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抵当権をわかりやすく解説!設定・抹消手続きの流れと不動産の売却方法

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 抵当権とは、住宅ローンを貸し出す金融機関が不動産に対して設定する権利
  • 抵当権は、法務局に申請して登録免許税で納めて設定・抹消する
  • 原則的に、引き渡し時までに抵当権を抹消すれば不動産を売ることは可能

住宅ローンを組んで家を購入するにあたって、必ず知っておきたいのが「抵当権」です。抵当権とは、住宅ローンを貸し出す金融機関が不動産に対して設定する権利を指します。原則的に、住宅ローンの完済をもって抵当権は抹消されます。

抵当権が設定されている不動産を売却することも可能ですが、基本的には、不動産を引き渡すときまでに住宅ローンを完済して抵当権を抹消しなければなりません。

本記事では、抵当権の設定や抹消とともに、抵当権がついている不動産の売却方法をわかりやすく解説します。

抵当権とは?

抵当権(ていとうけん)とは、住宅ローンを貸し出す金融機関が不動産に対して設定する権利を指します。抵当権を設定した住宅ローンの支払いが滞ると、金融機関は抵当権を実行して不動産を競売にかけて債権を回収します。抵当権を設定している債権者(お金を貸す人や機関)は、ほかの債権者に優先して抵当権を設定している不動産の売却代金から支払いを受けられます。

担保との違い

「担保」とは、債務者(お金を借りる人)が期日までに支払いをしない事態に備えて、債権者が支払いを確実に受けられるように債務者に提供させる手段をいいます。不動産を借り入れの担保とする抵当権は、担保権のひとつです。

抵当権のほか、連帯保証や質権、譲渡担保権なども担保権に該当します。このほか、自動車をローンで購入する際に、ローンの支払いが終わるまでの間、自動車の所有権が信販会社等に留保される特約がつくことがあります。これも、所有権留保と呼ばれる担保の一種です。

根抵当権との違い

「根抵当権(ねていとうけん)」は抵当権の一種ですが、契約の際に極度額と債権の範囲を定める点が抵当権とは異なります。この範囲内であれば、債務者は何度でも不動産を担保に借り入れと返済を繰り返せます。一方、抵当権は借り入れたタイミングで設定され、完済したタイミングで抹消されます。

質権との違い

「質権(しちけん)」も債権の担保として設定される権利ですが、質権が設定された不動産は債務者が使用することはできません。一方、抵当権は、設定されていたとしても不動産の所有者が住んだり、貸したりすることができます。ただし、住宅ローンは、原則的に「自己居住用物件」の購入にしか充てられないためご注意ください。

抵当権設定の手続き

抵当権を設定した金融機関等が第三者に対して自らが抵当権を有していることを主張するためには「抵当権設定登記」を行う必要があります。通常は、購入した自宅の引き渡しと同時に抵当権設定登記の申請を行います。

抵当権設定の必要書類

抵当権の設定には、通常、次の書類が必要です。

  • 抵当権設定契約書
  • 登記申請書または登記原因証明情報等
  • 不動産の権利証
  • 不動産所有者の印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 不動産所有者の実印
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

抵当権設定にかかる費用

抵当権の設定には、登録免許税が課されます。登録免許税は、原則的に以下の計算式で算出します。

抵当権設定の登録免許税=債権金額×0.4%

ただし、2024年3月31日までの設定は軽減税率「0.1%」が適用となります。

抵当権の設定を司法書士に委託する場合は、別途、司法書士報酬がかかります。司法書士報酬はの相場は、5〜10万円程度です。

抵当権設定の流れ

抵当権設定登記手続きは、以下の流れで進みます。

  1. 住宅ローンを契約
  2. 抵当権設定を契約
  3. 必要書類を揃える
  4. 抵当権設定登記を申請
  5. 登記事項証明書を取得し、金融機関に提出

抵当権設定手続きは、抵当権を設定する不動産の所在地を管轄する法務局で行います。窓口申請のみならず、郵送による申請も可能です。

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抵当権を行使されるとどうなる?

