ざっくり要約!
- 敷金礼金の相場はいずれも家賃の1~2ヶ月分。ただ最近では、敷金礼金がない「ゼロゼロ物件」も増えてきている
- 敷金礼金は値下げ交渉も可能だが、貸主の状況や意向にも配慮することが大切
賃貸契約をしたことがない方にとっては、敷金や礼金という言葉はなじみが無いかもしれません。
この記事では、敷金や礼金をはじめ、賃貸借契約によくある費用、最近よく見かける敷金礼金ゼロゼロ物件についても、わかりやすく解説します。本記事で必要な費用とそうでないものを正しく理解し、お得な住み替えを実現しましょう。
敷金礼金とは? 相場や支払うタイミングはいつ?
敷金礼金は、いずれも賃貸住宅の初期費用の一つです。目的や相場、支払うタイミングは次のとおりです。
敷金・礼金とは?
敷金とは、借主が支払うべき金銭をあらかじめ貸主に預けておくお金です。もしも借主に貸主への金銭の支払いが生じた場合には、貸主はいつでもそこから優先的にその支払いに充てても良いという取り決めです。
金銭の支払いとは、例えば家賃を滞納した際の未払い家賃や、借主が原因で補修が必要になった際の工事費(原状回復費用)などが該当します。敷金は預り金ですから、賃貸借契約の解約時に差し引く費用がない場合や差し引いて残金がある場合には、借主へ返還されます。また、関西圏では敷金のことを保証金と呼ぶことが多く、意味合いは敷金と同様です。
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一方、礼金とは、文字通り、お礼の意味で借主から貸主へ渡すお金のことです。こちらは貸主の収入になるため、賃貸借契約の解約時に返還されることはありません。
礼金の発祥は、今よりも賃貸物件が少なかった時代に、部屋を貸してくれる貸主に対して感謝の意味で渡していたお礼のお金でした。今もあるのはその慣習のなごりです。
敷金・礼金はいつ支払う?
敷金や礼金は、契約時に契約金の一部として、次のような費用とまとめて支払います。
- 前払い賃料
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 保証料
敷金・敷金の相場
敷金礼金の相場は、いずれも家賃の1~2ヶ月分です。先に挙げた前払い賃料や仲介手数料などその他の費用と合わせると、初期費用は家賃の5〜6ヶ月分程度になるのが一般的です。
ゼロゼロ物件とは

ゼロゼロ物件という賃貸不動産用語をご存じでしょうか。これは敷金も礼金も0円であることを意味する言葉です。
敷金も礼金も0円なら賃貸借契約の初期費用が安くなるため、予算を抑えた部屋探しを希望する人にとって、ゼロゼロ物件は理想的な物件といえます。
最近の部屋探しはインターネットが主流ですが、賃貸物件の検索サイトでは検索条件を選んで物件を絞り込む際にもゼロゼロ物件という項目があるほど、広く浸透しています。
ゼロゼロ物件が増えている背景
賃貸住宅の契約に必要な初期費用は、さまざまな費用が重なって高額になる傾向があります。
インターネットによって情報の収集や比較検討がしやすくなり、初期費用を抑えられる物件を優先的に探す人が増えたため、物件を提供する貸主側もそのニーズに応えられる物件へと契約条件を緩和する動きが増えました。
ゼロゼロ物件のメリット
ゼロゼロ物件のメリットは、賃貸借契約の初期費用が安く抑えられることです。
部屋の住み替えの際には賃貸借契約の費用に加えて、引越しや家具家電の購入などにもまとまったお金が必要です。仮に、敷金10万円、礼金10万円の賃貸物件がゼロゼロ物件になれば、初期費用が20万円も安くなります。
物件にかかる費用を抑えることで、家財を充実させるなど、浮いた資金をほかの費用に充てられる点が魅力です。
ゼロゼロ物件のデメリット
ゼロゼロ物件は、家主側からすれば、初期費用を緩和することで賃貸物件の競争力を上げるための手段です。そのため、駅から遠かったり、建物が古かったりするなど、ほかの物件よりも条件面で劣る場合も考えられます。
また、ゼロゼロ物件には人気が集まりやすいため、入居希望者が多く先に契約が決まってしまうなど、じっくり物件を吟味する時間がとれない可能性もあります。
敷金礼金は値下げ交渉できる?
