ざっくり要約!
- 訳あり物件とは、一般的に物理的・環境的・法的・心理的な瑕疵がある物件を指す
- 訳あり物件には原則的に「告知義務」がある
訳あり物件と聞くと「物件内で事件や事故が起きた物件」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか?しかし、訳あり物件には、物理的に欠陥や不良が見られる物件や環境に問題がある物件なども含まれます。
この記事では、物件が「訳あり」とされる具体的なケースや訳あり物件の売主に求められる「告知義務」などについて解説します。
記事サマリー
訳あり物件とは
「訳あり物件」は、一般的には何らかの問題や特殊な事情を抱えている物件を指しますが、明確な定義があるわけではありません。物件内で事件や事故が起きてしまったいわゆる「事故物件」を訳あり物件と呼ぶ方もいますが、次のような物件も訳あり物件に該当する可能性があります。
物理的瑕疵物件
物理的に建具や建材、設備が損傷していたり、使用できない状態になっていたりする物件は、物理的な瑕疵(かし・欠陥や不良)があることから「物理的瑕疵物件」と呼ばれます。また、室内だけでなく、床下にシロアリ被害が見られるような物件も物理的瑕疵物件に含まれます。
環境的瑕疵物件
建物や土地自体に問題がなかったとしても、隣地や近隣に墓地や火葬場、下水処理施設やゴミ処理場などがある物件は「環境的瑕疵物件」と呼ばれます。ただ、物理的な瑕疵と比べるとこれらの施設に対して感じる嫌悪感は人によって異なるため、定義づけは難しい傾向にあります。
法的瑕疵物件
「法的瑕疵物件」とは、建築基準法に違反していたり、都市計画法上、なんらかの制限を受けたりする物件を指します。再建築不可物件などがこれに該当します。再建築不可物件とは、接道条件を満たしておらず、既存の建物を取り壊した場合に再建築ができない物件です。
心理的瑕疵物件
事故物件は「心理的瑕疵物件」に該当します。物件内で事件や事故が起こってしまった物件は、心理的に購入や入居を躊躇する方が多いことから、このように呼ばれています。また、反社会的勢力や宗教団体が使用していた物件なども、心理的瑕疵物件に該当する場合があります。心理的瑕疵も、環境瑕疵と同様に人によって感じる嫌悪感の程度には差があるため、定義づけするのは困難です。
・「心理的瑕疵物件」に関する記事はこちら
心理的瑕疵物件とは?メリット・デメリットや入居後の対処法を紹介
訳あり物件の見分け方
訳あり物件の多くは、見た目には一般的な物件と相違ありません。
価格
訳あり物件は、総じて相場価格より安く販売されているものです。とはいえ、相場より安い理由が「訳あり」であるとは限りません。価格が安くても訳あり物件とは断定せず、可能性の一つとして考えるようにしましょう。
「告知事項あり」の表記
訳あり物件の販売図面や物件情報には、多くの場合「告知事項あり」という表記があります。どのような物件であっても物件に関する重要事項は説明されますが「告知事項あり」と表記される物件は、購入の判断を揺るがしかねない重要な瑕疵がある可能性があります。
最終的には不動産会社に聞かなければわからない
価格や物件情報だけでは、訳あり物件であるかどうかを判断することはできません。また、どのような「訳」があるかも知ることはできません。
気になる物件が訳あり物件か知りたい場合は、物件情報を掲載している不動産会社に問い合わせて「なぜこんなにも価格が安いのでしょうか?」「告知事項とはどのようなことですか?」と聞いてみましょう。このような質問をすることは買主の当然の権利であるため、失礼にはあたりません。
訳あり物件の「告知義務」とは
物理的・環境的・法的・心理的瑕疵がある物件を売却する売主は、買主に対して「告知義務」を負います。
告知義務とは
告知義務とは、瑕疵の有無やその詳細を買主に伝えなければならないという売主の義務です。実際には、売主から直接伝えられるのではなく、売主の不動産仲介会社から間接的に告知されることになります。
告知義務は、民法の信義誠実の原則に基づいています。告知義務を怠った売主に対する買主の損害賠償請求や契約解除請求が認められた判例は、数多く見られます。
参考:国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」
告知義務違反で売主の「契約不適合責任」が問われる可能性も
