ざっくり要約!
- 瓦は耐久性の高い屋根材
- 屋根は家の外見に大きく影響する
- 屋根瓦には、和瓦、平板瓦、スパニッシュ瓦がある
屋根瓦は、日本で古くから親しまれている屋根材です。ほかの屋根材と比べても耐久性が高く、長い間使うことができます。素材や製造の方法、形状などによりさまざまな種類に分けられるため、違いがわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、屋根瓦の種類と特徴を素材と形状ごとに解説します。あわせて、屋根瓦を選ぶポイントも説明します。マイホームを建てる方や屋根の葺き替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
屋根瓦の役割
屋根瓦は、耐久性が高い代表的な屋根材です。一般的な住宅はもちろん、伝統的な建築物にも多く使われてきています。
屋根瓦は、製造方法や形状でいくつかの種類に分けることができ、特徴はさまざまです。また、「日本三大瓦」と呼ばれる三州瓦、石州瓦、淡路瓦と産地の違いもあります。
飛鳥時代からの長い歴史をもつ瓦は、現代も私たちの快適な暮らしを守るため、重要な役割を果たしています。以下で屋根瓦の主な役割をみていきましょう。
- 雨水の侵入を防ぐ
- 火災が広がるのを防ぐ
- 雨音が響くのを防ぐ
- 屋根は外見に大きく影響する
雨水の侵入を防ぐ
屋根瓦は、雨水の侵入を防ぎ、私たちの快適な暮らしを守る役割を果たしてくれます。
瓦自体が吸水しにくく、変質も起きにくい屋根材です。浸水による漏れなどの心配が少ないうえに、屋根瓦の表面にはガラス質や炭素膜がコーティングされており、水をはじいてくれます。
また、雨水が素早く流れるような形状に作られているのも屋根瓦の特徴です。
火災が広がるのを防ぐ
屋根瓦のなかでも、粘土でできている瓦は熱に強く、飛び火による火災の広がりを防いでくれる役割があります。
2019年に火災により焼失してしまった首里城には、粘土の瓦が使われていましたが、焼け残った瓦も多くあったことが知られています。
雨音が響くのを防ぐ
防音性能が高いのも瓦の特徴です。スレートや金属などほかの屋根材と比べても、音を伝えにくい傾向にあります。
激しい雨音が室内に響きにくいので、小さな子どもや高齢者のいる家庭も快適に過ごせます。
屋根は外見に大きく影響する
質感や色などが美しく、伝統的で重厚感のある見た目が瓦の魅力であり、家屋の印象を大きく変えてくれます。また、耐久性にも優れているため、その美しい見た目が長く続くのも特徴です。
屋根瓦の名称・種類
屋根瓦は、素材や製造方法によりいくつかの種類に分けられます。代表的な屋根瓦の種類をみていきましょう。
- 粘土瓦(陶器瓦、いぶし瓦、素焼き瓦)
- セメント瓦
- 樹脂セメント瓦
粘土瓦
粘土瓦とは、天然素材の粘土を瓦の形にして高温度で焼いたもの全般を指します。防水性が高く、基本的に塗装する必要がありません。
快適な暮らしを守り続けるためには、どんな屋根材でも定期的なメンテナンスが求められます。屋根は雨水や紫外線などの影響を受けやすいため、劣化しやすく定期的な塗装が必要ですが、粘土瓦は基本的に塗装によるメンテナンスが不要です。
さらに、粘土瓦は製造過程の違いにより、陶器瓦(釉薬瓦)、いぶし瓦、素焼き瓦に分けられ、それぞれ特徴が異なります。3種類の粘土瓦の特徴を詳しくみていきましょう。
陶器瓦
陶器瓦は、表面に釉薬(ゆうやく)をかけて焼き上げた瓦です。
釉薬とは、焼成によりガラス質となる粉末のことで、「ゆうやく」や「うわぐすり」と言います。そのため、陶器瓦は「釉薬瓦」と呼ばれることもあります。
陶器瓦の特徴は、さまざまな色を生み出せることです。また、表面に釉薬がかけられているため、色つやがあり経年による色褪せがありません。耐久性も非常に高く、粘土瓦のなかでも長い期間美しい状態を保てるのが特徴です。
さらに、防音性も高く、雨音などの騒音をシャットアウトしてくれます。
いぶし瓦
