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床暖房の電気代はどれくらい?他の暖房器具との差は?

執筆者プロフィール

手塚裕之
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

エンタメ業界の管理職として12年勤務後、2018年12月からフリーライター活動を開始。税金、不動産、株式投資、クレジットカードなどお金に関する記事執筆・取材を行う。

ざっくり要約!

  • 床暖房にはさまざまな種類があり、電力で暖める3種類の「電気式」と温水で暖める4種類の「温水式」に分類されます。
  • 床暖房の電気代はホットカーペットより高いものの、エアコンとはほぼ同等です。また電気式は設定温度を下げることで、温水式よりもさらにコストを下げられます。

足元からじっくりと温めてくれる床暖房は、寒さが厳しくなるほどありがたみを感じられる暖房設備です。衛生面や機能性にも優れており、多くの方が自宅への設置を望む設備のひとつですが、一方で電気代が気になり導入を決断しきれないという方も少なくありません。

今回は床暖房にかかる電気代について解説します。他の暖房器具にかかる電気代との比較もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

床暖房の種類は大きく分けて2つ

床板の下に熱源を設置し、床下から部屋を暖める床暖房の種類は2つに分けられます。種類ごとに部屋を暖める方法が異なり、必要な電気代や部屋の暖まり方に違いがあります。

電力を熱源とするタイプ

ひとつ目は「電気式床暖房」と呼ばれる電力を熱源とするタイプです。暖め方や仕組みにより3つのタイプに分類されます。

熱電線ヒーター式

「熱電線ヒーター式」は、床下に電気で熱を発する電熱線を設置します。導入費用が安く、狭い面積の床にも設置できるのが特徴です。ガスを併用する必要がなく、電気のみで床を暖められますが、他のタイプに比べると電気代が高くなる傾向があります。

蓄熱式

「蓄熱式」は、蓄熱材に蓄えた熱で床を暖める方式です。電気料金のプランによっては電気代が下がる夜間に蓄熱できるため、コストを下げながら部屋を暖められます。ただし放熱の温度が調整できないため、適度な室温にコントロールしにくい点には注意が必要です。

PTCヒーター式

「PTCヒーター式」は、床全体に設置されたセンサーが床温度を感知し、必要な場所だけ床を暖める方式です。床全体を均一に暖めず、暖める必要がある場所だけ発熱します。立ち上がりに時間がかかるという難点はありますが、導入コストと電気代の両面で費用を抑えられるメリットがあります。

温水を循環させるタイプ

もうひとつが「温水式床暖房」です。温水の熱で床を暖める仕組みであり、4つのタイプに分類されます。

ヒートポンプ式

「ヒートポンプ式」は、電気の力で暖めた温水を床下に循環させる方式です。電気の力で発生させる空気熱を使って温水を作るため、わずかな電力で多くの熱量を生み出せます。夜間の電気代が安いプランに入っているなら、夜に作った温水で日中の床を暖められます。基本的にメンテナンスが不要であり、温度にムラが発生しにくい特徴があります。

ガス温水式

「ガス温水式」は、温水を作るのにガス給湯器を使用する方式です。専用のガス熱源を設置する必要がありますが、ヒートポンプ式に比べて短時間で床全体を暖められるメリットがあります。

ハイブリッド式

「ハイブリッド式」は、電気とガスの両方を熱源にして温水を作る方式です。立ち上がりが早いガスとランニングコストを調整しやすい電気のメリットを兼ね備えていますが、ハイブリッド給湯器を設置する必要があるため、導入にかかる初期費用が高くなる傾向があります。

灯油式

「灯油式」は、灯油を燃料にしボイラーで温水を作る方式です。安い灯油を使えるためランニングコストが低く、ガスと同様に立ち上がりが早い点が特徴ですが、定期的に給油しなければならないため、運用や維持に手間がかかります。

床暖房のメリット・デメリット

床暖房は他の暖房器具にはないメリットがある一方、注意しなければならないデメリットも存在します。導入を検討する際にはメリット・デメリットの双方を理解しておきましょう。

