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旧耐震と新耐震の違いは?地震発生時のリスクも解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 新耐震基準とは現在適用されている耐震基準で、旧耐震基準とは新耐震基準が適用される前の耐震基準
  • 旧耐震物件を購入する際には、住宅ローンを組めるか、耐震基準適合証明書を発行できるか、各種控除や軽減措置が適用されるかを確認する

中古住宅の購入を検討するなかで「耐震基準」が気になっている方も多いのではないでしょうか。

地震の多い日本で安心して生活するためにも、耐震基準は重要なポイントです。

そこで本記事では、新耐震基準と旧耐震基準の違いや購入時の確認ポイント、耐震診断の費用について解説します。

本記事を読んでいただければ、中古住宅を選ぶ基準が明確になり、安心して生活できる住まいを見つけられるでしょう。

新耐震基準と旧耐震基準の違い

新耐震基準とは現在適用されている耐震基準で、旧耐震基準とは新耐震基準が適用される前の耐震基準を指します。
それぞれの違いは以下のとおりです。

  • 旧耐震基準:震度5強程度の地震で損傷しないことを検証
  • 新耐震基準:震度5強程度の地震でほとんど損傷しないことに加えて、震度6強〜7程度の地震でも倒壊、崩壊しないことを検証

旧耐震基準から新耐震基準に改定されたきっかけは、1978年に発生した宮城県沖地震です。
宮城県沖地震では住宅の全半壊が4,385戸、一部損壊が86,010戸という多大な被害が生じました。人口50万人以上の都市が初めて経験した都市型地震といわれ、これの被害を教訓に建築基準法が改正されました。

新耐震基準の安全性

旧耐震基準から新耐震基準に改定されたことで、住宅の安全性は大きく高まりました。
実際に1995年に発生した阪神淡路大震災では、新耐震基準の建物の被害が少なかったという結果が出ています。旧耐震基準と新耐震基準の被害の違いは以下のとおりです。

  旧耐震基準
(1981年以前に建築)
新耐震基準
(1982年以降に建築)
倒壊、崩壊18.9%7.7%
大破、中破44.6%15.4%
小破、軽微30.4%30.4%
無被害6.1%46.2%

また、2011年の東日本大震災では、被害調査を実施した約300棟のうち、大規模な被害があった建築物38棟中36棟が旧耐震基準の建物でした。

これらの結果からも新耐震基準の建物は旧耐震基準の建物に比べて安全性が高いといえます。

出典:
住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題|国土交通省
3−1 震災対策 (3)地震に強い国土の形成|内閣府

旧耐震物件のメリット

耐震性が気になる旧耐震物件ですが、築年数が古いなりのメリットもあります。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。

  • 物件価格が安い
  • 立地が良い物件が多い
  • 資産価値が落ちにくい

物件価格が安い

旧耐震は築年数が古いため、新耐震物件よりも物件価格が安い傾向があります。購入後に自分の好みにリフォームやリノベーションをしたい方にとっては、購入費用を抑えることができるのがメリットです。

安く購入できた分新築同様に改装するなどして、理想の住宅を手に入れることができます。

立地が良い物件が多い

マンションは魅力的な立地から建設されます。旧耐震の物件はマンションが建築され始めた時期に建てられているため、駅近くなど利便性が高いエリアに建築されていることが多いです。

立地が良いマンションを探しているけれど、なかなか理想的な立地のマンションが見つからない方は、旧耐震マンションも含めて物件探しをすると、立地の良い物件を見つけられるかもしれません。

資産価値が落ちにくい

旧耐震マンションは建物の評価が低く、ほとんど土地値になっているケースが多いのが特徴です。資産価値が低い分、その後値崩れしにくいのがメリットです。

不動産流通機構のレインズトピック「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」の中古マンションの築年帯別平均価格を見ると、築31年以降のマンションは価格が下がりきっていることがわかります。

旧耐震物件のデメリット

旧耐震物件のマンションにはデメリットもあります。旧耐震のマンションの購入を検討する場合は、十分デメリットも把握したうえで購入しましょう。以下の3つのデメリットを紹介します。

  • 耐震性に不安がある
  • 建て替えが行われる可能性がある
  • 修繕積立金が高くなる傾向がある

耐震性に不安がある

新耐震基準のマンションは、震度6~7程度の地震でも倒壊しないことを基準にしていますが、旧耐震のマンションは、震度5程度の地震までしか想定していません。

旧耐震マンションだからといって直ちに問題が起きるわけではありませんが、地震が起きるたびに不安を感じる可能性があります。

今後30年以内に大きな地震が起きる確率は70%ともいわれています。耐震性に対する不安は、旧耐震マンションのデメリットの1つといえます。

建て替えが行われる可能性がある

旧耐震マンションは、近い将来建て替えが行われる可能性があります。その場合は長期間仮住まいをしなければなりません。また仮住まい費用の他に、建て替え費用を捻出する必要があります。

