不動産 売却 不動産調査
更新日:  

不動産売却時の物件調査とは?やり方や目的を解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 不動産売却時に物件調査をする目的は、適正価格と好条件で売却できる方法の見極めおよび売買後のトラブル回避
  • 物件調査は「役所・法務局調査」「現地・周辺調査」「市場・競合調査」「マンション管理の調査」の4つに大別される

不動産会社は、不動産売却の依頼を受けると「物件調査」に着手します。物件調査とは、役所や法務局、現地などを周り、売却する不動産の法令上の制限や権利、境界などを調査することです。基本的に売主が調査費用を負担することはありませんが、調査をした結果、測量や登記が必要になった場合は売主が費用を負担します。

この記事では、不動産売却時の物件調査の目的や方法について解説します。

不動産売却時の物件調査の目的は?

不動産売却時の物件調査の目的は、多岐にわたります。まずは、買主が知りたいこと・知らなければならないことを調査するのが目的の1つです。不動産を購入する人は、物件の立地や見た目だけを気にするわけではありません。法令上どのような制限があるのか、建築基準法に適合しているか、水害リスクはどの程度か……などがわからなければ、高額な不動産を購入する気にはならないでしょう。

また、所有権者本人に売却に意思があるのか、土地の境界は確定しているのか、ローン残債はあるかなど、不動産の現状についても調査します。これにより、次のような効果に期待できます。

適正な査定

物件調査の目的の1つは、適正額を見極めることです。不動産には定価がありませんが、相場とかけ離れた金額で売り出してしまえば、売却に時間がかかってしまうどころか、いつまで経っても売れないことにもなりかねません。逆に、相場を大きく下回る金額で売り出してしまっては、売主の損失になってしまいます。

不動産の価値は、立地と広さだけで決まるわけではありません。土地の形状や接道状況、建物の劣化状況などを調査してこそ、適正な査定額が算出できます。

売却戦略の立案

不動産の調査結果次第で、売り方も変わってきます。たとえば、70㎡のマンションであればファミリー層の需要が高いと考えられますが、築年数や室内の状態、売主の都合などによっては、一般の方に向けて売却するより、不動産買取業者に向けて売却したほうが売りやすい場合もあります。

戸建ても、状態次第では土地として売却したり、解体することを条件に加えたりしたほうが買い手がつきやすくなる可能性があります。一方、再建築不可であれば解体は避け、投資家やリフォームが得意な不動産業者などをメインにターゲティングしていくことになるでしょう。

このように、物件調査はできる限り好条件で売るための戦略立案にも役立ちます。

売却後のトラブル回避

不動産の売主は、不動産の所有権を持つ人でなければなりません。「当然」だと思うかもしれませんが、不動産の所有者になりすまして別人が売却する「地面師詐欺」の事例は少なからず報告されています。売買後のトラブル回避のためにも、本人確認は必ず行わなければならない調査の1つです。

また、設備の状態や建具の瑕疵(かし・欠陥)の有無などが契約書面と異なっていれば、原則的に売主は契約不適合責任を負う必要があります。法令上の制限についても、実際と異なることを伝えてしまうと、売買後のトラブルにつながりかねません。

不動産売却時には何を調査するの?

不動産 現地調査

不動産売却時の物件調査は「役所・法務局調査」「現地・周辺調査」「市場・競合調査」「マンション管理の調査」の4つに大別されます。それぞれの調査で調べるのは、次のようなことです。

役所・法務局調査

役所や法務局では、権利や法令上の制限などを調査します。権利とは、所有権や地上権、賃借権、使用権、抵当権など。法令上の制限とは、建ぺい率や容積率、地目、土地区画整理区域、用途地域、日影規制、前面道路の種類と幅、建物の高さ制限などを指します。

役所では、道路課や都市計画、建築指導課などさまざまな部署を周り、必要ならば職員にヒアリングしながら調査していきます。

現地・周辺調査

売却する不動産の現地やその周辺では、まず隣地との境界を見て、境界石の有無やブロック塀や樹木などの越境がないか確認します。境界石がない場合は、確定測量が必要になる可能性があります。越境が見られれば隣地の所有者とトラブルになるおそれがあるため、売買前に解決するよう努めます。

現地および周辺から、土地の高低差や傾き、形状、日照、通風、接道なども確認します。前面道路が、幅員4m、接道幅が2mを下回っている場合は建物を再建することができず、評価が下がります。前面道路が私道の場合は、私道を所有している方に通行と掘削の承諾書をもらわなければなりません。

リフォームや修繕歴は売主にしかわからないため、工事請負書など参考になる資料を添えて不動産会社に伝えておきましょう。また、雨漏りやシロアリ被害、隣人とのトラブルがあるようであれば、不動産会社を通して買主に伝えなければなりません。あまり積極的に伝えたくない事項ですが、売主には告知の義務があります。