メリット

床暖房の大きなメリットのひとつがお手入れのしやすさです。エアコンのように空気をフィルターに通す必要がないため、ゴミやカビなどが溜まるおそれがありません。また熱源が床下にありますので、季節の変わり目に暖房器具を片付ける必要が無い点も便利です。

さらに、床暖房は風を発生させない点もメリットといえます。室内のホコリを舞いにくくするだけでなく、送風にともなう騒音も発生しません。また肌や目を乾燥させにくくなることから、健康面や快適性におけるメリットを感じる方も多いでしょう。

小さなお子様がいるご家庭にとっては、やけどの心配がない点もメリットになるでしょう。ストーブやファンヒーターのように子どもが熱源を直接触るリスクがなくなりますので、安心してリビングで遊ばせやすくなります。

デメリット

一方で、床暖房はコスト面がデメリットとして挙げられます。床暖房は床下の熱源と給湯器などの蓄熱・発熱設備を設置する必要がありますので、初期費用が高額になる傾向があります。新築時に10帖のリビングへ設置する場合、50~100万円程度の費用がかかります。また、他の暖房器具に比べてランニングコストがかかる点にも注意が必要です。

他の暖房設備に比べ、部屋が暖まるまでの時間が長い点もデメリットといえます。床暖房は短時間で急激に室温を上げるような暖房器具ではないため、起動してから早くても1時間程度、部屋の構造によっては3時間ほど空間が暖まるまで時間を要する場合があります。そのため、屋外から帰宅後にすぐにでも部屋を暖めたい場合は、他の暖房器具の併用も検討する必要があるでしょう。

また、床が暖まった後に温度調整しにくい点にも注意が必要です。ゆっくり時間をかけて床の温度が上昇した結果、表面温度が30度まで上昇する場合があります。床が暖まりきった状態で長時間座り続けていると、皮膚が弱い方は低温やけどを引き起こすおそれもあるでしょう。特に寝返りを打てない小さなお子様がいる家庭は、動かないまま床上で寝続けないように注意しましょう。

床暖房の電気代はいくら?「1時間」「1ヶ月」の目安を算出

では実際に床暖房を使用した場合のコストはどのくらいかかるのでしょうか。Panasonicの床暖房システムを例にみてみましょう。

電気式(PTCヒーター式)、温水式(ヒートポンプ式、灯油式)をそれぞれ1時間使用した場合にかかる電気代・灯油代は以下の通りです。

製品名温度6帖8帖10帖12帖16帖
電気式※1 (PTCヒーター式) フリーほっと 100V (新築向け) 30℃ 18.75 29.17 35.00 40.83 55.42
Youほっと 100V (リフォーム向け) 30℃ 20.83 25.83 32.50 40.42 54.58
温水式※2 (ヒートポンプ式) フリーほっと温すいW (新築向け) You温すい (リフォーム向け) 30℃ 14.17 18.75 23.33 31.25
温水式※3 (灯油式) 19.17 24.17 30.42 40.83

(単位:円)

また、同条件で1日8時間30日間使用した場合の電気代・灯油代は以下の通りです。

製品名温度6帖8帖10帖12帖16帖
電気式※1 (PTCヒーター式) フリーほっと 100V (新築向け) 30℃ 4,500 7,000 8,400 9,800 13,300
Youほっと 100V (リフォーム向け) 30℃ 5,000 6,200 7,800 9,700 13,100
温水式※2 (ヒートポンプ式) フリーほっと温すいW (新築向け) You温すい (リフォーム向け) 30℃ 3,400 4,500 5,600 7,500
温水式※3 (灯油式) 4,600 5,800 7,300 9,800

(単位:円)

※1 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※2 1日8時間連続使用、外気温約7℃、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※3 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態で30日運転、ボイラー燃焼効率80%として計算。灯油単価112円/ℓ(2022年10月の全国平均の灯油店頭価格)で計算。

引用:Panasonic Webカタログ 2023 木質床材・玄関框・床暖房・階段・手すり(2023年4月1日新価格掲載)

