断熱等級 省エネ 基準
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断熱等級とは? 省エネ基準と新設された等級5・6・7は何が違う?

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 断熱等級は1~7までの7段階あり、数値が高いほど断熱性能が高くなります。
  • 断熱等級5・6・7は、ZEH水準やHEAT20と同等レベルの高い断熱性能であることを指しています。
  • 2025年4月以降に新築するすべての住宅には、原則として省エネ基準(断熱等級4)への適合が義務化されます。

マイホーム購入を検討する際、断熱等級はどの程度あるとよいか、気になる方もいるでしょう。断熱等級が高いと、光熱費を抑えられたり、住む人の健康に寄与したりします。

この記事では、断熱等級の概要や省エネ基準との違い、2025年からの省エネ基準適合義務化について解説します。中古住宅の断熱等級の調べ方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

断熱等級とは?

断熱等級(断熱等性能等級)とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいて、住宅の断熱性能を表す等級です。国土交通省によって定められています。

断熱等級1~7までの7段階あり、数値が高いほど熱の出入りが少なく、エネルギー効率が高い住宅であることを示します。

「UA値」と「ηAC値」

UA(ユーエー)値とηAC(イータエーシー)値は、熱の逃げやすさ・入りやすさを表す数値です。UA値とηAC値の2つによって、断熱等級が決定されます。

断熱性能

出典:国土交通省|住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設(P8)

UA値は「外皮平均熱貫流率」といい、建物表面からの熱の逃げやすさを示します。外皮(外壁や屋根、窓、床など)を通じて、建物内から外へ伝わる熱量を、外皮の面積で割って算出した値です。UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いといえます。

一方のηAC値は「冷房期の平均日射熱取得率」のことで、夏場に日射熱が室内にどの程度入るかを表す指標です。外皮を通じて室内に入った日射熱の量を、外皮の面積で割り、算出します。ηAC値が小さいほど遮熱性能が高く、断熱等級も上がります。

なお、各断熱等級で求められるUA値とηAC値は全国一律ではなく、地域区分によって異なります。地域区分は8つに分かれています。

地域区分

出典:国土交通省

地域ごとに各等級の基準が以下のように設定されており、UA値とηAC値のいずれか低いほうの等級が採用される仕組みです。

断熱等級

出典:国土交通省

「一次エネルギー消費量等級」との違いは?

一次エネルギー消費量等級とは、住宅におけるエネルギー消費量をもとに計算される等級です。等級1~6まであり、等級の数字が大きいほどエネルギー効率が高いことを意味します。

冷暖房や換気、給湯、照明などのエネルギー消費量の合計を「一次エネルギー消費量」といい、これをもとに「一次エネルギー消費量等級」が計算されます。断熱性能だけでなく、設備機器の効率も含めた総合的な省エネ性能を評価できる制度です。

一方、断熱等級は建物の外皮(外壁、屋根、床、窓など)の断熱性能を評価します。両方の等級を確認することで、住宅の省エネ性能を総合的に判断できるでしょう。

2022年に断熱等級5・6・7が新設

2022年に品確法の改正により、断熱等級5・6・7が新設されました。新設された等級は、ZEH水準やHEAT20などの高性能住宅と同等のレベルとなっています。

等級制定年概要
等級72022年10月● 「HEAT20」のG3グレードと同等
● 暖冷房の一次エネルギー消費量を約40%削減可能
● 外壁・天井には内側・外側の2層に断熱材を使用(6地域・東京)
● 窓には三層複層ガラスを使用
等級62022年10月● 「HEAT20」のG2グレードと同等
● 暖冷房の一次エネルギー消費量を約30%削減可能
● 外壁には内側・外側の2層に断熱材を使用(6地域・東京)
等級52022年4月● 「ZEH水準」の断熱基準と同等
● 床には内側・外側の2層に断熱材を使用(6地域・東京)
等級41999年● 「次世代省エネルギー基準」
● 外壁・天井・床に断熱材を使用
● 窓には複層ガラスを使用
等級31992年● 「平成4年 新省エネルギー基準」と同等
● 一定レベルの省エネ性能を確保
等級21980年● 「昭和55年 旧省エネルギー基準」と同等
● 省エネ性能のレベルは低い
等級1● 「昭和55年 旧省エネルギー基準」未満
● 無断熱

