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借地権とは?メリット・デメリットや後悔しないための注意点をわかりやすく解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 借地権は「旧法上の借地権」と「借地借家法の借地権」に大別される
  • 借地権付き建物のメリットは、税負担が少なく、長期間借りることもできるうえに比較的、安価に取得できること
  • 借地権付き建物のデメリットは、地代を払う必要があり売却や改修に支障をきたす可能性があることに加え、ローン審査に通りにくいこと

借地権とは、他人の土地を借りて建物を建築し、使用できる権利を指します。借地権の形態は一つではありません。借地権の種類によって、契約期間や条件は異なります。

この記事では、借地権の種類やメリット・デメリット、借地権付き建物を購入して後悔しないための注意点を解説します。

借地権とは?

借地権とは、他人の土地を借りて使用する権利です。土地の所有者を地主、借りる側を借地人と呼びます。所有権のある土地と建物を購入すると、土地と建物の両方を永続的に所有できます。

一方、借地権付き建物は、建物は所有できるものの、土地は地代を払って一定期間借りる形となります。土地の所有権を持つのは地主です。「借りる」という形態を取ることから、借地権の土地は所有権の土地より安価な傾向にあります。

冒頭で述べた通り、借地権の種類は一つではなく、次の3つに大別されます。

  • 旧法借地権
  • 借地借家法に基づく「普通借地権」
  • 借地借家法に基づく「定期借地権」

そのほか民法上の借地権もありますが、建物の使用を前提としていないため、ここでは旧借地法や借地借家法に基づく借地権について解説しています。

旧法借地権

借地借家法の施行は、1992年8月1日です。これ以前の借地権は「借地法」に基づいたもので、現行制度の借地権と分けるため「旧法借地権」や「旧借地権」と呼ばれています。

借地借家法の施行により借地法は廃止されましたが、旧法借地権は借地法の適用を受けます。旧法借地権では、堅固建物と非堅固建物の2種類に区分されています。それぞれの存続期間および更新後の存続期間は、次のとおりです。

建物の構造存続期間更新後の存続期間
堅固建物(鉄筋コンクリート造など)30年以上(契約で定めがない場合は60年)30年以上(契約で定めがない場合は30年)
非堅固建物(木造住宅など)20年以上(契約で定めがない場合は30年)20年以上(契約で定めがない場合は30年)

そのほか旧借地権の特徴は、以下のとおりです。

  • 更新:土地の所有者は正当な理由がない限り更新を拒否できない
  • 再築:存続期間の定めがある場合は建物の再築が可能
  • 建物買取請求権:契約終了時、借地人は土地所有者に建物の買取りを請求できる
  • 旧法の適用継続:契約更新後も旧借地法が適用される

以上の特徴から、後述する借地借家法に基づく「普通借地権」と比較すると、借地人に有利な権利といえるでしょう。

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借地借家法に基づく借地権

現行法に基づく借地権は「普通借地権」と「定期借地権」に大別されます。それぞれの存続期間および更新後の存続期間は、次のとおりです。

借地権存続期間更新後の存続期間  
普通借地権30年以上1回目:20年
2回目以降:10年
定期借地権 一般定期借地権:50年以上
建物譲渡特約付定期借地権:30年以上
事業用定期借地権:10年以上50年未満(現行)
更新なし

普通借地権

普通借地権の存続期間は、30年以上と定められています。更新後の存続期間は、1回目の更新が20年、それ以降は10年です。

そのほか普通借地権の特徴は、以下のとおりです。

  • 更新:土地の所有者は正当な理由がない限り更新を拒否できない
  • 再築:土地の所有者の許可なしに再築はできない
  • 建物買取請求権:契約終了時、借地人は土地所有者に建物の買取りを請求できる

定期借地権

定期借地権は、借地借家法の施行によって新設された権利です。旧法借地権や普通借地権のように更新されることはありません。ただし、当事者の合意があれば再契約は可能です。

