マンション価格は、2013年頃から高騰を続けています。現在も全国的に高騰傾向にあるものの、とりわけ2024年に入ってからの都心の中古マンション価格の上昇率は他のエリアを凌駕しています。
本記事では、中古マンション市場の現状をお伝えするとともに、都心の中古マンション価格が急騰している要因を考察します。
記事サマリー
東京都心中古マンション価格の推移
■中古マンション70㎡換算価格の推移
東京カンテイによれば、都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区)の中古マンション価格は、2023年に1億円の大台を突破しました(70㎡あたり)。23区内の他のエリアの中古マンション価格も高騰傾向にあるものの、2018年1月から2024年1月までの上昇率は1.2倍ほどですが、都心6区は1.5倍を超えています。
4月以降の各エリアの価格推移および前年同月比は、以下の通りです。
■各都市圏中心部70㎡あたりの中古マンション価格
2024年4月 | 5月 | 6月 | ||||
価格 | 前年同月比 | 価格 | 前年同月比 | 価格 | 前年同月比 | |
都心6区 | 11,588万円 | 13.3% | 11,924万円 | 16.3% | 12,058万円 | 17.1% |
城南・城西6区 | 6,942万円 | 0.1% | 7,030万円 | 2.1% | 7,195万円 | 4.4% |
城北・城東11区 | 5,300万円 | 0.1% | 5,339万円 | 0.7% | 5,390万円 | 1.8% |
大阪市中心6区 | 5,547万円 | 4.3% | 5,753万円 | 8.3% | 5,836万円 | 8.7% |
名古屋市中心3区 | 3,620万円 | -3.1% | 3,713万円 | 0.2% | 3,677万円 | -0.5% |
いずれの地域も高騰傾向にあるものの、やはり都心6区の上昇率は他の地域を大きく上回っています。都心6区では、平均価格が1億円の大台から1.1億円になるまで1年近くを要しましたが、1.1億円台から1.2億円台まではわずか半年で到達しており、高騰のペースが加速しています。
都心のマンション価格高騰が加速している要因は?
マンション価格が高騰している要因は、低金利・共働き世帯の増加・円安などさまざまなことが考えられますが、近年の都心マンション価格の急騰は、供給数および在庫物件数の減少によるものと推測されます。
新築マンション供給数は他のエリア以上に減少
■新築マンション供給戸数の年次別推移表(全国・首都圏・近畿圏)
新築マンションの供給数は、90年代半ばのピーク時と比べて半減以下です。とくに近年は、東京23区の供給数が大きく減少しています。2024年上半期の供給数は、首都圏全域で前年比13.7%減少していますが、東京23区は-32.3%と大きく数を減らしています。
■首都圏および大阪府の新築マンションの発売戸数
都心部の供給数が減少している理由としては、まず用地不足が挙げられます。マンション用地として適切な広大で利便性が高い土地はほとんど都心部に残っていないということに加え、昨今ではインバウンド需要の高まりからホテルの建設も相次いでいます。また、資材価格や人件費の高騰、人材不足などにより、建設・分譲スケジュールが見直されているということもあるでしょう。4月には、総戸数2,000を超える中央区のタワーマンションの販売活動が、強度不足によって休止したということもありました。
デベロッパーは、一定の契約率が見込めるように販売スケジュールを調整するものです。近年の新築マンションの契約率は、売れ行き好調の目安となる「契約率70%」前後を維持していることから、今後も大幅に供給数が増えることはないものと考えられます。
中古マンションの新規登録数・在庫件数が減少
■東京都23区エリア別中古マンション新規登録件数(前年比)
上記グラフのように、東京都23区全域で中古マンションの新規登録件数は減少しています。都心3区は、とくに減少率が高くなっています。
■首都圏中古マンション在庫件数
中古マンションの在庫件数はコロナ禍で大きく減少しましたが、2021年を底に増加基調にありました。ただそれも2023年後半頃がピークで、以降は減少傾向にあります。
■東京都23区エリア別中古マンション在庫物件数
とくに都心3区(千代田区・中央区・港区)など都心部の在庫数の減少率は、23区の他のエリアを大きく上回っています。東京都全域で在庫数は減少していますが、2024年6月の前年同月比減少率は他のエリアが-10%台のところ、都心3区は-23.1%です。
成約件数の増加率は低調
■東京都23区エリア別中古マンション成約件(前年同月比)
成約件数はいずれのエリアも増加傾向にはあるものの、大きく数を増やしているわけではありません。各エリアの成約件数および前年同月比は、以下のとおりです。
2024年4月 | 5月 | 6月 | ||||
成約件数 | 前年同月比 | 成約件数 | 前年同月比 | 成約件数 | 前年同月比 | |
都心3区 | 237件 | 12.9% | 204件 | 2.5% | 237件 | 2.2% |
城東 | 409件 | 30.7% | 336件 | 3.7% | 411件 | 12.6% |
城南 | 327件 | 9.0% | 278件 | 9.4% | 337件 | 7.3% |
城西 | 256件 | 16.9% | 202件 | 1.0% | 262件 | 4.0% |
城北 | 286件 | 23.8% | 238件 | 2.1% | 281件 | 7.7% |
都心3区は東京都23区の中でも成約件数の増加率が低いことから、やはり都心部の中古マンションの価格急騰の主な要因は、供給数と在庫件数の減少にあるものと考えられます。
都心の中古マンション価格は上昇し続けるのか?
首都圏では中古マンションの在庫物件の増加は止まり、2023年末頃から減少傾向にありますが、中古戸建ては現在も在庫物件が積み上がり続けています。これは、東京都23区も例外ではありません。また中古マンションについても、首都圏全域や東京都23区では在庫件数の減少が見られるものの、多摩地区や埼玉県、千葉県、神奈川県では在庫物件が増え続けている状況です。成約件数も、23区を除くエリアでは減少し始めている地域も見られます。コロナ禍では暮らし方や働き方の変化もあって、一時的に住み替え需要が拡大しました。しかし、これもすでに一巡しているものと考えられます。
こうした中、都心の中古マンションの価格が上がり続けているのは、手放す人が減った一方で、高い需要を維持していることによるものと推察されます。都心の中古マンションの平均価格は1億円を大きく上回っていることから、もはや一般的な収入の方にはなかなか手が届きません。購入層は、パワーカップルや国内外の投資家、富裕層が中心です。こうした層には、キャッシュやそれに近い形で購入できる人も含まれ、取得費以上に収益性を重視する傾向も強いことから、今後、金利上昇やさらなる高騰があったとしても、都心の中古マンションは高い需要を維持し続けるでしょう。
日本不動産研究所によれば、2023年10月から2024年4月までのマンション価格の上昇率は、世界15の主要都市の中で東京と大阪がトップでした。世界的にいわゆる「金余り」が見られていることもあり、都心の中古マンション価格は今後さらに高騰する可能性があります。
■マンション価格指数
まとめ
マンション価格は長らく高騰を続けていますが、現在は、需要が落ち在庫物件の数を増やしているエリアと、供給数が減る一方、高い需要を維持していることで価格が急騰しているエリアが混在している状況です。「首都圏」や「東京都」といったマクロな指標だけ見ていては、このような内情を知ることはできません。高価格帯のマンションの価格がさらに上がり、割合が増えれば、今後も広域の平均価格は上昇していくことになるでしょう。しかし、自身が売買を考えているエリアでは、すでに需要が頭打ちになっている可能性もあります。不動産の売り時・買い時を考えるうえでは、マクロな指標だけでなく、ミクロな指標にも目を向けることが大切です。
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