飲食業を開業するにあたり、売上を左右して重要視するべきもののひとつとして「客単価」があります。今回は、売上を伸ばすために必要な客単価のことについて紹介します。
記事サマリー
客単価の定義
飲食店を開業するにあたり、売上管理と正確な客数の管理が重要になります。その管理には、客単価を算出するのが絶対条件。客単価とは、「来店したお客様が、ひとりあたりいくら使ったか」を表すものです。最近ではほとんどの飲食店がPOSレジなどを導入しており、正確な客単価が算出できるようになりました。POSレジは「どの料理を、いつ、いくらで、何個オーダーしたのか」といった情報を、記録し集計するシステムを完備したレジで、一体型タイプ、PC、タブレットが利用されています。
客単価の計算方法
一般的なイートイン飲食店舗の場合は、下記のように算出します。
●客単価
売上÷客数=客単価しかし、デリバリー店舗など、実際に料理を召し上がる人数が不明の場合は、お客様一人当たりの客単価を算出するのは難しいため、組単価として計上します。
●組単価
売上÷注文組数=組単価
客単価の分析をするメリット
飲食店を開業する上で、客単価を分析することは重要であり、明確な売上目標なども客単価がなければ設定することはできません。客単価を分析するメリットを紹介します。
メリット①マーケティングに役立つ
客単価を分析することにより、地域や周辺飲食店の価格の相場感を把握することができます。分析結果から、提供料理を差別化した上で、自店舗の価格を設定することができます。例えば、都内一等地である銀座の和食店が、ディナータイムで客単価1万円であれば、相場感は安い印象を受けます。しかし、これが地方にある地域密着の店舗が客単価1万円であれば、相場感は非常に高いでしょう。しかし、後者の地方密着型の店舗が1万円に見合う付加価値と、周辺店舗との差別化が明確であれば、1万円の客単価に設定しても繁盛店になる可能性があります。極端な例をあげましたが、重要なことは上限を見極めることです。どんなにいいお料理、いいサービス、いい立地でも1人100万円のお店には誰もいきませんよね。その土地や、お客様の層の特徴によって見極める必要があります。
メリット②お店の経営状況が明確になる
客単価アップは経営状況が良い状態であり、逆に客単価ダウンは良くない状態だということが分かります。では、なぜ客単価が上向き傾向だといい状態なのか。それは、お店として適切な価格帯、サービス、ボリューム、提供時間が保てていて、お客様が注文をしやすい環境が整っているということです。
例えば、ドリンク提供時間が遅いお店の場合は、本来もう一杯飲めるところのチャンスロスが生じる可能性があります。一見少ないロスに見えますが、料理・ドリンクの売上は、まさにチリツモ。月間1,000名のお客様がご来店される場合、1杯のチャンスロスが産む損失は、ドリンク1杯600円とすると×1,000名=月間60万円、年間720万円となります。
客単価が上向きの店舗は、上記に述べたやるべきことの徹底がなされており、必然的にお客様の満足度がともない、客単価上昇が見込まれます。
客単価の目安
客単価の目安は、提供価格に大きく左右されます。そして、その提供価格は非常に多くの要素が重なり決定されます。第一に考慮するべき要素は原価率です。そもそも原価割れした提供価格ですと、売れば売るほどお店が損をすることになります。提供価格を決定する順序は以下になります。
【提供価格を決定する順序】
①提供したい料理は何か?
②食材の仕入れ価格はいくらか?
③食材の原価率に収まる提供価格はいくらなのか?
④見合う客単価の立地はどこなのか?
⑤どのようなコンセプトであれば、見合う客単価となるのか?
【客単価から提供価格を決定する順序】
①客単価の目安を決定する(例/1人5,000円でお酒も飲めるお店にしたい、など)
②料理は何を提供するのか?
③食材の仕入れ価格はいくらか?
④見合う客単価の立地はどこなのか?
以上になります。客単価は提供価格と密接な関係にあるのです。
客単価を上げるには?
