家の売却でやってはいけない,こと
更新日:  

家の売却でやってはいけないこととは?高く安心して売るために必要な9つのこと

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 信頼できる不動産会社に依頼し、家をできる限り好条件で売却するには、事前の相場の把握や不動産会社の比較が不可欠
  • 家は売って終わりではなく、物件を契約に適合している状態で引き渡し、必要に応じて確定申告をするまでが家の売却

不動産は、言わずもがな高額な資産です。家の売却で失敗してしまうと、その後の人生にも多大な影響を与えてしまうため、慎重に進めていきましょう。不動産売却における「失敗」とは、具体的には、相場を下回る金額で売却することになってしまったり、売却後にトラブルになってしまったりすることを指します。これらの失敗を避けるには「やってはいけないこと」がいくつかあります。

この記事では、売却前・売却中・売却後に分けて、家を売る時の注意点を解説します。

家の売却前にやってはいけないこと3選

家の売却前に注意するポイントは「見切り発車」をしないことです。家の売却を思い立ってすぐに最寄りの不動産会社に相談したり、独断で建具や設備を修繕したりすることは避けましょう。

相場を調べない

家を売る時にまずすべきなのは、相場を調べることです。家を売る際には不動産会社に査定を依頼するため、相場を調べなかったとしても査定額を知ることができます。しかし、「査定額=売却金額」ではありません。

不動産会社が提示する査定額の妥当性を判断し、自ら売り出し価格を決めるのは売主に他なりません。したがって、ある程度、相場観を養ったうえで査定依頼に臨むことが大切です。売却前に相場を知っておくことで、住宅ローンの返済や住み替えの計画も立てやすくなります。

不動産会社を比較しない

家の売却を依頼するのは、どのような不動産会社でも良いわけではありません。不動産会社によって査定額は異なり、対象エリアや得手不得手、サービス内容、バックアップ体制も変わってきます。

売却する家の近くにある不動産会社であれば対象エリアには入っているでしょうが、売主や売却する家の状況に合った不動産会社に依頼してこそ、高額に売却に期待できます。少しの手間と時間はかかりますが、家の売却を依頼する不動産会社を決める際には複数社に査定を依頼し、比較することが大切です。

・「不動産会社の選び方」に関する記事はこちら
家を売却する流れや不動産会社の選び方、失敗しないポイントを徹底解説!

独断でリフォーム・修繕・解体する

家を売却するなら「できるだけ綺麗な状態にしておかなければならない」と考える方は少なくありません。たしかに家を綺麗にすることは大事ですが、不動産会社に相談する前にお金をかけてクリーニングしたり、修繕したりすることは避けましょう。というのも、そのままの状態であっても、お金をかけて修繕したとしても、売却金額が変わらない可能性があるからです。

不動産の売り方は「仲介」と「買取」に大別されます。買取は、不動産会社が直接買い取ることを指します。家を買い取る不動産会社は、リフォームや修繕をしたうえで再販し、利益を出すことを目的にしています。そのため、小さな傷があろうがなかろうが、多くの場合、買取価格に影響しません。

一方、不動産会社の仲介による売却においても、近年はリフォームを前提に中古物件を選ぶ人が少なくありません。こういった買主にとっても、小さな傷や汚れは大した問題ではなく、むしろ何も手をつけていない状態のほうが好まれることもあります。

・「仲介と買取の違い」に関する記事はこちら
不動産売却の仲介と買取の違いは?物件ごとの向き・不向きも解説

もちろん、売り方や反響次第では、リフォームや修繕、家の解体などが必要になる可能性はあります。しかし、不動産会社に相談する前は、売り方も物件の価値もわからない状態です。この時点でリフォームや修繕、解体などをしてしまうと、かけた費用が無駄になってしまうおそれがあります。

・「売却前のリフォーム」に関する記事
マンション売却時にリフォームは必要?判断基準や費用を解説

家の売却中にやってはいけないこと3選

家を売り出している間に避けるべきことは、次の3つです。

すぐに値下げや不動産会社の変更をする

東日本不動産流通機構のデータから筆者作成)

東日本不動産流通機構によれば、2023年度に一都三県で成約にいたった中古マンション・中古戸建て・土地の平均成約期間は、いずれも80〜90日でした。不動産は売り出してみなければ注目度や競争力はわからないため、売れるまでの間に反響を見ながら価格を下げたり、物件の見せ方を工夫したりする必要がありますが、数日や数週間ですぐ値下げや不動産会社の変更まで考えるのは時期尚早と考えられます。

もちろん、不動産会社の力量不足や不親切さを強く感じるようであればこの限りではありませんが、情報の反映や拡散にも一定の時間がかかることから、慌てすぎるのもよくありません。

内覧準備を怠る

家を売却するにあたって、購入希望者による「内覧」は不可欠な工程です。内覧とは、実際に物件を見にくることを指します。内覧でいかに良い印象を与えられるかが、家の売れる金額やスピードを左右するといっても過言ではありません。

内覧前には、好印象を与えられるように整理・整頓・清掃を徹底する必要があります。また、売却期間中は土日祝日に予定を入れないようにし、できる限り内覧の申し込みを断らないことも大切です。

価格や条件交渉に聞く耳を持たない

内覧で「購入したい」と思ってもらったとしても、確実に売買契約にいたるわけではありません。それは、購入申し込み時に価格や条件の交渉が入る可能性があるからです。

たとえば、3,000万円で売り出していたにもかかわらず、2,900万円や2,800万円ほどで購入申し込みが入ることもあります。また、劣化や損傷が見られる部分を修繕してほしいという交渉が入るケースもあります。

