記事監修・取材先 さくら事務所会長 長嶋 修 |
1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所を設立、現会長。 業界の第一人者として不動産購入のノウハウにとどまらず、業界・政策提言にも言及するなど精力的に活動。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動など、様々な活動を通じて『第三者性を堅持した不動産コンサルタント』第一人者としての地位を築く。 2024年12月現在、登録者数7.2万人のYouTubeチャンネル(長嶋修の「日本と世界の未来を読む」)を運営。不動産投資・政治・経済・金融全般についての情報発信をするYouTuberとしても活動中。 |
2013年頃から不動産の価格は一貫して上昇しており、2024年も高騰傾向を維持しました。都心部では数十億円、数百億円のマンションが分譲されており、郊外エリアでも駅前では億ションが目立つ一方で、2024年に公表された最新の空き家数・空き家率は過去最高を記録。公示地価も全国平均は90年代のバブル期以来の伸び率が見られましたが、30年以上にわたって地価が下落し続けているエリアもあります。
2025年は、不動産価格が大暴落するとされる「2025年問題」や金利の上昇も気になるところです。2024年の不動産市場の振り返りとともに、2025年の見通しについて、さくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修さんに聞きました。
2024年の不動産市場を振り返る
■不動産価格指数(住宅)(令和6年8月分・季節調整値)

2024年も不動産価格は大きく上昇しました。とりわけマンションの上昇率は著しく、2010年平均を100とした場合の不動産価格指数は200を超えています。3月には日本銀行がマイナス金利政策を解除し、2024年後半には一部の金融機関が住宅ローンの変動金利を引き上げましたが、依然として不動産価格は上昇傾向を維持しています。
「都心・駅前・駅近・大規模・タワーに代表される好条件のマンションは、引き続き好調です。一方で、それ以外のマンションには失速感も見られ始めています。金利上昇はわずかではありますが、その影響が徐々に出始めているのでしょう」(長嶋修さん、以下同)
■70㎡あたりの中古マンション価格推移

上記のグラフは、中古マンション価格の推移を表したものです。東京23区や大阪市では2024年にもう一段の上昇を見せましたが、他のエリアはほぼ横ばい。一部、下落傾向に転じたエリアも見られます。
■三大都市圏中古一戸建ての住宅平均価格推移

中古戸建にいたっては、下落こそしていないものの、東京23区や大阪市であっても高騰傾向は見られません。
「一戸建てについては、完全に“コロナ需要”が一巡したのだと思います。コロナ禍では暮らし方や働き方の変化もあって、マンションより広い戸建ての人気に火がつきましたが、それも一時的なものでした。パワーカップル、富裕層、国内外の投資家といった予算が潤沢にある層の需要は、利便性が高く、資産性も収益性も高い都市部のマンションに向いています。富裕層や投資家については、金利が上がったところで予算が大きく変わることはありません。だからこそ、都市部のマンションは価格が上がり続け、その他のエリアや一戸建ての価格は頭打ち感が出てきているのでしょう」
「2025年問題」で不動産価格が大暴落する?
■高齢化の推移と将来推計

2025年には、1947年から1949年にかけての第一次ベビーブームに出生した団塊の世代のすべての方が75歳の後期高齢者に突入します。これによって相続発生件数や空き家が増加し、不動産価格が大暴落するのではないかといった論調もあります。これは「不動産の2025年問題」と呼ばれる問題です。
「高齢化は確実に不動産市場に影響しますが、2025年に大暴落するということはないでしょう。少子高齢化は今に始まったことではなく、これまでも着実に進行してきました。不動産市場にもすでに影響は出始めています。近年は『億ション』『2億ション』『不動産バブル』など景気の良さそうな話題ばかりが報じられますが、その裏で空き家は増え続け、90年代のバブル崩壊以来、地価が下がり続けているエリアもあります」
■空き家数および空き家率の推移ー全国(1978年〜2023年)