実際に建築する際、等級によって大きく異なるのは断熱材や窓の仕様です。

たとえば、東京(地域区分6)の場合、下図のように等級7では外壁・天井の断熱材が2層、窓ガラスはダブルLow-E三層複層ガラスが採用される想定です。

外壁と開口部(窓)の仕様イメージ

出典:国土交通省
※6地域・東京の断熱イメージ(最下段が断熱等級4、最上段が断熱等級7)

断熱材の仕様や厚さも全国統一ではなく、地域区分ごとに異なります。

断熱等級と「省エネ基準」

建物の省エネ性を表す指標として「省エネ基準」も挙げられます。

省エネ基準(省エネルギー基準)とは、建築物の省エネルギー性能を確保するために、構造や設備について設けられた基準です。建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)によって定められています。

具体的には、一次エネルギー消費量やUA値(外皮平均熱貫流率)が基準値を下回ることが求められます。ここでは、省エネ基準の義務化や2030年までの予定について見ていきましょう。

2024年時点の省エネ基準は断熱等級4

長期固定金利住宅ローンで知られるフラット35では、省エネ基準として断熱等級4以上を定めています。

2023年4月までは断熱等級2相当と定めていましたが、断熱等級2は制定から40年以上が経過しており、省エネレベルが低いことから、断熱等級4に基準を引き上げたものです。

なお、2023年4月以降は、フラット35を利用するすべての新築住宅において、省エネ基準への適合が必須となっています。また、住宅ローン減税においても、2024年以降は省エネ基準に適合しない物件が減税の対象外となりました。

参考:フラット35

2025年度から省エネ基準適合が義務化

建築物省エネ法の改正により、2025年4月からは、省エネ基準への適合が原則としてすべての新築住宅に対して義務化されます。

省エネ基準適合義務化

出典:国土交通省

省エネ基準への適合とは、以下のいずれかに該当する状態を指します。

  • 断熱等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上
  • 建築物エネルギー消費性能基準

対象となるのは、2025年4月以降に工事に着手する建築物です。基準に適合しているかどうかは建築確認申請の中で審査されます。

2030年までに省エネ基準が引き上げられる予定

国は閣議決定において「2030年以降に新築される住宅では、ZEH水準の省エネルギー性能を目指す」と発表しています。

これからの基準

出典:国土交通省

2025年に適合義務化をする省エネ基準ですが、その基準が2030年までにZEH水準に上がることを意味するものです。目標へ向けて、今後、省エネ基準の段階的な引き上げが予定されています。

断熱等級が高い家の魅力

断熱等級 高い家 魅力

ここからは、断熱等級が高い家に住む魅力を解説します。

  • 快適に過ごせる
  • 光熱費が削減できる
  • 住まう人の健康にも寄与
  • 税制優遇・補助金などが受けられる可能性がある

ひとつずつ見ていきましょう。

快適に過ごせる

断熱等級が高い家は、年間を通じて快適な室内環境を維持できます。

高い断熱性能により、夏は外部の熱を遮断し、冬は室内の暖かさを逃がしません。寒冷地や暑い地域を問わず快適に過ごすことができます。

光熱費が削減できる

断熱等級が高い住宅は、冷暖房効率が向上するため、光熱費を削減できるのが大きな魅力です。

国土交通省のシミュレーションによると、省エネ基準を満たしていない住宅と一般的な省エネ基準の住宅を比べた場合、東京における光熱費の差額は年間約6万円程度。ZEH基準の住宅になると、そこからさらに年間6万円程度が削減可能となっています。

年間の光熱費比較

出典:国土交通省|なるほど 快適・安心なすまい 省エネ住宅(P8)

