売買契約とは 簡単に
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不動産の売買契約とは?簡単にわかりやすく解説!

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 不動産の売買契約とは、簡単にいえば不動産の売買に関する取り決めや代金支払いの約束をすること
  • 不動産の売買契約は口約束でも成立するものの、宅建業法に則って不動産売買契約書(37条書面)の交付および重要事項説明書(35条書面)の読み合わせと宅建士による署名が伴うのが一般的

不動産の売買契約が成立すれば、売主には所有権移転、引渡しなどの義務が発生し、買主には売買代金の支払い義務が発生します。売主、買主のどちらか一方が義務を怠って契約が解除になってしまった場合、手付金の放棄や違約金の支払い等が発生することがあるため、明確な取り決めを十分納得・理解の上、契約を交わすことが大切です。

この記事では、不動産の売買契約を簡単にわかりやすく解説します。

不動産の売買契約とは?

不動産の売買契約とは、簡単にいえば、不動産の売買に関する取り決めや代金支払いの約束をすることです。基本的には民法に基づいて売買契約を取り交わしますが、不動産の売買は宅建業法による規制もあります。

対価を得て不動産の所有権を売主から買主に移行する約束

不動産の売買とは、対価を得て不動産を譲渡することです。そして不動産の売買契約とは、不動産の所有権を売主から買主へと移行する約束を指します。

不動産の所有権を移行する根拠となるのは、他にも贈与や相続などが挙げられますが、対価を伴わないため売買には該当しません。ただし、相場を大きく下回る金額で売買した場合は、売主から買主に贈与があったとみなされる可能性があります。

不動産の売買契約は民法に基づく

売買契約は、民法で次のように定義されています。

民法第555条(売買)
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効果を生ずる。

他にも、民法では売買契約に関する費用や手付、効力、売主の義務、買主の請求権などにも言及されており、不動産の売買契約も基本的には民法に基づいて締結されます。

ただし、民法には当事者の意思にかかわらず必ず適用となる強行規定と、そうではない任意規定があります。たとえば、民法で規定されている「契約不適合責任」は任意規定のため、原則的には適用となりますが、当事者の合意があれば別の取り決めをすることもできます。

契約不適合責任について確認すべきことは「不動産売買契約書でとくに確認すべき事項」で解説しています。

宅建業法も影響する

不動産の売買は、不動産会社が仲介するのが一般的です。不動産会社の業務や役割は宅建業法と大きく関わっているため、不動産売買も宅建業法の規制が少なからず影響します。

宅建業法では、売買契約の書面の交付について次のように規定されています。

宅建業法第37条(書面の交付)
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

この条項に続く記載事項については後述しますが、不動産会社は、契約成立から遅滞なく売買契約書を交付することが義務付けられています。2022年の宅建業法改正により、現在は売買契約書は紙ではなく電子的方法(電子契約)による交付も可能になっています。

売買契約は口約束でも成立する

売買契約に伴う契約書の交付は、民法で義務付けられているわけではありません。たとえ口約束であっても、売主と買主の合意さえあれば売買は成立します。

しかし、口約束のみでは、約束に違反したときや売買した不動産に問題があった場合にトラブルにつながってしまうおそれがあります。とくに不動産は、数百万円、数千万円する資産であるためトラブルになったときの代償が大きいことから、口約束のみの取り引きは危険です。

そのため、不動産の売買契約は、宅建業法に則って、不動産売買契約書(37条書面)の交付および重要事項説明書(35条書面)の読み合わせと宅建士による署名が伴うのが一般的です。

不動産の売買契約の流れ

不動産 売買契約 流れ

不動産の売買契約は、次のような流れで進みます。

重要事項説明の読み合わせ

買主に向けた重要事項の説明は、宅建業法第35条で不動産会社に義務付けられています。そのため、まずは重要事項説明書の読み合わせから売買契約はスタートします。

重要事項説明書とは、不動産の権利や法令上の制限、ライフライン施設の整備の状況、契約の解除に関する事項など、契約や不動産に関する重要な事項を記した文書です。2021年3月30日以降は、オンラインによる重要事項説明(IT重説)も可能になっています。