マンションの購入前に、管理組合で建て替えについて検討しているのか確認することをおすすめします。

修繕金が高くなる傾向がある

修繕積立金とは、将来必要になる修繕工事費を計画的に積み立てていくためのものです。通常そのマンションごとに「長期修繕計画」を立てて、修繕積立金を設定しています。経年によって修繕すべき箇所が増えるため、年数ごとに修繕積立金の値上げを計画しているケースが多いです。

修繕積立金の積立方法には、均等額を積み立てる「均等積立方式」と、段階的に積立額を増やしていく「段階増額積立方式」の2種類あります。新築マンションは、当初の負担額を軽減するために段階増額積立方式が採用されるケースが多く、その場合は経年によって修繕積立金が高くなります。

旧耐震のマンションを購入する場合は、修繕積立金や管理費額も考慮し、住宅ローンの返済も含めて月々の支払いに無理がないように注意しましょう。

旧耐震物件を購入する際の確認ポイント

中古住宅はリフォーム物件やリノベーション物件も多いため、旧耐震物件を検討する機会もあるでしょう。

旧耐震物件のなかには現行の新耐震基準に適合している物件もあるため、必ずしも築年数が経過しているからといって安全性に問題があるとはいえません。

しかし、旧耐震物件は購入に不利なケースもあるため、購入する際には以下の3つのポイントを確認しておきましょう。

  • 住宅ローンを組めるか
  • 耐震基準適合証明書を発行できるか
  • 各種控除や軽減措置が適用されるか

3つのポイントを詳しく解説します。

住宅ローンを組めるか

旧耐震物件の購入を検討する際には、住宅ローンを組めるかを確認しましょう。なぜなら、旧耐震であることを理由に住宅ローンを組めない可能性があるためです。

実際に住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して扱う住宅ローン商品「フラット35」でも、旧耐震物件には利用制限があります。具体的には耐震基準適合証明書の提出、もしくは住宅金融支援機能の定める基準を満たすことです。

耐震診断の実施や耐震補強工事は多くの費用がかかるため、実施していない物件も多くあります。とくにマンションの場合はマンション全体での話し合いが必要になるため、旧耐震物件であっても、具体的な対策を取れていないマンションが多く存在するのが現状です。

耐震基準適合証明書を発行できるか

先ほども触れましたが、旧耐震物件を購入する際には耐震基準適合証明書が重要になるため、発行できるかを必ず確認しましょう。

耐震基準適合証明書を発行すると、住宅ローンを組む以外にも各種控除や割引を受けられます。

  • 住宅ローン控除
  • 不動産取得税の軽減
  • 登録免許税の軽減
  • 地震保険の割引

それぞれ詳しく解説します。

住宅ローン控除

旧耐震物件であっても耐震基準適合証明書を取得すると住宅ローン控除が適用されます。住宅ローン控除とは、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度です。

2022年度から住宅ローン控除の制度が改正され、耐震基準適合証明書を求められる物件が少なくなりました。

以前は耐火住宅であれば築25年以内、非耐火住宅であれば築20年以内の物件以外は、耐震基準適合証明書が求められていましたが、現行の制度では1982年以後に建築された物件は不要になっています。

しかし、住宅ローン控除を受けるには「1982年以降に建築または現行の耐震基準に適合」という条件を満たさなければならないため、いずれにせよ旧耐震物件の場合は耐震基準適合証明書が必要になります。

不動産取得税の軽減

1981年12月31日以前に新築された建物を購入する場合、耐震基準適合証明書を取得すると、土地、建物の不動産取得税が軽減されます。

不動産取得税で受けられる軽減は以下のとおりです(2022年9月現在における不動産取得税の内容)。

【不動産取得税の計算式】

  • 不動産取得税額=固定資産税評価額×3%(本則は4%)

【土地:以下どちらか多い方の金額が当初の税額から減額】

  • 土地1㎡あたりの価格×住宅の床面積の2倍×取得した住宅の持ち分×税率(3%)
  • 45,000円

【建物】

  • 税額=(住宅部分の価格-控除額)×税率(3%)

建物の控除額は以下の表を参考にしてください。

新築された日控除額
1976年1月1日〜1981年6月30日350万円
1981年7月1日~1985年6月30日420万円
1985年7月1日〜1989年3月31日450 万円
1989年7月1日〜1997年3月31日1,000万円
1997年4月1日以降1,200万円

耐震基準適合証明書を取得できれば購入時の諸費用を抑えられます。

登録免許税の軽減

耐震基準適合証明書を取得すると、旧耐震物件であっても登録免許税の軽減を受けられます。

登録免許税とは、不動産の登記をする際に法務局へ納める税金です。不動産を購入する際には、所有権移転登記と抵当権設定登記(住宅ローンを組む場合)が必要になります。

登録免許税の具体的な軽減内容は以下のとおりです(2022年9月現在における登録免許税の内容)。

【登録免許税の計算式】

  • 登録免許税額=課税標準(固定資産税評価額)×税率

【軽減内容】

  • 土地の所有権移転登記:本則2%から1.5%に軽減
  • 建物の所有権移転登記:本則2%から0.3%に軽減
  • 抵当権設定登記:本則0.4%から0.1%に軽減

