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不動産の相続で知っておくべきことを解説!トラブル事例や相談できる専門家も紹介

不動産を相続することになったものの、何から相続手続きを始めればいいのかわからない方も多いと思われます。相続人が自分一人でなく、自分以外にも兄弟がいるようなケースは遺産の分け方も決めなければなりません。

そこで、不動産を相続した場合に必要となる手続きの流れや、どのような専門家に相談すればいいのか詳しく解説します。

不動産の相続では全員が納得する内容で遺産を分けることが大切

親などの身近な親族が亡くなってしまうのは、たいへん悲しいことです。しかしながら、相続人は悲しみに浸るまもなく、すぐに相続手続きをする必要にせまられます。

まず、相続放棄をする場合の家庭裁判所に対する申述手続きの期限が、「自己のために相続が発生したことを知ったとき」から3ヶ月以内とされています。

遅くともこの時期までに、相続人は相続財産の内容を把握し、相続を受け入れるか否か意思決定する必要があります。

また、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告期限が到来します。相続人が複数いて遺産分割協議をする必要がある場合には、この時期までに完了させることがひとつの目安となります。

相続争いの有無にかかわらず、さまざまな段取りと手続きが発生するため、事前に調べて効率よくすすめたいところです。

なお、被相続人(亡くなった人)が生前に遺言を作成しておくと、相続トラブルを回避しやすくなります。遺言は法律で厳格な要件が決められているため、事前に弁護士、税理士などの専門家に相談したうえで作成することが望ましいでしょう。

不動産の相続で必要な準備

不動産の相続手続きに入る前に、必要な準備は次のとおりです。

相続人を確定する

まず、遺産を受け取る相続人が誰かを確定しなければなりません。

遺言によって相続財産を受け取る者が指定されている場合でも、民法上決められている法定相続人を把握しておく必要があります。遺言の内容によっては、法定相続人から遺留分に関する請求を受ける可能性もあるためです。

法定相続人の決め方は、以下の表のとおりです。

順位法定相続人常に相続人となる者
第1順位直系卑属(子、孫など)配偶者
第2順位直系尊属(親、祖父母など)
第3順位兄弟姉妹

第1順位は、直系卑属と呼ばれる被相続人の直系の子どもや孫などです。直系卑属にあたる親族がいる場合には、直系卑属のみが法定相続人です。

次に、第1順位の直系卑属が存在しない場合には、次に第2順位となる直系尊属(被相続人の親や祖父母など)が法定相続人となります。

最後に、直系尊属も存在しない場合に、被相続人の第3順位の兄弟姉妹が法定相続人になります。

なお、被相続人の配偶者は、第1順位から第3順位のいずれの親族が法定相続人となる場合であっても常に相続人となります。

遺言書の有無を確認する

次に、被相続人がのこした遺言書の有無を確認します。遺言書は作成者の自宅などで保管する「自筆証書遺言」と公証役場で作成、保管する「公正証書遺言」のいずれかであることが一般的です。

自筆証書遺言は、被相続人の自宅や貸し金庫などを探すほか、晩年身の回りの世話をしていた人に遺言について聞いていないか、確認するとよいでしょう。

また、2020年7月10日以降は改正相続法に基づき、自筆証書遺言が法務局に保管されている可能性があります。

被相続人が遺言書を法務局に保管している場合、遺言者があらかじめ希望していれば、法務局において戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡を把握した上で、遺言者が指定した人に遺言書が保管されている旨の連絡があります。

このほか、公正証書遺言の有無については公証役場で調べてもらうことができます。全国いずれの公証役場でも確認が可能です。

遺言書がある場合には、民法上定められた法定相続に優先して、遺言に従った分配をするというのが基本です。ただし、後で説明するように遺留分を請求される可能性はあります。

