ざっくり要約!
- 土地の売却時にはさまざまな税金控除特例が使えるが、それぞれ使える条件が異なる
- 各種特例には、併用できないものもある
土地を売却に際して利益(譲渡所得)がでた場合は、その所得に対し、所得税や住民税が課せられます。この税率は最大39.63%と非常に高いため、購入時の価格や売却金額、所有期間次第で納税額は高額にもなり得ます。
しかし、土地の売却時に適用できる特例には、さまざまな種類があります。ただし、使用できるシチュエーションに違いがあり、また併用できる制度も異なるため、それぞれの適用要件や節税効果を事前に把握しておくことが大切です。
記事サマリー
土地売却時の税金控除特例一覧
取引価格が高額になる土地の売却には、税金を控除するための特例が複数設けられています。中には、取得費用や売却金額によっては税金をゼロにできる特例も。しかし、税金控除特例は、適用要件を満たせば自動的に適用となるわけではありません。土地が高額で売れそうな場合はとくに、事前によく確認しておくことが望まれます。
土地売却に適用できる特例は、以下の6つです。
状況 | 特例 |
---|---|
住んでいた土地を売却するときに利用できる税金控除特例 | 居住用財産の3000万円特別控除 |
長期所有における軽減税率の特例 | |
土地売却で譲渡損失が出たときに利用できる税金控除特例 | 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 |
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 | |
相続した実家を売却するときに利用できる税金控除特例 | 相続空き家の3000万円特別控除 |
取得費加算の特例 | |
平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときに利用できる税金控除特例 | 1000万円の特別控除 |
収容などにより土地を売却したときに利用できる税金控除特例 | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 |
収容等の場合の5000万円特別控除 |
次項より、それぞれの控除特例を詳しく解説します。
住んでいた土地を売却するときに利用できる税金控除特例
マイホームが建っていた土地を売却する際に適用できる特例には「居住用財産の3000万円特別控除」と「長期所有における軽減税率の特例」があります。
居住用財産の3000万円特別控除(マイホーム特例)
個人が居住している建物またはその建物を解体した土地等を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3000万円特別控除(マイホーム特例)」が適用できます。
この特例は居住用の財産に対して適用できる特例であるため、人が住んでいない建物や土地には適用できません。その他の主な適用要件は、次の通りです。
- 土地だけを売却するときは、家を取り壊した日から1年以内の契約締結であり、住まなくなった日から3年経過する年の12月31日までに売却している
- 家を取り壊してから土地を売却するまでの間に、敷地を貸駐車場などとして使っていない
- 売却の2年前からマイホームの買換えや交換に関する特例を受けていない
- 売り手と買い手が親子や夫婦といった特別な関係ではない
・ 3,000万円控除に関する記事はこちら 3,000万円控除とは?制度の概要、適用条件や具体的な計算方法も解説! |
長期所有における軽減税率の特例
5年を超えて所有している土地を売却する場合、譲渡所得に課税される所得税・住民税の税率が低減します。所有期間が5年以下の土地を売却した場合の短期譲渡所得に比べ、税率はおよそ2分の1です。
土地の所有期間 | 税率 |
---|---|
取得から5年以下 (短期譲渡所得) | 所得税:30.63% ※復興特別所得税含む 住民税:9% |
取得から5年超 (長期譲渡所得) | 所得税:15.315% ※復興特別所得税含む 住民税:5% |
また、所有期間が10年を超えたマイホーム、あるいはマイホームが建っていた土地の売却には、さらに税率が下がる「軽減税率の特例」を適用できます。適用要件は、マイホーム特例と同様。両制度は併用も可能です。
判断基準となる所有期間は、相続や贈与を受ける前の持ち主の所有期間も合算されるため、親が長年所有していた土地を相続し、自身も暮らしていた場合は、軽減税率が適用されるケースが多いでしょう。
譲渡所得金額 | 税率 |
---|---|
6,000万円以下の部分 | 所得税:10.21% ※復興特別所得税含む 住民税:4% |
6,000万円超の部分 | 所得税:15.315% ※復興特別所得税含む 住民税:5% |
土地売却で譲渡損失が出たときに利用できる税金控除特例
土地を売却した際の譲渡所得は、売却価格から不動産の取得費・譲渡費用を差し引いて算出されます。
譲渡所得 = 収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )
売却価格が取得額を下回るといわゆる赤字となり、所得税や住民税は課税されません。加えて、生じた譲渡損失は税金の控除に活用できる可能性があります。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
5年以上住んだ居住用の建物・土地を住宅ローン残債を下回る金額で売却し、譲渡損失が発生した場合には、譲渡損失を他の所得から控除する「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」が適用できます。
