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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のメリット・デメリットを徹底解説

執筆者プロフィール

渡口将生
介護支援相談員・ライター

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながら、ライター活動をおこなっており、記事の執筆や本の出版をしている。また、マーケティング事業として起業サポートやコンサル業も行う。ライターネーム:ゆづる

介護施設はさまざまな種類があり「どの施設が合うのか?」「どういった基準で選べば良いのか?」とお困りの方も多いでしょう。中でもサービス付き高齢者向け住宅について知っている人は少なく、介護施設を選ぶうえで選択肢に入らないこともあります。今回は施設選びにお困りの方へ「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」を紹介します。なお、ここでは一般型と介護型のうち、一般型を中心に解説します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の特徴

サ高住(さこうじゅう)と呼ばれることが多いサービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリーに対応した賃貸住宅です。自立した生活を送れる方から、要介護度の低い方を対象にした住宅です。
60歳以上の方なら要介護の認定を受けていなくても入居可能で、安否確認や日常生活の困りごとなどを相談できるサービスを提供しています。介護サービスが必要な場合、訪問介護などの外部サービスを利用する点が一般的な介護施設との違いです。
なお、近年はIoT技術を活用したサービスを導入する住宅も増えており、見守りカメラを設置して離れた場所からでも安否確認が可能です。

サ高住に入居できるのはどんな人?

サ高住は下記2つのどちらかに当てはまる方であればどなたでも利用できます。

【入居の条件】

  • 60歳以上の方
  • 要支援または要介護の認定を受けた方

また、施設によって下記のような細かい条件がある場合もあります。

  • 自立した生活ができる
  • 重度の認知症ではない
  • 感染症を患っていない

特定施設と呼ばれる介護型のサ高住であれば認知症の方や、日常のサポートが必要な方(介護度の高い方)にも対応しています。そのため、継続的に介護の支援が必要な方には介護型のサ高住がおすすめです。

基本的には一人で生活できる高齢者が対象ですが、施設によっては同居が可能な場合があり、同居条件は下記のとおりです。

【同居する方の条件】

  • 配偶者
  • 60歳以上の親族
  • 要支援または要介護の認定を受けた親族
  • 特別な理由により同居の必要があると都道府県知事が認めた者

施設によって医療・介護の体制や入居条件もさまざまなため、入居前にしっかりと確認しておきましょう。

サ高住のメリット

サ高住は介護施設ではなく、高齢者専用の賃貸住宅です。そのため、介護保険施設と比べて自由な生活が可能で、介護サービスも選択できます。

その他にどんな魅力やメリットがあるのか、具体例を5つ見てみましょう。

高齢の方でも契約しやすい

高齢者が住居に困らず安心して過ごせるように、高齢者住まい法に基づいて2011年から多くのサ高住が創設されました。
高齢になると収入面やその他の事情から、自立した日常生活を過ごせる元気な方であっても一般的な賃貸住宅は契約しにくくなります。その点、サ高住は高齢者でも契約を断られる心配が少なく、建物が比較的新しいのも魅力の一つです。

他施設と比べて自由な生活ができる

サ高住は1日の中で決められたスケジュールがないため、それぞれ好きな時間の使い方ができます。他施設と比較して制約が少なく、外出の許可や確認を取らずとも一般住宅のように自由に外出できます。
介護サービスを受ける場合には、ケアマネジャーを通して必要なサービスを受けられるため、デイサービスやショートステイなど、自由に組み合わせることが可能です。

高齢者が安心して暮らせる環境

全ての施設がバリアフリー構造になっており、身体機能が低下しても無理なく過ごしやすい環境を整えています。高齢者向け住宅であるため世代の近い方が多く、近隣住民とのコミュニケーションをとりやすいでしょう。

また、多くの施設では専門知識を持った生活相談員が常駐しており、不安がある場合でも気軽に相談できます。
サ高住への入居前に訪問介護などのサービスに関わりがある場合、馴染みのケアマネジャーやヘルパーを継続できるのも魅力の一つです。