売買契約書への署名・捺印

続いて、売主、買主が売買契約書に署名・捺印します。契約書は原則的に2通交付され、双方が1通ずつ保管します。宅建業法では、売買契約書および重要事項説明書に宅建士の署名も必要とされています。従来まで宅建士の押印も必要とされていましたが、2022年の同法改正以降は押印が不要となっています。

手付金の授受

売買契約書への署名・押印後は、手付金を授受します。買主から売主に支払われる手付金は、売却金額の10%前後が一般的です。宅建業者が売主の場合のみ、宅建業法で手付金額が20%を超えてはならないと定められています。

不動産の売買契約に必要な書類

不動産の売買契約には、次のような書類が必要です。早めに用意しておくことをおすすめしますが、印鑑証明書は3ヶ月以内に発行したものでなければならないためご注意ください。

買主

  • 実印・印鑑証明書(3ヶ月以内に発行のもの)
  • 本人確認書類

売主

  • 登記済証または登記識別情報
  • 実印・印鑑証明書(3ヶ月以内に発行のもの)
  • 本人確認書類
  • 建築確認通知書(検査済証)
  • 建築協定書(協定がある場合のみ必要)
  • 固定資産税納税通知書
  • 管理規約や使用細則(マンションのみ)

不動産売買契約書には何が記載されているの?

不動産売買契約書には、対象物件の概要や売買金額のほか、売買契約が成立した際に売主と買主がしなければならない約束事や、これを怠って契約が解除になったときの手付金の放棄や違約金の支払いについてなどの明確な取り決めが記載されています。主な記載事項は、以下のとおりです。

不動産の表示

どの不動産が売買の対象になっているか明確化するため、所在や地積、床面積などを記載します。

売買代金・手付金・残代金

売買代金や手付金、残代金などの金額や支払い時期が記載されます。手付金は契約締結時に支払いますが、残代金は契約から1〜2ヶ月後の物件引き渡し時に支払うのが一般的です。

手付解除日

売主、買主は、契約で合意した手付解除期日までであれば、書面によって通知し、契約を解除することができます。売主から解除するときは、買主に対して手付金および同額の金額を支払います。一方、買主から解除するときは、手付金の返還請求を放棄します。

融資

買主が融資を利用する場合は、申込先や融資金額、融資承認取得期日および融資利用の特約に基づく契約解除期日を記載します。融資利用の特約とは、融資申込先から融資の全部または一部の金額の承認が得られない場合、あるいは否認された場合、買主は契約を解除できるというものです。

特約

強行規定に反しなければ、特約として当該契約に有効な取り決めを定めることができます。たとえば、先に挙げた契約不適合責任のほか、引き渡し前の売主の負担と責任のもとでの建物の解体、地中埋設物や土壌汚染が見られる場合の撤去・改良費用の負担などについて明記されます。

【別紙】物件状況調査報告書・設備表

不動産売買契約書の別紙として「物件状況調査報告書」と「設備表」が交付されます。物件状況調査報告書とは、売主が認知している次のような事項を買主に報告するための書面です。

  • 雨漏り
  • シロアリ被害
  • 給排水管の故障
  • 建物の傾き
  • 土壌汚染
  • 物件内での事件や事故
  • 近隣の嫌悪施設
  • 近隣トラブル など

これらは伝えにくい事項ですが、売主には「告知義務」があるため、知っている情報を包み隠さず買主に伝えなければなりません。

一方、「設備表」とは、給湯器や水まわり関係、空調関係、建具類などの設備の有無や故障の有無などを記載する書面です。

不動産売買契約書でとくに確認すべき事項

不動産売買契約書は、隅から隅まで目を通さなければなりませんが、その中でも次の3つの点はとくによく確認するようにしましょう。

融資利用の特約に基づく契約解除期日

売主、買主ともに、契約解除となった場合の影響は計り知れません。しかし、買主が融資承認を得られず、契約が白紙になることは決して少なくありません。とはいえ、融資利用の特約に基づく契約解除期日以降は、融資承認の可否を理由に解除できないため、いつまで白紙解除の可能性があるのか確認しておきましょう。

