ざっくり要約!
- 土地売却の際に利益(譲渡所得)が発生したときは確定申告が必要
- 確定申告をする際は譲渡所得や税額を正しく計算し、必要書類をそろえて期限内に申告をする
土地の売却で利益(譲渡所得)が出たときは確定申告が必要です。確定申告が必要となる場合は、譲渡所得やそれに対して課税される税金を正しく計算し、必要書類をそろえて期日までに申告をしなければなりません。
この記事では、土地を売却する際に確定申告が必要となるケースや不要なケース、申告時の必要書類などを解説します。
記事サマリー
土地売却後の確定申告は不要?確認方法とは?
確定申告が必須なのは、土地の売却で「譲渡所得」が出たときです。譲渡所得は、所得税や住民税、復興特別所得税の課税対象となるため、確定申告が必要です。これらの税金は「譲渡所得税」と呼ばれます。
一方、土地の売却で損失が出た場合は、申告の義務はありません。
確定申告が必要なケース
譲渡所得とは簡単にいえば売却益を指しますが、購入時と売却時の金額の差ではなく、以下の計算式を用いて算出します。この計算式で譲渡所得がプラスになった場合は、確定申告が必要です。
- 譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)
総収入金額や取得費、譲渡費用に該当するものは以下をご確認ください。
内訳 | |
総収入金額 | ・売却金額 ・固定資産税・都市計画税の精算金 |
取得費 | ・購入金額 ・購入時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税など) |
譲渡費用 | ・売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税・登録免許税・司法書士報酬など) |
譲渡所得税は、譲渡所得から3,000万円の特別控除などを差し引いたあとの金額(課税譲渡所得金額)に税率をかけて計算します。
税率は、土地を売却した年の1月1日時点での所有期間に応じて決まります。
所有期間 | 税率 |
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(住民税9%・所得税30%・復興特別所得税0.63%) |
5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(住民税5%・所得税15%・復興特別所得税0.315%) |
「譲渡所得税」に関する記事はこちら
譲渡所得税とは?不動産売却でかかる税金の計算方法や特例を解説
確定申告が不要なケース
確定申告が不要なのは、土地の売却時に譲渡所得がない場合です。譲渡所得がマイナスになることを「譲渡損失」といいます。
譲渡所得を計算した結果が、ゼロまたはマイナスであれば確定申告の義務はありません。
土地売却後の確定申告で必要な書類
土地の売却をしたあとに確定申告をする際は、以下の書類が必要です。
- 確定申告書第一表・二表
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
1〜3の書類については、最寄りの税務署で入手できる他、国税庁のホームページでダウンロードすることも可能です。
申告書類を作成するときは、国税庁が運営する「確定申告書作成コーナー」を利用するのがおすすめです。画面の指示にしたがって金額などの情報を入力することで、確定申告に必要な書類を作成できます。
以下では、確定申告をする際に提出する書類をご紹介します。
確定申告書第一表・第二表
確定申告書第一表・第二表は、1年間の収入金額や所得金額、所得税額などを記載する書類です。給与収入や事業で得た収入などもすべて記入します。
給与収入を記入するときは、勤務先から発行される源泉徴収票が必要です。
税務署に源泉徴収表を提出する必要はありませんが、申告書を作成する際に必須なため、紛失している場合は勤務先に再発行を依頼しましょう。
確定申告書第三表(分離課税用)
確定申告書第三表(分離課税用)は、分離課税の対象となる所得の金額や税額などを申告する書類です。
土地や建物などを売却したときの譲渡所得は、給与や年金などとは別に税金が課税される分離課税の対象であるため、確定申告書第三表を作成して提出します。
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算書)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算書)は、売却した土地の所在地や種類、契約日などを詳しく記載する書類です。
土地の売却金額や取得費、売却時の諸費用なども順番に記載していくことで、課税の対象となる譲渡所得の金額を計算できるようになっています。
内訳書を記入する際は、売買契約書や領収書などの金額がわかる書類が必要です。売買契約書や領収書などのコピーを確定申告の際に提出する必要はありませんが、税務署から問い合わせがあったときにいつでも提示ができるよう手元に保管しておきましょう。
本人確認書類
確定申告の手続きをする際には本人であることを証明するために、以下のAとBのいずれかを提出します。
A. マイナンバーカード(個人番号カード)の裏面と表面
B. a.番号確認書類+b.身元確認書類
a. 通知カード・住民票の写し・住民票記載事項証明書などのうち1つ
b. 運転免許証・公的医療保険の被保険者証・パスポートなどのうち1つ
税務署の窓口で申告書類を提出する場合は、本人確認書類を提示します。申告書類を郵送するときは、本人確認書類のコピーを申告書類に添付します。
土地の売却で特例を適用する場合に必要な書類
土地を売却したときに所定の要件を満たすと特例により税金の優遇を受けられることがあります。主な特例は以下の通りです。
特例 | |
---|---|
住んでいた建物がある土地を売却するときに利用できる特例 | 3,000万円の特別控除 |
軽減税率の特例 | |
土地の売却で譲渡損失が出たときに利用できる特例 | 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 |
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 | |
相続した実家を売却するときに利用できる特例 | 相続空き家の3000万円特別控除 |