通常、譲渡損失は他の不動産所得とのみ利益と損失を相殺する「損益通算」ができますが、この特例が適用された場合は、給与所得などの所得も損益通算の対象に含めることが認められます。
また、控除しきれなかった分の損失は最大3年間まで繰り越すことができますので、初年度以降も節税効果を得られます。その他の主な適用要件は、マイホーム特例と同様です。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」とは、5年を超えて住んでいた家を売却し新たに購入した新居へ移り住んだ場合、旧居の売却で生じた損失を最大3年間、他の所得と損益通算できる特例です。
また、控除しきれなかった損失は3年間の繰越控除が認められていますが、旧居の敷地が500㎡を超えていると、500㎡を超えた分は繰越控除できません。その他の主な適用要件は、マイホーム特例と同様です。
相続した実家を売却するときに利用できる税金控除特例
独立した子がすでに生活環境を確立している場合、相続した実家を売却したいと考えるケースは多いものと考えられます。税金を抑えて売却するため、次の2つの特例を知っておきましょう。
相続空き家の3000万円特別控除
「相続空き家の3000万円特別控除」とは、相続または遺贈により取得した建物・土地を売却した場合、マイホーム特例と同様、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
この制度を利用するには、次のような要件を満たしている必要があります。
- 相続開始の直前まで故人が一人暮らししていた住宅
- 相続開始から売却までの間、事業や貸付に使われていなかった
- 耐震基準を満たしている住宅、もしくは家屋を撤去したあとの土地を売却している
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建設された区分所有建物登記がされていない家屋
- 故人が亡くなった日から3年経過する年の12月31日までに売却している
- 売却金額が1億円以下
なお、「3」の要件については、2024年1月1日から、売却した年の翌2月15日までに買主が耐震リフォーム、あるいは家屋の撤去をすれば満たすこととなります。
相続空き家の3000万円特別控除は、基本的に相続開始の直前まで故人が一人暮らしをしていた住宅が対象ですが、その他条件によって、亡くなる前に老人ホームなどに入居していた場合にも使うことができます。
取得費加算の特例
「取得費加算の特例」とは、相続した土地や建物を売却した場合、売却した不動産の相続に際して納めた相続税を取得費に加算できる特例です。
取得費が増えれば譲渡所得が引き下がるため、節税につながります。主な適用要件は、次の通りです。
- 相続や遺贈によって取得した財産
- 取得した本人に相続税が課せられている
- 相続開始から3年10ヵ月以内に売却が完了している
平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときの1000万円特別控除
「平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときの1000万円特別控除」とは、個人が平成21年に取得した土地などを平成27年以降に売却した場合、または平成22年に取得した土地などを平成28年以降に売却した場合に、その土地にかかる譲渡所得の金額から1,000万円を控除できる特例です。
その他の適用要件は、次の通りです。
- 親子や夫婦など特別な間柄にある人から取得した土地などではない
- 相続・遺贈・贈与・交換・代物弁済・所有権移転外リースにより取得した土地などではない
- 売却した土地について収容等の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰り延べなど他の譲渡所得の特例を受けていない
収容などにより土地を売却したときに利用できる税金控除特例
土地収用法やその他の法律で収容権が認められている公共事業のために土地を売った場合は、以下2つの特例が受けられます。
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」とは、売った金額より買い換えた金額が大きいときに、所得税の課税を将来に繰り延べることができる特例です。
適用要件は、次の通りです。
- 売った土地が固定資産である
- 原則として、土地なら土地、建物なら建物など、売った資産と同じ種類の資産に買い換える
- 土地の収容があった年の前年から収容等のあった翌年の1月1日以後2年を経過した日までに買い換える
収容等の場合の5000万円特別控除
「収容等の場合の5000万円特別控除」とは、譲渡所得から最大5,000万円を控除できる特例。適用要件は、次の通りです。
- 売った土地が固定資産である
- その年に、公共事業のために売った資産の全部について、収容等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていない
- 最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っている
- 公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた人が売却している
【シミュレーション】土地売却の税金はいくら?