市場・競合調査

不動産の相場価格は金融政策や景気によって変動しますが、すべての不動産の価値が同じように推移していくわけではありません。周辺エリアの人口動態や再開発、企業誘致などの影響も大きく受けるため、マクロデータだけでなく、ミクロデータも参考にしながら市場を分析していきます。

主に調査するのは、類似した条件の物件の過去の成約状況や現在の売り出し状況です。類似物件は必ず買主に比較されるため、売却前のみならず、常に動向をチェックしておかなければなりません。

マンション管理の調査

マンションの場合は、管理会社に問い合わせて「重要事項調査報告書」を発行してもらいます。重要事項調査報告書には、マンションの管理体制や修繕積立金額、長期修繕計画、修繕履歴、管理費や修繕積立金の滞納額などが記されています。また、ペットの飼育や楽器演奏の可否などを管理規約で確認します。

マンションの管理や修繕状況は、近年、新たな制度の開始やガイドラインの改定が重なったこともあり、買主の多くが気にするポイントです。管理状態が良好だと買主の評価が上がる可能性もあるため、売主にしかわからないアピールポイントがあれば不動産会社に伝えておきましょう。

不動産売却前の物件調査には費用がかかる?

不動産売却時の物件調査は、基本的に売主が費用を負担する必要はありません。ただし、調査結果によっては測量や登記などの費用がかかる可能性があります。

調査費用は基本的に仲介手数料に含まれる

調査を含め、不動産会社が行う販売活動や契約書類の作成などに対する報酬は、基本的に売買が成立したときに支払う「仲介手数料」に一元化されています。別途、調査費用を支払う必要はありません。仲介手数料の上限額は「売却金額×3%+6万円(税別)」です。

調査結果次第では測量や登記の費用がかかる

調査の結果、隣地との境界が確定していなかったり、相続登記されていなかったりする事実が発覚すれば、売却前に確定測量や相続登記が必要になります。これらの手続きは、売主が費用を負担したうえで実施しなければなりません。

調査によって売値に影響する事象が発覚することも

調査によって土壌汚染や地中埋設物の存在、既存不適格建築物である事実が発覚した場合、売値が相場価格を下回る可能性があります。地中埋設物とは、たとえば古い井戸や浄化槽などを指します。地中埋設物の有無は見た目で判断することは難しいですが、地歴調査で発覚することがあります。

一方、既存不適格建築物とは、建築基準法や土地計画法の改正により現行法に適格しなくなってしまった建物を指します。再建築不可物件も既存不適格建築物の1つです。他にも、建ぺい率や容積率、高さ制限をオーバーしている物件なども既存不適格建築物に該当します。既存不適格物件は、再建築や同等の大きさの建物の建築ができないことから、評価が下がります。

・「再建築不可物件」に関する記事はこちら
再建築不可物件は売却が難しい?詳細とメリット・デメリットを解説

まとめ

物件調査は、不動産を売るために不可欠なものです。不動産会社は、売主と買主がトラブルにならないよう、少しでも好条件で不動産が売却できるよう、細かいところまで丁寧に調査します。基本的に売主が調査する必要はありませんが、本人確認書類や購入時の書類などを早めに準備したり、リフォーム歴や不具合が見られた場合はその履歴をまとめたりすることで不動産会社の調査もスムーズに進みます。

この記事のポイント

不動産売却時の物件調査の目的は?

主に「適正価格の見極め」「売却戦略の立案」「売買後のトラブル回避」の3つです。

詳しくは「不動産売却時の物件調査の目的は?」をご覧ください。

物件調査のやり方は?

役所や法務局で必要書類を取得・閲覧したり、マンション管理会社に重要事項調査報告書を発行してもらったりして調査します。

詳しくは「不動産売却時には何を調査するの?」をご覧ください。

物件調査に費用はかかるの?

基本的に、売主が負担することはありません。ただし、調査によって登記や測量が必要になれば、これらの手続きの費用は売主が負担します。

詳しくは「不動産売却前の物件調査には費用がかかる?」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

物件調査は販売活動や重要事項説明のように目立つ業務ではありませんが、不動産を売却するには不可欠です。不動産会社は売主の見えないところで、足を使って、時間をかけ、物件を調査します。基本的には不動産会社に任せておけば問題ありませんが、物件に関して知っていることは、良い部分も悪い部分もすべて不動産会社に伝えましょう。不動産をできる限り好条件で売るには、売主と不動産会社の協力が不可欠です。

売りたい物件・時期がお決まりの方はこちら

60秒で入力完了!売却査定を承ります。

不動産の売却可能額を査定する

東急リバブルが買主となり、
ご所有不動産を直接購入いたします

リフォームいらず、最短7日間で現金化!

リバブル不動産買取はこちら