定期借地権は、さらに次の3つに大別されます。

借地権 存続期間 利用目的 契約方法 借地関係の終了  契約終了時の建物
定期借地権 一般定期借地権(法22条) 50年以上 用途制限なし 公正証書等の書面で行う。
[1]契約の更新をしない
[2]存続期間の延長をしない
[3]建物の買取請求をしないという3つの特約を定める
期間満了による 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
事業用定期借地権(法23条) 10年以上50年未満 事業用建物所有に限る(居住用は不可) 公正証書による設定契約をする。
[1]契約の更新をしない
[2]存続期間の延長をしない
[3]建物の買取請求をしないという3つの特約を定める。
期間満了による 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
建物譲渡特約付借地権(法24条) 30年以上 用途制限なし 30年以上経過した時点で建物を相当の対価で地主に譲渡することを特約する。
口頭でも可
建物譲渡による [1]建物は地主が買取る
[2]建物は収去せず土地を返還する
[3]借地人または借家人は継続して借家として住まうことができる
出典:国土交通省「定期借地権の法的整理

一般定期借地権

一般定期借地権は、50年以上の長期間にわたって土地を使用する権利を定めたものです。用途制限はなく、契約更新なし・建物の構造による存続期間の延長なし・買取請求なしといった特約を定めることができます。特約は、公正証書などの書面で定める必要があります。原則的に、借地人は建物を取り壊して土地を返還します。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、事業の用に供する建物の所有を目的とした借地権です。現行制度の存続期間は「10年以上50年未満」ですが、2008年の法改正以前は「10年以上20年以下」でした。

一般定期借地権と同様に、契約更新なし・建物の構造による存続期間の延長なし・買取請求なしといった特約は公正証書で定めます。原則的に、借地人は建物を取り壊して土地を返還するという点も一般定期借地権と同様です。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は用途制限がないという点は一般定期借地権と同じですが、借地権の消滅のため、30年以上を存続期間としたうえで建物を地主に買い取ってもらう旨を定めることができます。土地を返還した後も、借地人は借家として住むことが可能です。

契約は口頭でも可能ではあるものの、トラブル回避のため書面での契約が望ましいでしょう。

借地権付き建物のメリット

「借地権付き建物」とは、土地の借地権と建物の所有権を購入できる物件を指します。借地権付き建物を購入する主なメリットは、次のとおりです。

税負担が少ない

借地権付き建物は、土地を購入せず、所有権を得ることもありません。そのため、所有権のある土地・建物と比べて税負担が少なくなります。固定資産税や都市計画税、不動産取得税は建物のみに課税されます。とくに地価が高いエリアでは、所有権のある土地を購入する場合と比べて税金が大きく下がるでしょう。

長期間借りられる

借地権付き建物は、土地の所有権は地主に帰属するものの、旧借地法に基づく借地権や借地借家法における普通借地権であれば契約期間が満了しても更新が可能です。さらに、これらの借地権は、土地所有者に正当な拒絶理由がない限り借地権は更新されます。このため、借地権者は実質的に半永久的に土地を使用し続けることができます。

また、定期借地権も契約期間は50年以上です。購入時に残存期間が数十年単位で残っていることも少なくないことから、本格的な家屋を建てることも可能です。借地権付き建物の中でも定期借地権は比較的、安価に取得できるため、次のような状況・意向がある方には向いているものと考えられます。

  • 子や孫に家を相続することがない
  • 子や孫がいるが相続トラブルを避けるため自分の代で売却するつもり
  • 終の住処ではなく一時的に住む家を探している

土地の所有権のある物件より安価

借地権付き建物は、土地の使用権を一定期間借りる形態であるため、土地と建物の両方の所有権を取得する場合と比べて購入価格が安価な傾向にあります。

近年は、低金利やコロナ禍の住み替え需要上昇などを背景に、不動産価格が高騰しています。所有権付き物件では手が届かないような好立地の物件でも、借地権付きであれば購入可能となることがあります。借地権付き物件は、駅前や繁華街など、人気の高いエリアにも多く存在しています。

