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光熱費の負担軽減を考慮した家選びのコツ

ざっくり要約!

  • 光熱費の高騰は政府の緩和策の用意があるものの、引き続き先行き不透明な状況である
  • 夏と冬を比較するとよりエネルギーを使うのは冬である
  • 家選びの点では、さまざまな視点で光熱費削減が可能。生活スタイルや居住エリアを考慮して選択すると良いでしょう

電気料金やガス料金の明細書を見て、「昨年の同じ月と比較して光熱費が大幅に上がっている…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?電気やガスは生活に欠かせないエネルギーであるため、光熱費の高騰は日々の暮らしにも影響を与えます。そのため、毎日暮らす住宅を選ぶ際には光熱費の負担についても意識する必要があるでしょう。

そこで今回は、光熱費の負担軽減を考慮した家選びのコツについて解説します。光熱費高騰の理由や世帯ごとの平均光熱費についても解説しますので、これから家選びをする方はぜひ参考にしてみてください。

光熱費の高騰はなぜ起きている?いつまで続く?

電力会社やガス会社が料金値上げを発表しています。度重なる値上げの影響から、例年よりも光熱費が大幅に上がってしまった人もいるでしょう。それでは、なぜ光熱費の値上げが起きているのでしょうか?光熱費が高騰している要因にはさまざまなものが考えられますが、主な要因の一つが石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入価格高騰です。

石炭や液化天然ガスの輸入価格高騰が電気料金やガス料金に影響を与える理由は、日本のエネルギー事情が関係しています。資源エネルギー庁が公表した「2022年度10月分電力調査統計 結果概要」によると、日本における電気事業者の発電電力量のうち最も高い割合を占めるのが「火力」で80.5%。さらに火力発電の燃料種別をみると、石炭が36.3%、液化天然ガスが34.9%の2つが大部分を占めています。

また、都市ガス料金を構成する項目の一つである「原料費調整額」は、原料となる液化天然ガスや液化石油ガスの価格変動に応じて毎月料金が変動します。

液化天然ガスは、天然ガスを冷却して気体から液体化させたものです。日本は天然ガスのほとんどを輸入に頼っており、火力発電の燃料や都市ガスの原料として使っています。火力発電の燃料として使われている石炭も、ほとんどが輸入です。そのため、石炭や液化天然ガスの輸入価格が高騰すると、電気料金やガス料金も高騰しやすくなるのです。

液化天然ガスの輸入価格高騰は、ロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染症の流行、脱炭素社会を目指す国々による需要増加などが要因として考えられます。そして、光熱費高騰の要因は他にも、老朽化した火力発電所や原子力発電所を停止したことによる電力供給不足、再生エネルギー普及のために徴収されている再エネ賦課金の値上げなども挙げられます。今後も日本国内におけるエネルギー事情や世界情勢の影響を受けて光熱費が変動する可能性はあるでしょう。


とはいえ、光熱費がこのまま値上がりし続けてしまうと、国民の生活をさらに圧迫してしまいます。そこで政府は家庭や企業における光熱費の負担軽減策として、2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を始めました。補助の対象となる電力会社・ガス会社を利用していれば、2023年1月使用分から9月使用分まで値引きを受けられます(ただし、1~8月使用分と9月使用分で割引額が異なります)。対象となるのは電気・都市ガスの料金であり、プロパンガスは対象ではありません。詳しくは、電気・ガス価格激変緩和対策事業の公式サイトをご覧ください。

光熱費の推移/年

電気料金やガス料金といった光熱費は、世帯人数によっても異なります。ここでは、世帯人数別の光熱費について確認してみましょう。

出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編(単身世帯)」「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)」より表グラフを作成
出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編(単身世帯)」「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)」より表グラフを作成

上記は、総務省統計局が家計の収入・支出などを毎月調査している「家計調査」から「電気代」「ガス代」の1か月あたりの平均額をまとめたものです。

電気代・ガス代のいずれも、どの世帯構成においても、2021年以前と比較すると2022年は平均額が高くなっていることが読み取れます。特に電気代の高騰は顕著で、5人世帯では2018年に12,846円だった平均額が2023年には120.46%増の15,474円になっています。

光熱費が高騰する季節は?夏と冬どちらの消費量が多い?

