2022年12月16日、2023(令和5)年度税制改正大綱が公表されました。相続税や贈与税など、資産形成や不動産売買に関わることも改正され、現在の世の中の情勢を反映させたものとなっています。本記事では、2023(令和5)年度税制改正の中でも、住まいに関する注目すべきものを紹介します。
記事サマリー
税制改正大綱とは
税制改正大綱とは、各省庁が要望する税制改正の内容を与党の税制調査会が中心となって検討し、翌年度以降の税制改正の方針をまとめたものです。
住宅にかかわるものをはじめ、税金の法改正は毎年行われています。その種類は多岐にわたっています。それらの改正内容をまとめたものが、毎年12月に閣議決定される「税制改正大綱」です。
施行までのスケジュール
毎年12月中に翌年度分の税制改正大綱が閣議決定されます。これをもとに法案が作成され、翌年2月に改正法案が国会で審議され、3月には法律が成立、4月から新しい税制が施行されるのが一般的です。
2023年(令和5年)の不動産に関する税制改正大綱のポイントは3つ
- 空き家の発生を抑制するための特例措置(相続空き家の3,000万円特別控除)の拡充及び延長
- 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置の創設
- 低未利用土地の適切な利用・管理を促進するための特例措置の拡充及び延長
どれも、昨今の社会問題を鑑みた内容となっています。それぞれの決定された背景、改正内容について、解説いたします。
空き家の発生を抑制するための特例措置(相続空き家の3,000万円特別控除)の拡充及び延長
相続が発生したために、空き家を所有して困っている人が活用できるのが、この特例措置です。これは、相続時から3年を経過する年の12月31日までに、被相続人から所有する居住用家屋及びその敷地などを相続した相続人が、家屋又はその除却後の土地を譲渡した場合には、それらの譲渡益から3,000万円を控除することができるというものです。
今回、この特例措置を(24年1月1日〜27年12月31日まで)延長することになりました。
また、譲渡後に家屋の耐震改修又は除却を行った場合を対象に加えることも決定し、「買い手」が購入後に解体しても特別控除が使えるようになります。ただし、買い手による解体あるいは耐震改修は、売却した年の翌年2月15日までに実施する必要があります。
長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置の創設
マンションの建物部分について、当該大規模修繕工事が完了した翌年度分の固定資産税額を1/3減額するという特例措置が新たに創設されました。適用期間は2年間(23年4月1日~25年3月31日)。この措置を受けるためには、マンション管理適正化法第5条の4の規定に基づく認定を受けたマンション管理計画認定マンションで、都道府県などから助言・指導を受けたマンションのうち、一定の要件を満たし、必要な修繕積立金が確保されていることが要件となります。
いつかは行わなければならない大規模修繕工事ですが、マンション住人の意見が割れるなどの理由で工事が先延ばしになっているマンションの場合、この税制が後押しになりそうです。工事を行うことで、固定資産税が減却されるのはもちろんお得ですが、マンションの状態が良くなれば、売却の際のマンション価値も上がり、将来マンションを売却する際に、工事しないときよりも高値で売れる可能性は高くなります。
低未利用土地の適切な利用・管理を促進するための特例措置の拡充及び延長
個人が、譲渡価額が500万円以下であって、都市計画区域内にある一定の低未利用土地を譲渡した場合に、長期譲渡所得から100万円を控除することができます。対象となる土地は、譲渡前に低未利用であることと、それに加え、譲渡後に買主に利用されていることについて市区町村が確認したものに限ります。
今回は、上記措置の適用期限を2025年12月31日まで延長し、譲渡価額の要件を、上限800万円に引上げることになりました。このことで、より多くの人がこの特例措置を利用することができるようになります。
解説! 低未利用土地とは 低未利用土地等とは、居住の用、事業の用その他の用途に利用されておらず、またはその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途もしくはこれに類する用途に利用されている土地の利用の程度に比し、著しく劣っている土地や当該低未利用土地の上に存する権利のことをいいます。 |
まとめ
今回は、「相続空き家の3,000万円特別控除」対象拡大、中古マンション固定資産税減額の特例措置創設、低未利用土地の譲渡価額800万円に引き上げ、について解説しました。どれも、不動産売買や住まいの維持・管理に影響する改正です。不動産を売買する予定がある人は、どんな税制の利用ができるかプロに相談しながら進めましょう。
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