入居時に、敷金礼金の値下げを交渉することもできます。とくに引越シーズンを終えた5月後半から夏期などの閑散期は、交渉を受け入れてもらえる可能性が高い時期です。
法律で定められているわけではないため交渉可能
「ゼロゼロ物件」が少なからず見られるようになってきたことからもわかる通り、敷金や礼金は法律で徴収することが定められた費用ではありません。したがって、オーナーに値引きを交渉することも可能です。とくに礼金は「お礼」という意味合いの費用のため、敷金以上に交渉しやすいと考えられます。
交渉は必ず不動産会社を通す
値下げ交渉は、不動産会社を通して行いましょう。不動産会社の役割の一つは、借主と貸主の「仲介」です。貸主との関係性を損なうことなく「値下げしてもらいたい借主」と「できれば値下げしたくない貸主」の落とし所を探ってくれることに期待できます。
家主のメリットも考慮して交渉する
敷金礼金の減額、あるいはゼロにすることは、貸主にとって諸手を挙げて歓迎できることではありません。とはいえ、こうした条件を飲んだとしても賃貸してくれることは、貸主にとってメリットである可能性もあります。こうした貸主の状況やメリット・デメリットも考慮したうえで、交渉に臨むことが大切です。
敷金を巡るトラブル事例と対応策
敷金は、借主が原因で補修が必要になった際の工事費が発生したときなどに備えた「預かり金」という意味合いがあります。しかし、そもそも「原状回復」の範囲が曖昧になりやすいことから、敷金を巡ってトラブルになってしまう可能性があります。
ここでは、敷金を巡るトラブル事例と対応策を解説します。
敷金からハウスクリーニング費用を引かれた
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。つまり、「原状回復=賃借人が借りた当時の状態に戻すこと」ではありません。したがって、借主は、通常の使用を超えるような使用による損傷・毀損を超える原状回復費を負担する必要はないと考えられます。
とはいえ、これはあくまでガイドライン上の話であり、借主がハウスクリーニング費用の負担を強いられるかどうかは契約内容次第です。賃貸借契約にハウスクリーニングに関する特約がついていることも少なくありません。借主に費用負担を義務づける内容になっていれば、敷金からハウスクリーニング費用が引かれることを拒むことはできません。退去時のハウスクリーニング費用の負担を巡るトラブルを避けるため、契約前には契約書をしっかり確認することが大切です。
入居前の傷の修繕費用を請求された
入居後に借主の不注意等によって損傷・毀損した部分は、基本的に原状回復の対象となりますが、入居前からあった傷については対象外です。しかし、貸主がいつついた傷か把握していなかった場合、修繕費用を請求されてしまう可能性があります。
入居時には、家主や不動産会社と一緒に、現時点での傷や損傷の状態を確認しておくことが大切です。入居時の写真を撮っておくのも効果的でしょう。
請求された原状回復費が高額
原状回復費として請求された費用が、予想以上に高額であることも少なくありません。近年、建材や人件費が高騰しているため、過去に住んでいた住宅の原状回復費と比べて高額になってしまうこともあるでしょうが、疑問がある場合は貸主や管理会社に費用の内訳を確認しましょう。
原状回復は、先のとおり原則的に「通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」です。傷をつけてしまった壁紙や床材の「復旧」の範疇を超え、高品質なものに変えるための費用などを負担する必要はありません。
敷金、礼金以外に確認しておきたいポイント
最後に、敷金礼金以外にもあらかじめ確認しておきたい初期費用について解説します。
一般的に賃貸借契約の初期費用は、賃貸借契約の締結と同時期に仲介不動産会社へ現金一括で支払います。
ただし、一部の不動産会社では、クレジットカードでの一括払いや分割払いに対応している場合もあります。それらの初期費用に含まれる、よくある費用について見ていきましょう。
