ざっくり要約!
- マンション経営には、手間が少ない、長期的に収入を得やすい、節税効果が高いといったメリットがある
- マンション経営で収支をアップさせるには築年数の浅い物件を選ぶなどのコツがある
不動産投資の代名詞ともいえるマンション経営。興味を持っているものの、具体的な仕組みやメリットなどがわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マンション経営は、高額な資金を投じて始める投資ということもあり、リスクはありますがリターンを大きくしやすい投資です。
本記事では、マンション経営のメリットやリスクなどを解説します。
記事サマリー
マンション経営の仕組み
マンション経営は、マンションを購入したり、新しく建てたりして、入居者から家賃収入を得る投資法です。
マンションを経営するためには管理費用や仲介手数料、修繕費などの経費がかかり、家賃収入等の収入から経費を差し引いた額が収益となります。
また、マンション経営はマンションを担保にアパートローンなど不動産投資用のローンを組める点が特徴です。このため、投資額に対して少ない資金で開始でき、レバレッジを利かせた運用が可能です。
ただし、ローンを組むと毎月返済の必要があり、その費用は家賃収入の中から捻出できなければ、赤字となります。
さらに、家賃収入からローンの利息分や各種経費を差し引いた収益に対しては、所得税や住民税(法人の場合は法人税)が課されます。
特に1棟もののマンション経営は投資額が大きいため収益も大きくなりやすく、収益が大きくなれば納税額も増えてきます。そのため、基本的な税制度を理解したうえで投資を始めることが大切です。
マンション経営の3つのメリット
マンション経営のメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 手間が少ない
- 長期的に収入を得やすい
- 節税効果が高い
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
手間が少ない
マンション経営には、入居者募集や管理、家賃徴収、クレーム対応などさまざまな業務があります。
しかし、管理費用や仲介手数料を支払う必要があるものの、これらの業務は不動産会社に委託することが可能で、多くのオーナーが賃貸管理業務を委託しています。
そのため、業務を委託してしまえば、ほとんど手間なく収入を得られます。
業務を委託する不動産会社によって集客力や管理力が大きく変わるため、マンション経営では不動産会社の選定も非常に重要なポイントです。
長期的に賃貸収入を得やすい
マンション経営は長期的に収入を得やすいのが利点です。
マンションは基本的に鉄骨造や鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の堅固な構造で建てられており、数十年に渡って運用できるからです。
もちろん、築年数が古くなるほどメンテナンスが必要になりやすいといった問題点には注意しなければなりません。
節税効果が高い
マンション経営には、高い節税効果があります。所得税の節税効果もある程度期待できますが、特に高い効果を期待しやすいのが相続税の節税効果です。
まず、不動産は相続税評価額の計算上、地域によりますが都市部では、時価の6~8割程度を目安に評価されるため、現金などの金融資産で持っているより不動産で持っている方が相続税の節税につながりやすいです。
マンション経営によって賃貸住宅として建物を第三者に貸し出すことで、貸している分、課税額を軽減できます。
さらに、一定の条件を満たすことで土地面積200㎡までの相続税評価額を50%で計算できる、小規模宅地等の特例といった制度も用意されています。
また、家賃収入は不動産所得として計上する必要がありますが、マンションを取得するのに要した費用は経費となり、建物や設備については耐用年数などに応じた減価償却が適用されます。
マンション経営を始めるのであれば、マンション取得前から可能な範囲で減価償却費の額や毎年の納税額などをしっかり計算しておくと良いでしょう。
マンション経営の3つのデメリット
次に、マンション経営のデメリットを見てみましょう。具体的には以下の3つが挙げられます。
- 初期投資額が大きい
