更新日:  

不動産売却時の節税方法とは?譲渡損失が出た場合の特例活用法も解説

執筆者プロフィール

手塚裕之
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

エンタメ業界の管理職として12年勤務後、2018年12月からフリーライター活動を開始。税金、不動産、株式投資、クレジットカードなどお金に関する記事執筆・取材を行う。

ざっくり要約!

  • 不動産売却でかかる税金は主に「譲渡所得税」。居住用不動産売却の特例や譲渡費用・取得費の計上で税額を抑えよう
  • 譲渡損失が出た場合は他の所得と損益通算および繰越控除ができる可能性がある

不動産の売却時には、節税に使えるさまざまな対策や特例が存在します。高額になりやすい譲渡所得税をできるだけ低く抑えるためにも、節税方法や使える特例を学んでおきましょう。

本記事では、不動産売却時に使える対策と特例、譲渡損失が出た場合に使える特例を解説します。

不動産の売却でかかる税金は主に「譲渡所得税」

不動産の売却に伴い発生する税金には、いくつかの種類があります。中でも最も大きな税額になりやすいのが「譲渡所得税」です。とはいえ、譲渡所得税はすべての不動産売却で課せられるわけではありません。

譲渡所得税とは、不動産の売却益に対して課せられる所得税・住民税の合計を指す通称です。譲渡所得税が課税される不動産の売却益は、所得の分類上「譲渡所得」に該当し、以下の計算式で算出されます。

譲渡所得=不動産の売却価格 – (不動産の取得費用 + 譲渡費用)

取得費用は、不動産の購入費用や仲介手数料などです。譲渡にかかった費用は、仲介手数料や印紙税家屋の解体費用、測量費用などが含まれます。

また、譲渡所得税は不動産を所有している期間に応じて税率が変わります。譲渡所得税における所得税・住民税の内訳は以下のとおりです。

不動産の所有期間税率
取得から5年以下所得税:30.63% ※復興特別所得税含む
住民税:9%
取得から5年超所得税:15.315% ※復興特別所得税含む
住民税:5%

不動産は、5年を境に長期所有資産と短期所有資産に分類されます。短期所有資産は急激な値動きを狙った短期的な売買を防ぐために高い税率が適用されており、長期所有資産になると約半分まで下がります。なお、この所有期間は、売却した年の1月1日時点で考えられるためご注意ください。

税率が下がる長期所有においても計20.315%の税率が課せられており、売却金額によっては高額の税金を納めなければなりません。売主にとって、不動産を売却した代金は少しでも手元に残したいもの。不動産売買で多くの利益を得るためにも、できるだけ多くの節税方法を活用することが望まれます。

住まいの税金「譲渡所得の計算方法」
住まいの税金「短期譲渡所得と長期譲渡所得の所有期間と税率の違い」

節税方法1.控除特例を活用する

不動産の売買には、譲渡所得を控除できる多くの特例が用意されています。代表的な特例は、以下の通りです。

住んでいた土地を売却するときに利用できる税金控除特例 居住用財産の3000万円特別控除
長期所有における軽減税率の特例
土地売却で譲渡損失が出たときに利用できる税金控除特例 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
相続した実家を売却するときに利用できる税金控除特例 相続空き家の3000万円特別控除
取得費加算の特例
平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときに利用できる税金控除特例 1000万円の特別控除
収容などにより土地を売却したときに利用できる税金控除特例 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
収容等の場合の5000万円特別控除
お家の売却をご検討中の方 家の売却なら東急リバブルへ 売却にかかる費用・税金についてはこちら 詳しくはこちら

節税方法2.購入費用がわかる書類を探す

譲渡所得=不動産の売却価格ー(不動産の取得費用+譲渡費用)

譲渡所得の計算式は、上記のとおりです。計算式からもわかるように「不動産の取得費用」が高ければ高いほど、譲渡所得は引き下がります。

つまり、不動産売却による譲渡所得を減らすには、不動産の取得にかかった費用の計上が有効です。不動産取得費用のうち、最も大きなものが不動産の購入費用そのもの。特に土地は減価償却による価値の低下が発生しませんので、売却費用から土地の購入費用を全額差し引けます。