初期費用には火災保険料や最初の家賃もかかる
初期費用のなかには敷金や礼金以外にも、以下のような費用が含まれます。
- 前払い家賃
- 前払い管理費
- 火災保険料
- 賃貸保証料
- 鍵交換費用
- 消毒費用
- 害虫駆除費用
家賃や管理費は、入居日によっては銀行の自動引き落とし手続きが間に合わないことがあり、その際には次月分も合算で初期費用に含んで請求されます。
賃貸用の火災保険料は、火災に限らず家財道具の損害や漏水、盗難、そして外出先で物を壊した際の補償(個人賠償責任)などを含む総合保険型が多く、単身用だとおよそ5,000円前後です。
鍵交換の費用は部屋を借りる人の負担になることが多く、ピッキング防止性能が高いものだと15,000円前後です。消毒費用、殺虫費用については、必要でないなら施工の有無を選択できるかを確認してみましょう。
賃貸保証会社の利用を求められることもある
賃貸保証とは、部屋を借りる人が家賃を滞納した場合に、法人がその家賃を肩代わりして支払いを代行するサービスです。
賃貸借契約の連帯保証人は、従来は親などの身内がその役目を担って契約していましたが、最近の連帯保証は個人ではなく、法人へ賃貸保証料を支払って保証してもらうケースが増えています。
賃貸保証サービスの主な内容は以下のとおりです。
- 保証期間は1~2年が一般的
- 保証料の目安は初回で家賃の半月~1ヶ月分
- 更新料の目安は1年あたりでおよそ1万円
ただし、契約内容は保証会社ごとに異なるため、確認が必要です。
部屋を貸す側の家主からすれば、滞納が発生したら賃貸保証会社が部屋を借りる人に代わって家賃を支払ってくれるので、滞納がすぐに解消されるというメリットがあります。
その後は賃貸保証会社から賃借人へ肩代わりした家賃を請求します。
この賃貸保証サービスは部屋を借りる人にとってもメリットがあります。例えば、親や親族など身近であっても、連帯保証人を引き受けてくれる人を探すのは難しいものです。
しかし、賃貸保証会社なら保証料を払えば連帯保証人の代わりになってくれるので、手間や心配がありません。また、勤続年数や収入に不安があっても審査が通りやすいとか、敷金などの賃貸条件が緩和されることもあります。
退去時の費用
部屋を退去する際には、返還される費用と支払う費用が発生します。
敷金は、家賃滞納や補修工事などの補填費用を除いた分が返還されますが、部屋の使い方が乱暴で入居者負担の補修工事が高額になった場合には、敷金を上回る金額が別途請求されることもあります。
契約によっては、初期費用に鍵交換費用や消毒殺虫費用を含まずに、退去時に支払いを促すケースもあるため、退去時には何の支払いが発生するのかを確認しておきましょう。
まとめ
お金に関わることは契約条件のなかでもとくに重要です。契約時にしっかり聞いておくのはもちろん、書面として記載してあるのかも確認しましょう。
また、初期費用を抑えられる、ゼロゼロ物件だけに限定して部屋探しをすると、物件の選択肢は狭くなり不利な条件の物件も多くなるため、注意が必要です。
いずれにしても、住み替えには大きなお金が必要になるため、事前によく調べておくことが大切です。
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この記事のポイント
- 敷金とは?
敷金は賃貸を借りるときに、借主が貸主に対して預けておくお金のことで、家賃の1~2ヵ月分が相場です。
関西圏では、敷金を保証金と呼ぶこともあります。
詳しくは「敷金礼金とは賃貸物件に入居する際に支払うお金」をご確認ください。
- 賃貸借契約の初期費用とは?
敷金礼金以外に賃貸借契約の初期費用として下記のような費用が含まれます。
- 前払い家賃
- 前払い管理費
- 火災保険料
- 賃貸保証料
- 鍵交換費用
- 消毒費用
- 害虫駆除費用
などがあります。
詳しくは「敷金、礼金以外に確認しておきたいポイント」をご確認ください。

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