- 利益には累進課税で税金が課される
- 管理費用がかかる
初期投資額が大きい
マンション経営を始めるには、ローンを利用するとしても自己資金として数千万円程度から、場合によっては億を超える資金が必要になります。
ローンを利用した場合、万が一経営がうまくいかなかった際には大きな借金が残るリスクがある点には注意が必要です。
ただし、初期投資額が大きい分、リターンを大きくしやすい点はメリットと言えます。
利益には累進課税で税金が課される
マンション経営で得られた利益は不動産所得として計上し、所得に応じて所得税や住民税を納める必要があります。
所得税は所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度のため、個人経営の場合、所得が4,000万円を超えると最大で55%(住民税10%を含む)もの税率が課されてしまう点に注意が必要です。
法人化すれば法人税での納税となるため、一定以上の所得が見込めるようであれば、法人化してしまうのも一つの方法です。
法人化することで、家族に法人から給料を支払ったり、会社ごと子どもに相続させたりすることも可能になり、さまざまな節税策を考えられます。
管理費用がかかる
マンション経営は不動産会社に賃貸管理を任せることが可能ですが、この場合、管理費用を支払う必要があります。
また、入居者が退去した場合には室内修繕やクリーニング費用が発生したり、再募集する際には不動産会社に対して仲介手数料を支払ったりしなければなりません。
マンション経営を始めるのであれば、家賃収入の額だけでなく、経費がどの程度かかるのか細かくシミュレーションしておくことが大切です。
・「マンションの維持費」に関する記事はこちら マンションの維持費は高い?一戸建てとの違いやシミュレーションを紹介 |
マンション経営のリスク
マンション経営にはさまざまなリスクがあります。ここでは、以下のリスクの内容と対策をお伝えします。
- 空室リスク
- 家賃下落リスク
- 事故、災害リスク
空室リスク
マンション経営の主な収益源は入居者からの家賃です。そのため、空室が生じると収入を得ることができなくなります。
その意味ではマンション経営で最も意識しておくべきりすくは空室リスクです。いったん入居者が入ったとしても、ずっと住み続けるとは限りません。
退去した後はまた再募集する必要があり、入居者がいつ退去するかは入居者から意思表示があるまでわからないので、マンション経営は常に空室のリスクがあります。
マンション経営で空室リスクを軽減するための方法は、より多くの戸数を持つことで1戸あたりの空室による影響を少なくすることが考えられます。
また、建物修繕や設備の更新等で貸室の居住性を維持し、賃貸募集時の家賃設定や賃貸条件などを相場と比べて無理のないものとして、できるだけ入居者を確保する努力をしなければなりません。
家賃下落リスク
マンションの家賃は近隣にあるマンションと競合しながら相場が形成されます。例えば、近隣に新しいマンションができた場合には、そちらに人気が集まり、もともとあったマンションの人気が落ちることがあります。
また、築年数が古くなると、デザインが時代遅れになったり、設備が老朽化したりして家賃下落の要因となります。
マンション経営の計画を立てるときは、新築時や購入時の家賃が継続するものと考えるのではなく、築年数に応じて少しずつ家賃が下がることを想定したほうが良いでしょう。
なお、少しでも家賃の下落を抑えるには、定期的な修繕や、時代にあった設備への取り換えが求められます。
ただし、必ずしもかけた費用分の効果が得られるわけではないため、費用対効果を意識した施策を検討していくことが大切です。
・「アパート経営」に関する記事はこちら アパート経営とは?他の投資との違いやアパート投資のメリット・リスクなど解説 |
事故・災害リスク
所有しているマンションの中で事故が起きたり、台風や火災などの災害に遭ったりする可能性があります。確率としてはそこまで高いものではありませんが、ゼロにすることはできません。
事故や災害への対策としては、保険に加入するほか、異なるエリアにマンションを持つことでリスク分散するといったことが考えられます。
その他のリスク
