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ウィズコロナ・ポストコロナ時代の不動産市場を徹底予想

ざっくり要約!

  • 不動産の成約実績に大きな影響を与えたのは最初の緊急事態宣言時のみで、2回目以降は目立った成約数の変化はなかった。
  • 暮らし方、働き方に変化が起きたことで住まいを見直す人が増えた。一時、郊外の需要が伸びていたが、2022年には都心回帰の様相がみられる。
  • コロナ禍で生まれた変化とともに、今後の金融政策や国際情勢などにも注視して市況を読む必要がある。

新型コロナウイルスの流行以降、緊急事態宣言の発令が繰り返され、リモートワークが普及するなど人々の生活には大きな影響がありました。

2023年5月8日、最初の緊急事態宣言から3年が経ち、新型コロナの感染症法上の位置づけについて、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行が完了しました。

本記事では、ウィズコロナ、ポストコロナ時代の不動産市場を徹底的に予想し、市場の変化と今後の展望について解説していきます。

新型コロナウイルスの影響で不動産市場はどう変わったのか?

四度にわたって発令された緊急事態宣言。まずは、発令のタイミングと陽性者数の推移に不動産市況のデータを合わせて解説します。

新型コロナウイルスの流行状況と不動産市況

首都圏中古マンション

首都圏中古マンションの成約件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

首都圏中古マンションの成約件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移
参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

中古マンションの成約件数は、2020年4月〜5月の一度目の緊急事態宣言下で大きく減少したものの、解除後は回復。その後の緊急事態宣言では、ほとんど影響を受けていません。しかし、2022年に入ってからは陽性者数が増えた時期に若干の成約数減少が見られました。また、全体的には2021年頃から成約数は微減しています。

首都圏中古マンションの成約価格㎡単価(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

首都圏中古マンションの成約価格㎡単価(月次)と新規陽性者数(日別)の推移
参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

コロナ禍前から中古マンション価格は上昇傾向にありましたが、一度目の緊急事態宣言解除後からその動きが加速しています。価格については、緊急事態宣言や陽性者数増加の影響をほとんど受けていません。いまだ上昇を続ける中古マンション価格ですが、徐々に高止まり感が見られはじめています。

首都圏中古マンションの在庫件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

首都圏中古マンションの在庫件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移
参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

コロナ禍に入ってから減り続けていた在庫件数ですが、2021年頃から上昇傾向に転じています。現在の在庫数は、コロナ禍前に戻りつつあります。市場原理的には、在庫数が増えれば価格は下がるもの。しかし、実際には、価格は2021年以降も高騰傾向を維持しています。この要因は、依然として低水準の住宅ローン金利とそれに伴う活発な市場にあるものと考えられます。

首都圏中古戸建

首都圏中古戸建の成約件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

首都圏中古戸建の成約件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移
参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

中古戸建の成約価格も、中古マンション同様、一度目の緊急事態宣言下で大きく減少しました。その後の推移も、中古マンションと同じく緊急事態宣言の影響はほぼなく、陽性者数が著しく増加したときには若干の減少が見られました。

首都圏中古戸建の成約価格(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

中古マンション価格は、コロナ禍前の金融緩和政策が始まった2013年頃から高騰傾向にありましたが、中古戸建についてはコロナ前までそこまでの高騰が見られていませんでした。しかし、一度目の緊急事態宣言解除以降は、大きく高騰。これは、ウッドショックなどにより、新築戸建の供給数が減少したことも起因しているものと考えられます。

首都圏中古戸建の在庫件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移

首都圏中古戸建の在庫件数(月次)と新規陽性者数(日別)の推移
参考「厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」「レインズマーケットレポート」から東急リバブル(株)にて作成

在庫件数も中古マンション同様、減少から増加に転じつつあります。しかし、中古マンションのように、コロナ禍前に戻るほどの増加は見られません。

コロナ禍での不動産市場の変化

ニーズの変化

コロナ禍で、私たちの暮らし方・働き方は大きく変わりました。それに伴い、住まいを見直す人も増えています。これが、コロナ禍にあっても不動産価格が下落しない大きな要因の1つだと考えられます。

具体的には、在宅勤務が一般化したことで、通勤のしやすさよりも広く、閑静な環境が好まれるようになったり、騒音トラブルが少ない戸建の人気が高まったりするなどの変化が見られます。

取引上の変化

コロナ禍では、下記のように「非対面」で不動産取引できるシステムやサービスの台頭も目立っています。

  • オンライン・VR内見
  • ネット査定
  • IT重説
  • 電子契約

これらはアフターコロナにおいても、不動産を買いやすく、売りやすくするために効果的なシステムです。例えば、遠方の不動産を売買したい方や怪我や病気で療養中の方、出張中の方なども、不動産取引がしやすくなったといえるでしょう。

住宅市場の見通しは?郊外から都心への流れと価格変動の予測

総務省「住民基本台帳人口移動報告」都道府県別転入超過数(2021年、2022年)
出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」