ここでは、総務省統計局の「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)」より家計における毎月の平均光熱費から、光熱費が高くなりやすい季節をみていきましょう。

出典:総務省統計局「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)」より表グラフを作成

夏の光熱費

二人以上の世帯における夏(7~9月)の電気代を見ると、2021年は8,091円~10,393円、2022年は9,869円~13,202円。ガス代は、2021年が3,371円~3,769円、2022年は3,321円~4,156円となっています。

冬の光熱費

続いて、二人以上の世帯における冬(1~3月)の電気代をみてみましょう。2021年は11,875円~13,197円、2022年は12,938円~16,273円。ガス代は、2021年が5,740円~6,425円、2022年が6,288円~7,178円でした。

二人以上の世帯における夏と冬の平均光熱費を比較すると、電気代・ガス代ともに冬の方が高くなっていることが読み取れます。この理由の一つは、夏よりも冬の方が外気温とエアコンなどの設定温度の差が大きいことにあるでしょう。外気温と室内温度の差が大きいと、室内を快適な温度にするためにエアコンなどの電力消費量が大きくなりやすいことが考えられます。さらに、夏はエアコンのみを使用している家庭でも、冬はエアコンだけでなく複数の暖房器具を併用しているケースがあります。そのため、夏よりも冬の方が光熱費はかかりやすいと考えられるでしょう。

また、夏よりも冬の方が日照時間は短く電気・ガスを利用する時間が長くなりやすい、冬は寒さにより外出時間が減りやすい、冬は洗濯物が乾きにくく乾燥機の使用頻度が上がることなども、冬の方が光熱費が高くなりやすい理由として考えられます。

なお、光熱費は生活する地域によっても異なります。たとえば、毎年雪が積もるほど降る地域と気温が氷点下に達することがほとんどない地域では、標準的な住宅設備や暖房器具の使い方などが異なるでしょう。また、地域によって基本料金や送電にかかるコストが異なることなども、地域によって料金に差が出る要因として考えられます。光熱費の負担を軽減させたい方は、家電の使い方や待機電力を減らす工夫をするなど、ご自身やご家族の生活スタイルに適した節約方法を検討してみてください。

これから家を選ぶ場合、光熱費の負担軽減のためにはどんな点に気をつければ良いのか?

電気やガスは毎日の暮らしに欠かせないエネルギーです。そのため、これから家選びをする場合は「光熱費の負担軽減」についても考えた方がよいでしょう。ここでは、光熱費の負担軽減を考慮した家選びのコツについて解説します。

マンションVS戸建て|光熱費どっちがお得?

マンションと一戸建て、どちらが光熱費を抑えられるか。というのは、立地や構造、広さ、設備などによって異なるため一概に言えるものではありません。

マンション、一戸建ての特徴を踏まえつつ、どのような点に気をつけて物件選びをすると良いか、そのポイントについて解説させていただきます。

広さ・間取り

「光熱費の推移/年」の項目でご紹介した家計調査の表グラフから、ガス代よりも電気代の方が負担は大きいことが読み取れます。大型家電の中でも冷暖房の消費電力は大きくなりやすいため、冷暖房効率の良い物件が光熱費の負担軽減につながりやすいといえるでしょう。

居住面積は狭い方が冷暖房効率は良くなります。また、同じ床面積でも、吹き抜けがあるなど、空間が広まると、その分光熱費は多くかかる傾向にあります。

立地

マンションの場合、上下階のエアコン使用が建物全体の熱効率に影響を与えることがあるため、両隣に部屋がある「中部屋」や上に部屋がある「最上階よりも下の階」の方が一戸に必要な力が少なく済む場合もあることが考えられます。

夏の日差し、冬の日差しの入り方も着目するべきポイントです。日当たりの良い部屋は好まれますが、冬の日差しはポカポカ暖かく感じても、夏の日差しが強すぎて冷房をフル稼働することになる可能性もあります。

設備

例えば、エアコンの使用年数がどのくらいであるか、ペアガラスの窓であるか、室内側の断熱処理など、熱効率の高さなどがチェックするべきポイントとなります。
ペアガラスは、ガラスを二重にした構造で、設置することで「断熱性能が高まる」、「遮熱性能が高まる」というようなメリットがあります。

また、一戸建ての場合は、太陽光発電を導入する、ZEH住宅にするなど、マンションとは違い個人の判断で建物全体の対策を考えられるメリットがあります。太陽光発電の導入などには初期費用がかかるため、費用対効果を考慮した上で検討してみましょう。

構造

高気密・高断熱の性能を持つ建物は、それ以外の建物と比較して光熱費がかかりにくいと言われています。

「高気密」とは、家と外部の間にすき間が少なく、気密性が高いこと。冷気、暖気が家の中から逃げにくくなります。 「高断熱」とは、しっかりと断熱材を敷くことで、外気に左右されないようにすること。 小さなエネルギーで家の中を快適な温度に保つことができます。

オール電化VSガス併用|光熱費どっちがお得?