取得費加算の特例 |
特例を適用するためには、必要書類をそろえて確定申告で申請をする必要があります。特例によって税額がゼロになる場合でも、確定申告は必要です。
また、土地の売却時に譲渡損失が生じた場合、確定申告は不要ですが特例を受けるのであれば必須です。
ここでは、土地の売却時に適用できる主な特例と確定申告時に添付する書類を解説します。
なお、本記事で紹介している添付書類は、2023年分の確定申告に関するものです。確定申告の年によって必要書類が異なる場合があるため、申告の際にご確認ください。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除は、自宅として使っていた不動産を売却したときに、要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
確定申告の際に添付する書類は以下の通りです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
- 戸籍の附票の写しなど※1
※1:譲渡契約を結んだ日の前日において「住民票に記載されていた住所」と「売却した居住用財産の所在地」が異なる場合に必要
軽減税率の特例
軽減税率の特例は、所有期間10年を超えるマイホームを売却すると、6,000万円以下の譲渡所得に対する税率が軽減される特例です。特例が適用されたあとの税率は、以下の通りです
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
6,000万円以下の部分 | A×10% |
6,000万円超の部分 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
確定申告の際に添付する書類は以下の通りです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
- 戸籍の附票の写し※1
- 売却した居住用財産の登記事項証明書
※1:譲渡契約を結んだ日の前日において「住民票に記載されていた住所」と「売却した居住用財産の所在地」が異なる場合に必要
登記事項証明書については「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号等を記載して別途提出することで、添付を省略できます。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
マイホームの売却金額よりもローン残債が多く、譲渡損失が出る場合の特例です。所定の要件を満たすと、売却で生じた譲渡損失を同じ年の給与所得や事業所得などと相殺できます。差し引きしきれなかった分については、翌年以降も繰り越して控除できます。
添付書類は以下の通りです。
- 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告付表)
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
- 戸籍の附票の写し※1
- 譲渡した資産の住宅借入金等の残高証明書
※1:譲渡契約を結んだ日の前日において「住民票に記載されていた住所」と「売却した居住用財産の所在地」が異なる場合に必要
この特例についても、「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号等を記載して別途提出することで、登記事項証明書の添付を省略できます。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
住んでいた家を売却し、新しく住まいを購入して住み替えをする際に適用できる特例です。マイホームの売却時に生じた譲渡損失を、給与所得など他の所得と相殺でき、余りがある場合は翌年以降に繰り越して控除できます。
添付書類は以下の通りです。
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告付表)
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 売却した居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
- 戸籍の附票の写し※1
- 買い換えた居住用財産の登記事項証明書、売買契約書の写しなど
- 買い換えた居住用財産の住宅借入金等の残高証明書
※1:譲渡契約を結んだ日の前日において「住民票に記載されていた住所」と「売却した居住用財産の所在地」が異なる場合に必要
他の特例と同様、所定の書類に不動産番号等を記載して提出するのであれば、登記事項証明書を添付する必要はありません。
相続空き家の3,000万円特別控除
相続空き家の3,000万円特別控除は、相続によって取得した家屋やその敷地などを売却するときに、所定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
添付書類は以下の通りです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】※1
- 被相続人居住用家屋およびその敷地等の登記事項証明書など
- 市区町村長から交付された「被相続人居住用家屋等確認書」
- 売買契約書の写しなど、譲渡価額が1億円以下であることを示す書類
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し※2
※1:5面の添付が必要
※2:被相続人居住用家屋の譲渡がある場合
この特例についても、所定の書類に不動産番号等を記載して提出することで、登記事項証明書の添付は不要となります。
取得費加算の特例
相続や遺贈(遺言によって法定相続人ではない人に遺産を送ること)によって受け継いだ土地や建物などを一定期間内に売却したときに適用できる特例です。要件を満たすと、相続人が納めた相続税の一部を取得費に加えたうえで譲渡所得税が計算されます。
添付書類は以下の通りです。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
「土地の売却で活用できる控除特例」に関する記事はこちら
土地売却時に受けられる9つの税金控除特例
土地の売却で譲渡所得が出ても確定申告しなかったらどうなる?