床温度を同じ30℃に設定した場合、電気式は温水式に比べて1.5~2倍ほどの電気代・灯油代がかかることが分かりました。

なお、同じ電気式であっても設定温度によって必要な電気代が変わります。25℃と30℃に温度設定した場合、1カ月あたりの電気代はそれぞれ以下の通りです。

製品名温度10帖
電気式※1 (PTCヒーター式) フリーほっと 100V (新築向け) 25℃ 3,800
フリーほっと 100V (新築向け) 30℃ 8,400
Youほっと 100V (リフォーム向け) 25℃ 3,500
Youほっと 100V (リフォーム向け) 30℃ 7,800
温水式※2 (ヒートポンプ式) フリーほっと温すいW (新築向け) You温すい (リフォーム向け) 30℃ 4,500
温水式※3 (灯油式) 5,800

(単位:円)

※1 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※2 1日8時間連続使用、外気温約7℃、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※3 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態で30日運転、ボイラー燃焼効率80%として計算。灯油単価112円/?(2022年10月の全国平均の灯油店頭価格)で計算。

引用:Panasonic 床暖房システム:電気式床暖房
引用:Panasonic 床暖房システム:温水式床暖房

設定温度が30℃から25℃に下がると、電気代はおよそ半分程度まで下がります。30℃の温水式よりも電気代が下がりますので、室温に応じて適切に温度を調整するとランニングコストを抑えられるでしょう。

エアコン・ホットカーペットと床暖房、電気代が安いのはどっち?

床暖房の電気代は、他の暖房器具と比べてどの程度差があるのでしょうか。代表的な暖房器具であるエアコン・ホットカーペットと比較してみましょう。

エアコンと比較

Panasonicのエアコン(10畳用)と床暖房の1カ月間の電気代を比較してみましょう。

製品名温度10帖
電気式※1 (PTCヒーター式) フリーほっと 100V (新築向け) 30℃ 8,400
Youほっと 100V (リフォーム向け) 30℃ 7,800
温水式※2 (ヒートポンプ式) フリーほっと温すいW (新築向け) You温すい (リフォーム向け) 30℃ 4,500
温水式※3 (灯油式) 5,800
エアコン※4 CS-283DLX(10畳用) 768~14,712 ※105~1,980W

(単位:円)

※1 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※2 1日8時間連続使用、外気温約7℃、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※3 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態で30日運転、ボイラー燃焼効率80%として計算。灯油単価112円/?(2022年10月の全国平均の灯油店頭価格)で計算。
※4 エアコンは暖房設定、1日8時間連続使用、30日運転で計算。
※4 新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。

引用:
Panasonic 床暖房システム:電気式床暖房
Panasonic 床暖房システム:温水式床暖房
Panasonic よくあるご質問:【エアコン】1時間あたりの電気代の目安(品番別)

エアコンは設定温度によって電気代が大きく変動するため、床暖房の電気代を大きく上回る場合があります。

ホットカーペットと比較

Panasonicのホットカーペット(3畳用)と床暖房の1カ月間の電気代を比較してみましょう。

製品名温度10帖
電気式※1 (PTCヒーター式) フリーほっと 100V (新築向け) 30℃ 8,400
Youほっと 100V (リフォーム向け) 30℃ 7,800
温水式※2 (ヒートポンプ式) フリーほっと温すいW (新築向け) You温すい (リフォーム向け) 30℃ 4,500
温水式※3 (灯油式) 5,800
ホットカーペット※4 DC-3HA(3畳用) 3,432
2,376

(単位:円)

※1 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※2 1日8時間連続使用、外気温約7℃、室温約20℃一定状態、床温度30℃で30日運転、新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。
※3 1日8時間連続使用、室温約20℃一定状態で30日運転、ボイラー燃焼効率80%として計算。灯油単価112円/?(2022年10月の全国平均の灯油店頭価格)で計算。
※4 ホットカーペットは1日8時間連続使用、30日運転で計算。
※4 新電力料金目安単価31円/kwh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。

引用:
Panasonic 床暖房システム:電気式床暖房
Panasonic 床暖房システム:温水式床暖房
Panasonic 電気カーペット(ホットカーペット)・暖房器具:着せかえカーペット用ヒーター DC-3HA 3畳相当

ホットカーペットは床暖房と同じ時間使用しても、電気代は安価に抑えられます。ただし床暖房のような10帖サイズの大型製品はないため、暖められる床の範囲が限定されます。

床暖房の電気代は「つけっぱなし」or「こまめに消す」どちらがお得?

