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住宅ローンが払えない人が急増!理由や延滞後の流れ、対応策まで解説

執筆者プロフィール

東本隼之
ファイナンシャルプランナー、マネーライター

独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。金融記事を中心に執筆・編集・監修を担当。税金・社会保険・資産運用・生命保険・不動産・相続分野を得意とし、自身の経験に基づいたライティングを強みとしている。難しい金融知識を初心者にわかりやすく伝えることが得意。

ざっくり要約!

  • 住宅ローンが払えない状況が続くと、残債の一括返済を求められたり、強制退去を迫られたりすることになります。
  • 住宅ローン返済が難しい場合は、不動産売却や金融機関に相談するなどの対策をすることが大切です。

住宅ローンを利用している世帯のなかには、収入が減ったり支出が増えたりすることで住宅ローンの返済ができない状況に陥っている世帯も少なくありません。近年では、新型コロナウイルス感染症などによって、世帯収入に大きな影響を受けた人もいるでしょう。

本記事では、住宅ローンの支払いに困っている人の割合や理由、払えなかった場合の流れを詳しく紹介します。住宅ローンが払えないときの対応策も紹介しているので、住宅ローン返済に不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

住宅ローン返済に困っている人の割合は100人に約3〜4人!

フラット35を提供している住宅金融支援機構の調査では、住宅ローンを契約している100人のうち約3〜4人が住宅ローン返済に困っているとされています。

まずは、この数値の根拠と理由を詳しく見ていきましょう。

2022年のリスク管理債権は3.17%

2022年に住宅金融支援機構が公表したリスク管理債権は「3.17%」となっており、住宅ローンの返済が滞っている人が一定数いることがわかります。

リスク管理債権とは、破綻先債権と延滞債権、3ヶ月以上延滞債権、貸出条件緩和債権を足した金額の債権合計額に対する割合を示したものです。住宅金融支援機構が貸し付けている住宅ローンの返済が滞ったり、返済方法を変更したりする件数が増えることでリスク管理債権の数値が高くなります。

コロナ禍で返済が困難となった人が急増

2020年2月〜2021年12月に住宅金融支援機構のコールセンターに寄せられた新型コロナウイルス感染症関連の相談件数は6,000件を超え、その約半数を占めているのが「返済相談」です。

このことから、新型コロナウイルス感染症によって多くの人が住宅ローン返済に不安を感じ、返済ができない状態に陥っていることがわかります。また、同期間中に承認された返済方法の変更件数は14,118件となっており、住宅ローン契約時の条件で返済を続けられない状況になった人も多くいます。

住宅ローンが払えない人が急増している理由

住宅ローンが払えない人が急増している主な理由には、以下の3つがあります。

  • 収入が減少した
  • 返済計画に問題があった
  • 支出が増えた

住宅ローンは、けがや病気などで働けなくなったり、リストラによって失業したりしたとしても、返済がなくなることは基本的にありません。そのため、新型コロナウイルス感染症などの影響で収入が減少した場合であっても、住宅ローン返済を続けなければならず、返済ができない状況に陥ってしまうのです。

住宅ローン返済が滞る理由には、返済計画に問題があることも考えられます。一般的に「年間返済額÷年収×100」で求められる返済比率は25%未満になるのが理想とされ、これを超えると住宅ローン返済が苦しくなるといわれています。

住宅ローンの返済比率は、住宅ローン契約時の年収をベースに計算することとなりますが、転職や病気などで年収が変化すると返済比率が高まってしまう点には注意が必要です。

加えて、子どもの進学や親の介護などで支出が増加することで、住宅ローン返済ができなくなってしまう場合もあります。これらのライフイベントを想定していたとしても、新型コロナウイルス感染症のような想定外の出来事によって支出が増えてしまい、住宅ローンの返済ができない状況に陥るケースも考えられます。