契約不適合責任

契約不適合責任は、民法で次のように定義されています。

民法第562条(買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。

また、期間の制限については、次のように明記されています。

民法第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

しかし、契約不適合責任は、前述の通り任意規定です。不動産流通経営協会(FRK)の標準売買契約書では「引き渡し完了から3ヶ月以内に買主から通知を受けたものに限り、契約不適合責任を負う」とされており、建物について以下に限定されています。

  • 雨水の侵入を防止する部分の雨漏り
  • 建物の構造耐力上主要な部分の腐食
  • シロアリの害
  • 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む)・排水桝の故障

また、別途、売主、買主の合意があれば、契約不適合責任を免責(責任を負わない)とする契約も有効です。その場合は、特約にその旨の記載があるため、注意して確認するようにしましょう。

物件状況調査報告書・設備表

民法にあるとおり、契約不適合責任は「契約内容と適合していないものであるとき」に売主が負う責任です。そのため、たとえば物件状況調査報告書に「雨漏りあり」と記載がある場合、買主は引き渡し後に雨漏りを確認しても、売主に契約不適合責任を追求することはできません。

契約不適合責任が問われるようになったのは、2020年4月の民法改正以降と比較的、最近のことです。これ以前の売主の責任は「隠れた瑕疵(かし・欠陥や不良など)」に対するものでした。売主の責任が契約不適合責任に変わって以降、物件状況調査報告書の記載事項の重要性は高まっています。売主は物件状況調査報告書に事実を漏れなく記載し、買主はよく確認したうえで契約することが大切です。

一方、設備に関しては、売主が契約不適合責任を負う必要はないものの、設備表で故障・不具合が無いとした主要設備に関しては、引き渡し完了から7日以内に買主から通知を受けた故障・不具合に限り、修理する責任を負います。こちらも事実と相違がないか、よく確認しましょう。

まとめ

不動産の売買契約とは、簡単にいえば不動産の売買に関する取り決めや代金支払いの約束をすることです。売買契約書には「約束」の詳細や約束に違反した場合の取り決めなどが記載されます。不動産は金額が大きい資産であるため、契約内容の誤認や相手方との認識の不一致が大きなトラブルにもつながりかねません。取引をスムーズかつ安心・安全に進めることが、不動産会社の大切な役割の1つです。契約内容に不安や不明点がある場合はそのままにせず、不動産会社の担当者に相談するようにしましょう。

この記事のポイント

不動産の売買契約とは?簡単に教えてください。

簡単にいえば、不動産の売買に関する取り決めや代金支払いの約束をすることです。

詳しくは「不動産の売買契約とは?」をご覧ください。

不動産の売買契約はどのように進むの?

不動産会社が仲介する場合は、重要事項説明書の読み合わせ、署名・押印、手付金の授受と進みます。

詳しくは「不動産の売買契約の流れ」をご覧ください。

不動産の売買契約書のなかで、とくに確認すべき事項は?

不動産の売買契約書に記載されていることはどれも重要なため、隅から隅まで確認すべきですが、解除期日や特約、物件状況報告書、設備表などはとくによく確認することをおすすめします。

詳しくは「不動産売買契約書でとくに確認すべき事項」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

不動産の売買契約は、その後の人生に大きく影響する契機となるものです。契約書には難しい単語や表現が用いられていることがありますが、わからないことをわからないままとしないためにも、不動産会社の担当者に積極的に質問・相談することをおすすめします。「自分が不利になるのではないだろうか」「改善の余地があるのではないだろうか」と感じる部分があれば、自分の利益を守るため、納得するまで質問や交渉をしましょう。

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