いぶし瓦は、焼き上げの前に釉薬をかけない無釉薬瓦のひとつです。瓦をいぶして、表面に炭素の膜を作ることで色を出す瓦を指します。製造過程のとおり、「燻す」ことが「いぶし瓦」の名前の由来です。
釉薬を使わず瓦自体をいぶすため、昔ながらの銀色で、落ち着いた雰囲気が特徴です。ほかの瓦では出せないような独特の輝きがあり、風情が感じられるでしょう。
いぶし瓦は、時間の経過とともに変色や退色がみられます。色ムラが目立つようになりますが、自然素材ならではの味わい深さであり、一概にデメリットとはいえません。
陶器瓦と比べると耐久性はやや劣りますが、それでもほかの屋根材と比べて長く使えるのが強みです。なかでもいぶし瓦は、日本らしい趣のある景観にこだわる方に適しています。
素焼き瓦
素焼き瓦は、釉薬を使わず焼き上げる無釉薬瓦のひとつで、名前のとおり素焼きするため、粘土そのものの色を活かせるのが特徴です。
使う粘土により色合いは異なりますが、土ならではの赤っぽい色で、沖縄でよくみられます。沖縄のシンボルとして知られる首里城にも、素焼き瓦が使われていました。
天然素材の色を活かしたおしゃれな雰囲気の素焼き瓦は、洋風の家屋にも適しています。ひと味違った印象にしたい方、明るい雰囲気にしたい方などにおすすめの瓦です。
セメント瓦
セメント瓦は、セメント、水、砂でつくられた瓦のことで、耐火性や断熱性に優れているのが特徴です。価格が安く、形状やカラーの選択肢も多い傾向にあります。
見た目が粘土瓦と似ており、見分けがつきにくいのですが、粘土瓦と比べて角の部分が角ばっており、表面がざらざらしているのがセメント瓦です。
セメント瓦は塗料で色をつけるため、経年とともに色褪せがみられます。また、苔が生えやすいため、定期的にメンテナンスが必要であることや、重さがあり地震に弱い点に注意が必要です。
なお、過去に製造されたセメント瓦には、アスベストが含まれているものもあります。ただし、現在セメント瓦はほとんど生産されていません。
樹脂セメント瓦
樹脂セメント瓦は、樹脂とセメントでできた新素材の瓦のことで、「ハイブリッド瓦」とも呼ばれます。
粘土でできた屋根は、金属などの屋根材と比べて重いことが弱点です。しかし、樹脂セメント瓦は、軽量であり地震の揺れを軽減してくれます。強風や大雨にも強く、素材そのものがたわむので、割れにくいのが強みです。
そのほか、新素材の瓦には、金属でできた「金属瓦」もあります。軽量な金属でできた瓦ですが、粘土瓦の趣がリアルに再現されているものもあり、見た目の美しさと軽さが両立できるのが特徴です。
屋根瓦の形状
屋根瓦は、素材によりいくつかの種類に分類できますが、形状でも3種類に分けられます。
- 和瓦(J型)
- 平板瓦(F型)
- スパニッシュ瓦(S型)
それぞれの形状の特徴を解説します。
和瓦(J型)
和瓦は、日本になじみ深い瓦のことで、一般的に「瓦」と聞いたときに多くの方が思い浮かべる形状のものを指します。一般住宅だけでなく、役所、学校、ホテルなどに幅広く使われている、最もスタンダードな瓦です。
「Japanese」の頭文字「J」を取って、「J型」とも呼ばれます。和瓦の形状の特徴は、緩やかにカーブしていることです。曲線のフォルムが美しく、和の趣や重厚感、高級感が感じられます。
平板瓦(F型)
平板瓦は、名前のとおり平らな形状の瓦です。平らを意味する「Flat」の「F」から、「F型」とも呼ばれます。
平板瓦の魅力は、すっきりとしたモダンな見た目や太陽光パネルの設置のしやすさなどです。和風、洋風どちらにもなじみやすい瓦だといえます。
スパニッシュ瓦(S型)
スパニッシュ瓦は、カーブが大きく、丸みを帯びた瓦です。山と谷が一体になったような形状で、山の部分の曲線がJ型よりも丸く、盛り上がっています。
スパニッシュ瓦は、「Spanish」の「S」から「S型」とも言われ、主に洋風の家屋に使われます。かわいらしい印象や洋風のおしゃれな雰囲気にしたい場合に適した形状です。
屋根瓦の選び方
