ざっくり要約!
- 学区とは、居住地によって通う学校が指定される制度のこと
- 学校選択制が導入されている自治体では、学区外の学校に通うこともできる
学区とは、住んでいる場所によって通学する公立学校が指定される制度です。学区は子どもの安全性を重視して、市町村教育委員会が決定しています。
一方、「学校選択制」は、保護者の申立てによって学区外の公立学校に通うことができる制度です。ただし、学校選択制はすべての自治体にある制度ではなく、選択の自由度も自治体によって異なります。
この記事では、学区制と学校選択制それぞれの特徴について解説します。
記事サマリー
学区とは「通学区域制度」によって就学校を指定されたエリア
学区は「通学区域制度」によって指定されています。
市町村内に公立の小学校(中学校)が2校以上ある場合は、市町村教育委員会が就学する学校を指定し、保護者に対して事前に就学通知書や入学通知書で通知することになっています。これは、学校教育法施行令第5条に規定されています。
学区制の特徴
学区は、子どもたちが安全に学校に通えるように、交通量が多い道路の横断を避けたり、河川状況に配慮したり、地域の実情を踏まえたうえで市町村教育委員会が決定しています。しかし、学区制は地域事情による区分けであり、保護者の意向や子どもの実態に沿えるものとは限りません。
学校教育にさまざまなニーズが求められる中で、文部科学省では学区の運用について柔軟な対応を各市町村教育委員会に求めています。
- 学区制の運用にあたっては、保護者の意向に配慮した多様な工夫を行うこと
- 身体的な理由やいじめへの対応など、保護者の申立てによって学校の指定変更や区域外就学を認めること
- 学校の指定変更や区域外就学の仕組みを広く周知し、保護者が相談しやすい体制を充実させること
(引用:文部科学省「通学区域制度の弾力的運用について」)
学区制のメリット
子どもが初めて入学する場合や引っ越しで新しい環境に移り住む場合は、地域の学校事情が分かりにくいものです。学区制があれば「どこの学校に通わせたらよいのか分からない」と悩まずに済みます。
また、地域住民や交通指導のボランティアなど、地域社会と関わりが増えることも学区制の良さです。近所に知り合いが増えれば、防犯面でも安心できます。
学区制のデメリット
子どもが毎日過ごす学校は、教育方針はもちろんのこと環境や雰囲気も大切です。しかし、そういった環境が子どもに合っていないと感じても、学区制では指定された学校に通わなくてはなりません。
また、家から近い学校があるとしても、危険があると判断されれば「学区外」になってしまうこともあります。
学区の調べ方
学区は、お住まいの自治体に問い合わせることで確認できます。ウェブ上には、まとめサイトや検索システムもありますが、学校の再編成や地域の事情で学区が変わることも少なくありません。
最新情報は、市町村のウェブサイト、または直接、役所に確認するようにしましょう。
近年は「学校選択制」を導入する自治体も
学校選択制とは、学校教育に対する保護者のニーズを鑑み、柔軟に学校を選べるように配慮した制度です。学校選択制を利用すれば、学区外の公立学校に通うことができます。
学校選択制では、市町村教育委員会があらかじめ保護者の意見を聴き取りし、その意見を踏まえて、就学校を指定します。ただし、学校選択制は地域によってニーズが異なり課題もあるため、全国一律では導入されていません。各自治体によって対応が異なるので、検討する場合はお住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
学校選択制は以下の種類に分類され、どれが適用されるかは自治体によって異なります。
自由選択制 | 当該市町村内の全ての学校のうち、希望する学校に就学を認めるもの |
ブロック選択制 | 当該市町村内をブロックに分け、そのブロック内の希望する学校に就学を認めるもの |
隣接区域選択制 | 従来の通学区域は残したままで、隣接する区域内の希望する学校に就学を認めるもの |
特認校制 | 従来の通学区域は残したままで、特定の学校について、通学区域に関係なく、当該市町村内のどこからでも就学を認めるもの |
特定地域選択制 | 従来の通学区域は残したままで、特定の地域に居住する者について、学校選択を認めるもの |
学校選択制のメリット
学校選択制は、学校の環境や教育方針を確認した上で、子どもの個性に合った学校を選べることがメリットです。教育内容で学校を選ぶためには、私立学校しか選択肢がないと思われがちですが、学校選択制を利用することで、公立学校からも選べるようになります。経済的な負担を抑えつつ、子どもに合わせた教育環境を選べるのは大きなメリットです。
