年金受給額平均夫婦
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夫婦の平均年金受給額はどれくらい? 共働き・専業主婦の標準的な受給額は?

執筆者プロフィール

品木 彰
品木彰
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大手生命保険会社に7年半勤め、個人営業と法人営業の両方を経験。人材サービス会社の転職エージェントとしての勤務経験もあり。 2019年1月からはフリーランスのWebライターとして独立。「お金に関する正しい知識を、より多くの人々に届けたい」という思いを原動力に、保険や不動産、資産運用、相続など幅広いジャンルの記事を執筆している。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建て構造であり、主に夫婦の就業形態によって老後の年金受給額は異なる
  • 65歳以上の夫婦世帯の多くが資産を取り崩しながら老後生活を送っているため、iDeCo、NISAなどを活用し自助努力で老後資金を準備することが大切

老後生活における主な収入源となるのが、国から支給される「老齢年金」です。

同じ夫婦世帯でも、現役時代に加入していた公的年金制度や加入期間などで、老齢年金の受給額は異なります。

今回は、夫婦世帯の平均的な年金受給額や年金制度の仕組み、老後資金を準備する方法を解説します。

老後にもらえる公的年金とは?

日本では「国民皆年金」が導入されており、基本的に20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金に加入します。

公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」からなる2階建ての構造です。ここでは、国民年金や厚生年金の概要と、それぞれの加入者が老後に受給できる年金の種類を解説します。

国民年金(基礎年金)

国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金制度です。

国民年金の保険料を納めた期間や保険料の納付を免除された期間などを合算した期間(受給資格期間)が10年以上あると、原則65歳から老齢基礎年金を受給できます。

老齢基礎年金の受給額は、保険料を納めた期間や納付を免除された期間などに応じて決まり、満額は年間81.6万円(月額6.8万円)です。

国民年金の被保険者は以下の3種類です。

  • 第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者やフリーランス、農業者、学生など
  • 第2号被保険者:70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者

第1号被保険者は、自分自身で国民年金の保険料を納めます。国民年金の保険料は定額であり、2024(令和6年)年度は月額16,980円です。

第2号被保険者は、勤務先の給与天引きにて厚生年金の保険料を納めます。また、第3号被保険者の保険料は、第2号被保険者が全体で負担します。そのため、第2号被保険者や第3号被保険者は、自分自身で国民年金の保険料を納める必要はありません。

厚生年金

厚生年金は、会社員や公務員などが加入する公的年金です。パートやアルバイトで働く人も、勤務先の従業員数が51人以上であり、かつ週の労働時間が20時間以上、賃金が8.8万円以上などの要件を満たすときは、厚生年金に加入をします。

厚生年金に加入した期間がある人は、老齢基礎年金の受給要件(受給資格期間が10年以上)を満たすと、老齢基礎年金とあわせて「老齢厚生年金」を受け取ることも可能です。

老齢厚生年金の受給額は、厚生年金に加入していた期間やその間に受け取った給与・賞与の平均(平均標準報酬月額)などをもとに決まります。

厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に保険料率をかけて計算されます。また、事業主(勤務先)と被保険者で半分ずつ負担するのが原則です。

【ケース別】夫婦2人の平均的な年金受給額はどれくらい?

日本年金機構によると、令和6年度における夫婦2人分の標準的な老齢年金受給額は、23万483円です。
※出典:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

ただし、実際の受給額は加入していた年金制度や収入などで異なります。

ここでは、厚生労働省が発表した「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、下記の3つのケースにおける夫婦世帯の平均的な年金受給額を紹介します。

  1. 夫・妻ともに会社員の場合
  2. 夫・妻ともに個人事業主の場合
  3. 夫が会社員・妻が専業主婦の場合

ケース1.夫・妻ともに会社員の場合

夫婦ともに会社員で厚生年金に加入していた場合、老後にはいくらの公的年金を受給できるのでしょうか。

厚生年金の加入者が65歳以降に受け取る老齢年金の平均受給額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円です。

夫婦の合計受給額は27万6,553円であり、年額では約331.9万円となります。

ケース2.夫・妻ともに個人事業主の場合

次に、夫婦ともに個人事業主として国民年金に加入していた場合の平均受給額をみていきましょう。

国民年金に加入していた人の年金月額は、男性が5万4,453円、女性が5万788円です。夫婦2人の合計受給額は10万5,241円です。年額に換算すると約126.3万円になります。

夫婦ともに厚生年金に加入していた世帯と比較すると、年金受給額は4割以下になる結果となりました。

ケース3.夫が会社員・妻が専業主婦の場合

最後に、夫が会社員で厚生年金に加入し、妻が専業主婦で第3号被保険者として国民年金に加入していたケースをみていきましょう。

この場合、老後生活で夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給できますが、妻は老齢基礎年金のみとなります。

厚生年金に加入する男性が65歳以降に受給する年金の平均受給額は16万7,388円、国民年金に加入する女性の場合は5万788円です。

合計受給額は21万8,176円であり、年額に換算すると約261.8万円となります。

公的年金だけでは不足する? 老後に必要な資金はどれくらい?