高齢者本人だけでなく「元気だから老人ホームにお願いするほどではないけど、見守りのある環境なら安心」と考える場合にもピッタリな環境と言えます。

有料老人ホームと比べて費用が安い

入居一時金が必要な施設も多い有料老人ホームと比べると、初期費用を安く抑えられる傾向にあります。ただし、介護型のサ高住の場合、前払い方式であれば入居一時金が必要な施設もありますので確認するようにしましょう。

また、有料老人ホームではサービスの選択ができない場合もあり、不要なサービス費がかかり高額になりやすいです。しかし、サ高住ではサービスを選択できるため不要なサービスは受けずに、サービス費用を抑えられるでしょう。

さまざまな施設があるため選択肢が多い

高齢化社会を考えた施策の1つであるサ高住は、国から補助金を受けられるため多くの会社が運営しています。そのため、選択肢や比較対象も豊富で、馴染みのある地域や希望の土地での生活を実現しやすいです。施設によってサービス内容もさまざまなため、自身の理想とする生活をイメージしながら検討すると良いでしょう。

サ高住のデメリット

サ高住を利用するうえでどんなデメリットがあるか、5つ紹介します。

一般の賃貸住宅と比べて費用が高い

サ高住には安否確認や生活相談のサービスを含むため、一般の賃貸住宅と比べると費用が高くなるでしょう。初期費用はかからないことも多いですが、生活費のほかに介護などの外部サービスを利用する場合は別途料金が必要です。

有料老人ホームより安めの設定になっているものの、追加で利用するサービスによっては高額になる場合もあるため注意しましょう。
サ高住ごとに家賃や管理費が異なり、付随するサービスの内容や料金にも違いがあるため入居前に詳しく調べておく必要があります。

介護度によって退去になる場合がある

入居後に介護度が変化した場合、介護施設への移動が必要になるケースがあります。重度の介護が必要になった場合や、認知症の進行具合によってサ高住では対応しきれない可能性があるためです。

体調の変化や介護状態の重度化が予測される場合には、介護型サ高住から優先的に探すなど、今後のことを踏まえた施設選びをすると良いでしょう。

現在の状態に合わせて施設を決めたとしても、身体状態の変化による退去や施設移動のリスクを考慮し、将来の選択肢をあらかじめ作っておくと安心です。

なお、介護型のサ高住では介護状態が重度であっても入居可能なため、介護度の変化を心配する必要がありません。

連帯保証人を必要とする

サ高住は一般的な不動産契約に基づくため、契約の際に連帯保証人が必要です。費用の支払いが困難な場合の経済的な保障のほかに、入居者本人では難しい手続きがある場合など、保証人が本人に代わっておこなう役割も含まれます。
その他、定期的な報告や緊急時の連絡、入居者が死亡した場合には私物の引き取り、退去手続き等を保証人がおこないます。

老人ホームと比べて見守り体制が手薄

サ高住は比較的健康状態の良い高齢者向けの施設であるため、常駐スタッフは少ない傾向にあります。夜間帯など、常駐するスタッフがいなくても運営は可能なため、スタッフがいない場合、緊急時には対応が遅れる可能性もあるでしょう。
日常生活でのサポートが必要になった際も、対応できる人員が少ない点はデメリットとなり得ます。

運営会社によって内容にバラつきがある

サ高住は運営会社によってサービス内容や料金にバラつきがあるほか、入居基準や退去基準にも差があります。現在の状態だけではなく、ある程度先を見据えた施設選びや事前確認が必要です。
サービス内容や料金、運営基準が異なる施設が多くあるため判断に迷ってしまうことがデメリットにもなるでしょう。

サ高住が提供する主なサービス

施設が提供するサポートは基本的に以下の2つです。

  • 安否確認
  • 生活相談サービス

1つ目は安否確認・見守りサービスです。
スタッフが定期的に行う巡回の際や、食事提供時に健康状態や安否の確認をおこないます。ビデオカメラやセンサーを用いた方法もあり、スタッフが直接確認する方法と併せておこなっている施設もあります。

2つ目が生活相談のサービスです。
相談員が日常生活の困りごとや悩みごとの相談にのります。具体例として、怪我や体調悪化などの緊急時に家族へ連絡をとったり、手の届かない場所にある電球を交換したりと、日常の困りごとに対してのサポートです。

