ざっくり要約!
- 自殺、他殺、火災等による死亡や、特殊清掃・大規模リフォームが行われた場合は、原則として告知が必要です。
- 賃貸契約における告知義務の期間はおおむね3年ですが、売買契約では期間の定めがありません。
- 自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)、隣接住戸や通常使用しない共用部分での死については、告知義務がありません。
2021年、事故物件の告知義務について新しいガイドラインが制定されました。物件を売却または賃貸する場合にどこまで告知が必要なのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、新ガイドラインに基づき、告知が必要なケース・不要なケースを解説します。告知が必要な期間や注意点も説明するので、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
事故物件の告知義務とは?
はじめに、事故物件と告知義務の定義について把握しておきましょう。
事故物件とは
事故物件とは、過去に事件や事故が発生し、心理的瑕疵(しんりてきかし)があるとされる不動産を指します。
心理的瑕疵とは、不動産取引をするうえで入居や購入の意思を左右するようなネガティブな事象のことです。具体的には、自殺や他殺などが起きた物件が事故物件に該当します。
心理的瑕疵物件は、物理的には問題がなくても市場価値が下がる場合があります。
・「心理的瑕疵物件」に関する記事はこちら 心理的瑕疵物件とは?メリット・デメリットや入居後の対処法を紹介 |
告知義務とは
宅地建物取引業者には、事故物件であることを買主や借主に事前に知らせる義務があり、これを告知義務と言います。不動産取引において、買主や借主が十分な情報をもとに意思決定できるよう、定められている義務です。
告知義務に違反すると、契約の解除や損害賠償の請求といった問題が発生するリスクがあります。
2021年制定のガイドラインから読み解く!告知義務はいつまで・どこまで?
2021年、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定しました。このガイドラインによって明確になった告知義務の範囲や期間について、解説します。
ガイドラインが制定された背景
事故物件の告知をめぐっては、これまでさまざまなトラブルが発生していました。
告知義務の範囲が不明確なため、取引後に事実を知った買主が売主に損害賠償を請求するケースや、貸主が孤独死を危惧して高齢者の入居を拒否するケースなどが挙げられます。
問題を解決し、不動産取引の円滑化と居住の安定を図るため、一定の基準を示す必要性が高まっていました。ガイドラインは、こうした背景のもと、宅建業者向けの指針として制定されたものです。
告知が必要なケース
ガイドラインでは、取引対象となる居住用不動産で発生した死のうち、自殺、他殺、火災等による死亡や、特殊清掃・大規模リフォームが行われた場合は、原則として告知が必要だと定めています。
また、買主・借主から死亡事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主が把握しておくべき特段の事情があると判断された場合も、告知義務の対象となります。
告知が不要なケース
取引対象物件における自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告知義務はないとされています。
ただし、死亡した後に長期間放置され、特殊清掃・大規模リフォームが行われたケースは告知義務の対象です。
また、隣接住戸や通常使用しない共用部分で発生した死についても、原則として告知は不要とされています。
賃貸住宅は「3年」が経過するまで告知が必要
賃貸住宅で、自殺や他殺等による死亡や特殊清掃等が行われた場合、その事実が発覚してから概ね3年間は告知義務があると定められています。3年を経過するまでは、入居者が変わっても告知し続ける必要があるということです。
一方、売買契約においては期間の定めがないため、自殺や他殺などがあった場合には、3年以上が経過していても告知する必要があるでしょう。
引き続き事故物件の告知の可否の判断・方法は慎重に
ガイドラインで告知が不要とされているケースでも、個別の事案で必要となる場合があります。ここでは、告知の要否の判断や、告知方法に関する注意点を見ていきましょう。
事件性・周知性などによっては告知が必要
隣接住戸や通常使用しない共用部分での死のほか、賃貸住宅で発覚から3年経過した場合は、原則として告知不要です。しかし、その場合も事件性や周知性、社会に与えた影響等が大きい事案は告げる必要があると定められています。
また、先述の「告知が不要なケース」に該当しない場合、取引相手の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるなら、告げる必要があります。
例えば、連続殺人事件が発生した物件や、メディアで大きく報じられた事件があった物件は、告知が必要とされるでしょう。
買主・借主から事案の有無に聞かれたら告知を
購入者や借主から死亡事故の有無について質問された場合、経過期間や死因に関わらず、告知する義務が生じます。たとえ事故が軽微であったとしても、事実を隠すことは契約違反となり得ます。
そのため、過去に自然死が発生した場合であっても、購入者がその情報を知りたがっている場合は、告知する必要があります。
故人や遺族への配慮も怠らない
事故物件の告知義務を果たす際には、故人や遺族への配慮が必要です。事件の詳細や個人情報を過度に開示することなく、必要最低限の情報のみを提供することが求められます。
例えば、死亡した人物の名前や年齢、家族構成、死亡の具体的な状況については、告知する必要がないと定められています。一方で、告知するべき内容は、事故の発生時期や場所、死因、特殊清掃等の実施についてです。
亡くなった方や遺族のプライバシーを守りながらも、購入者や借主に対して必要な情報を伝えることが大切です。
まとめ
事故物件とは、過去に自殺や殺人事件、長期間放置された遺体が発見された物件などを指します。これらは心理的瑕疵があるとされ、取引相手に告知する義務があります。賃貸契約の場合、告知義務の期間はおおむね3年とされていますが、売買契約では期間の定めがありません。
また、自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)のほか、隣接住戸や通常使用しない共用部分での死については、原則として告知は不要です。
売却や賃貸する物件が事故物件に該当するか不明な場合は、まず不動産会社へ相談してみてください。
この記事のポイント
- 事故物件に告知義務はありますか?
宅地建物取引業者には、事故物件であることを買主や借主に事前に知らせる義務があります。
詳しくは「事故物件の告知義務とは?」をご覧ください。
- 告知義務で伝える内容はどんなものがありますか?
事故の発生時期や場所、死因、特殊清掃等の実施についてなどを伝える必要があります。
詳しくは「2021年制定のガイドラインから読み解く!告知義務はいつまで・どこまで?」をご覧ください。
- ガイドラインで告知不要であればいっさい告知はしなくても大丈夫でしょうか?
ガイドラインで告知が不要とされているケースでも、個別の事案で必要となる場合があります。
詳しくは「引き続き事故物件の告知の可否の判断・方法は慎重に」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
事故物件の情報は、買主・借主にとって購入や入居を決める際の重要な判断材料です。告知義務に違反した場合、契約の解除や損害賠償を求められる可能性があります。
どのようなケースで告知が必要かを把握し、契約前に正確な情報を伝えましょう。心理的瑕疵を明らかにすることで、取引後のトラブルも防止できます。
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