遺産の内容を確認する

相続財産(遺産)の内容を整理しておくことも重要です。相続の対象となるのは、不動産や預貯金などのプラスの財産だけではありません。住宅ローンなどのマイナスの財産も相続財産に含まれることに注意が必要です。

昨今は、ネット証券などを利用していることが多く、ログイン情報がわからないなどの理由で相続財産の調査に時間がかかることがあります。

相続放棄、限定承認を検討する

「自己のために相続が発生したことを知ったとき」から3ヶ月以内に限り、相続放棄や限定承認が可能です。借金が多いケースなどでは相続放棄が選択されることもあります。

一方、限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するものですが、手続きが煩雑なのであまり利用されていないのが実情です。

故人の準確定申告をする

被相続人の死亡直前までの未申告の所得について、相続人が確定申告をする必要があります。これを準確定申告といいます。

不動産相続の手続きの流れ

以上の準備ができたら、不動産の相続手続きを次の手順で進めます。

1.遺産の分け方を決める

遺言書がある場合、遺言書に基づいて遺産を分配しますが、相続人の一部が納得せず紛争になることもあります。

したがって、遺言書があるとしても、法定相続人全員に対して遺言内容どおりの相続に同意するかを確認しておいた方が安心です。

遺言書が無い場合には、法定相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。相続人どうしで話し合いが難航する場合には、早めに弁護士など専門家への相談を検討するとよいでしょう。

2.相続登記をする

不動産の分け方が決まったら、相続登記が必要です。登記申請に必要となる書類を用意して、不動産のある地域を管轄する法務局で相続登記の申請を行います。

相続登記にかかる費用は、国に納付する登録免許税に加え、司法書士に依頼する場合には報酬が必要となります。

3.相続税の申告・納付

各相続人が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合、相続税の課税対象となる可能性があります。基礎控除額は次の計算式で算定されます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続税の申告期限は前述のとおり、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。

不動産の相続でよくあるトラブルと解決策

不動産相続でよくあるトラブルと一般的な解決方法を以下解説します。

不動産が登記されていなかった

不動産が登記されていない場合としては、建物の保存登記をしておらず不動産登記自体が存在しないケースと、登記はあるが過去の権利移転の経緯がきちんと登記されていないケースとがあります。

建物の保存登記がない場合にはまず保存登記を行う必要があり、その後に相続登記をすることになります。

一方、不動産登記自体はあるものの過去の権利移転の経緯が登記されていない場合には、これまでの権利移転の登記もあわせて行うことになります。

不動産が担保になっていた

相続した不動産に抵当権が付されていることはよくあります。不動産を住宅ローンで購入しているケースが典型的です。

この場合は、不動産によって担保されるローンが返済されているのか、残っているのかをまず調査します。全額返済されているのであれば、抵当権の抹消登記手続きをする必要があります。

これに対し、ローンが残っている場合には、相続した不動産でそのローンを引き続き担保することになります。この場合、返済が滞ると抵当権が実行され、相続した不動産の所有権を失うリスクがあります。

遺言がその内容通りに実行できない

遺言の内容に不満を抱く法定相続人が、遺言の効力を争うことや、みずからの遺留分を請求することがあります。

法的な争いに発展しそうな場合には、早めに弁護士に対応方法を相談したほうがよいでしょう。

相続人が複数いるので、公平な分け方がわからない

マンションや一戸建てのような不動産は預貯金と違い簡単に分けられません。このため、不動産の分け方をめぐって相続人間で争いになりがちです。

一般的な分け方

遺産分割における一般的な分け方としては、現物分割、代償分割、換価分割があります。

現物相続とは、不動産などの遺産をそのままの状態で相続する分割方法で、民法の原則的な分割方法といえます。

例えば、相続人の1人が不動産全体を相続するとか、相続割合に応じて不動産を分筆するといった方法です。

代償分割とは、相続人の一部が現物で不動産を取得し、ほかの相続人には代償金を支払う分割方法をいいます。

換価分割とは、不動産を売却し、売却代金を各相続人で分配する分割方法をいいます。

このほか、不動産を相続人全員で共有する方法もあります。共有の場合、共有者は不動産全体を利用できる反面、1人の共有者が勝手に不動産を処分できません。

マンションと一戸建てにおける分け方の違い

マンションや一戸建ては、代償分割か換価分割が選択されることが多いといえます。

例えば、相続人の1人が相続した不動産に住む予定があれば代償分割が選択されることが通常です。一方、相続した不動産を利用する予定がなければ換価分割とすることが合理的です。