学校選択制のデメリット
学区制では登校班がある学校も多く、通学路を見守ってくれるボランティアの方がいることもあります。学校選択制では、学区外通学により通学距離が長くなることがデメリットです。安全な登下校の不安や、保護者による送迎の負担などもあります。
また、地域と学校が連携しづらく、地域社会との関わりが希薄になりがちです。近所に友だちができにくい、下校時間が異なるので防犯面で不安、といった懸念も挙げられます。
加えて、人気の高い学校に希望が集中した場合、抽選によって入学が決まるケースもあります。抽選から漏れてしまうと希望の学校に通えず、兄弟姉妹で別々の学校になってしまうことも想定されます。
小中学校の就学校の指定状況
令和4年度、小学校において学校選択制を導入している教育委員会は319あり、全体の21.9%を占めています。令和4年度は隣接区域選択制や特定地域選択制が減少し、特認校制が増加。特認校は児童数が少なく、少人数教育を可能としている学校が多く見られます。
中学校においては、令和4年度217の教育委員会が学校選択制を導入。全体の19.2%を占めています。いずれにしても、全国規模で見ると学校選択制の導入は2割程度。地域のさまざまな事情や子どもの安全性を理由に、学校選択制の廃止や見直しを行う自治体もあるのが現状です。
しかし、学校選択制が導入されていなくても、子ども側の事情や保護者の申立てによって、学校の指定変更や区域外就学が認められる場合もあります。
公立高校の学区を撤廃する自治体が相次いでいる
学区制は公立高校においても導入されていましたが、47都道府県のうち約半数で撤廃されています。学区制を廃止することで、学区外だからと諦めるしかなかった高校にも行けるようになり、学校選択の可能性が広がったともいえます。
学びたい科目、力を入れている部活動、大学進学を踏まえた進路など、子どもの希望に合わせた高校選びが可能になりました。
東京都内の学区紹介
東京都には、私立中学受験を視野に入れた学習レベルの高い公立小学校が数多くあり、名門小学校へ入学させるために引っ越しをするご家庭もめずらしくありません。
中学受験率No.1の「文京区」
都内屈指の名門小学校が集まるのが文京区です。文京区には「3S1K」といわれる誠之小学校・千駄木小学校・昭和小学校・窪町小学校があります。
半数近くの小学生が中学受験をすることから、学習レベルや受験意識の高い小学校が集まっているエリアです。
・「文京区の住みやすさ」に関する記事はこちら 文京区の住みやすさを解説! 歴史やおすすめエリア、治安などについてご紹介 |
学校選択希望制を導入している「港区」
港区には長い歴史のある伝統校が点在しています。青南小学校・白金小学校の2校はいずれも明治時代に開校され、東京3大名門公立小学校として有名です。
また、学校選択希望制が導入されており、小学校は通学区域内の学校または隣接校から選ぶことができます。
特認校制度を実施している「中央区」
学校選択制を導入し「特認校制度」を実施しているのが中央区です。
通学区域を前提としながらも、施設に余裕のある学校を特認校として指定。令和5年度は5校が指定されており、銀座の有名校「泰明小学校」も特認校に含まれています。
子どもの個性や多様性を大切にした学校選びを
公立学校の学区制、学校選択制はそれぞれに良さがあり、課題もあります。どちらを選ぶとしても大切なことは、子どもの個性を伸ばし、多様性を認められる環境であることです。
また、学校教育に求めることは保護者によってさまざまなものがあります。学力を伸ばしたいこともあれば、子どもの発達や悩みに寄り添いたいこともあるでしょう。
文部科学省では学区制を原則としながらも、教育委員会に対して柔軟な対応を求めています。保護者の申立てによって、学校の指定変更や区域外就学が認められるケースもあるので、お困りの場合は、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
この記事のポイント
- 学区とは?
居住地によって通う公立学校が指定される制度のことです。学区は市町村教育委員会が決定しています。
詳しくは「通学区域制度とは住所によって就学する学校を指定すること」をご覧ください。
- 学校選択制のメリットとデメリットは?
メリットは、学校の教育方針や環境を確認した上で、子どもの個性に合わせた学校選びができることです。
デメリットは、通学距離が長くなることや地域との関わりが希薄になることが挙げられます。詳しくは「学校選択制のメリット」「学校選択制のデメリット」をご覧ください。
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