売上を伸ばすためには客単価を上げるのが重要です。それでは、客単価はどのようにしたら上がるのでしょうか。客単価を上げるためのポイントをご紹介します。
ポイント①店舗オペレーションを確立する
提供時間やおすすめのトークなどは、客単価を上げる上で最も重要な点です。お客様の満足度を高めることによる、理想的な客単価アップの手法です。
ポイント②コースメニューや飲み放題メニューの導入
コースメニューや飲み放題を選ぶことができると、ご予約時や注文時にほぼ客単価が決まります。さらに、オペレーションも統一されるため、非常に効果的な手法です。
ポイント③居心地の良い空間演出
1日に何回転もするお店でなければ、長居をしてもらえればもらえるほど客単価はアップします。それには、居心地の良い空間演出とサービスが必要です。
ポイント④ボトルワインを豊富に取り揃える
日本酒など瓶で販売されているお酒は、生ビールやハイボールに比べると、単価が非常に高いです。そのため、赤・白ワインなど様々なボトルタイプのお酒を取り揃えていれば、2名で1本のボトル注文を頂くだけでも、客単価はかなりアップします。
デリバリー・テイクアウトで特に有効な客単価UP施策は?
デリバリー・テイクアウトが、イートイン店舗と大きく違う点は、酒類のドリンク売上がほぼ見込めないことです。ただし、客単価アップのための効果的な施策もあります。
ポイント①サイドメニューやパーティメニューの追加
魅力的なサイドメニューをメニューインすることです。代表的なものとしては、サラダや揚げ物の盛り合わせなどがあげられます。その他ドリンクもメニューに用意したほうが良いでしょう。また、ホームパーティーによるグループでのデリバリー注文が入る事もあるため、パーティメニューを準備しておくことも重要です。
ポイント②トッピングなどのオプション
プラス料金でのトッピングオプションを用意することも客単価アップには重要です。チーズトッピングや温泉卵トッピングなど魅力的なトッピング商品を準備することで、1回の注文時の客単価アップに繋がります。
客単価に関連するマーケティング用語解説
1.ユニーク客とは
ユニーク客数とは、ご来店してくださるお客様の合計のことです。しかし、いわゆる常連様といった同じお客様は、何度お店に来ても一名と数えます。
2.KPIとは
KPIとは、飲食業に関わらず幅広い業界で使われているマーケティング用語です。「Key Performance Indicator(キー パフォーマンス インジケーター)」を省略したもので、「重要業績評価指標」を意味します。注意をしなければならない点は、目標という意味合いではないこと。例えば、売上目標がある場合、それに達成するための要素をKPIとして「一日に〇人の来客数」のように設定します。
3.LTVとは
LTVとは、「Life Time Value(ライフ タイム バリュー)」を省略したもので、「顧客生涯価値」を意味します。対象のお客様が最初から最後まで、どのくらいの利益をもたらすかを意味しますが、飲食店の場合は、常連様が最もLTVが高いと言えます。
4.アップセルとは
アップセルというのは、料理をご注文しているお客様に対して、より高価な料理を選んで頂き客単価アップにつなげる手法です。例えば、松竹梅のコースがあり、竹と松で迷われているお客様に対して、付加価値をご説明して松のご注文を頂くことです。
5.クロスセルとは
クロスセルというのは、お客様が注文したお酒に合うような料理をおすすめするなどして、客単価をアップする手法です。例えば、ご飯もののご注文を頂いた時に、お漬物やお味噌汁などを。デザートのご注文があった時にコーヒーをおすすめしてもいいでしょう。
飲食業に関わらず、販売業において客単価は最も重要な指標の一つとなります。そして、当初自身が予想していた客単価とは大きく外れることもあるかもしれません。提供価格に迷うこともあるかもしれません。そんな中経営者として持っておいた方が良い基準は、お客様が納得して、満足する価格であったかを自身に置き換えて客観的に見ることだと思います。自店舗の状態が良い時は必然的に客単価とお客様満足度は上がるでしょう。
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