2023年6月、空き家対策特別措置法(空き家法)の改正法が参議院本会議で可決・成立しました。
空き家法は、空き家の適正管理を目的に制定された法律です。管理が行き届いていない「特定空き家」は、同法により固定資産税の減額措置の解除や過料といったペナルティが課されます。そして今回の改正により、固定資産税減額解除の対象となる空き家が「管理不全空き家」にまで拡大されることが決まりました。改正法は、年内にも施行される見込みです。
記事サマリー
空き家対策特別措置法(空き家法)とは?
空き家対策特別措置法(空き家法)は、2015年に施行された空き家に関する初めての法律です。従前まで、各自治体は、個人の資産である空き家の管理に対し適正な管理を「お願い」することはできても「指導」などをすることはできませんでした。しかし、空き家法が施行されてからは、空き家の所有者に対し、助言や指導、勧告、命令などの措置が取れる権限が各自治体に与えられています。
「特定空き家」指定で増税や過料のおそれがある
現行法では、各自治体が助言や指導できる対象は「特定空き家」に限定されています。特定空き家とは、以下のような状態にある空き家を指します。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(空き家対策特別措置法第2条2項)
各自治体は、空き家法に則り、指導や勧告、命令などをしていく中で空き家所有者に対して“ペナルティ”を課します。まず「勧告」のタイミングで、空き家の建つ土地の「住宅用地特例」が除外となります。住宅用地の特例とは、次のように固定資産税を軽減する効果のある特例です。
面積 | 固定資産税課税評価額 | 都市計画税課税評価額 |
200㎡以下の部分 (小規模住宅用地) | 1/6 | 1/3 |
200㎡超の部分 (一般住宅用地) | 1/3 | 2/3 |
この特例が適用除外になることで、空き家の建つ土地の固定資産税の負担額は、実質的に大幅に増額されます。
勧告に続く「命令」に背いた場合は、50万円以下の過料に科されます。最終的には「代執行」により空き家は撤去され、解体にかかった費用は空き家の所有者に請求されます。
空き家法改正が成立した背景
今回、改正空き家法が成立した背景には、深刻化する空き家問題と現行法の限界があります。
空き家問題の現状
空き家の数は、1998年からの20年間で約1.5倍に増加しています。直近の調査によれば、空き家率は13.6%。空き家の数は、849万戸にもおよんでいます。全国にある住宅のうち、およそ7軒に1軒は空き家になっているということです。中でも「その他の住宅」は20年間で約1.9倍にまで増加しました。その他の住宅とは、二次的に使われていたり、賃貸用や売却用として住む人・購入する人を募っていたりすることがなく、長きに渡って人が住んでいない空き家や活用される見込みのない空き家を指します。
・「空き家問題」に関する記事はこちら 空き家問題とは?政府の対策や税金、空き家バンクや購入方法も解説 |
現行法の効果は限定的
特定空き家に対する助言・指導や勧告、命令、代執行の事例は、増加傾向にあります。しかし、2019年(令和元年)までに勧告によって固定資産税減額の解除にいたったのは1,351戸、代執行にいたったのは260戸に留まります。空き家の数が800万戸を超えていることを考えれば、現行法による効果は非常に限定的だといえるでしょう。
新たに固定資産税減額解除の対象となる「管理不全空き家」とは?
管理不全空き家とは
改正空き家法によって新たに固定資産税減額解除の対象となる「管理不全空き家」とは、放置すれば特定空き家となるおそれのある空き家を指します。
管理不全空き家は「指導」「勧告」の対象に
管理不全空き家は、各自治体からの「指導」と「勧告」の対象となります。特定空き家と同様に「勧告」のタイミングで空き家の建つ土地の「住宅用地特例」が除外となることで、実質的に固定資産税の負担額が大幅に増額されます。
管理不全空き家は特定空き家の12倍
市区町村が把握している現存している特定空き家は約2万戸ですが、管理不全空き家は12倍の約24万戸にのぼります。(引用:国土交通省「空き家対策小委員会とりまとめ(令和5年2月7日」)2023年末には、固定資産税減額解除の対象となる空き家がこれだけ増えることから、空き家の所有者には早急な対策が求められるといえるでしょう。
空き家の固定資産税増税や過料を回避する方法
「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定され、固定資産税の実質的な増税や過料が科されることを避けるために取れる対応策は次のとおりです。
適切に管理する
空き家法は、管理が行き届いていない空き家を減らすことを目的に制定された法律です。適正に管理されていれば「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されることはありません。また、指定されたとしても、助言や指導に従って管理状況を改善すれば、続く勧告は避けられます。
周囲に危害を与えるリスクのある空き家は修繕し、不衛生な空き家や庭にゴミが散乱しているような場合は定期的に清掃することで、勧告まで進むリスクを低減できるでしょう。
活用する
自分や親族が住む予定がない場合は、空き家を活用することも検討してみましょう。第三者であっても、誰かが住んでいたり、使用していたりすれば空き家ではなくなります。空き家の活用方法の一例は、次のとおりです。
- 賃貸に出す
- 民泊を経営する
- 解体して土地活用をする
・「土地活用」に関する記事はこちら 土地活用は儲かる?ケース別の土地活用方法10選! |
売却する
空き家を所有し続ける限り「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されてしまう可能性があります。それを避けるための管理にも、お金や手間がかかり続けます。また、空き家を活用した場合は、空き家の管理ではなく「経営」という手間がかかることになるでしょう。
しかし、空き家を売却すれば、管理する必要も、経営する必要も一切なくなります。加えて、固定資産税がかかることもなくなります。
・「空き家 売却」に関する記事はこちら 空き家の売却について解説!解体して更地にする、そのまま売る以外の方法も紹介 |
まとめ
改正空き家法は、2023年12月までに施行される見込みです。新たに固定資産税減額解除の対象となる「管理不全空き家」は、周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空き家」以前の空き家を指します。空き家所有者には、これまで以上に徹底した空き家の管理が求められることになるでしょう。
空き家法の改正により、固定資産税の増税や過料などのペナルティを避けることを目的に、多くの空き家が市場に放出される可能性も否めません。需給バランスが供給に傾けば、ただでさえ売りにくい空き家の価値がさらに低下するおそれもあります。利用する予定のない空き家をお持ちの場合は、活用や売却を視野に入れ、不動産会社に相談することをおすすめします。
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