オール電化とガス併用では、どちらの方が光熱費を抑えやすいのでしょうか?ここでは、オール電化向けの電気料金プランとガス料金を比較してみましょう。

1kWhあたりのエネルギーコスト

電気料金オール電化向け都市ガス料金プロパンガス料金
(東京電力エナジーパートナー「スタンダードS」)※1人~4人暮らし向けプラン電気料金(東京電力エナジーパートナー「スマートライフS」東京ガス「東京地区等」エネ研・石油情報センター「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報」
1kWhあたりのエネルギーコスト19.88円~30.57円17.78円〜25.8円15.5円(一般契約料金B表 23年1月検針分)21.69円(都心 10m2)

出典:東京電力エナジーパートナー
スタンダードプラン(関東)」「スマートライフ(オール電化)
東京ガス「ガス料金表
エネ研・石油情報センター「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報(2022年12月時点)」

※1kWh=860kcal、発熱量を都市ガス11,000lcal/m3・プロパンガス24,000kcal/m3として計算しています1kWhあたりのエネルギーコストを比較すると、オール電化向け電気料金よりも都市ガス料金の方が安くなっています。

基本料金

電気料金オール電化向け都市ガス料金プロパンガス料金
(東京電力エナジーパートナー「スタンダードS」)※1人~4人暮らし向けプラン電気料金(東京電力エナジーパートナー「スマートライフS」東京ガス「東京地区等」エネ研・石油情報センター「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報」基本料金合計
オール電化1,716円(60A)1,716円
電気ガス併用(都市ガス)858円(30A)1,056円(一般契約料金B表)1,914円
電気ガス併用(プロパンガス)858円(30A)1,952円(都心)2,810円

出典:東京電力エナジーパートナー
スタンダードプラン(関東)」「スマートライフ(オール電化)
東京ガス「ガス料金表
エネ研・石油情報センター「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報(2022年12月時点)」

※1kWh=860kcal、発熱量を都市ガス11,000lcal/m3・プロパンガス24,000kcal/m3として計算しています

しかし、ガス併用の場合は「電気+ガス」の契約、オール電化は「電気のみ」となることから、基本料金を比較するとオール電化の方が安くなります。そのため、一般的には電気のみの契約で良いオール電化の方が光熱費の負担を抑えられる可能性が高いといわれているのです。

ただし、オール電化とガス併用のいずれにしても、居住する地域や家族の生活時間帯、電気・ガスの使い方などによって光熱費は変わるでしょう。たとえば、オール電化向けプランは昼間が高く夜間に安くなる料金体系が一般的であるため、昼間の電力使用量が多い場合はかえって光熱費が高くなってしまう可能性もあるのです。それぞれの特徴を踏まえて、ご自身やご家族に適したものを選ぶことが大切です。

床暖房VSエアコン|光熱費どっちがお得?

光熱費の観点でみると、電気式床暖房でも、ガス温水式床暖房でも、エアコンと比較すると床暖房の方がコストがかかる傾向にあります。

ただし、比較検討の際には光熱費以外のメリットデメリットも考慮して選択されるのが良いでしょう。

エアコンのみよりも床暖房がある方が足元から体全体を温められるので、「部屋全体の暖かさ」を重視するのであれば床暖房は選択肢に入りやすいでしょう。また、床暖房はエアコンのように風を出さないので乾燥しにくく、お手入れをしやすいこともメリットです。

一方で、床暖房には、設置する場合の初期費用が高くなりやすいこと、エアコンのみと比較すると光熱費がかかりやすいことなどのデメリットもあります。床暖房は熱源の違いなどによりそれぞれ初期費用や光熱費が異なる特徴があることから、設置する場所や家にかける予算なども考慮しながら導入を検討してみてください。

まとめ

日本は、国内で使用されるエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。そのため、燃料資源の輸入価格が高騰すると電気料金やガス料金の高騰にもつながりやすいのです。光熱費が高騰している要因はその他にも、電力供給不足や再エネ賦課金の値上げなども考えられます。2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による値下げが始まったため、今後光熱費がどのように推移していくか注目していきましょう。

光熱費の負担を軽減させるためには、毎日暮らす家の選び方もポイントの一つとなります。今回ご紹介したように「マンション・戸建て」「オール電化・ガス併用」「床暖房・エアコン」の選択によっても光熱費負担の大きさは変わるでしょう。これから暮らしたい地域やご自身やご家族の生活スタイルなども考慮しながら、最適な住宅を選ぶことが大切です。

この記事のポイント

夏と冬の電気代・ガス代(光熱費)、どっちがかかる?

総務省統計局「家計調査 家計収支編(二人以上の世帯)」のデータより、二人以上の世帯における夏と冬の平均光熱費を比較すると、電気代・ガス代ともに冬の方が高くなっていることが読み取れます。

詳しくは「光熱費が高騰する季節は?夏と冬どちらの消費量が多い?」をご覧ください。

マンションと戸建ての電気代・ガス代(光熱費)、どっちがお得?

マンションと一戸建て、どちらが光熱費を抑えられるかというのは、立地や構造、広さ、設備などによって異なるため一概に言えるものではありませんが、それぞれの特徴と物件選びの際に見るべきポイントは存在します。

詳しくは「マンションVS戸建て|光熱費どっちがお得?」をご覧ください。

執筆者プロフィール

小花絵里
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/FP2級など

不動産会社・住宅メーカーで働いていた経験から、不動産についてわかりやすく解説する不動産ライター。大手Webメディアを中心に多数寄稿しています。

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