売主は、物件の瑕疵を告知するとともに、原則的に契約に適合した物件を引き渡す義務も負っています。たとえば「雨漏りなし」という条件で契約したにも関わらず、実際に引き渡しを受けた直後に雨漏りが発覚した場合は、契約内容に適合していないことから、買主は売主に対して契約不適合責任に基づく次のような請求が可能です。
- 履行の追完請求(修補請求)
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除(追完が拒否・不能だった場合)
・「契約不適合責任」に関する記事はこちら
契約不適合責任とは?不動産取引で買主ができる4つの請求と売主がとるべき対策を解説
心理的瑕疵物件の「告知義務」の判断は難しい
瑕疵物件の中でも「心理的瑕疵物件」は、前述のとおり心理的に購入を躊躇しかねない物件を指します。人の心理という曖昧なものが判断基準になることから「告知義務」の判断も容易ではありませんが、国土交通省が2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定して以降、ある程度は明確化しています。
告知義務にあたるケース
原則的に、人の死に関する事案が取引相手の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告知義務にあたります。物件内での他殺や自殺は、告知義務にあたる可能性が高いといえるでしょう。
告知義務にあたらないケース
ガイドラインでは、物件内で人の死に関わる事故などが発生したとしても、自然死や日常生活の中での不慮の死は基本的に告げなくても良いと明記されています。不慮の事故とは、転倒事故や誤嚥(ごえん)などを指します。
また、対象物件の隣接住戸や日常生活であまり使用しない集合住宅の共用部分で発生した事件・事故についても、基本的には告げなくて良い事項とされています。
告知義務にあたるかどうかの判断が難しいケース
告知義務にあたらないケースであっても、事件性や周知性が社会に与えた影響が大きいと考えられる事案については、告知事項に該当します。たとえば、マンションの専有部ではなく、共用部の事件・事故であっても、連日メディアで取り上げられていたり、記憶に残る凄惨なものであったりする場合は、告知事項に該当する可能性があります。
ガイドラインでは、事件・事故の発覚から経過した期間や要因に関わらず、買主から事案の有無を問われたり、重大性があると考えられたりする場合は、事案の発生時期や場所、特殊清掃実施の有無などを告げる必要があるとしています。
国土交通省が令和時代の不動産最適活用に向けて取り組む「不動産ビジョン2030」では「心理的瑕疵を巡る課題の解決」が重点政策課題に位置づけられています。ガイドラインが策定された今も告知義務の対象範囲は不明な部分があり、心理的瑕疵物件の流通には課題がありますが、今後、さらに明確化・合理化される可能性があります。
まとめ
訳あり物件は、一般的に物理的・環境的・法的・心理的瑕疵がある物件を指します。物理的瑕疵や法的瑕疵はわかりやすい一方で、環境的瑕疵や心理的瑕疵は人によって捉え方が異なるため、販売価格の妥当性や告知義務に該当するかどうかを判断することは容易ではありません。物件ごとに留意すべき点も異なることから、不動産会社に相談しながら売買を進めていきましょう。
この記事のポイント
- 訳あり物件とは、どのような物件ですか?
訳あり物件とは、一般的に何らかの問題や特殊な事情を抱えている物件を指します。
詳しくは「訳あり物件とは」をご覧ください。
- 訳あり物件をどう見分ければいいですか?
訳あり物件は、価格が相場と比べて安かったり、物件情報に「告知事項あり」といった記載が見られたりします。
詳しくは「訳あり物件の見分け方」をご覧ください。
- 訳あり物件の「告知義務」とはなんですか?
告知義務とは、瑕疵(かし・欠陥や不良)の有無やその詳細を買主に伝えなければならないという売主の義務です。
詳しくは「訳あり物件の『告知義務』とは」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
訳あり物件に見られる何らかの瑕疵(かし・欠陥や不良)は歓迎できるものではありませんが、販売価格は相場価格と比較して総じて安価です。瑕疵の内容は人によって捉え方が異なることから、自分にとっては大きな瑕疵ではない可能性もあります。立地や価格などの優先順位が高い方は、訳あり物件の一切を拒絶するのではなく、選択肢の一つに加えてみてもいいかもしれません。
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