住宅ローンが払えなくなるとどうなるの?順を追って解説

住宅ローンが払えない状況が続くと、残債の一括返済を求められたり、強制退去を迫られたりすることとなります。連帯保証人にも返済の請求がなされるため、自身だけでなく連帯保証人も影響を受けることになることを認識しておきましょう。

ここでは、住宅ローンが払えなくなった場合の流れを詳しく紹介します。

督促状が届く

住宅ローンの返済が滞ると、借入先の金融機関から督促状が届きます。

督促状には、延滞によって発生した「遅延損害金」や、入金期日などが記載されています。入金期日を過ぎた場合の措置内容が書かれているケースもあるので、督促状の記載内容は必ず確認しておきましょう。

延滞を重ねると、住宅ローンの優遇金利が取り消しとなり、当初の返済額より増えてしまう場合があります。住宅ローンを延滞したときの対応は、金融機関によって異なるので、契約内容を事前に確認しておくことが大切です。

残債の一括返済を求められる

住宅ローンには、分割して返済ができる「期限の利益」と呼ばれる権利がありますが、延滞をすることで、この権利が失われてしまいます。期限の利益を喪失すると、金融機関が指定する期日までに住宅ローンを一括返済することが求められます。

残債の一括返済ができない場合は、保証会社が「代位弁済」をすることとなりますが、住宅ローンがなくなるわけではありません。代位弁済とは、住宅ローンの残債を保証会社が建て替えることをいい、住宅ローンの返済先が金融機関から保証会社に変更されるだけで、保証会社から返済を求められることとなります。

不動産が差し押さえられる

住宅ローンの延滞が続いている場合は、金融機関や保証会社が裁判所に財産の差し押さえを申し立てることとなります。差し押さえとは、債務の返済が滞ったときに不動産や預貯金、自動車などの財産から強制的に回収するための手続きのことです。

不動産が差し押さえられると、所有者の独断で売却したり譲渡したりすることができないため、自宅を売却して住宅ローンを返済することもできなくなってしまいます。

・「差し押さえ」に関する記事はこちら
差し押さえとは?対象の財産や要因、解除方法を解説

競売にかけられる

差し押さえられた不動産は「競売(けいばい)」にかけられることとなります。

競売とは、住宅ローン返済ができなくなったときに強制的に不動産を売却されることです。競売では売却価格を売主が設定するのではなく、購入者が希望価格を提示する方式が取られるため、売主の希望金額で売却することができません。

競売での売却金額は、裁判所が設定する「売却基準価額」が基準となり、この価格の80%以上でなければ入札することができない仕組みとなっています。

競売前は、裁判所の執行官や評価人が不動産を訪れ、売却基準価額を決めたり競売資料を作成したりするための調査が実施されます。この調査は、強制調査となっているため、拒否することはできません。

強制退去を迫られる

競売によって競落人(購入者)が決まると、所有権移転登記をする日までに不動産を明け渡さなければなりません。期日までに退去しない場合は、強制退去を迫られることとなります

住宅ローンが払えないときの5つの対応策!住み続ける方法はあるの?

住宅ローンが払えない場合は、そのままの状態で放置せずに状況にあわせた対応をすることが大切です。

不動産が差し押さえられたり、強制退去を迫られたりすることにならないためにも、住宅ローンが払えないときの対応策を確認しておきましょう。

金融機関に相談する

住宅ローンが払えない状況になったときは、金融機関に相談しましょう。

金融機関に相談することで、月々の返済額を減らしたり、一定期間の返済を猶予してくれたりすることがあります。金融機関に相談しないまま住宅ローンを延滞すると、残債と延滞日数に応じた遅延損害金を請求されることになるので注意が必要です。

住宅ローンの条件を変更することで総返済額が増えてしまう可能性もありますが、住宅ローンを延滞して不動産を手放すことにならないためにも可能な限り早く相談しておきましょう。

不動産を売却する

抵当権が設定されている不動産は、原則として金融機関の同意がなければ売却できませんが、売却価格が住宅ローンの残債を上回っている場合は、売却金で住宅ローンを一括返済することができます。また、不動産の売却金が住宅ローン残債に足りない場合でも、自己資金で不足分を補えるのであれば売却手続きを進められることもあります。