冒頭で述べたとおり、抵当権を持つ金融機関は、債務者からの返済が一定期間滞ると、不動産を差し押さえ、強制的に競売にかけることができます。滞納してから差し押さえられるまでの期間は金融機関によって異なりますが、3〜5ヶ月程度が一般的です。

競売とは

競売とは、債権者の申立てにより不動産を差し押さえてその不動産を売却し、売却代金から配当を受けて債権の回収を図る手続です。競売は、裁判所主導のもと進みます。落札価格は不動産の価値や入札者の状況次第ではありますが、相場の半値ほどになってしまうことも。そのため、落札後に多額の債務が残ってしまうことも少なくありません。

競売を避けるには「任意売却」が有効

競売を避けるためには「任意売却」が有効です。不動産が差し押さえられても、競売の入札前までなら、任意売却によって一般的な市場で不動産を売ることができます。ただし、任意売却には、債権者の特別な許可が必要です。

抵当権付きの不動産は売買可能?

抵当権付きの不動産の売買は可能です。しかし、抵当権付き不動産の売買によって、抵当権が消えるわけではありません。債権の担保となっている不動産を購入したいと考える人はいないものと考えられるため、抵当権を抹消して売却するのが一般的です。

住宅ローンを完済して抹消するのが原則

抵当権が抹消される条件は、住宅ローンの完済です。したがって、抵当権付きの不動産を売るには、まず住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があります。ただ物件の引き渡しまでに抵当権が抹消されていれば問題ないため、売却の対価として受け取った金銭で完済するケースも多く見られます。

任意売却は住宅ローンが完済できないときの対応策にも

売却することによる対価や自己資金で住宅ローンを完済できない場合は、基本的に不動産を売却することはできません。しかし、前述した「任意売却」であれば、住宅ローンを完済せずとも抵当権を抹消し、不動産を売ることができます。

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抵当権抹消の手続き

住宅ローンを完済した場合、当事者が抵当権設定登記を抹消する必要があります。通常は、抵当権者である金融機関等から必要書類を預かって、住宅ローンの債務者が抹消手続きを行います。

抵当権抹消の必要書類

抵当権抹消手続きの必要書類は、以下のとおりです。

  • 抵当権の登記識別情報または登記済証
  • 登記原因証明情報(抵当権解除証書または弁済証書)
  • 資格証明書(代表者事項証明書)
  • 代理権限証書(委任状)

不動産の所有者の住所や氏名が変わっている場合は変更手続きが必要なため、加えて住民票や戸籍謄本を取得する必要がありますので、事前に確認しておきましょう。

抵当権抹消にかかる費用

抵当権の抹消にも、登録免許税が課されます。税額は、1つの不動産につき1,000円です。土地1筆と建物1軒の場合は、2,000円となります。

抵当権抹消手続きを司法書士に委託する場合は、別途、司法書士報酬が必要です。司法書士報酬の相場は、15,000〜18,000円程度です。

抵当権抹消の手続きの流れ

抵当権抹消登記の手続きは、次の手順で進めます。

  1. 管轄する法務局の確認
  2. 抵当権抹消登記申請書の作成
  3. 法務局に申請
  4. 完了後の書類の受領

抵当権抹消を行うためには、対象となる不動産を管轄する法務局で手続きをする必要があります。法務局のホームページに管轄区域ごとの法務局の一覧表が掲載されていますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

抵当権抹消登記申請書は、司法書士もしくは自身で作成します。本人が抵当権抹消の手続きを行う場合には、法務局のホームページ内に掲載されている抵当権抹消登記申請書のひな型を利用します。必要書類が揃ったら、管轄法務局に提出します。抵当権抹消登記が完了したら、登記完了証が発行されます。

まとめ

住宅ローンを組んでマイホームを購入されるケースがほとんどのため、抵当権は多くの方にとって身近な存在です。抵当権を正しく理解しておくことで、住宅ローンを組むときもローンが残っている家を売却するときも安心でき、無用なトラブルを回避できるでしょう。

この記事のポイント

抵当権とは何ですか?

住宅ローンを貸し出す金融機関が、不動産に対して設定する権利です。

詳しくは「抵当権とは?」をご覧ください。

抵当権はどのように設定するのですか?

必要書類を用意し、法務局に申請したうえで必要な登録免許税を納めて設定します。

詳しくは「抵当権設定の手続き」をご覧ください。

抵当権が設定されている不動産は売ることができますか?

引き渡し時までに抵当権を抹消して売却するのが一般的です。

詳しくは「抵当権付きの不動産は売買可能?」をご覧ください。

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