コロナ禍の影響で店舗をもたないゴーストレストランが人気ですが、中長期的に飲食業を経営していくのであれば、あわせて小さな飲食店を開業することがおすすめです。伸びしろのあるデリバリー市場と言えど弱点はあり、それを実店舗が存在することで認知度を高めるなど相乗効果が生まれます。今回は、1人で小さな飲食店を開業するために必要な資金や開業までの流れをご紹介します。
1人でも飲食店は開業できる?
一人でも飲食店は開業できます。必要な資格や許可証があれば誰でも開業はできるので、法人設立せずとも個人事業主として開業されている経営者もいます。メリットとデメリットは以下のとおりです。
⚫︎メリット
①誰にも左右されずに自由に仕事ができる
1人で開業するにあたり、立地から内装、提供する料理、さらには休日まで全ての決定権は自分にあります。誰にも左右されずに自分が好きなようにできるので、自由度が高くなります。
②低資金で始めることができる
飲食店を経営するにあたり、比重が重いのは上から順に、人件費、食材費、家賃です。はじめの開業資金はかかるものの、調理や接客など全てのオペレーションがひとりで出来るように設定するため必然的に規模が小さくなり、家賃は安くなります。さらに、提供できる料理の品数も少ないので、少ない材料でまわすことができます。
③リスクが少ない
小さな飲食店であればその分開業資金も低いので、その分リスクも低いでしょう。また、スタッフを雇っていない場合は、自分自身が生きていける分の売上があればいいので大きなプレッシャーはないでしょう。
⚫︎デメリット
①売上に天井がある
自分ひとりでまわせる料理数とオペレーションに限界があるため、売上の天井がある程度決まります。繁忙期のみアルバイトスタッフを雇うという手もありますが、飲食店は日銭商売と言われていて、その日の売上を直接現金で得る商売。必ずしもお客様の予約が入るとは限らないため、人件費でプラスマイナスゼロになる場合もあります。
②接客の質が下がる可能性がある
ワンオペのためお客様対応がおろそかになる可能性もあります。接客、料理やお酒の提供、電話対応等が重なると、接客の質が下がるため、それを加味した店舗づくりをした方がよいでしょう。
③自分の代わりがいない
1人で開業するということは、代わりがいないということです。万が一、自分が病などで倒れた時に何もできなくなってしまうため、最悪の場合は休業しなければならないこともあります。
自宅でも飲食店は開業できる?
店舗兼住居物件など、自宅を開業して飲食店を営業している方はいます。ただし、法律に基づいて用途地域の確認や設計後に営業許可書がおりるかなどを確認しなければなりません。気をつけなければいけないポイントは、下記2点です。
確認事項1:用途地域
開業予定の店舗(自宅)が商業地区内にあれば可能ですが、住居専用地域であれば開業不可です。自治体に必ず用途地域を確認しましょう。また、近隣の環境も下調べをする必要があります。
確認事項2:営業許可書
用途地域に問題がなければ、保健所に営業許可がおりるかを確認しましょう。限られたスペースのため施工内容は制限されるので、保健所に設計図を持参してまずは相談した方がおすすめです。狭い空間であれば、十分に換気できるか、厨房とトイレが離れた場所にあるかという点を注意した方がいいでしょう。
飲食店開業の流れ
STEP1:コンセプト設定
自分のやりたいことを基に、客観的に分析しましょう。料理、立地、価格帯、サービスのバランスがとれていなければいけません。自分自身を客観的に分析すると、店舗のコンセプトが自然にみえてきます。
極端な例ではありますが、高級ホテルで飲み放題3000円プランがあるとすれば、これは立地や雰囲気に対する価格のバランスがとれていません。また、大衆居酒屋で料亭並みのていねいな接客があれば、これはお店の雰囲気に対するサービスのバランスがとれていません。分析した先にあるものは、「お客様の居心地の良さ」。決してひとりよがりになりすぎないこと、それが大事です。