ただし、一戸建ては土地を活用できるため、土地を現物分割する選択肢もあります。しかし、マンションでは土地の権利は存在するものの実際には自由に利用できないため現物分割という選択肢は基本的にありません。

また、マンションは一戸建てと違って、築年数が経っていると修繕積立金や管理費などがかさみがちです。

もし、相続したマンションに相続人が住む予定がないのなら、早めに売却か賃貸するか決めないと支出がどんどん膨らむおそれがあります。

不動産相続の相談は誰にすればよいのか?

不動産の分け方について相続人同士で意見が一致しないなど当事者同士で解決が難しい場合は、専門家に依頼することでトラブルを未然に防げます。

相続に関わる専門家は複数いるので、誰に何を相談できるのか知っておくと安心です。

弁護士

弁護士には、相続人同士の意見の食い違いや遺産分割協議に応じない相続人がいる場合のトラブル解決の相談ができます。

相続争いに発展していなくても、妥当な分割方法についての相談や遺産分割協議書の作成の依頼もできます。

司法書士

司法書士には、不動産の相続登記を依頼できます。

相続登記はこれまで手続きの期限が決まっていませんでした。

しかし、2021年4月に公布された改正不動産登記法において、相続による不動産の取得を知った日から3年以内の登記が義務付けられることになりました。

改正法は2024年4月までに施行予定であり、施行前に発生した不動産の相続にも適用されます。このため、相続登記の手続きは早めに司法書士に依頼しておいた方が安心です。

税理士

税理士には、相続財産の調査や評価、相続税の申告手続きを依頼できます。相続税は非常に専門性の高い分野で、税理士のなかでも取り扱っている事務所は多くありません。

遺産が基礎控除額を超えていて相続税の課税対象になる可能性がある場合、早めに税理士に相談した方がよいでしょう。

相続税に関しては税務調査が入りやすいといわれているので、税理士に申告を依頼することが一般的です。

不動産の相続の手続きは専門家に相談しながら進めると安心

遺産のなかに不動産があると、相続手続きに時間がかかる傾向にあります。

さらに、遺産の分割方法が決まった後にも相続登記など手続きが必要です。

都市部の不動産を相続した場合は、不動産の評価額が基礎控除額を超えることも多いため、相続税が課税される可能性も高いといえます。

相続が発生したらできるだけ早めに相続手続きを進めることが大切です。不安があれば、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

この記事の監修

松浦 絢子
資格情報: 弁護士、宅地建物取引士

松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

この記事のポイント

不動産相続の流れを教えてください

不動産の相続手続きは次の手順で進めます。

①遺産の分け方を決める。遺言書があっても、法定相続人全員に対して遺言内容どおりの相続に同意するかを確認。遺言書が無い場合には、法定相続人全員で遺産分割協議をする
②相続登記をする。登録免許税に加え、司法書士に依頼する場合には報酬が必要
③被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、相続税の申告・納付

詳しくは「不動産相続の手続きの流れ」をご確認ください。

不動産相続でよくあるトラブルについて教えてください

不動産相続でよくあるトラブルは下記のようなものです。

  • 不動産が登記されていなかった
  • 不動産が担保になっていた
  • 遺言がその内容通りに実行できない
  • 相続人が複数いるので、公平な分け方がわからない

詳しくは「不動産の相続でよくあるトラブルと解決策」をご確認ください。

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