また、施設によっては下記のようなサポートをおこなう場合があります。

  • 食事提供
  • 掃除や洗濯
  • 買い物代行や付き添い

必要なサービスがある方は事前に確認しておきましょう。

サ高住への入居をおすすめできる人

日常生活に不安を抱えている方におすすめです。現在は元気で介護が必要ない方であっても、加齢によるリスクは考えられます。何かトラブルが発生した場合でも、安否確認や日常の悩みを相談できる人がいるのは心強いでしょう。

また、サ高住には同世代の方が多いためコミュニケーションが取りやすく、不安感や孤独感の少ない環境で生活できます。

その他、自分のペースや生活リズムを崩したくない方にもおすすめです。食事時間や入浴時間などの1日の決まったスケジュールはなく、自由に過ごせます。また、好きなタイミングで外出や旅行もできるため、自宅と同じような感覚で暮らせる環境です。

サ高住を選ぶ際のポイント

サ高住の選び方や事前にチェックしておくべきポイントを5つ紹介します。

相談員の配置状況や人員体制

十分な人員配置がされているか事前に確認しておきましょう。先述のとおり、老人ホームなどの施設に比べてサ高住は常駐するスタッフ数が少ない傾向にあります。

日中であれば15~20世帯につき相談員1人以上、要介護者・認知症高齢者の割合が多ければ相談員の追加配置が望ましいです。
現場経験のあるスタッフや有資格者がいる施設であれば、怪我や体調不良を伴う緊急時対応も安心でしょう。

夜間帯は常駐スタッフが居ない場合も少なくありません。サ高住を選ぶ際には常駐スタッフの人数、緊急時に対応できる人員数、スタッフの資格や研修の有無などを確認しておくと安心です。

緊急時の対応

緊急時に対応できる人員数を確認するほか、緊急時にどういった手順で対応するかなどの確認も必要です。緊急時には、連携している病院や事業所・サービス内容など緊急呼び出しボタンの設置場所もチェックしておきましょう。
緊急時ボタンは事故のリスクが高い場所に設置されているか、職員が不在の時はどのような流れで対応するのかなどを確認しておくと安心です。

将来介護状態が変化した際のケアサービスの内容

将来のことを見据えた施設選びが大切です。年齢とともに健康や身体の状態は変化します。現在は元気でも将来介護が必要になったり、介護度があがったりした場合のケア方針は事前に確認しておきましょう。
もし介護度の変化によって退去が必要になった場合、転居先が見つかるまでの医療・介護ケアはどうなっているか詳しく確認しておくことがポイントです。

負担する費用

サ高住は運営する会社によって提供するサービス内容や料金もさまざまです。一般的な賃貸住宅と同様に家賃や光熱費など毎月の費用がかかるほか、食事提供や各サービス利用の際に追加料金が発生する場合があります。

サービス内容が自身のニーズに合っているか、また希望のサービスを利用した場合の料金など、毎月の負担額がどの程度になるかをしっかり確認しましょう。

実際に足を運んで見てみる

最後にポイントとなるのは、実際に足を運んで自身の目で確かめることです。施設の立地や外装・内装など建物の様子を見るほか、実際に住んでいる方たちの雰囲気や、スタッフの雰囲気も見ておきましょう。見学に行く際は、お昼など人が多い時間帯をおすすめします。

これから長期に渡って住む場所であるため、住み心地の良し悪しはとても重要な問題です。資料を見てある程度候補が絞られたら、実際に足を運んで見学してみましょう。

この記事のポイント

サ高住に入居できる条件は?

次のいずれかにあてはまる場合に入居することができます。

  • 60歳以上の方
  • 要支援または要介護の認定を受けた方

また、施設によっては細かい条件がある場合もあります。

詳しくは、「サ高住に入居できるのはどんな人?」をご覧ください。

どんな人がサ高住にはおすすめ?

以下のような方はサ高住への入居をおすすめできます。

  • 日常生活に不安を抱えている方
  • 適度にコミュニケーションを取りたい方
  • 自分のペースや生活リズムを崩したくない方

詳しくは、「サ高住への入居をおすすめできる人」をご覧ください。

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