登録免許税は購入時の諸費用のなかでも大きな割合を占めるため、耐震基準適合証明書を取得して軽減を受けましょう。

マイホームを購入する際の必要経費には登録免許税があります。登録免許税は決して安い金額ではないため、マイホームを購入する多くの方の金銭的な負担を緩和するために軽減措置が講じられています。

状況によって税率や必要書類が異なり内容が難しいため、手続きを確実に終えるために専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。

地震保険の割引

耐震基準適合証明書を取得すると、地震保険の割引を受けられます。

本来地震保険の割引を受けられるのは1981年6月1日以降に新築された建物ですが、耐震基準適合証明書を取得することで10%の割引を受けられます。

制度の名前は「耐震診断割引」ですが、耐震診断を受けただけでは適用されないため注意しましょう。

各種控除や軽減措置が適用されるか

マンションを売却したときに、利益が発生した場合は譲渡所得税がかかります。譲渡益から取得費など経費を差し引いた後に、譲渡所得税の税率をかけて譲渡所得税を計算します。所有期間が長い方が、税率が低いのが特徴です。

マイホームを売ったときの特例として「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」がありますが、居住財産であればその築年数に制限はありません。旧耐震のマンションも対象になり、譲渡所得税額から最大3,000万円を控除できます。

所有期間が10年を超える場合は、6,000万円以下については、さらに軽減措置によって低い税率(10%)が適用になります。この場合、適用する条件として築年数は問われません。つまり旧耐震のマンションでも、軽減措置が適用になります。

なお旧耐震建物であることで注意が必要なのは「特定のマイホームを買い換えたときの特例」です。2023年12月31日までに自宅を売却し、新居を購入する場合に譲渡益に対する課税を将来に繰り延べできるという特例です。

中古マンションを新居として購入する場合は、築25年以内のマンションであるか、一定の耐震基準を満たす必要があり、耐震基準適合証明書が必要になります。

特定のマイホームを買い換えたときの特例は、3,000万円控除やマイホームを売ったときの軽減税率の特例を併用することはできませんので注意しましょう。

出典:
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

旧耐震物件を購入する場合は耐震診断の依頼を検討する

旧耐震物件を購入する場合は耐震診断の依頼を検討しましょう。

耐震診断を受ける目的は大きく分けて2つです。

  • 耐震性能の現状を知り物件の安全性を理解する
  • 耐震基準適合証明書を取得する(性能を満たしていない場合は補強工事が必要)

ここからは、耐震診断を依頼する際の依頼先や費用について詳しく解説します。

耐震診断の依頼先

耐震診断の依頼先は複数あります。

  • 建築士事務所登録をしている建築士
  • 指定確認検査機関
  • 登録住宅性能評価機関
  • 住宅瑕疵担保責任保険法人

最も一般的なのは建築士への依頼です。しかし、具体的にどの建築士に依頼するべきか悩む方も多いでしょう。

そのような方は不動産会社を通して依頼するのがおすすめです。

不動産会社は建築士とも付き合いがあるため、購入を相談している不動産会社に伝えることでスムーズに耐震診断を実施できるでしょう。

なお、マンションの場合は区分所有者の判断だけでは耐震診断を実施できません。実施には管理組合の承認が必要になるため、一戸建てと比較すると耐震診断実施の難易度が高い傾向にあります。

耐震診断にかかる費用

耐震診断にかかる費用は物件の規模や検査内容によって異なりますが、およそ3~20万円です。

しかし、耐震診断の結果、新耐震基準に適合していないことが判明した際には、耐震基準適合証明書は発行されません。

耐震基準適合証明書を取得するには、耐震補強工事を実施する必要があります。

耐震補強工事の費用は、木造一戸建てであれば150~200万円程度、鉄筋コンクリート造であれば1㎡あたり15,000~50,000円程度です。

耐震診断や耐震補強工事を実施することで安心して生活できますが、多くの費用がかかることも踏まえて住宅購入を検討しましょう。

耐震基準を確認して安心できる住まいを選びましょう

本記事では、新耐震基準と旧耐震基準の違いや購入時のポイント、耐震診断の費用について解説しました。

築年数が経過した住宅を購入する場合は、新耐震基準を満たしていない場合があるため注意しましょう。新耐震基準が適用されているのは、建築確認日が1981年6月1日以降の物件です。

新耐震基準に適合している物件は住宅ローン控除や不動産取得税の軽減など、コスト面でのメリットも多くありますが、地震の多い日本で安心して生活できる点が最大のメリットといえるでしょう。

中古住宅の購入を検討している方は、耐震基準をもとに長期間安心して過ごせる住まいを選びましょう。

この記事のポイント

旧耐震物件のメリットは?

旧耐震物件には、物件価格が安い、立地が良い物件が多い、資産価値が落ちにくいといったメリットがあります。

詳しくは「旧耐震物件のメリット」をご覧ください。

旧耐震物件のデメリットは?

旧耐震物件には、耐震性に不安がある、建て替えが行われる可能性がある、修繕積立金が高くなる傾向があるといったデメリットがあります。

詳しくは「旧耐震物件のデメリット」をご覧ください。

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