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借地権付き建物のデメリット

税負担が少なく、安価で長期間土地を借りられる借地権付き建物ですが、次のような点はデメリットといえるでしょう。

地代を支払う必要がある

安価で税負担は少なくても、借地権付き建物を取得すれば、地主に地代を支払わなければなりません。地代は、将来的に値上げとなる可能性もあります。

住宅地の地代の目安は、固定資産税・都市計画税の3〜5倍程度とされています。固定資産税は、3年に一度の評価替えで税額が変わる可能性があります。「税額の上昇=地代の上昇」になるとは限りませんが、地価が上昇しているエリアはとくに地代が値上げされる可能性も考慮しておきましょう。

融資審査が厳しい

一般的に、借地権付き物件は通常の物件と比較して住宅ローンの審査が厳しく、融資額も低くなる傾向があります。これは主に、借地権付き物件では土地に抵当権を設定できないため、担保価値が建物のみに限定されることが要因です。

金融機関の立場からすると、借地人による地代滞納などで借地権が解除されるリスクも考慮しなければならず、慎重な審査姿勢につながっています。さらに、借地権付き物件を住宅ローンの対象外としている金融機関も存在します。

一方、借地権付き物件専用の住宅ローン商品を提供している金融機関もあります。ただし、これらの商品にも制約があり、たとえばローン完済時に借地権の残存期間が10年以上必要といった条件が設けられていることがあります。そのため、借地権の残存期間によっては利用できない場合もあります。

自由に売却・増改築できないことも

借地権付き建物の所有には、売却や増改築に関する制限が伴う可能性があることも認識しておかなければなりません。この制限は、借地権の種類によって異なります。

借地権には「地上権」と「土地賃借権」の2種類があります。「地上権」の場合、所有者は地主の承諾なしに自由に物件を売却できます。しかし、多くの借地権付き物件は「土地賃借権」に基づいており、この場合は売却の際に地主の承諾が必要となります。さらに、地主が売却を承諾した場合でも、譲渡承諾料という追加費用が発生する可能性があります。これは、売却時の予期せぬ出費となり得ます。

建物の建て替えや増改築についても、同様の制限があります。これらの工事を行う際には地主の承諾が必要となり、場合によっては承諾を得るのに時間がかかったり、条件が付けられたりすることもあります。

売りやすさ・融資の受けやすさは「残存年数」に大きく依存する

借地の存続期間の残存年数次第では、融資が受けられない可能性があるというのは先述のとおりです。買主の融資の受けやすさは、売却時の価格や売れるスピードにも大きく影響します。キャッシュで購入する人であっても、残存年数は短いより長いほうが良いと考えるはずです。

したがって、借地権の残存年数が短くなるにつれて、物件の売却が困難になる傾向があります。この傾向は、とくに定期借地権付き建物において顕著に見られます。定期借地権の特性上、契約期間の満了が近づくほど購入を検討する人が減少し、売却が難しくなるでしょう。

借地権付き建物を購入するときの注意点

一口に「借地権」といってもさまざまな種類があり、契約内容によって取得後にできること・できないことは異なります。また、地代がかかり、地代は値上げする可能性があるという点もよく理解しておくことが大切です。

契約内容を確認する

ここまで述べてきたとおり、借地権の種類により存続期間や期間満了後の更新の可否や存続期間は異なります。借地権付き物件を検討する際は、借地権の種類によって将来的な取り扱いが大きく異なることを理解することが極めて重要です。

たとえば、定期借地権の場合は契約更新の機会がないため、基本的に期間満了時には建物を撤去し、更地の状態で土地を地主に返還する必要があります。これは、長期的な居住や資産価値にも大きく影響する要素です。

