ざっくり要約!
- 登記識別情報(登記識別情報通知)とは従来の登記済証(権利証)に代わるもので、不動産の売却時に必要
- 登記識別情報(登記識別情報通知)を紛失したら法務局に失効申出を行う
不動産を所有している方や、購入したばかりの方のなかには、登記識別情報通知と記載された書類を持っているものの、今後使う機会はあるのか、いつ必要になる書類なのかと疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
登記識別情報は不動産の所有者であることを示す重要な書類です。
そこで本記事では、登記識別情報の重要性や利用する場面、注意点について解説します。
本記事を読んでいただければ、登記識別情報の重要性や、取り扱い時に注意すべきことがわかります。
登記識別情報とは何か興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
登記識別情報とは
登記識別情報(登記識別情報通知)とは、従来の登記済証(権利証)に代わるもので、不動産の売却時に必要な書類です。書類としては登記識別情報通知と呼ばれています。
不動産の購入時には、登記申請が完了すると買主の方へ登記識別情報通知が交付されます。
平成17年の不動産登記法の改正により、手続きをオンライン化するために新たに交付されるようになりました。
登記識別情報は不動産ごとのパスワードのようなもので、本人確認手段の1つとして利用されます。12桁の英数字の組み合わせで構成されており、登記識別情報通知という書面に二次元コードとともに印字されています。
・「登記事項証明書」に関する記事はこちら 登記事項証明書とは?必要となるケースや証明書の種類、取得方法を解説 |
登記識別情報の発行枚数
登記識別情報(登記識別情報通知)は原則「不動産ごと」「名義人ごと」に交付されます。
例えば、3筆の土地を1人で所有している場合は3枚、2人で所有している場合は6枚交付されます。
しかし、マンションのように土地と建物の権利が一体となっている場合、交付されるのは建物分のみです。
なお、土地と建物が別々になっている非敷地権のマンションの場合は、土地と建物それぞれに交付されます。
昭和58年の法改正によってマンションの敷地利用権と専有部分は一体化されているため、改正法が施行された昭和59年以降に建築されたマンションはおおよそ敷地権化しており、土地と建物が一体になっています。
登記識別情報が交付される場合とされない場合
登記識別情報は、交付される場合とされない場合があるため、その違いを理解しておきましょう。
登記識別情報が交付されるのは、申請人自らが新たに登記名義人となる登記申請をした場合です。
そのため、抵当権の抹消や債権者代位による登記、所有者の住所変更、氏名変更では発行されません。
なお、司法書士に登記を委任する場合はあくまでも委任であるため、本人が申請した場合と同様に交付されます。
登記識別情報を利用する場面
登記識別情報を利用するのは以下のような場面です。
- 不動産取引(売買、贈与)
- 不動産の名義変更
- 不動産を担保にした借り入れなど
登記識別情報は登記名義人の本人確認の役割があるため、不動産に関連した取引や手続きの際に利用することが多いです。
登記識別情報通知の記載事項
登記識別情報通知の記載事項は、以下のとおりです。
- 不動産の所在
- 不動産番号
- 受付年月日、受付番号
- 登記の目的(抵当権の設定登記・抹消登記、所有権の移転登記など)
- 登録名義人の住所
- 登録名義人の氏名
- 登記識別情報、二次元コード
このなかでも登記識別情報と二次元コードが最も重要な内容であるため、目隠しシールが貼られている、もしくは折込み式になっており、ほかの方から見られないような仕組みになっています。
・「抵当権」に関する記事はこちら 抵当権とは何か?自宅売却時の注意点や抹消手続きの流れと必要書類を解説 ・「所有権移転登記」に関する記事はこちら 所有権移転登記は自分でできるのか?費用、必要書類や手続きの流れを解説 |
登記識別情報の注意点
登記識別情報(登記識別情報通知)の注意点は以下のとおりです。
- 一度開封すると元に戻せない
- 再発行されない
- 似た書類と間違えないようにする
- 登記識別情報通知を受け取らない選択もできてしまう
それぞれ詳しく解説します。
一度開封すると元に戻せない
登記識別情報はほかの方から見られないように、目隠しシールが貼られている(旧式)もしくは折込み式の目隠し(現行)が付いています。
これらは情報漏洩を防止するための仕組みであるため、登記識別情報を使用するまでは開封しないようにしましょう。一度開封してしまうと、元には戻せません。
登記識別情報の12桁の番号を知られてしまうと、登記識別情報を盗まれたのと同じ意味になります。