不動産の売却価格を知りたい場合は、不動産会社に物件査定を依頼しましょう。

・「不動産売却 基礎知識」に関する記事はこちら
不動産売却の基礎知識を完全ガイド!売却の流れや必要書類、売却方法を解説
・東急リバブルの「不動産売却・不動産査定」はこちらから

任意売却

任意売却とは、住宅ローンの返済ができない状況になったときに金融機関の同意を得たうえで不動産を売却する方法のことです。

任意売却では、不動産を市場価格に近い金額で売却できるため、競売に比べて売却金額が高くなる傾向があります。そのため、不動産売却後の住宅ローン残債が少なくなり、返済の負担を軽くする効果が期待できます。

退去時期や返済計画は、金融機関と相談しながら決められるので、売却後の生活に不安を抱える心配も少なく済むでしょう。

リースバック

リースバックとは、不動産売却後に家賃を支払うことで、マイホームに住み続けられる仕組みのことです。リースバックをする際は、所有権が買主に移転したタイミングに賃貸借契約を結ぶこととなります。

不動産の所有権を失うことになりますが、引っ越しをする必要がなくマイホームに住み続けられるメリットがあります。

なお、不動産の売却金額が住宅ローンの残債を下回っている場合は、基本的にリースバックを利用することができません。金融機関の同意を得ることで売却手続きを進められますが、賃料と住宅ローンを負担し続けることが難しいと判断されれば、リースバックが認められなくなるでしょう。

また、事業目的として売却するリースバックは、市場価格より売却価格が安くなりやすい傾向があります。リースバックをする際は、マイホームに住み続けられるメリットだけでなく、売却価格にも注目して判断することが大切です。

債務整理

住宅ローンが払えない場合は、債務整理をするのも手段の一つです。

債務整理とは、ローン残債を減らしたり、返済の免除を受けたりするための手続きのことです。債務整理の主な方法には、任意整理と個人再生、自己破産が挙げられ、減額幅や手続きの流れが異なります。

なお、債務整理をすると信用情報に記録されるため、クレジットカードやローンの審査に影響することがあります。住宅ローン返済の負担が一時的に減る可能性がありますが、債務整理をするべきかを十分に検討したうえで手続きを進めましょう。

まとめ

住宅ローンが払えない状況が続くと、残債の一括返済が求められたり、不動産を差し押さえられたりすることにつながります。住宅ローンの返済ができない状況であっても、金融機関に相談することで返済条件を変更してくれる場合があるので、そのままの状態で放置しないことが大切です。

不動産価格が住宅ローン残債を上回っている場合は、売却金を住宅ローン返済に充当することも可能です。不動産の売却を考えている人は、不動産会社に物件査定を依頼してみましょう。

・東急リバブルの「不動産売却・不動産査定」はこちらから

この記事のポイント

住宅ローンが払えない理由にはどんなものがある?

けがや病気で収入が減ったり、元々の返済計画に問題があったりするケースがあります。当初の返済計画に無理があることも考えられます。

詳しくは「住宅ローンが払えない人が急増している理由」をご覧ください。

住宅ローンが払えないとどうなる?

金融機関から一括返済を求められたり、競売にかけられたりすることとなります。競売にかけられると、市場価格より低い金額で売却することになるケースが多いため、住宅ローンを延滞する前に対応することが大切です。

詳しくは「住宅ローンが払えなくなるとどうなるの?順を追って解説」をご覧ください。

住宅ローンが払えないときは、どうすればいい?

まずは金融機関に相談して返済条件を変更できないかを確認しましょう。その後、不動産の売却価格を確認したうえで任意売却などを検討します。不動産を手放しても返済できない場合は、債務整理を検討しましょう。

詳しくは「住宅ローンが払えないときの54つの対応策!住み続ける方法はあるの?」をご覧ください。

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