借地権付き建物の購入を検討する際は、現在の状況だけでなく、将来の展望も含めて慎重に検討することが大切です。借地権の種類、契約期間、更新の可能性、更新料の有無や金額、譲渡や増改築時の承諾料など、契約に関わる詳細な条件を事前に十分確認する必要があります。

取得費だけでなく維持費も考慮する

借地権付き建物は、取得費や税金を抑えることができますが、長期的な維持費用も十分に考慮することが重要です。

借地権付き物件は、地代に加え、契約更新時の更新料、建物の増改築や売却時の承諾料、そして将来的な建物解体費用など、まとまった額の支出が予想されます。これらの費用に備えて、計画的な資金積立てが不可欠です。

また、借地権付きマンションでは、将来の建物解体に備えて「解体準備金」を積み立てなければならないこともあります。これは、契約終了時に土地を更地にして返還するための費用を賄うためのものです。

売り方は1つではない

所有権のある土地や建物は、第三者の消費者や買取業者に売却するのが一般的です。一方、借地権付き建物は、地主に借地権を売却したり、等価交換によって所有権を得たりする手段もあります。

等価交換とは、借地権と底地を交換することで所有権にする方法です。使用できる面積は減るものの、土地の一部の所有権を持つことができるため、一般的な土地のように売買したり、再建築したりすることが可能です。

借地権付き建物を取得する際には、こうした「出口戦略」を頭の片隅に入れたうえで検討するようにしましょう。

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借地権付きの住宅の購入に向いているのはどんな人?

所有権のある土地・建物と比べて制限の多い借地権付き建物ですが、多様化する暮らしのなかで住宅を取得するための1つの選択肢としてあらためて注目されています。

借地権付き建物は、特定のニーズや生活スタイルを持つ人々にとって魅力的な選択肢となります。たとえば、好立地に比較的手頃な価格で住むことを希望する方にとって、借地権付き物件は有効な選択肢になるでしょう。

また、一時的な住居を探している方にも適しています。転勤などで一定期間だけ特定の地域に住む必要がある場合、あるいは「子育て中」「老後」など一時的に暮らす住宅を探している場合は、借地権付き物件が適切な選択肢となるかもしれません。

長期的な土地所有にこだわらず、必要な期間だけ良質な住環境を確保したい人にとって、借地権付き建物は理想的な選択肢となり得ます。

まとめ

借地権付き建物は、土地の使用権と建物の所有権がセットになった物件です。土地を所有しないため、所有権のある土地・建物より購入費用が抑えられます。税金面でも有利で、土地にかかる不動産取得税がかからず、固定資産税や都市計画税も建物部分のみに発生します。

ただし、地代支払いや将来の解体義務など、借地ならではの独特の制約もあります。自身の状況や将来計画を考慮し、これらの特徴や注意点を踏まえた上で借地権付き建物の購入を検討しましょう。

この記事のポイント

借地権とはどのような権利ですか?

借地権とは、他人の土地を借りて使用する権利です。「旧借地法に基づく借地権」と借地借家法に基づく「普通借地権」「定期借地権」の3つに大別されます。

詳しくは「借地権とは?」をご確認ください。

借地権付き建物のメリットは?

税負担が少なく、安価で長期間土地を借りられることが借地権付き建物のメリットです。

詳しくは「借地権付き建物のメリット」をご確認ください。

借地権付き建物のデメリットは?

地代や更新料を支払うこと、融資審査が厳しいことなどが借地権付き建物のデメリットとして挙げられます。

詳しくは「借地権付き建物のデメリット」をご確認ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

借地権付き建物は、安価に取得できるなどメリットも多いことから、立地や金額次第では選択肢に入れてみるのも良いでしょう。昨今では、都市部を中心に借地権付きマンションも少なからず見られるようになりました。働き方、暮らし方は多様化しています。自分たちのライフプランに合っているのであれば、借地権付き建物も敬遠すべき物件ではありません。

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