ざっくり要約!
- 離婚時には住宅の価額や住宅ローンの内容について把握する必要がある
- 離婚時に家を売却して現金化する場合、財産分与の対象となる資産状況を完全に把握するために所有している不動産の査定が必要
残った住宅ローンをどうするかは、離婚時における大きな問題の1つです。
住宅ローンが残っているからといって離婚できないわけではありませんが、売却するのか、どちらが住宅ローンを返済するのかなど、さまざまな問題が発生します。
そこでこの記事では、離婚後の住宅ローンの支払い義務は誰にあるのか、連帯保証人、ペアローンの場合など詳しく解説します。
住宅ローンが残っている状態で離婚を考えている方は、ぜひ最後まで目を通してください。
記事サマリー
離婚後の住宅ローンの支払い義務は「家のローンの名義人」
離婚後の住宅ローンの支払い義務は、あくまでも「住宅ローンの名義人」にあります。
なぜなら、住宅ローンは財産分与の対象とはされないからです。財産分与とは、夫婦共同の財産を離婚時に分け合うことをいいます。
そのため、仮に離婚時に住宅ローンが2,000万円残っていた場合、夫婦それぞれが1/2である1,000万円を返済するわけではありません。
ただし、実際には離婚前に返済の負担額について話し合って決めるのが一般的です。
では、連帯保証人になっている場合やペアローン(共同債務)の場合の支払い義務はどうなるのでしょうか。
連帯保証人の場合は?
夫が住宅ローンの名義人で、配偶者である妻が連帯保証人になっているケースも少なくないでしょう。
連帯保証人になっている場合、名義人である夫が返済できなくなったときや故意に返さない場合などで債権者から支払いを求められたときに、夫に代わって住宅ローンを返済しなければなりません。
連帯保証人から外れたいと思っても、連帯保証人を変更することは基本的には難しいのが実情です。連帯保証人でなくなるためには、住宅ローンの借り換えなどを検討する必要があります。
ペアローン(共同債務)の場合は?
ペアローン(共同債務)の場合は、夫・妻ともに名義人になるため、それぞれに支払い義務があります。
ペアローン(共同債務)とは、同じ物件に対して夫婦それぞれがローンを組むことです。
夫婦の収入を合算できるため借り入れ可能額が大きくなるというメリットがあります。一方で、合算した収入だからこそ借りられた額であるため、離婚時に単独名義にしようとしても、審査に通過するのは一般的に難しいでしょう。
住宅を売却して、住宅ローンの完済などを検討するのが一つの方法です。
まずは名義や住宅ローンの契約内容を把握する
離婚時に住宅を売却するのか、どちらか一方が住み続けるのかなどを判断するために、まずは住宅の価額や住宅ローンの内容について把握する必要があります。
住宅の価額と名義
土地や建物の名義は、法務局から登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば確認できます。登記簿謄本は誰でも取得可能です。法務局の窓口はもちろん、オンラインでの請求にも対応しています。
不動産が共有名義の場合、名義人全員の同意がないと売却できない点に注意が必要です。例えば、妻がマイホームを売却したいと思っても、夫が住み続けたいと言った場合は売ることができません。
不動産の価額については、不動産業者に依頼すれば査定してもらえます。売却するのか、一方が住み続けるのかどうかは不動産の価額によっても変わると考えられるため、早めに調べておきましょう。
出典:法務局|登記事項証明書(土地・建物),地図・図面証明書を取得したい方
住宅ローンの契約内容と残高
住宅ローンの契約内容を調べ、名義が誰なのかを把握することも必要です。単独名義・連帯債務・ペアローンのどれにあたるのか、保証人または連帯保証人になっているかなどを確認します。
住宅ローンの残高は、金融機関から届く返済予定表にて確認しましょう。査定してもらった不動産の価額と照らし合わせれば、オーバーローンなのかアンダーローンなのかを把握できます。
オーバーローン
オーバーローンとは、住宅ローンの残高が不動産の売却価格よりも多い状態を言います。つまり、不動産を売っても住宅ローンの残債がある状態です。
アンダーローン
アンダーローンとは、不動産の売却価格が住宅ローンの残高よりも高い状態です。アンダーローンの場合は、売却すれば利益が出ます。
離婚時に住宅ローンが残っているときの処理方法
離婚時に住宅ローンが残っている場合の処理方法は、オーバーローンなのかアンダーローンなのかによって変わってきます。
オーバーローンの場合は、売却しても住宅ローンを完済できないため、夫婦の一方が住み続けるのが一般的です。ただし、差額を預貯金などでまかなって完済する方法もあります。
アンダーローンの場合は、土地や建物を売ると利益が出るので、売却して夫婦で利益を分け合うのが最も簡単な方法です。
ここでは、離婚時に住宅ローンが残っているときの処理方法について、4つのケースに分けてみていきましょう。
ケース1:名義人が夫で、離婚後に夫が住み続ける
住宅ローンの名義人が夫で、離婚後も夫が住む場合は、離婚前と変わらず名義人である夫が住宅ローンを返済し続ければ問題ないでしょう。
ただし、妻が連帯保証人になっている場合は、夫が万が一返済できなくなったとき、夫が故意に返さない場合でも債権者に支払いを請求されたときなどに支払い義務が生じてしまいます。