住まう人の健康にも寄与

断熱等級が高い家は、室内温度を一定に保ちやすく、住む人の健康にも寄与します。

反対に断熱性能が低い家は部屋ごとの温度差が大きく、血圧が上昇・下降し、心臓や脳に大きな負担をかけます。高齢者の場合には大きな事故につながりかねません。

断熱性能の高い住まいなら、このようなヒートショックのリスクを低減できると言われています。

税制優遇・補助金などが受けられる可能性がある

断熱等級が高い家を建てる際には、さまざまな税制優遇や補助金を受けられる可能性があります。

2024年時点の省エネ基準である断熱等級4以上の住宅では、住宅ローン減税を受けることが可能です。また、一定の省エネ改修工事を行った場合、所得税・固定資産税が減額される措置もあります。

中古住宅の断熱等級の調べ方

中古住宅を購入する場合、新築住宅と比べて断熱性能を確認しにくいと感じるかもしれません。ここでは中古住宅の断熱等級の調べ方について、3つのポイントを解説します。

  • 年代ごとに基準が異なる
  • 住宅性能評価書を取得する
  • 断熱等級が低い家は性能向上リノベーションを検討する

順番に見ていきましょう。

年代ごとに基準が異なる

中古住宅の断熱等級を調べる際には、建築された年代ごとに基準が異なる点を認識しておく必要があります。

たとえば1999年以前に建てられた住宅の断熱等級は、現在の住宅よりも低い可能性があります。断熱材の性能や施工方法が異なり、外壁や窓の仕様も古い規格に準じています。このため、築年数の古い住宅は、現行の断熱基準に達していないケースが多いです。

住宅性能評価書を取得する

中古住宅の断熱等級を正確に知るには、住宅性能評価書の取得が確実な方法です。断熱等性能等級が明記されており、客観的な指標として信頼できます。住宅性能評価書は、国土交通大臣の登録を受けた第三者機関が発行するため、公的な証明書としての価値があります。

ただし、中古住宅の場合、住宅性能評価書が存在しないケースも多いです。その場合は、新たに評価を受けることも可能ですが、費用と時間がかかります。

評価書がない場合は、建築確認申請書や設計図書を確認し、使用されている断熱材の種類や厚さを調べることで、おおよその断熱性能を推測できます。

断熱等級が低い家は性能向上リノベーションを検討しよう

中古住宅の断熱等級が低いと判明した場合、性能向上リノベーションを検討してみましょう。リノベーションでは、壁や天井、床に断熱材を追加したり、窓をペアガラスや断熱サッシに交換したりします。

リノベーションによって断熱性能を向上させることで、快適性が上がるほか、光熱費の削減もおこなえます。

まとめ

2024年時点、フラット35や住宅ローン控除を利用する際には、断熱等級4以上を求められています。さらに2025年からは原則としてすべての新築住宅において、断熱等級4以上が義務化されます。

断熱性能の高い住宅は初期コストが少し高くなりますが、光熱費の削減効果が大きいため、回収していけるでしょう。断熱等級が低い場合はリノベーションを検討するのもおすすめです。

東急リバブルでは、さまざまな条件から物件の絞り込み検索が可能です。断熱等級の高い物件をお探しの際は、ぜひご相談ください。

この記事のポイント

断熱等級とはどのようなものですか?

断熱等級(断熱等性能等級)とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいて、住宅の断熱性能を表す等級です。

詳しくは「断熱等級とは?」をご覧ください。

省エネ基準とはなんですか?

省エネ基準(省エネルギー基準)とは、建築物の省エネルギー性能を確保するために、構造や設備について設けられた基準です。

詳しくは「断熱等級と「省エネ基準」」をご覧ください。

断熱等級が高いとどんなメリットがありますか?

快適に過ごせる、光熱費が削減できる、住まう人の健康にも寄与できるなどの魅力があります。

詳しくは「断熱等級が高い家の魅力」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

新設された断熱等級5~7は、従来の4以下と比べて基準が高めですが、数年後には等級5以上がスタンダードになっていることが予想されます。
そのため、これから新築する場合は、断熱等級5以上で設計することをおすすめします。後から断熱材を足したり、窓を入れ替えたりするのは大掛かりな工事になるため、はじめから断熱等級5以上にしておくとよいでしょう。

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