暖房器具は、こまめに電源を切るよりもつけっぱなしのほうが電気代を抑えられるといわれています。

暖房がもっとも電力を消費するタイミングは、寒い空気を暖める時です。一度部屋が暖まれば、その後は室温を維持する程度で済みますので、多くの電力を消費する必要がなくなります。また、室内が暖まっている状態であっても電源をこまめに消してしまうと、再度つけるたびに床暖房が部屋を暖めようとして電気を多く消費します。

一方、24時間電源をつけっぱなしでいると、床暖房は消費電力が大きいため電気代が高くなりやすくなります。そのため長時間外出する時間は電源を切り、電気代が発生しない時間帯をつくれば、トータルの電気代を抑えやすくなるでしょう。

床暖房のある住まいを選ぶときのチェックポイント

中古住宅や賃貸物件の中には、すでに床暖房が設置されている物件があります。設置の工事をしなくても床暖房を使える点が魅力ですが、どのように設置されているかによって快適さが変わってきます。床暖房ありの住まいを選ぶ際には、どのようなポイントに気をつければよいでしょうか。

熱源

床暖房は大きく分けて電気式と温水式に分類され、それぞれさらに細かく区分されています。種類によって使い勝手が変わり、ランニングコストにも違いが出てきますので、床暖房を使う時間帯や時間の長さにあった熱源の種類を選ぶとよいでしょう。

床暖房の範囲

床暖房が設置されている範囲は、物件によって大きく異なります。リビングの一部が床暖房になっている物件があれば、居室にも設置されている場合もあります。家族の構成や生活リズム次第で床暖房を使う時間や暖めたい範囲が変わりますので、生活のスタイルに適した設置がされている物件を選びましょう。

断熱性・気密性

床暖房を使用する上で気をつけたいポイントが、家の断熱性・気密性です。断熱性・気密性が弱い物件は、床暖房で暖められた空気が外に逃げやすくなり、電気代が余計にかかってしまうでしょう。床暖房の効率を上げランニングコストを抑えるためにも、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造など、断熱性・気密性に優れた構造の物件を選ぶのがオススメです。

床暖房はコストを意識して効率よく使おう

床暖房は部屋全体を効率よく暖められる暖房器具です。室内にホコリが舞わず、掃除に手間がかからないといった衛生面・健康面のメリットもあります。

一方で、床暖房は他の暖房器具に比べ電気代が高くなりやすく、導入にも高額の費用がかかります。総合的なコスト面で比較すると、他の暖房器具にメリットを感じる場合も多いでしょう。

床暖房を設置する際には快適さや機能性などあらゆる面を考慮し、コストを意識した上で検討を行うように心がけましょう。

この記事のポイント

床暖房の種類は?

電気の力を使う「電気式」、暖めたお湯で暖める「温水式」に分類されます。

詳しくは「床暖房の種類は大きく分けて2つ」をご覧ください。

床暖房のメリット・デメリットは?

手入れが簡単で掃除の手間がかからず、室内をムラ無く暖められる点がメリットです。デメリットはランニングコストが高く、部屋が暖まるまでに時間がかかる点です。

詳しくは「床暖房のメリット・デメリット」をご覧ください。

床暖房の電気代は高い?

温水式よりも電気式のほうが電気代が高くなる傾向があります。エアコンは設定温度次第で大きく上回るおそれがあり、ホットカーペットはコストを抑えられますが、暖まる範囲が限定されます。

詳しくは「エアコン・ホットカーペットと床暖房、電気代が安いのはどっち?」をご覧ください。

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