連帯保証人から外れたいと思っても、金融機関に認められないケースが多いため注意が必要です。
ケース2:名義人が夫で、離婚後に妻が住み続ける
名義人である夫が住宅ローンの返済を続けて、離婚後に妻が住む場合、名義人と住む人が一致しないことになります。この場合は、事前に金融機関に相談しなければなりません。
一般的に、住宅ローンの非名義人である妻が住むことは認められないケースが多いです。もし認められたとしても、夫が返済できなくなった場合に家を退去させられるリスク、連帯保証人として支払い義務が生じるリスクなどがあります。
住宅ローンの名義変更をしたいと思っても、一般的には認められません。なぜなら、契約者である夫に対して審査され契約できた住宅ローンであるからです。
離婚後のトラブルを防ぐためには、事前に公正証書をつくるなどの対策を行う必要があります。
児童扶養手当がもらえなくなる可能性あり
児童扶養手当(母子手当・父子手当)の支給要件を満たしている世帯の場合、夫に住宅ローンを返済してもらいながら妻が住み続けることで児童扶養手当を受け取れなくなる可能性があります(妻側が子どもを育てる場合を想定)。
児童扶養手当とは、離婚によるひとり親世帯などが所得の要件などに当てはまる場合に受け取れる手当のことです。児童扶養手当の支給については、各自治体で所得制限が設けられています。
夫に住宅ローンの返済をしてもらっている場合、養育費とみなされて8割相当が所得に加算されるため、所得基準を超えてしまうケースがある点に注意が必要です。
児童扶養手当について、詳しくは各自治体の条件などを確認しましょう。
ケース3:共同名義でどちらか一方が住み続ける
共同名義の場合、夫婦どちらにも住宅ローンの支払い義務が発生します。どちらか一方の返済が滞ると、相手に返済の負担が大きくのしかかるでしょう。
離婚後も関わりを持たなければならない点からも、共同名義のままにするのは避けたいところです。
ただし、共同名義だったものを単独名義に変えるのは一般的に難しいとされています。
住宅ローンを完済するのが理想ですが、できない場合は借り換えなどを検討しましょう。離婚後のトラブルを防ぐためにも事前にしっかり話し合うことが大切です。
ケース4:売却する
不動産の価額が住宅ローン残高より高いアンダーローンの場合は、不動産を売却して利益を分け合うのが最も一般的です。
オーバーローンの場合で不動産を売却したいなら、住宅ローンの残債を預貯金などで完済する方法があります。
また、残債がありどうしても完済できない場合は、任意売却を検討するのも1つです。任意売却とは、住宅ローンを組んでいる金融機関の同意を得て不動産を売却する方法を言います。
任意売却は通常の売却とは異なるため、検討する場合はまず金融機関に相談しましょう。
財産分与の種類
上述のとおり、財産分与とは夫婦共同の財産を離婚時に分け合うことです。割合は原則として2分の1とされています。
財産分与には3種類あり、一般的な財産分与は「清算的財産分与」と言います。
- 清算的財産分与:夫婦の財産を清算する一般的な財産分与
- 扶養的財産分与:夫婦のどちらかが離婚後に生活に困窮すると考えられる場合に、もう一方が援助をする扶養的な財産分与
- 慰謝料的財産分与:慰謝料の要素を含んだ財産分与
初めに述べたとおり、負債にあたる住宅ローンは財産分与の対象になりません。
離婚後に家やマンションを財産分与できる?
離婚時の財産分与においては、不動産を売却することによってお互いに納得できる結果になりやすいです。なお、離婚前に不動産を売却して得た利益を分ける場合、高額の贈与税が発生する可能性があるため、注意しましょう。
まずは財産分与の対象に含まれるかを確認
最初に、財産分与の対象となる夫婦の共有財産として何があるのかを調べる必要があります。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を確認して、住宅ローンを借りている人の名義や金額・借入している金融機関・共有者との借入比率などを調べます。
そして金融機関のサイトから夫婦各々の口座情報にログインし、住宅ローンの支払い残高や残返済期間などを確認します。
さらに、日々の生活に利用している金融機関などすべての口座に預金がいくらあるのかを把握します。その他、保有している株式・債権や生命保険、自動車ローンや学資ローンなど、すべての資産を把握することによって、家やマンションを売却すべきか総合的に考えることが大切です。
売却して現金化する
財産分与の対象となる資産状況を完全に把握するためには、所有している不動産の査定が必要です。なるべく高く売ることを最優先とする場合、高値で買ってもらえる可能性の高い仲介がおすすめです。
不動産の査定価額は不動産会社によって異なるため、できるだけ複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。査定価額によって、住宅ローンの残債がすべて返済できるのか、離婚する当事者間で決めた比率で財産分与が可能なのかを確認します。
複数の査定額から仲介する会社を決めたら、査定額から売り出し開始価格を決定します。想定される売却価格で残債を支払うことが問題なさそうであれば、不動産会社のポータルサイト、不動産会社の店頭などの市場に出して、売却開始という流れになります。