「概算取得費」では税額が跳ね上がることも

売却する不動産の購入費用が不明な場合は、売却金額の5%相当額を概算取得費として計上しなければなりません。売却金額の5%というと、3000万円の売却金額に対して150万円。多くの場合、実際に支払った費用よりも少ない金額しか計上できません。概算取得費を用いるとなると、結果的に譲渡所得が引き上がり、多くの税金が課されてしまいます。

購入費用を証明する書類は、購入時の売買契約書を用いるのが確実です。もし手元に売買契約書が残っていないようなら、仲介をした不動産会社や当時の売主から売買契約書の写しを提供してもらうと良いでしょう。ただし、用意した写しが必ず証明として認められるとは限りませんので、事前に税務署へ相談することをおすすめします。

関連記事
取得費が不明な土地を売却するときの税金はどうなる?

節税方法3.取得費になる費用をもれなく加算する

先のとおり、取得費が高ければ高いほど譲渡所得は引き下がります。そのため、取得費をもれなく加算することも、節税対策として効果的です。不動産の取得費として計上できる費用は、主に以下の項目があります。

  • 購入時の仲介手数料
  • 契約書に貼付した収入印紙
  • 各種手続きを代行した司法書士への報酬
  • 不動産取得税
  • 家屋等の解体費
  • 地盤改良工事費 など
お家の売却をご検討中の方 家の売却なら東急リバブルへ 売却にかかる費用・税金についてはこちら 詳しくはこちら

節税方法4.譲渡費用をもれなく計上する

取得費と同様に、不動産の譲渡(売却)時に発生した費用も譲渡所得の計算に計上できます。不動産の譲渡費用として計上できるのは、主に以下の項目です。

  • 譲渡時の仲介手数料
  • 契約書に貼付した収入印紙
  • 各種手続きを代行した司法書士への報酬
  • 測量費
  • 家屋等の解体費
  • 売却のために必要な建物の修繕費
  • 売却のために支払った立退料
  • 買主との交渉に使用した交通費・通信費 など

一方、不動産の譲渡に直接関係しない以下の出費は、計上の対象にはなりません。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 抵当権抹消費用
  • 移転先となる不動産物件の購入・修繕費など
  • 移転先物件への引っ越し代

譲渡費用として計上できるのは、あくまで不動産の譲渡のために発生した費用に限定されます。譲渡費用として使ったお金を計上してもよいか判別が難しいようなら、税務署や税理士に相談してみましょう。

節税方法5.売却時期を見極める

前述の通り、不動産は取得から売却までの期間によって、譲渡所得税の税率が大きく変わります。所有期間が5年を超えてから売却すると長期譲渡所得、5年以下で売却すると短期譲渡所得となり、譲渡所得に以下の税率が適用されます。

土地の所有期間税率
取得から5年以下
(短期譲渡所得)
所得税:30.63% ※復興特別所得税含む
住民税:9%
取得から5年超
(長期譲渡所得)
所得税:15.315% ※復興特別所得税含む
住民税:5%

また、所有期間が10年を超えた居住用の建物・土地を売却した場合には軽減税率が適用され、以下の税率となります。

譲渡所得金額税率
6,000万円以下の部分所得税:10.21% ※復興特別所得税含む
住民税:4%
6,000万円超の部分所得税:15.315% ※復興特別所得税含む
住民税:5%

なお、相続や贈与によって不動産を取得した場合の所有期間は、被相続人・贈与者が所有していた期間が相続人・受贈者に引き継がれます。

お家の売却をご検討中の方 家の売却なら東急リバブルへ 売却にかかる費用・税金についてはこちら 詳しくはこちら

節税方法6.ふるさと納税をする

税金対策の一環として、ふるさと納税の活用には大きなメリットがあります。ふるさと納税とは任意の自治体に寄付を行うことで、寄付金控除を受けながら返礼品をもらえる制度です。

自治体に寄付した金額は、自己負担分の2,000円を差し引いた後に所得税と住民税から控除されます。ふるさと納税の利用上限は住民税額に比例して増加するため、所得が増えるほどふるさと納税の返礼品を多く受け取れるようになります。

不動産売却によって譲渡所得が出るということは、所得が上がるということ。すなわち、ふるさと納税で控除できる上限額が引き上がります。ふるさと納税に所得を減らし納税額を抑える効果はありませんが、2,000円の自己負担分以上の価値を持つ返礼品を多く受け取れるため、日常的な出費を減らす節約効果に期待できます。