また、開店準備に入るとまわりの人達がアドバイスをすることがあります。「お世話になっているからこの人の意見をとりいれようかな」と、忖度する必要はありません。ひとりよがりにはなりすぎないことは大事ですが、周りの意見に流されないようにしましょう。
STEP2:事業計画の考案
事業計画をたてる目的を明確にしましょう。これはハッキリしていて、金融機関から借入をするためです。小さな飲食店を開業するにあたって、もし自己資金でまかなえるのであれば、綿密な事業計画書を作成するよりも日々の売上をしっかり管理できる体制を整えたほうがいいでしょう。
STEP3:エリア&物件探し
飲食店の居抜き物件であれば問題なく開業できますが、自宅であれば前述のように用途地域の確認を。また、物件が決まったら早い段階で電力会社に電気量の確認をしましょう。飲食店では電子レンジや食洗器など電気を非常によく使うので、供給される電気量が足りていない場合は、動力を引っ張ってこなければなりません。その対応処理に3ヶ月から半年ほどかかる場合がありますのでご注意を。通常、自宅(住宅)の電気容量は飲食店舗に比べ少ないため確認が必要です。
STEP4:資金調達及び借入
開業時の資金調達方法の主なものは、下記二つになります。
- 日本政策金融公庫からの借入
- 銀行を通した各自治体が行う保証協会付きの融資
融資を申し込む上でのポイントは多々ありますが、まずこの二つを同時並行で進めることをおすすめします。また、資金の使途を選択する項目は「設備資金」で申し込むのが良いでしょう。資金の使用用途が明確になっているため、比較的融資は通りやすいと考えます。つまり、店舗を開業する費用は借入の設備資金でまかない、自己資金などはすべて運転資金に回せると開業がスムーズにスタートできます。創業融資制度を積極的に活用しましょう。
STEP5:店舗内外装設計及び施工
飲食店設計の経験がある設計士に依頼することがおすすめです。設計料は施工費の10%が相場で、施工費が300万円であれば30万円になります。追加でかかる費用のため、設計士に依頼しない方もいますが、初めて飲食店を開業する場合は素人では気がつかない点も多々あるため設計士に依頼した方がいいでしょう。見た目だけではなく、季節問わず居心地のいい空間づくりなども加味してくれます。あわせて、施工会社の現場監督も設計士同様に信頼できる人に依頼しましょう。また、開店から一年間は無料で修繕対応をしてくれるように施工会社に交渉しましょう。
STEP6:厨房設備や什器、備品の購入
小さな飲食店であれば大きな什器を入れる必要はありません。しかし、必要になった場合はリースを組んだ方がおすすめです。金額的には購入する場合と比べると1,5倍ほどになりますが、月々の分割支払いが可能なので初期費用として大きな出費にはなりません。また、リースをする最大のメリットは、6~7年間の保証がつくこと。定期的な無料メンテナンスもあるので、多少高くても保険料だと思えば安いでしょう。
STEP7:各種届出や手続き
防火対象物使用開始届出書自宅など規模に関わらず、飲食店を開業するにあたり、防火対象物使用開始届出書を営業開始の7日前までに届け出なければなりません。私は住宅街にある一軒家レストランを2店舗経営していますが、保健所対応と消防対応のどちらとも、設計士と施工会社に対応を依頼しました。万が一問題点があれば即座に対応してもらえるのでおすすめです。
STEP8:開業
飲食店開業に必要なお金
都内で小さな飲食店を開業するにあたり、運転資金と合わせて1000万円程度必要となります。内訳は下記のとおりです。
開業資金の目安
項目 | 費用の目安 |
物件取得(※スケルトンの場合) | 200万円 ※家賃20万円と仮定 |
内装費 | 300万円 |
厨房設備や什器の費用 | 50万円 |
通信機器の整備 | 10万円 |
申請関連 | 5〜8万円 |
⚫︎物件取得(※スケルトンの場合)
