにもかかわらず、経済的事情により離婚すべきか悩んでいるかたは、生活保護等の受給やシェルターを利用するといった方法もあります。まずは、内閣府が運営する「DV相談+(プラス) 」などの公的機関や弁護士に相談してみましょう。

離婚理由について再度考える

なぜ離婚を選ぶのか、今一度考えてみましょう。また、離婚後の子どもや孫との関係、友人や知人、親戚との関係についても考えてみてください。

離婚という選択をする前に、できれば配偶者と話し合うことも検討しましょう。話し合いが難しい場合は無理にする必要はありませんが、お互いに歩み寄れる部分が見つかるかもしれません。

一時の感情だけで離婚を進めると、離婚が成立してから後悔する可能性もあります。信頼できる人の意見を聞くなど、多角的な視点で検討することが大切です。

財産分与について考える

財産分与は、婚姻期間中に築いた財産に関して実施します。ただし、親からの相続分や婚姻前に築いた財産、別居後に築いた財産については財産分与の対象にはなりません。

また、不動産や預貯金などプラスの財産だけでなく、住宅ローンなどの借金も財産分与の対象です 。早めに不動産会社に査定を依頼しておくと、財産分与の計画を立てやすくなるでしょう。事情を話せる場合は率直に話しておくと、不動産会社も売却スケジュールを立てやすくなります。

また、婚姻中に浪費などがあったときには、1/2ずつの分与とはならないこともあります。正しく分けるためにも、一度、離婚に詳しい弁護士に相談してみましょう。

熟年離婚の手続き

裁判所を通さず、話し合いで離婚を決めることを協議離婚と呼びます。離婚の多くは協議離婚です。

ただし、相手が協議に応じない場合は、家庭裁判所による調停、調停で決まらないときは裁判によって離婚を進めていくことになります。協議や調停、裁判では、財産分与だけでなく子どもが未成年のときは親権や養育費についても取り決めます。

熟年離婚は計画的に進めることが必要

熟年離婚とは、一般的におよそ20年以上の結婚生活をした後に離婚することです。熟年離婚をする際には、メリット、デメリットを冷静に考えることが必要です。

計画なしに熟年離婚をすると、離婚後の生活が離婚前よりも悪くなることもあります。

ひとりで判断するのではなく、友人や親しい人に相談することも検討し、必要に応じて公的機関の窓口や弁護士にも相談することをおすすめします。

経済的なこと、家事のこと、お互いのストレスのことなどを包括的に考え、最適な結論を出すようにしましょう。

この記事のポイント

熟年離婚の定義とは?

一般的に20年以上の結婚生活ののちに離婚することを熟年離婚と呼びます。25歳で結婚していれば45歳以上、30歳で結婚していれば50歳以上になっているので、熟年離婚と呼ばれます。

詳しくは、「熟年離婚とは」をご覧ください。

熟年離婚のデメリットとは?

熟年離婚により一人暮らしを始める場合は、生活が不規則になり、不健康になることがあります。また、家計が成り立たず、経済的に苦しくなることがあるかもしれません。

詳しくは、「熟年離婚によって想定されるデメリット」をご覧ください。

執筆者プロフィール

松浦 絢子
資格情報: 弁護士、宅地建物取引士

松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

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