不動産売却で譲渡損失が発生した場合の節税方法

不動産の売却は必ずしも利益がでるとは限りません。希望通りの金額で売却できなかった場合には譲渡費用や取得費を回収できずに赤字になることもあります。

譲渡損失が生じた場合は、課税の対象となる利益がないため、譲渡所得に対する税金は発生しません。さらには赤字を活用し、税額を減らすことも期待できます。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

所有期間が5年を超える居住用建物・土地を売却して新たな新居を購入した場合、旧宅の譲渡により発生した損失を他の所得から控除できる特例があります。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」(以下、譲渡損失の特例)が適用されると、通常は損益通算の対象ではない給与所得などの所得から損失額分を控除できるため、その年の所得税・住民税を抑えることができます。

仮に給与所得600万円の人がマイホームを売却し1,200万円の損失を発生させた場合、給与所得の600万円から1,200万円を差し引き、その年の所得は0円として計算されます。すでに600万円の給与所得から源泉徴収された分は納税する必要がありませんので、後日還付を受けられます。

さらには控除しきれなかった分の損失は、翌年以降3年まで繰り越しが可能です。上記の例では残り600万円分の損失が残っていますので、翌年も給与所得が600万円である場合、その年の所得は再び0円にできます。

なお、同特例は住宅ローン控除と併用可能です。ただし、譲渡損失の特例は新居の購入が条件となっていますので、買い換えを伴わない不動産の売却で発生した損失は所得控除の対象にはなりません。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

住宅ローン残債を下回る金額で売却し、売却損が出た場合、損失額を他の所得から控除できる特例である「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」(以下、マイホーム損失特例)が適用できます。

マイホーム損失特例は譲渡損失の特例と同様に、通常損益通算できない所得から損失分を控除できる特例です。また、控除できなかった損失を3年間繰り越せます。さらには新居の購入が条件に含まれていませんので、譲渡損失の特例よりも適用できるチャンスは大きいといえるでしょう。

お家の売却をご検討中の方 家の売却なら東急リバブルへ 売却にかかる費用・税金についてはこちら 詳しくはこちら

控除特例で節税対策を!損失は繰越控除の特例を活用しよう

不動産の売却時にかかる税金は、大半が譲渡所得税です。売却額から各種経費を差し引いた譲渡所得が課税対象となるため、譲渡所得の低減が節税対策に直結します。

節税のための主要な方策は、控除特例の適用と取得・譲渡費用の計上です。売却金額から費用を差し引いて譲渡所得を抑えつつ、多額の控除を適用できる特例を活用することで、税金の負担を低減できるでしょう。譲渡により赤字が発生したとしても、複数年にわたって損益通算できる繰越控除の特例が適用となる可能性があります。さまざまな制度を活用し、税金を最も安く抑える方法を検討してみましょう。

この記事のポイント

不動産売却時にはどのような税金がかかりますか?

大半が譲渡所得税です。

詳しくは「不動産の売却でかかる税金は主に「譲渡所得税」」をご覧ください。

譲渡所得税を抑える方法には何がありますか?

控除特例の適用、購入費用・取得費の計上による譲渡所得の低減が有効です。

詳しくは「節税方法1.控除特例を活用する」「節税方法2.購入費用がわかる書類を探す」「節税方法3.取得費になる費用をもれなく加算する」をご覧ください。

不動産売却により譲渡損失が出た場合の対策は?

特例を活用し、他の所得と損益通算して税金を抑えよう。

詳しくは「不動産売却で譲渡損失が発生した場合の節税方法」をご覧ください。

今売ったらどのくらいの金額で売れるんだろう?

査定価格・市場価格とお客様のご状況を踏まえ、東急リバブルが最適なご売却プランをご提案させていただきます。

不動産査定 なら 東急リバブル

査定は手間がかかりそう。そんな人にはAI査定!

ご所有不動産(マンション・一戸建て・土地)を登録するだけでAIが査定価格を瞬時に算出いたします

スピードAI査定をしてみる

税金が心配? 無料税務・法律相談会

不動産に関する税務、不動産取引上の法律問題などについて詳しくお答えいたします。

無料税務・法律相談会