そのため、使用するまでは開封せずに保管しておくのが安心です。紛失した際には、すぐに法務局に失効申出を行いましょう。
再発行されない
登記識別情報通知は紛失すると再発行できないため注意しましょう。
紛失したあとに不動産売買などを行う場合は、以下のいずれかの代替手段によって本人確認を行います。
- 司法書士による本人確認情報の作成
- 公証人による認証
- 事前通知制度
司法書士による本人確認情報の作成は、所有者と面談を行い、所有者本人であることを確認したうえ、その旨を書面化します。なお、当該不動産売買に関する登記申請を代理する司法書士のみが本人確認情報を作成できます。
本人確認情報の作成時には、身分証や不動産を購入した際の売買契約書などが必要です。
公証人による認証では、公証人の前で司法書士に対する登記申請委任状に署名捺印を行います。公証人がその委任状を認証することで、登記申請が可能になります。
事前通知制度では、登記申請を行った際に法務局から事実確認として、本人限定受取郵便で通知が届きます。
届いた通知に署名捺印することで、登記が完了する仕組みです。
3つの代替手段のなかで事前通知が最も手軽ですが、不動産売買の際には基本的に利用されません。
なぜなら事前通知を返信しなかった場合、登記申請が却下され所有権の移転ができないためです。
事前通知制度は買主や金融機関にとっては大きなリスクとなるため、一般的には司法書士による本人確認情報の作成、もしくは公証人による認証で本人確認を行います。
事前通知制度以外は費用がかかるため、登記識別情報は紛失しないように大切に保管しましょう。
似た書類と間違えないようにする
登記識別情報通知と似た書類に「登記完了証」という書類があるため、間違えないようにしましょう。
登記完了証とは、登記が完了したことを通知するための書類です。
登記名義人である事実を証明する役割はなく、登記後に使用する機会もありません。登記完了証と間違って登記識別情報通知を処分しないように注意しましょう。
登記識別情報通知を受け取らない選択もできる
登記識別情報通知は登記識別情報をほかの方に知られないように、受け取らない選択も可能です。
しかし、受け取らないメリットよりもデメリットの方が大きいため必ず受け取りましょう。登記識別情報がなければ、不動産の取引をする際に紛失時と同様の手続きを取らなければならないため、将来的に手間と費用がかかってしまいます。
登記識別情報通知は登記完了から3ヶ月以内に受け取らなければ登記官によって破棄されるため、法務局に取りにいきましょう。
司法書士に登記を依頼する際には心配いりませんが、個人で手続きをする際には誤って受け取らない選択をしないように注意が必要です。
登記識別情報の使用方法
登記識別情報は登記手続きをする際に使用しますが、具体的な使用方法は以下のとおりです。
オンライン申請:12桁のパスワードを申請情報と合わせて法務局へ送信
書面申請:登記識別情報通知のコピーと申請書を提出
これらは自分で登記手続きをする際の流れですが、実際の不動産取引では司法書士に依頼するため、登記識別情報通知を司法書士に渡します。
登記識別情報通知の見方【見本付き】
登記識別情報通知は交付時期により様式が異なります。以前はA4サイズでしたが、現在はA4サイズの用紙を折り込んだ様式でA4サイズより小さなサイズです。
ここでは、2023年時点で交付されている登記識別情報通知を例に記載事項を解説します。
上記の1枚目の画像が登記識別情報通知の登記識別情報部分が保護された状態、2枚目が登記識別情報の保護部分を剥がした状態です。それぞれの記載事項を解説します。
【不動産】
当該登記識別情報の対象不動産が記載されます。敷地権化されているマンションでは、建物部分の家屋番号が記載されており、土地に関しては登記識別情報通知が発行されません。
【不動産番号】
一筆の土地、一個の建物ごとに付けられた13桁の番号が記載されます。法務局が管理する登記情報から、この番号を使い不動産を特定することが可能です。
【受付年月日・受付番号(又は順位番号)】
法務局に登記申請をした日が受付年月日として記載されます。受付番号は各法務局で登記申請を受付けた順に付番される番号です。
【登記の目的】
どのような登記申請を行ったか記されるのが登記の目的です。売買や相続で名義を変更した場合には「所有権移転」や「〇〇持分全部移転」等と記載されます。
また住宅ローンを組み不動産を購入した場合には、お金を貸した銀行側に「抵当権設定」と登記の目的が記載された登記識別情報通知が交付されます。
【登記名義人】
今回の登記申請により、新たに登記名義人となった人の住所、氏名が記載されます。
【登記識別情報】
不動産及び登記名義人ごとに、異なる12桁の英数字の羅列が記載されています。二次元コードには、登記識別情報通知に記載された情報が格納されています。