マンション経営では、上記のリスクの他、滞納リスクや金利上昇リスクといったものもあります。
滞納リスクは、空室リスクよりも発生率は低いものの、入居が入っているにもかかわらず滞納され、家賃が入ってこないという点で厄介なリスクです。入居時に保証会社を利用することで一定期間はリスク回避できますが、その保証期間を過ぎる前に退去してもらわないと法的措置が必要になることが多く、その費用は馬鹿になりません。
また、ローンを利用してマンション経営を始めた場合は、ローンの金利上昇のリスクがあります。投資用ローンでは固定金利の商品が少なく、変動金利では金利変動のリスクが伴います。
対策としては借り過ぎないことに加え、資金に余裕があるときに繰上げ返済することになります。
マンション経営の収支計算の方法
マンション経営の収支計算の方法についてみていきましょう。ここでは、一棟マンションと区分マンションでそれぞれ満室を想定した事例を用いて比較していきます。
区分マンションの例
以下は区分マンション、ワンルーム1戸の例です。
・収入
家賃:9万円/月、管理費:1万円/月
・支出
管理費:5,000円/月、修繕積立金:6,000円/月、CATV利用料:1,000円/月、賃貸管理費:家賃の5%、固定資産税・都市計画税:8万円/年
・ローン返済
毎月返済:7万円/月(借入額:2,000万円、金利:1.5%、返済期間:30年)
一棟マンションの例
以下は一棟マンション、総戸数ワンルーム20戸の場合の例です。
・収入
家賃:160万円/月(平均8万円/戸×20戸)、管理費:10万円/月(5,000円/戸×20戸)、駐車場収入:4万円/月(2万円/台×2台)
・支出
賃貸管理費:家賃の5%、共用部分電気代:5万円/月、保守点検費:60万円/年(消防設備、エレベーター、受水槽等)、固定資産税・都市計画税:280万円/年
・ローン返済
毎月返済:103.5万円/月(借入額:3億円、金利:1.5%、返済期間:30年)
家賃収入等の計算方法
区分マンションの収入に関しては、募集時に管理費や共益費といった名目で入居者から徴収する場合は、家賃収入とみなされるので、その合計が家賃等の収入の合計になります。
例の区分マンションでは、収入は家賃と管理費の合計10万円が毎月の家賃等の収入になります。
一方、一棟マンションについてはマンションに付随する施設や設備からの収入も、収入とみなします。
例の一棟マンションでは、駐車場の収入があるので、家賃収入と管理費、駐車場利用料の合計174万円が毎月の家賃等の収入になります。
なお、マンションによっては、バイク置場や自転車置き場、自動販売機などから収入がある場合もあります。
収支の計算方法
次に、収支(手取り収入)の計算についてみていきましょう。
収支計算にあたっては、毎月ではなく年間でかかる経費があるので、まずはすべて年額にして計算する必要があります。
まずは上記の区分マンションの例で計算してみましょう。
家賃等の収入は月額10万円ですので、年額は120万円となります。
支出については、管理費が年額6万円、修繕積立金が年額7.2万円、CATV利用料が1.2万円、賃貸管理費が家賃の5%なので、120万円×5%=6万円ですが、消費税がかかるので年額は6.6万円、固定資産税・都市計画税はそのまま年額8万円となります。年額の支出合計は、29万円となります。
ローンを借りていなければ、収支は年額で91万円となります。
しかし、例のような条件のローンを借りていた場合、年間の返済額が84万円となりますので、現金収支(手取り収入)の年額としては7万円となります。
なお、ローン返済の元金分は会計上の経費ではないため、支出とは異なりますが、キャッシュフロー計算ではこのようになります。
次に一棟マンションの例で収支を計算してみましょう。
家賃等の収入は、月額174万円ですので、年額は2088万円となります。
支出については、管理費が家賃の5%で、年額税込114.64万円、共用部分電気代が年額60万円、保守点検費はそのまま年額60万円、固定資産税・都市計画税が年額280万円となっており、年額合計は514.84万円になります。
ローンを利用していなければ、収支は1573.16万円の収益となります。
この例ではローンを借りており、ローン返済の年額は1242万円となりますので、現金収支は年額で331.16万円となります。
