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首都圏中古マンション価格11年ぶりの下落! 実需物件は価格調整局面か

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

東京カンテイは1月23日、2024年版の「三大都市圏・主要都市別 中古マンション70㎡価格年別推移」を発表。同レポートによれば、首都圏の中古マンション年間平均価格は「4,747万円」で、前年比1.1%減少となりました。前年比マイナスとなったのは、実に2013年以来11年ぶりのことです。

三大都市圏の中古マンション価格軒並み下落

三大都市圏 中古マンション価格 年間平均推移
出典:東京カンテイ

2024年の中古マンション平均価格が下落したのは、首都圏だけではありません。近畿圏、中部圏含め、三大都市圏はすべて、わずかながらも価格が下落しています。

下落の要因として考えられるのは、次の2つです。

物価上昇も上がらぬ賃金

賃上げ率 推移
出典:内閣官房

中古マンション価格は、2013年から一貫して上昇を続けました。2013年1月の首都圏中古マンションの平均価格(70㎡換算)は「2,801万円」。近畿圏は「1,796万円」、中部圏は「1,499万円」でした。いずれの地域も、この約12年間で1.5倍前後にまで上昇しています。

一方で、賃金も上昇傾向にはあるものの、物価変動を考慮した実質賃金はほとんど上昇していません。一般的な収入の世帯にとって、住宅ローンの返済負担率を大きく上げることは困難なことから、実需物件を中心に高騰しすぎた価格の調整局面に入ったものと推測されます。

金利上昇

日本銀行は2024年3月、マイナス金利政策を解除。7月には利上げを発表しました。これを受け、多くの金融機関はおよそ17年ぶりに短期プライムレートを引き上げ、10月頃に変動型の住宅ローン金利を引き上げました。

近年は、住宅ローンを組む人の7割以上が変動型を選択しています。昨年10月頃の引き上げ幅は0.15%前後と大きいものではありませんが、月々の返済額は数千円程度変わってくることから、予算を超える物件に手が出にくくなることもあるでしょう。

都心部の中古マンション価格は上昇率拡大

主要都市別中古マンション価格 年間平均推移
出典:東京カンテイ

2024年、「首都圏」や「近畿圏」などの広域な範囲の平均価格は下落した一方で、都心部では依然として上昇局面にあります。

2024年の前年比上昇率は、東京23区が9.4%、大阪市が4.9%。いずれも前年を大きく上回っています。首都圏や近畿圏で下落に転じている中、都心部ではむしろ上昇率が拡大している理由として考えられるのは、次の2つです。

金利上昇の影響が限定的

東京23区の中古マンションの2024年平均価格は「7,720万円」。同年の首都圏の新築マンションの平均価格が「7,820万円」ですから、ほぼ同水準ということになります。

ここまでの金額の中古マンションを購入できるのは、富裕層や国内外の投資家などに限られます。こうした層は、現金一括で購入する、もしくは現金比率が高い、あるいは取得金額以上に減税効果を重視したり、資産価値の上昇に期待していたりする傾向にあるため、金利上昇の影響は限定的です。

「転売」が中古マンション価格上昇の一因に

2024年10月〜12月に東京23区で成約した築5年までの中古マンションの平均価格は「9,713万円」です。ここ数年、都区部の新築マンションの平均価格は1億円前後で推移しており、2024年は9,000万円を下回っています。

つまり、ほとんど減価していない、あるいは新築時より高い金額で「転売」されているマンションも少なからず存在しているものと考えられます。新築マンションは供給数が減少傾向にあるため、希少性の高いエリアでは中古になってから価格が上がる物件も少なくありません。

再びの金利上昇……中古マンション市場の「格差」拡大

日本銀行は2025年1月24日、追加利上げを発表しました。政策金利は、0.25%程度から0.5%程度に引き上げとなります。この水準にまで金利が引き上げられるのは、実に17年ぶりです。金利上昇により、中古マンション市場の格差拡大はさらに助長される可能性があります。

実需物件はさらなる価格調整が必要か

2024年7月の利上げ幅は0.15%程度でしたが、今回は0.25%程度。住宅ローン金利が同程度引き上げられるかは定かではありませんが、仮に0.25%程度引き上げられるとなると、変動型の住宅ローン金利は0.7〜0.8%程度が主流となるはずです。

日本の平均世帯所得は、550万円前後。仮に、返済負担率25%程度にあたる12万円を月々の返済額とし、金利0.4%・0.55%・0.8%で試算すると、借入金額の目安は以下のとおりとなります。

金利0.4%4,700万円
金利0.55%4,580万円
金利0.8%4,390万円

金利が0.4%変わると、300万円以上の差が出ます。今後も実質賃金が上がらなければ、実需物件は金利上昇を加味した価格調整が入る可能性があります。

在庫数にも地域差が

首都圏 中古マンション価格 在庫件数
東日本不動産流通機構のデータを基に筆者作成

在庫数にも地域差が見られています。東京都の中古マンションの在庫数は減少傾向にありますが、埼玉県・千葉県・神奈川県では在庫が増加。不動産価格は基本的に、供給が需要を上回れば落ちていきます。

都心部の物件は価格改定も減少

東京23区 中古マンション 価格改定
出典:東京カンテイ

東京23区では、中古マンションの値下げ率および価格改定数が減少傾向にあります。いずれも、マンションの売れ行きに関する指標です。値下げするマンションが少なく、値下げ率が低いというのは、売れ行き好調のサイン。先述のとおり在庫数も少ないことから、今後も当面は価格が下がる見込みはないものと見られます。

都心部でも格差拡大

東京都区部 大阪市 名古屋市 マンション価格推移
出典:東京カンテイ

「東京23区」や「大阪市」といった都心部の中でも、中古マンション価格の上昇率には差が見られています。

たとえば、東京都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区)の2024年12月の前年比上昇率は30%を超えていますが、城南・城西6区(品川区・目黒区・大田区・世田谷区・杉並区)および城北・城東11区(それ以外の区)の上昇率は10%強です。

また、2018年1月時点で都心6区の平均価格は、城南・城西の1.4倍弱、城北・城東の1.8倍弱でしたが、2024年12月時点の都心6区の平均価格は、城南・城西の1.8倍、2.3倍を超えています。

東京23区内、あるいは大阪市内においても実需中心のエリアは見られ、同じ区であったとしても駅からの距離によって購入層は異なるため「都心と郊外」の格差だけでなく、都心の中でも、また同じ街の中でも、格差は拡大しているのです。

2025年はさらに格差拡大か

年始早々、追加利上げの発表から幕を開けた2025年の不動産市場。日本銀行の植田総裁は1月の金融政策決定会合で「少しずつ段階的に動いていくというのが適切な対応と思っている」と発言していることから、今年中にさらなる追加利上げが発表される可能性もあります。

2024年のデータから、実需物件の価格はすでに下落し始めており、在庫が増え始めていることが読み取れます。一方で、都心部は上昇基調を維持。そもそも、不動産価格上昇の大きな要因となったのは、デフレ脱却を目指して2013年にスタートした大規模な金融緩和政策です。デフレからインフレの時代になった今、金利上昇の影響を受けにくく、売れ行きも好調な都心部の物件とその他の物件の格差は、今後もますます広がっていくものと推測されます。

  

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