とはいえ、交渉に応じなければ決裂するとは限りません。交渉に応じるも応じないも売主次第ですが、最初から一切の交渉にも応じないと突っぱねるのではなく、購入申し込みが入ったタイミングやその他の反響も考慮しながら、話し合いに応じるという姿勢を見せることも大切です。

家の売買契約・売却後にやってはいけないこと3選

家を売る時の注意点

家の売却が決まった後も、まだまだ安心はできません。売買契約から引き渡し、そして必要なら確定申告が終わるまでが家の売却です。

契約内容を確認せずに署名・捺印する

どのような契約にも言えることですが、不動産の売買契約書は隅から隅まで確認するようにしましょう。「こちらに不利なことは書いていないだろう」「どの契約書も同じだろう」といった過信は厳禁です。契約書にある一つの文章や文言が、売買後のトラブルや後悔につながるおそれもあります。

特に、融資利用の特約に基づく契約解除期日や特約事項には、よく目を通すことをおすすめします。買主が融資を組んで不動産を購入する場合は、融資承認が否認されれば白紙解除が可能な特約が定められています。しかし、融資利用の特約に基づく契約解除期日以降は融資承認の否認を理由に白紙解除することはできません。逆にいえば、この期日までは白紙解除の可能性があるということです。

また特約事項には、その名の通り「特別に設けられた約束」が記載されます。たとえば、売主が負う契約不適合責任の期間や、売主が引き渡しまでにしなければならない行為などが記載されます。売買契約書に目を通すなかで疑問や不安を感じたら、遠慮せず不動産会社の担当者に相談し、しっかり解消してから署名・捺印しましょう。

契約に違反した状態で家を引き渡す

不動産は、原則的に空室の状態で買主に引き渡します。売買契約から引き渡しまでは1〜2ヶ月程度の期間が空くのが一般的ですので、居住中の物件であればこの間に引越し、残置物などがない状態にしておかなければなりません。ただし、特約で別の取り決めがある場合は、それに準拠しましょう。

また、売買契約書に付帯する「物件状況報告書」と異なる状態で引き渡すと、買主から契約不適合責任を追求されるおそれがあります。物件状況報告書とは、雨漏りや給排水管の劣化などの状況を買主に伝えるための書面です。

たとえば、物件状況報告書では「雨漏りなし」となっていたにもかかわらず、引き渡し後に雨漏りが見られた場合、売主は買主から追完(修理など)や減額を請求されるおそれがあり、これに応じない場合は損害賠償請求や解約請求に発展する可能性があります。

引き渡しの時期および状態は、契約に適合させることが大切です。

確定申告の要否を確認しない

不動産売却後の確定申告は、すべての方が必須というわけではありません。確定申告が必要なケースは、次の2つです。

1つは「譲渡所得」が出たときです。譲渡所得とは、不動産を売却したことによる利益を指します。譲渡所得には、所得税・住民税・復興所得税が課されるため、確定申告および納税が必要です。

そして確定申告が必要な2つ目のケースは、控除特例の適用を受けるときです。「居住用財産の3,000万円特別控除(マイホーム)」や「相続空き家の3,000万円特別控除」などを適用させることにより、譲渡所得税を引き下げることができます。ただし、特例の適用で税額がゼロとなる場合も、適用には確定申告が必要です。

譲渡損失が出た際は確定申告が必須ではありませんが「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」や「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」によって、給与所得などにかかる所得税を引き下げられる可能性があります。これらの特例を適用するには、確定申告が必要です

確定申告時期は、家を売却した翌年の2月16日から3月15日です。確定申告の要否に悩む場合や控除特例が適用できるかわからない場合は、不動産会社や税理士に相談しましょう。

・「税金控除特例」に関する記事はこちら
土地売却時に受けられる9つの税金控除特例

まとめ

家の売却では、やるべきこと・やってはいけないことが少なくありませんが、信頼できる不動産会社と一緒に売却していけば、その都度、教えてもらえるため、必要以上に構える必要はありません。そういった意味でいえば、今回お伝えしたうち「家を売却する前」にやってはいけないこと3選が最も重要なポイントといえるでしょう。

この記事のポイント

家を売却する前にやってはいけないことは?

相場を確認しない・不動産会社を比較しない・独断でリフォームや修繕、解体をすることは避けましょう。

詳しくは「家の売却前にやってはいけないこと3選」をご覧ください。

家の売却中にやってはいけないことは?

すぐに値下げしたり、不動産会社を変更したりすることはおすすめしません。また、内覧では良い印象を与えなければならないため、内覧対応を怠ることも避けましょう。

詳しくは「家の売却中にやってはいけないこと3選」をご覧ください。

家の売買契約時や売却後にやってはいけないことは?

売買契約書の確認を怠ることは避けましょう。また、確定申告が不要と断定し、譲渡所得や適用できる控除特例の確認も怠らないことが大切です。

詳しくは「家の売買契約・売却後にやってはいけないこと3選」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

家の売却で「やってはいけないこと」というとマイナスのイメージがあるかもしれませんが、好条件で売るために「やるべきこと」と置き換えれば、前向きに捉えられるのではないでしょうか。不動産会社はやるべきことを教えてくれる大切な存在ですが、任せきりにせず、自分ごととして家の売却を進めていきましょう。

物件探しや売却がもっと便利に。

無料登録で最新物件情報をお届けいたします。

Myリバブルのサービス詳細はこちら