コロナ禍では神奈川県や埼玉県、千葉県など東京近郊都市の転入超過が目立っていましたが、それも2022年には一転。東京都の転入超過が2021年から大幅に回復し、都心回帰の様相を見せています。

東京23区全てで地価上昇

令和5年地価公示 住宅地 平均変動率マップ
出典:東京都

2023年3月に国土交通省から発表された公示地価によれば、地価の上昇率が拡大しています。特に都市中心部や生活利便性に優れた地域では、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあり、住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続。

東京都は、新型コロナウイルス感染症の影響を最も大きく受けたエリアです。緊急事態宣言が繰り返し発出され、他の地域と比較して陽性者が多い状況が続きました。

その一方で、テレワークの進展に伴い在宅時間が長期化し、より広い住宅を求めるニーズが拡大した傾向が最も強まったのも東京都。コロナ禍からの回復基調も最も強く出ています。

分譲マンションの販売状況は堅調

いずれの地域も、住環境・利便性に優れ、ステイタス性も抜群な分譲マンションは、コロナ禍においても販売状況は堅調です。テレワークの進展から、都心部のマンションのほか、一次取得者層による住宅取得が活発化している傾向がみられます。多少駅から遠くても、手の届く範囲にある住宅の需要が増えているようです。

賃貸需要も回復傾向に

賃貸マンションについては、コロナ禍で都心人口が減少しているほか、テレワークの進展でより広い住戸を求める傾向や所得減対応のため、賃料水準の低い地域に転出する傾向なども見られました。空室率が上昇しているエリアも少なからず見られたものの、生活が正常化に向かう中で、大学生などの単身需要も回復に向かいつつあります。

一方で、投資家にとってはコロナ禍において他のアセットと比較してレジデンス物件の安定性が再認識されて おり、引き続き投資用不動産としての需要は旺盛なようです。

テレワーク普及でオフィス市場はどうなる?

コロナ禍で普及した、リモートワーク。しかし、2023年3月からマスクの着用は任意となり、5月8日には新型コロナの感染症は季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行が完了していることから、コロナ前の働き方に戻す企業も見られ始めています。2023年には、以下のように多数のオフィスのオープンや大型開発が予定されています。

  • ミッドタウン八重洲
  • 虎ノ門・麻布台プロジェクト
  • 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー
  • 東京三田再開発プロジェクト・オフィスタワー
  • 渋谷駅桜丘口地区市街地再開発事業

比較的、堅調に推移しているオフィス市場ですが、都心5区では供給が増えており、空室率はやや高い傾向にあります。この傾向は、投資市場の需要が強いことにより、利回りの低下が進んでいることが一因であるものと考えられます。

テレワーカー率は微減に留まる

雇用型テレワーカーの割合【H28〜R4】

テレワークの継続意向調査

テレワークの継続意向調査
【設問対象者】雇用型テレワーカー[n=9,404] (出典:国土交通省)

国土交通省によれば、首都圏における2022年度の雇用型テレワーカーの割合は40.0%と、前年比わずか2%ほどしか減少していません。また、テレワークの継続移行がある人は9割近くに及んでいることから、コロナ後もテレワークが働き方の1つであり続けることでしょう。

とはいえ、オフィスを全く持たない企業ばかりではなく、縮小や移転といった動きは今後も少なからず見られるはずです。働き方の変化、そしてアフターコロナを見据えた回帰は、オフィス需要の変化と一部の活性化をもたらすものと考えられます。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大は、不動産市場にも大きな影響を与えました。そして、その余波はいまだ残っています。とはいえ、生活もビジネスもコロナ禍前に戻りはじめているのも事実です。コロナ禍で生まれた変化とともに、今後の金融政策や国際情勢なども不動産市場に大きく影響することの1つ。変化が大きい時期の不動産売買や投資判断は特に慎重になる必要があるため、不動産会社など専門家の見解も取り入れたうえで判断することをおすすめします。

この記事のポイント

新型コロナウイルスの流行は不動産市場にどのような影響を与えましたか?

中古マンションの成約件数は、2020年4月〜5月の一度目の緊急事態宣言下で大きく減少したものの、解除後は回復。その後の緊急事態宣言では、ほとんど影響を受けていません。詳しくは「新型コロナウイルスの流行状況と不動産市況」をご覧ください。

ウィズコロナ・ポストコロナ時代の不動産市況はどうなる?

コロナ禍では神奈川県や埼玉県、千葉県など東京近郊都市の転入超過が目立っていましたが、それも2022年には一転。東京都の転入超過が2021年から大幅に回復し、都心回帰の様相を見せています。詳しくは「住宅市場の見通しは?郊外から都心への流れと価格変動の予測」をご覧ください。

執筆者プロフィール

鈴木美由紀

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター
不動産会社経営(約20年)を経て、現在は、創刊63年の不動産業界専門紙「週刊住宅」の代表取締役。編集長を兼務。

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