土地を売却したときに譲渡所得が生じたときは、確定申告が必要です。申告先は、申告時に住民票のある住所を管轄する税務署です。確定申告の期間は、売却した年の翌年の2月16日〜3月15日ですが、土日により前後することがあります。
土地の売却で譲渡所得が生じたにもかかわらず、確定申告をせず税金も納めなかったときは「無申告加算税」が課されます。
譲渡所得税の申告と納税をしていないことを税務調査で指摘されたあとに修正申告をした場合、無申告加算税の税率は以下の通りです。
納付すべき税金 | 税率 |
50万円まで | 年15% |
50万円超〜300万円 | 年20% |
300万円超 | 年30% |
また、法定納期限までに所得税を納めなかった場合は「延滞税」もかかります。延滞税の率は、以下の通りです。
税率 | ||
---|---|---|
原則 | 2025年12月31日まで | |
納期限までの期間・納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年7.3% | 年2.4% |
納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後 | 年14.6% | 年8.7% |
譲渡所得が生じたにもかかわらず、確定申告をしない場合、重いペナルティが課せられてしまうかもしれません。
土地を売却したときは、譲渡所得や税額を正しく計算し、必要に応じて期限内に確定申告と納税をすることが大切です。
土地売却後の確定申告の流れ

最後に、自分自身で確定申告をするときと税理士に依頼するときの流れを解説します。
自分で確定申告する場合
自分で確定申告する場合の流れは、次の通りです。
- 必要書類を準備する
- 譲渡所得を計算する
- 適用できる控除特例を確認する
- 申告書類に記入・入力する
- 必要書類を添付して申告書類を提出する
- 税金を納付する
確定申告の書類は「税務署の窓口に持参する」「税務署に郵送する」「e-Taxで電子申告をする」のいずれかの方法で提出します。e-Taxをするためには、マイナンバーカードとそれを読み取るスマートフォンが必要です。
自身で確定申告をする際は、国税庁のWebサイトで公開されている「確定申告書等の様式・手引き等」によく目を通すことが大切です。不明点がある場合は、最寄りの税務署に相談をすると良いでしょう。
例年、確定申告の時期は税務署が混み合うため、自身で申告書類を作成する場合は、スケジュールに余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
「確定申告を自分でする方法」に関する記事はこちら
不動産売却後の確定申告は自分でできる? 計算方法・流れ・必要書類などを解説
税理士に委託する場合
税理士に申告を依頼する場合の流れは以下の通りです。
- 依頼する税理士を決める
- 契約を締結する
- 必要書類を準備して税理士にわたす
- 税理士が作成した確定申告書を確認する
- 税理士が確定申告を行う
- 税金を納付する
依頼先を選ぶ際は、税理士に依頼する業務の内容を考えるとともに、複数の税理士事務所から見積もりを取り寄せて比較すると良いでしょう。
譲渡所得の確定申告を依頼する場合にかかる費用は、申告の難易度や作業量などで異なりますが、5万〜30万円程度が相場です。
まとめ
土地の売却で確定申告が必須となるのは譲渡所得が生じたときです。特例を適用した結果、税額がゼロとなる場合でも確定申告をしなければなりません。
確定申告をする際は、確定申告書や譲渡所得の内訳書、本人確認書類を提出します。また、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例などの特例を適用する場合は、指定の添付書類も提出します。
土地を売却したときに譲渡所得が生じたときや特例を適用する場合は、申告書類を適切に作成して期日までに申告し、必要に応じて税金も納めましょう。
この記事のポイント
- 土地を売却したら確定申告が必要になりますか?
確定申告が必須なのは、土地の売却で「譲渡所得」が出たときです。譲渡所得は、所得税や住民税、復興特別所得税の課税対象となるため、確定申告が必要です。
詳しくは「土地売却後の確定申告は不要?確認方法とは?」をご覧ください。
- 土地を売却した後の確定申告で必要な書類は?
土地の売却をしたあとに確定申告をする際は「確定申告書第一表・二表」「確定申告書第三表(分離課税用)」「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」「本人確認書類」が必要です。
詳しくは「土地売却後の確定申告で必要な書類」をご覧ください。
- 土地売却後の確定申告はどのような流れで行えば良いでしょうか?
自分でも可能です。国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Taxを利用すれば、税務署に行かずに申告できます。不安や不明点があれば、税務署や税理士に相談しましょう。
自分自身で確定申告をするときと税理士に依頼するときの流れを「土地売却後の確定申告の流れ」で詳しく解説しています。
ライターからのワンポイントアドバイス
譲渡所得や税額の計算には複雑な部分があります。また、特例を受けるためには要件を満たしていることをよく確認する必要があります。税額の計算を誤って申告したり、要件を満たしていない特例を適用したりすると、ペナルティが課せられます。税金の知識がないと、譲渡所得や税額の計算、申告手続きに誤りが生じやすくなります。確定申告をした経験があまりない方は、専門家である税理士に依頼をするほうが安心でしょう。

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