2024年には、5年に一度の土地・住宅統計調査の集計結果が公表されました。それによれば、2023年10月時点の全国の空き家数は900万2,000戸、空き家率は13.8%。いずれも過去最高値に達しています。不動産の価格は基本的に需要と供給のバランスで決まるため、空き家が増え、人口減少や少子高齢化が進めば、価格は下がっていくことになるでしょう。とはいえ、空き家率にも地域差があります。2023年10月時点の空き家率が最も高かったのは、和歌山県と徳島県で21.2%。一方、空き家率が低い埼玉県や沖縄県では10%を下回っています。同じ都道府県の中でも、地域によって空き家率には大きな差があります。
「2025年になった途端に不動産が大暴落することはないにしても、中長期的には大暴落するエリアが出てきても不思議ではありません。人口減少が顕著になっていくと見られる地方では、街をコンパクトにしていく立地適正化計画が推進されています。今はまだ本格化していませんが、やがて火がつけば、同じ街の中でも不動産の価値に大きな差がつくはずです。立地適正化計画や都市計画は地方自治体が進めていくものですから、今後は『自治体力』も街の魅力や不動産の価値を大きく左右する要素の一つになっていくのではないでしょうか」
■立地適正化計画作成都市数の推移

2025年注目のエリアは「セカンドベスト」! 気になる住宅ローン金利はどうなる?
価格が上がり続ける都市部、頭打ち感のある郊外エリア、価値が下がり続ける地方の三極化は、2025年も拡大していく見込みです。都市部のマンション価格が一般的な収入の世帯にはなかなか手が届かない水準にまで達しているなか、2025年に注目されるのは「セカンドベスト」のエリアだと長嶋さんは言います。
「セカンドベストとは、一等立地に次ぐ交通利便性の高いエリアを指します。首都圏でいえば、23区内の駅徒歩10分から15分程度までのエリアや千葉・埼玉・神奈川の中でも都市部に出やすい松戸や柏、さいたま、大宮、相模原程度までの駅近エリアです。こうしたエリアは比較的まだ手が出しやすいことから、都市部から需要が流れている動きが見られます。ベストな立地のように大きく価値が上がるということはないかもしれませんが、大きく下がることもないでしょう」
2025年にもう一つ気になることといえば、住宅ローン金利の上昇です。2024年末の金融政策決定会合で追加利上げがあるとの見方もありましたが、結果として見送られ、現在の金融政策が維持されることとなりました。日銀の植田総裁は決定会合後の会見で「賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から今後の賃金の動向についてもう少し情報が必要」と発言。来年の春闘で大企業からの回答が出揃うのは3月頃となりますが、早ければ経営陣の意向などがわかり始める1月末の金融政策決定会合で追加利上げが発表される可能性があります。
「年始や新春に追加利上げがあったとしても、おそらく0.25%。2025年を通しても、せいぜい1%程度までの利上げが限度だと思います。それは一定率以上、金利を上げてしまうと国債の価値が下がり、日本銀行が債務超過に陥るリスクがあるからです。一義的に日銀が債務超過になっても問題ないとの見方もありますが、実質的にそうなってしまうことは避けたいはずです。
金利が上昇すれば、一部の不動産を除いて下落圧力が働きます。その結果、月々の返済は大きく変わらないということもあるでしょう。『金利が上がるから』『不動産価格が高騰しているから』という理由で住まいの購入を先延ばしする方も少なくありませんが、これまで10年以上不動産価格は上がり続けていますし、一部の不動産は今後も上がり続けます。市況や金利より大事なのは、個人の希望や事情なのではないでしょうか。必ずしも、将来の資産価値が維持される住宅を買わなければならないということはありません。自分たちにとってのベストな不動産、ベストな買い時を考えてみていただきたいですね」
まとめ
2024年も引き続き不動産価格は上昇傾向を維持しましたが、確実に「価格が上がるエリア」「頭打ちのエリア」「下がるエリア」の三極化が進行しているようです。2025年は一定率の利上げも予測され、これがさらに格差拡大を助長する可能性があります。
2025年に高齢化などを原因として不動産価格が大暴落することはないものと見られますが、資産価値の維持・向上を考えれば、ベストな立地はいまだ価格上昇を続けている都心部の不動産ということになるでしょう。しかし、都心部の不動産の高騰率は著しいことから、2025年は都心部に次いで利便性が高く、資産価値の維持が見込まれるセカンドベストの立地の不動産の需要が高まることが予想されます。とはいえ、本質的な意味での「ベスト」や「セカンドベスト」は人によって異なるものです。市況や金利の動向も注視しながら、長嶋さんの言うように、自分にとってのベストなタイミング、ベストな物件を見極めましょう。

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