都内一等地の坪単価は上がり5~10万円の間です。駅前だとさらに高くなり、8~10万円程度になります。都内で小さな飲食店を開業すると仮定し、家賃を20万円とします。その場合、保証金は平均8ヶ月分必要となるので、まずは計160万円。さらに、前家賃一ヶ月分と仲介手数料として一ヶ月分。物件取得だけで計200万円は必要になります。売上がない中で家賃が発生することは避けたいので、2ヶ月分はフリーレントがつくように交渉し、その期間中に施工して、オープンまでに準備すると良いでしょう。
⚫︎内装費
内装費は300万円程度です。保健所の指定で防水対応をしなければならない場合は、追加費用がかかります。
⚫︎家具やレジ台、食器などの備品
計50万円程度です。
⚫︎厨房設備や什器の費用
小さな飲食店であれば50万円程度ですが、リースができるものは組んだ方がおすすめです。
⚫︎通信機器の整備
電話やwi-fi環境整備、さらに予約や顧客台帳の管理システムの登録などに、計10万円前後の費用を要します。
⚫︎申請関連
食品衛生責任者の資格取得、防火対象物使用開始の届出、営業許可の申請などの手続き関連は、全て合わせて5~8万円程度です。
運転資金の目安
開業したばかりの頃は売上がないので、運転資金を潤沢にしておく必要があります。開業に必要な資金を調達する際に、自己資金が200万円ほどあれば、金融機関から1000万円ほどの借入ができるのでおすすめです。ただし、飲食業での実績経験綿密な事業計画書が必要とされます。小さな飲食店でも、約240~400万円程度(想定売上の一年分が目安)は運転資金としてあると良いでしょう。
コンセプト設計のポイント
ご自身の意向により細やかなことが決まっていきます。例えば、「FCにしたい」と「のんびりマイペースに営業したい」とでは大きくコンセプト設定が変わっていきます。それから、利用動機や客層、提供料理、価格帯など細かく決めていきましょう。また、ゴーストレストランと兼業する場合は、実店舗名での出店をおすすめします。しかし、デリバリープラットフォームの手数料が高いという理由で、食材の質を落として安価でお客様に提供しないように。実店舗との間にクオリティの差ができてしまい、評判を落としかねないので注意が必要です。
飲食店開業に必要な資格
飲食店開業に必要な資格は下記の2つです。
⚫︎開業資金の目安
食品の製造や販売を行う場合などにも必要な資格です。飲食店の開業時には保健所に食品衛生責任者の届出をしなければなりません。
⚫︎防火管理者
火災等による被害を防止する資格です。従業員とお客様を合わせて30人以上収容できる店舗であれば資格取得が必要ですが、店舗の延床面積によって異なります。下記をご参考ください。
延床面積300平米以上:甲種防火管理者
延床面積が300平米未満:乙種防火管理者
飲食店開業に必要な許可申請
⚫︎営業許可申請
営業施設を所管する保健所の窓口で申請をします。2021年6月からオンラインでの手続きも可能に。
⚫︎防火対象物使用開始届
消防用設備の設置状況などの審査が入りますが、設計士や施工会社が代わりに対応してもらえる場合があるので施工する際に相談するといいでしょう。
⚫︎防火管理者選任届
1人で経営する小さな店舗では必要ありませんが、従業員とお客様を合わせた収容人数が30人を超える場合は、消防署に届け出をしなければなりません。
⚫︎深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
バー営業など深夜0時以降もお酒を提供する場合のみ必要になる届け出です。
関連記事:ゴーストレストランの開業に必要な資格と許可申請について
飲食店開業は、物件契約書に押印したその時からめまぐるしく開店へ向けて動き出します。開業に関わる全ての方が自分の夢を支えてくれる仲間、そして今後来店してくださるお客様だと思い、真摯に接してください。
もう少し資金を抑えて、手軽に開業したいという方は、「ゴーストレストラン(クラウドキッチン)の開業に必要な費用・資金計画について」の記事も是非ご確認ください。
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