土地の売却時にはさまざまな控除などの制度を適用できますが、実際にどの程度の税金を払うことになるのでしょうか。サンプルケースを例に、税額をシミュレーションしてみましょう。
ケース1:居住していた土地の売却
条件 |
---|
・土地の売却額:1億円 ・取得費:8,000万円 ・売却時の諸経費:400万円 ・取得時の諸経費:320万円 ・所有期間:5年超10年以内 ・マイホーム売却時の3000万円特別控除の特例:適用 |
土地の売却額 | 100,000,000 |
取得費 | ▲80,000,000 |
売却時の諸経費 | ▲4,000,000 |
取得時の諸経費 | ▲3,200,000 |
マイホーム売却時の3,000万円特別控除の特例 | ▲30,000,000 |
小計 | ▲13,200,000 |
譲渡所得税(20.315%) | 0 |
まずは、自身で購入したマイホーム用の土地を売却するケースです。
8,000万円で購入した土地を1億円で売却しています。居住していた土地の売却であるため、マイホーム売却時の3,000万円特別控除の特例が適用され、課税所得はゼロとなりました。同じ条件で現在居住していない土地を売却した場合は、譲渡所得が1,280万円となり、約260万円の譲渡所得税が課されます。
ケース2:地方の両親から相続した空き家を売却
条件 |
---|
・土地の売却額:3,000万円 ・取得費:2,000万円 ・売却時の諸経費:120万円 ・取得時の諸経費:80万円 ・所有期間:10年超 ・相続空き家の3000万円特別控除:適用 |
土地の売却額 | 30,000,000 |
取得費 | ▲20,000,000 |
売却時の諸経費 | ▲1,200,000 |
取得時の諸経費 | ▲800,000 |
相続空き家の3000万円特別控除 | ▲30,000,000 |
小計 | ▲22,000,000 |
譲渡所得税(20.315%) | 0 |
続いては、地方で空き家となっていた実家を相続し、解体した後に売却したケース。親から相続した土地は、親が取得した費用および期間を引き継ぎます。譲渡所得が3,000万円を超えないため、相続空き家の3000万円特別控除の適用により税金はゼロ円となりました。
控除特例を利用するときの注意点
土地の売却に適用できる税金控除特例にはさまざまな種類があり、上手に使えば税金を大幅に抑えることができます。しかし、特例は無条件で適用できるわけではなく、注意が必要な点があります。
確定申告が必要
特例により譲渡所得がゼロになる計算ができたとしても、特例は自動的に適用されるわけではなく、確定申告により初めて適用されます。課税額の大小を問わず、特例を適用させるのであれば確定申告が必要です。
確定申告を行う期間は、土地を売却した翌年の2月16日~3月15日です。確定申告に必要な書類を揃えて税務署へ申告しましょう。
・ 確定申告に関する記事はこちら 不動産売却時に確定申告が必要なケースと確定申告の方法について解説 |
組み合わせられない特例がある
土地の売却に関する特例は、全て同時に適用できるわけではありません。特例の中には、一部の特例と併用できないものがあります。
まず、マイホーム特例と住宅ローン減税は併用できません。住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入したときに最大13年、毎年末の住宅ローン残高の0.7%を上限に所得税と一部住民税が控除される制度です。マイホームの買換えに際し、旧宅の売却で譲渡所得が出て、住宅ローンを組んで新居を購入した場合、どちらの制度を適用させるか検討しなければなりません。
また、相続資産の売却で使える相続空き家の「3000万円特別控除」と「取得費加算の特例」も併用不可。適用要件、節税効果を踏まえてどちらを利用すべきか検討しましょう。
控除特例を使って土地売却の税金を抑えよう
土地を売却する際には、さまざまな特例が適用できます。適用できる特例は土地の使用状況や売却時に発生した損益、相続の仕方などによって異なります。また、全ての控除特例が併用可能というわけではありません。適用となる特例制度をよく確認し、できる限り税金を抑えましょう。場合によっては、税理士などに相談することをおすすめします。
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この記事のポイント
- 土地を売却できる際に利用できる特例は?
「居住用財産の3000万円特別控除」「相続空き家の3000万円特別控除」など、数千万円を控除できる特例が多くあります。
詳しくは「土地売却時の税金控除特例一覧」をご覧ください。
- 実際に土地を売却したときにはどれくらいの税金がかかる?
税額は条件によって異なりますので、自分が土地を売却する時を想定したシミュレーションを行いましょう。
詳しくは「【シミュレーション】土地売却の税金はいくら?」をご覧ください。
- 控除特例を適用するときの注意点は?
特例を適用するには、確定申告が必須です。また、併用できない特例の組み合わせがあります。
詳しくは「控除特例を利用するときの注意点」をご覧ください。
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