ただし、この部分は第三者に対する露出を防ぐため保護された状態で交付されるので、次回の登記申請時まで目にする機会は基本的にはありません。
登記識別情報通知について知っておきたいこと
非常に大切な登記識別情報通知ですが、普段は手にする機会は少ないため、その取扱いについてよく分からないという方も少なくないでしょう。ここでは登記識別情報通知について知っておきたいポイントを紹介します。
郵送での受領も可能
登記識別情報通知は、登記が完了した際に法務局より交付されます。司法書士に登記を依頼した場合は司法書士から送付されますが、自分で登記申請を行った場合にはご自身で受領する必要があります。この登記識別情報通知は窓口で受領する方法以外に、郵送による受領も可能です。
【窓口で受領】
登記完了日(補正日といいます)以降に、登記申請書に押した印鑑と運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を持参すると法務局にて受領ができます。
【郵送で受領】
郵送で受領する場合の手順は以下の通りです。
1.登記申請の際、登記申請書の適宜の箇所に郵送交付を希望する旨を記載する
記載例
「送付の方法により登記識別情報通知の交付を希望します。
送付先:登記名義人住所」
2.返送用封筒に申請人の住所・氏名を記載したうえで、本人限定受取郵便の料金分の切手を貼り、登記申請時に申請書とあわせて提出する
3.登記完了後に法務局より返送されるので、本人限定受取郵便の方式に従い受領する
出典:本人限定受取|日本郵便
登記申請人以外には交付されない
最近では相続登記を自分で申請する方も増えてきましたが、法定相続分による相続登記を申請する場合には注意が必要です。
法定相続分に基づく相続登記は、相続人1人から全員分の相続登記が申請できます。
しかし、法定相続人のうちの1人が代表として登記申請を行った場合、その申請人となった相続人だけに登記識別情報通知が交付され、他の法定相続人には交付されません。つまり、申請人とならなかった法定相続人は、登記名義人とはなっても登記識別情報通知を持っていない状態になります。
このように登記識別情報通知を交付されなかった相続人は、当該不動産を売却するときに、登記識別情報通知を紛失した時と同様の手続きが必要となってしまうのです。
結果、余計な費用と手間が発生するため、法定相続分どおりに相続登記を申請する際は、相続人全員が申請人となるようにしましょう。
紛失した場合は登記識別情報の失効申出ができる
登記識別情報通知を紛失してしまった場合や、盗難にあってしまった場合は第三者による悪用を防ぐため、速やかに登記識別情報の失効申出をしましょう。
また登記識別情報の管理が難しい場合や、不安な場合にも失効申出は可能です。失効申出は登記名義人やその相続人等が登記識別情報通知を交付した管轄法務局に対し行います。
失効申出後に新たな登記識別情報通知は交付されないため、売却時や不動産を担保にいれる際には、司法書士による本人確認情報作成や公証人による認証等の手続きを経ることになります。
ただし、手続きの際には8万円~15万円程度かかります。
登記識別情報の重要性を理解して大切に保管しましょう
本記事では、登記識別情報の重要性や利用する場面、注意点について解説しました。
登記識別情報は、従来の登記済証(権利証)に代わるもので、登記手続きをオンライン化するために新たに発行されました。
登記識別情報を利用するのは、不動産取引(売買、贈与)、不動産の名義変更、不動産を担保にした借り入れなどの場合です。
登記識別情報通知は不動産の登記名義人であることを証明する重要な書類であるため、取り扱いに注意しましょう。登記識別情報は、一度開封すると元に戻せないことに加え、紛失した際にも再発行できません。
本人確認のための代替手段はありますが、手間と費用がかかるため、紛失しないように大切に保管しましょう。
この記事のポイント
- 登記識別情報(登記識別情報通知)とは何ですか?
登記識別情報(登記識別情報通知)とは、従来の登記済証(権利証)に代わるもので、不動産の売却時に必要な書類です。
12桁の英数字の組み合わせからなる登記識別情報が、登記識別情報通知という書面に二次元コードとともに印字されています。
不動産の購入時には、登記申請が完了すると買主の方へ登記識別情報通知が交付されます。
詳しくは「登記識別情報とは」をご覧ください。
- 登記識別情報の注意点は?
登記識別情報(登記識別情報通知)には、一度開封すると元に戻せない、再発行されない、似た書類と間違えないようにする、登記識別情報通知を受け取らない選択もできてしまうといった注意点があります。
実際に登記識別情報を利用する場面がきたときに困ることのないよう、しっかり把握しておきましょう。
詳しくは「登記識別情報の注意点」をご覧ください。
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