ただし、例では簡略化していますが、実際は空室がある期間は家賃収入が減り、建物の修繕や賃貸募集時の経費などの費用がかかります。
また、一棟マンションの場合は区分マンションとは異なり、オーナーの判断で修繕費を積み立てておく必要があるため、見た目は収支が大きくプラスになっていますが、そうした準備金が必要になります。
マンション経営の収支アップのコツ
マンション経営で収支をアップさせるには、収入をアップさせるか、支出を抑える必要があります。以下、収支アップのコツについて紹介しましょう。
築年数の浅い物件を選ぶ
中古の一棟マンションを購入してマンション経営を始める場合、築年数の浅い物件を選ぶのが収支をよくする方法のひとつです。
築年の浅い物件は、もちろん物件にもよりますが、家賃を比較的高い状態で貸すことができ、建物の修繕費もあまりかからないため、収支が良くなる傾向があります。
立地の良い物件を選ぶ
これから土地も含めて購入してマンション経営を始める場合、立地の良い物件は、家賃が比較的高く、また入居率も高い水準で維持できる可能性も高く、さらに家賃が下がりにくい傾向もあるため、収入が比較的安定します。
立地が良ければ、経済事情に合わせて家賃を上げることも可能で、さらに支出を抑えることができれば、収支アップが期待できます。
できるだけ借入金を少なくする
購入時にローンを利用する場合は、借入額を少なくすることで、キャッシュフロー上の支出は減らすことができます。
管理会社選びにこだわる
空室が増えると、家賃収入が減ってしまいます。つまりできるだけ空室を出さないことが家賃収入を安定させ、収支をよくするためには欠かせません。
そのためには、管理を委託する場合は、賃貸管理を任せる管理会社選びが重要になります。
管理会社が、賃貸募集に強い、退去時の修繕などの費用が安い、建物をしっかり管理しているなどの点で優れていれば、より収支が安定します。
さらに、良い管理ができていれば、入居者の納得を得て家賃アップという選択肢も出てきます。
既存の入居者と家賃交渉する
経済情勢にもよりますが、入居者の入りやすい物件であれば、既存の入居者に対して家賃交渉を行って、家賃をアップさせることもできます。
特に中古で物件を購入する場合、立地の良い物件や管理の良い物件で、既存の入居者の家賃が相場より低い場合は家賃アップの可能性が高くなります。
家賃が上がれば、当然ながら収支もアップします。
リフォームして家賃アップする
同じ物件でも家賃は貸室の状態によっても変わるため、古い間取りや設備を更新することで家賃をアップさせることも可能です。
例えば、3点ユニット(バス、洗面、トイレが一体となったユニットバス)をリフォームして設備を新しくするのと同時にバス、トイレを別にするといったことで家賃をアップしても入居者が期待できる貸室にすることができます。
ただし、リフォーム費用と家賃アップ可能な金額は比例するものではないので、コストバランスは意識してリフォームする必要があります。
マンション経営のメリット・デメリット・リスクを理解しておこう
マンション経営について、仕組みやメリット・デメリット、リスクについてお伝えしました。マンション経営にはさまざまなリスクがありますが、うまく運用すれば大きなリターンを得ることも可能です。
これからマンション経営に取り組む方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
この記事のポイント
- マンション経営の仕組みは?
マンション経営は、マンションを購入したり、新しく建てたりして、入居者から家賃収入を得る投資法です。
マンションを経営するためには管理費用や仲介手数料、修繕費などの経費がかかり、家賃収入等の収入から経費を差し引いた額が収益となります。
詳しくは「マンション経営の仕組み」をご覧ください。
- マンション経営の収支アップのコツは?
マンション経営の収支アップのためには、築年数の浅い物件を選ぶ、立地の良い物件を選ぶ、できるだけ借入金を少なくするなど、さまざまなコツがあります。
詳しくは「マンション経営の収支アップのコツ」をご覧ください。
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