離婚の場合、財産分与にはスピード感が求められるため、複数の会社に依頼できる一般媒介かつ、近隣の売買事例に基づいた平均的な売却希望額が望ましいです。そうすることによって、一定の期間内に売却できる確率は高くなるでしょう。
売却価格は多少落ちても、少しでも早く売りたいという場合、買い取り業者に買ってもらう方法もあります。価格は下がってしまうことがほとんどですが、1か月以内に売れるケースも珍しくありません。
最終的に、売主として必要となる諸費用(契約書に貼付する印紙代、仲介手数料、抵当権抹消や住所変更等の登記に係る費用等)を控除した金額が手元に残ります。住宅を売却して利益が出た場合は、所得税が発生します。ただ、多くの場合は控除等によって所得税負担がないことがほとんどです。
発生した場合は公平を期するため、財産分与する際にその分の金額を除外しておくことが大事です。多くの利益が出そうな不動産は、どのような控除が使えるのかなど事前に税理士に相談することをおすすめします。
家を売却して残債は自己資金で清算
家やマンションを売却する場合、銀行の抵当権を抹消することが必要不可欠になります。抵当権がついている物件は買主にとってリスクでしかなく、売却できる可能性がほとんどなくなるからです。
売却価格よりも住宅ローンの残債の方が多い場合、自己資金によってローンを完済しなくては、物件の引き渡しをすることができません。
理由としては、物件購入時に融資を受けた際、その建物を担保として金融機関が抵当権を保有している状態となっているため、そのままだと第三者が権利を持った状態となってしまうからです。
売主は引き渡し時に買主の完全な所有権を保障する義務があるため、家を売却する過程で、売主が住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があるのです。
任意売却を行う
家やマンションを売却しても、住宅ローンが大幅に残ってしまい、抵当権を抹消するのに足る自己資金がない場合、任意売却という方法があります。
任意売却とは融資を受けた金融機関が許可したうえで、競売(住宅ローンのすべての返済が不可能だと金融機関が判断をして、強制的に不動産を売却して住宅ローンを一部でも回収する手続き)になる前にとることができる手段です。
任意売却は競売と違い、仲介市場価格に近いところ(6~8割程度)で売却できるため、所有者(売主)に少しでもお金が多く入るというメリットがあります。通常の売却では抵当権を解除するのに現金が足りなかったようなケースでも、任意売却をすることによって、抵当権の解除をしてもらうことができます。
ただし、現金が足りなかった分は金融機関への借入金として残るため、借金をどうやって返済していくか考える必要が生じます。
また、信用情報機関に「ブラックリスト(事故情報)」として載ってしまうというデメリットがあります。
離婚前に夫婦で確認したいこと
住宅ローンが残っている状態で離婚をする場合、トラブルを避けるためにも離婚前に夫婦でよく話し合っておくことが大切です。
家の名義
家の名義をどうするのかを話し合いましょう。仮に名義人が夫になっている家に妻が住む場合、妻は家を売りたいと思っても自由に売却できません。
また、共有名義の場合、売却には名義人全員の同意が必要であるため、離婚後に売却したくなっても、共有名義人、つまり元配偶者の同意を得なければ売却することができません。
連帯保証人
連帯保証人についても考えておきましょう。夫婦のどちらかが連帯保証人になっている場合、名義人が返済できなくなったとき、名義人が故意に返済しない場合に債権者から支払いを請求されたときなどにもう一方に支払い義務が生じてしまいます。
連帯保証人の変更は基本的に難しいですが、金融機関に相談すれば連帯保証人を新たに立てることで外れられる可能性もあるので、まずは相談してみましょう。借り換えを検討するのも1つです。
支払いが滞ったらどうするのか
夫に住宅ローンの返済をしてもらいながら妻が住むような場合、夫の支払いが滞るリスクへの対策を行う必要があります。
離婚前に、公正証書の作成などを検討しましょう。公正証書は大事な取り決め事をするためのものであり、離婚後の自分や子どもの生活を守るために重要です。
・「離婚で家を財産分与する方法」に関する記事はこちら 離婚で家を財産分与する方法を解説!損をしないために確認するべきことをまとめて紹介 |
この記事のポイント
- 離婚時に住宅ローンが残っているときはどうすればいいですか?
離婚時に住宅ローンが残っている場合、オーバーローンなのかアンダーローンなのかによってとるべき方法が変わってきます。
オーバーローンの場合は、売却しても住宅ローンを完済できないため、夫婦の一方が住み続けるのが一般的です。ただし、差額を預貯金などでまかなって完済する方法もあります。
アンダーローンの場合は、土地や建物を売ると利益が出るので、売却して夫婦で利益を分け合うのが最も簡単な方法です。
詳しくは「離婚時に住宅ローンが残っているときの処理方法」をご覧ください。
- 離婚後に家やマンションを財産分与できる?
離婚後に家やマンションを売却して現金化し、分けるという方法があります。
そのために、不動産の査定や住宅ローンを完済して抵当権を抹消するなど、さまざまな手続きがあります。
詳しくは「離婚後に家やマンションを財産分与できる?」をご覧ください。
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