屋根瓦は、私たちを雨や災害から守ってくれる重要な役割を果たします。しかし、屋根瓦ひとつとってもさまざまな種類があり、どう選べば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで、屋根瓦の選び方を解説します。
- 価格帯で選ぶ
- 耐久性で選ぶ
- 色褪せのしにくさで選ぶ
詳しくみていきましょう。
価格帯で選ぶ
瓦の価格は、素材や形状などによるため一概にはいえませんが、一般的に、粘土瓦はセメント瓦や新素材の瓦と比べて価格が高い傾向にあります。
ただし、粘土瓦は、購入後のメンテナンス費用を抑えられる可能性があります。とくに、表面に釉薬をかけた陶器瓦は、粘土瓦のなかでも耐用年数が長い屋根材です。定期的なメンテナンスが不要な瓦はありませんが、ほかの屋根材と比べて維持費がかからない傾向にあります。
購入価格だけでなく、維持コストも踏まえた検討をしましょう。
また、葺き替え工事をする場合は、瓦自体の価格だけでなく、現在の屋根材の撤去費用や足場費用などがかかることも考慮する必要があります。
耐久性で選ぶ
瓦は伝統的な建物にも多く使用されており、ほかと比べても圧倒的に耐久性が高い屋根材です。
例えば、奈良県元興寺では、飛鳥時代からの瓦がいまだに使われています。今から1,400年前の飛鳥時代に作られた瓦が現在も使われていることを考えると、屋根瓦がいかに丈夫な屋根材であるかがわかりますね。
なかでも、粘土瓦はセメント瓦より耐久性が高く、さらに釉薬を使った陶器瓦は無釉薬の瓦と比べても頑丈です。
色褪せのしにくさで選ぶ
色褪せしにくい屋根瓦を選べば、メンテナンスに手間や費用がかかりにくくなります。一般的に、表面がガラス質の陶器瓦は、色褪せがほとんどありません。
釉薬を使っていないいぶし瓦や素焼き瓦は、期間の経過とともに色褪せや退色があります。ただし、自然な色ムラによりかえって味わい深くもなるでしょう。
また、セメント瓦は塗料で色をつけるため、経年による色褪せがあります。粘土瓦は基本的に塗装の必要はありませんが、セメント瓦では定期的な塗装によるメンテナンスが必要です。
用途に合わせて屋根瓦を選ぼう
屋根瓦は代表的な屋根材のひとつで、ほかの屋根材と比べても頑丈です。耐水性や断熱性などにも優れており、私たちの快適な暮らしを守るために重要な役割を果たしてくれます。
屋根瓦は、陶器瓦やいぶし瓦、セメント瓦などいくつかの種類に分けられ、素材や焼成方法などで特徴はさまざまです。
見た目や経年による変化などに違いがみられるため、よく理解したうえで、目的に適した屋根瓦を選びましょう。
この記事のポイント
- 屋根瓦にはどんな種類がある?
屋根瓦には、主に粘土瓦、セメント瓦、樹脂セメント瓦などがあります。
天然素材の粘土を高温度で焼いたものを粘土瓦と言い、製造方法によりさらに陶器瓦、いぶし瓦、素焼き瓦に分類されます。- 陶器瓦:表面に釉薬(ゆうやく)をかけて焼き上げたもので、耐久性が高く色褪せや変質などがない
- いぶし瓦:無釉薬瓦のひとつで、瓦をいぶすことで色を出す銀色の瓦のこと
- 素焼き瓦:無釉薬瓦のひとつで、粘土そのものの色を活かせる
- セメント瓦;セメント、水、砂で作られた瓦で、耐火性や断熱性に優れる
- 樹脂セメント瓦:樹脂とセメントでできた新素材の瓦のことで、「ハイブリッド瓦」とも呼ばれる
詳しくは、「屋根瓦の名称・種類」をご覧ください。
- 屋根瓦にはどんな形状のものがある?
屋根瓦は、形状により和瓦(J型)、平板瓦(F型)、スパニッシュ瓦(S型)の3つに分けられます。
- 和瓦:最も一般的な形状の瓦で、和の趣がある
- 平板瓦:フラットな形状の瓦で、和風、洋風どちらにも合わせやすく太陽光パネルも設置しやすい
- スパニッシュ瓦:カーブが大きい丸みを帯びた形状の瓦で、主に洋風の家屋に使われる
詳しくは、「屋根瓦の形状」をご覧ください。
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