公的年金は老後生活における主な収入源ですが、それだけでは生活費を賄いきれるとは限りません。多くの人は、資産を取り崩しながら生活をしているのが実情です。

ここでは、高齢者の夫婦無職世帯の平均的な生活費や老後資金を準備する際のポイントを解説します。

多くの人が資産を取り崩しながら老後生活を送る

総務省の調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における家計収支の平均は、以下のとおりです。

高齢者無職世帯の家計収支

出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)

高齢の夫婦無職世帯では、毎月3万7,916円の赤字が発生する結果となりました。つまり、平均すると毎月3万7,916円ずつの資産を取り崩しながら、老後生活を送っているということです。

老後生活を20年と仮定すると必要な資金額は約910万円、30年の場合は約1,365万円となります。

しかし、世帯によって毎月の生活費や公的年金の受給額が異なるため、老後に必要な資金額がいくらとは一概にはいえません。老後に生活が苦しくなる事態を避けるためには、必要な資金額を考えて計画的に準備をすることが大切です。

老後に必要な資金の額を考えるポイント

老後に必要な資金の額は、老後生活における支出見込額から、収入見込額を差し引いて求めるのが基本となります。セカンドライフの支出と収入の例は、以下のとおりです。

老後生活における支出・老後生活費の生活費の総額
・自宅の修繕・リフォーム修繕費用
・住宅の購入・買い替え費用
・介護施設・有料老人ホームの入居費用
・趣味や旅行、レジャーにかける費用
・子どもや孫への援助資金
・葬式やお墓の費用
老後生活における収入・公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受取総額
・退職金・企業年金
・労働による収入

公的年金の受給額は、厚生労働省から年に1回送付される「ねんきん定期便」で確認する方法があります。また「年金ネット」に登録をすると、インターネットで年金の記録を手軽に確認できるだけでなく、将来受け取れる年金額の試算も可能です。

勤務先から支給される退職金や企業年金の支給額や給付条件などは、就業規定や退職金規定などで確認しておくとよいでしょう。

老後生活の収入や支出に関する項目を1つずつ計算することで、自分自身にとって必要な資金額がより明確になります。

とはいえ、老後の必要資金額を正確に計算するためには専門的な知識や技術が求められます。いくらの老後資金を準備すべきかより正確に把握したいときは、ファイナンシャルプランナーの資格を持つ人に相談するとよいでしょう。

老後資金の形成方法

自助努力で老後資金を準備する方法には、預貯金のほかにもさまざまな種類があります。ここでは、代表的な老後資金の形成方法である「iDeCo」と「NISA」について解説します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を拠出して投資信託や生命保険などで運用し、老後の年金を準備する制度です。積み立てた資産は、原則として60歳以降に老齢給付金として受け取ることができます。

iDeCoのメリットは、掛金の全額が所得控除の対象であることです。1年間で支払った掛金と同じ金額が、その年の所得から控除されたうえで所得税や住民税が計算されるため、税負担が軽減されます。

また、通常は運用益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoは非課税となります。老齢給付金を受け取るときは、所得税や住民税の課税対象となりますが、税負担が重くなりすぎないように優遇措置を受けることが可能です。

iDeCoで積み立てた資産は、原則として60歳まで引き出せません。マイホームの購入資金や子どもの進学資金などの準備にiDeCoはあまり適しませんが、積み立てた資産に手を付けにくいため、着実に老後資金を積み立てていきやすい制度といえます。

NISA

NISA(少額投資非課税制度)は、少ない金額で投資をする人を支援するための制度です。

金融機関でNISAの専用口座を開設すると、年間投資枠の範囲内で購入した金融商品から得られる配当金や分配金、売却益に税金がかからなくなります。

2024年1月からは、使い勝手が向上した新NISAが開始されています。新NISAでは、商品を非課税で保有・運用できる期間(非課税保有期間)はこれまでの最長20年から無期限へと延長されました。

また、長期・積立・分散投資に特化した「つみたて投資枠」と、国内外の株式などにも投資が可能な「成長投資枠」という2つの非課税枠が設けられています。

これから老後資金の積み立てを始めようと考えている方は、つみたて投資枠を利用するとよいでしょう。金融庁が定める基準を満たした投資信託が対象となっており、商品が厳選されているため、投資の初心者でも運用先を選びやすいといえます。

つみたて投資枠の年間投資枠は120万円(月額10万円)です。一生涯では、買い付けたときの金額で数えて最大1,800万円分の金融商品に投資ができます(成長投資枠との合算)。そのため、まとまった金額の老後資金を準備する際にも新NISAは役立ちます。

まとめ

夫婦ともに会社員だった場合、老齢年金の平均受給額は月額27万6,553円です。一方、ともに個人事業主の場合は10万5,241円と半分以下になります。夫が会社員で妻が専業主婦の場合、年金の平均受給額は21万8,176円です。

公的年金のみで希望する老後生活を送ることが難しいのであれば、iDeCoやNISAなどを活用し、自分自身で資金を準備することも大切です。

この記事のポイント

老後はどのような公的年金がもらえますか?

公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」からなる2階建ての構造です。

「老後にもらえる公的年金とは?」では、国民年金や厚生年金の概要と、それぞれの加入者が老後に受給できる年金の種類を解説します。

公的年金だけで老後は過ごせますか?

公的年金は老後生活における主な収入源ですが、それだけでは生活費を賄いきれるとは限りません。多くの人は、資産を取り崩しながら生活をしているのが実情です。

詳しくは「公的年金だけでは不足する? 老後に必要な資金はどれくらい?」をご覧ください。

老後資金はどのように作れば良いでしょうか?

自助努力で老後資金を準備する方法には、預貯金のほかにもさまざまな種類があります。

「老後資金の形成方法」にて、代表的な老後資金の形成方法である「iDeCo」と「NISA」について解説します。

ライターからのワンポイントアドバイス

品木 彰

iDeCoやNISAを利用した投資信託の運用には、リスクをともないます。商品の運用状況によっては、基準価額(投資信託の値段)が元本を下回る可能性があります。大きな損失が生じることに抵抗がある方は、5,000円や1万円といった少額から積み立てを始めるのも一案です。また、預貯金や生命保険といった比較的リスクが低い運用方法も組み合わせるのもよいでしょう。無理のない範囲でコツコツと積み立てを続けることがポイントです。​​​​​​​​​​​​​​​​

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