ざっくり要約!
- 省令準耐火構造とは、住宅金融支援機構が定める仕様に適合した木造住宅の構造
- 「省令準耐火構造」は住宅金融支援機関が認定するもので、「準耐火構造」は建築基準法が定めるもの
- 省令準耐火構造は主に、火事になった時に延焼を遅らせたり、もらい火を受けたりしない仕様
「省令準耐火構造」は比較的ローコストで耐火性能を上げられます。大手ハウスメーカーでは、省令準耐火構造を標準仕様としていることも多く、取り入れやすいです。
本記事では、省令準耐火構造の住宅の特徴、メリットやデメリットについて解説します。
記事サマリー
省令準耐火構造とは? 準耐火構造との違いは?
省令準耐火構造とは、住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫)が定める基準に適合した耐火構造のことです。
準耐火構造と言葉が似ていて混同しやすいため、それぞれの定義を確認してみましょう。
省令準耐火構造とは
先ほども触れたとおり、省令準耐火構造とは住宅金融支援機構が定める仕様に適合した耐火構造のことで、一般的な木造住宅(在来工法、枠組壁工法、木質系プレハブ工法)に適用されます。
火事が他の部屋へ燃え広がらない(延焼防止)、近隣への燃え移りを防ぐ(類焼、もらい火防止)という観点の構造になっている点が特徴です。
準耐火構造とは
準耐火構造は、建築基準法で定められています。耐火構造に準ずる耐火性能をもつ構造で、耐火構造よりも基準が緩やかです。
耐火構造が火災でも倒壊せず、火災がおさまった後は補修すれば建物が再利用可能という基準で建てられているのに対し、準耐火構造は火災により建物が一定時間(45分または60分)崩壊しない基準で建てられています。
省令準耐火構造の住宅の特徴
省令準耐火構造の住宅の特徴は、主に次の3つです。
外部からの延焼防止
火災の要因は、自宅での火の不始末などだけではありません。火災が起きた隣家からの延焼によって、自宅が燃えてしまう可能性もあります。延焼は「類焼」といわれることもあります。
省令準耐火構造の家は、軒裏と外壁に防火性の高い建材を用いて、屋根は不燃材料を使う省令準耐火仕様にすることで、外部からの延焼を防ぎます。
各室防火
火災を広げないためには、自宅の中での延焼も防がなければなりません。省令準耐火構造の家は、火を部屋の外に出さないようにするため、各室を燃え広がりにくい防火区画化しています。
壁と天井には、火に強いせっこうボードを使うことで火が燃え広がりにくくし、避難や初期消火のための時間をかせぎ、火災による被害を最小限に抑えます。
他室への延焼遅延
延焼を完全に防ぐことはできません。被害を最小限に抑えるには、延焼を遅らせることが大切です。
省令準耐火構造の家は、火炎の通り道となる壁や天井の要所に、省令準耐火構造の仕様に則ったせっこうボードや断熱材を使い、壁と天井の取り合い部などにファイヤーストップ材を取り付けています。延焼を防ぐ建材を用いることで、室内で火災が起こった場合も建物全体に燃え広がるまでの時間を遅らせます。
省令準耐火構造の住まいのメリット
類焼や延焼を防ぐ構造の省令準耐火構造の家は、火災に強いことに加え、次のようなメリットがあります。
フラット35が利用できる
省令準耐火構造は、前述のとおり住宅金融支援機構が定める基準です。基準を満たした住宅は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」が利用できます。
住宅ローンはそれぞれにメリット・デメリットがありますが、フラット35は市場金利が変動しても返済額は変わらないため、計画的に返済したいとお考えの方に合う住宅ローンです。
・「フラット35」に関する記事はこちら フラット35とは?メリットから手続きの流れまでわかりやすく解説 |
火災保険料・地震保険料が下がる
画像出典:一般社団法人 日本木造住宅産業協会
住まいの保険料は、建物の構造によって変わります。火災が起きても燃えにくい構造、地震が起きても被害を受けにくい構造であれば、保険料が下がります。
火災保険の構造区分は以下の3つで、そのうち住宅の区分はT構造とH構造の2つです。
- M構造:マンション
- T構造:耐火構造(耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火建築物)
- H構造:非耐火構造
省令準耐火構造の建物は、戸建て住宅の火災保険の構造区分において「T構造」に該当し、火災保険料はH構造の約半額になります。
また、地震保険も同様に「イ構造」と「ロ構造」の2つに区分され、省令準耐火構造は「イ構造」に該当します。地震保険はロ構造に対して、約70%の金額に抑えられます。
・「火災保険・地震保険」に関する記事はこちら 持ち家と賃貸で火災保険のおすすめの補償内容は異なる?それぞれ解説 地震保険の加入にはいくらかけるべき?保険の仕組みや保険料の決まり方を解説 |
省令準耐火構造の住まいのデメリット
省令準耐火構造は火災に強いことがメリットですが、次のようなデメリットもあります。
建築コストが高くなる
省令準耐火構造に適合させるためには、一般住宅の仕様よりもコストがかかります。住宅の広さや階数によっても異なりますが、非耐火構造よりも数十万円程度上がると考えておきましょう。
とはいえ、前述のとおり、省令準耐火構造にすると火災保険料・地震保険料が安くなります。トータルコストという意味では一般的な住宅と大差がないかもしれませんが、初期費用や融資額が高くなる可能性があります。
維持・メンテナンスのコストが高くなる可能性も
省令準耐火構造の住宅は、耐火性の高い建材を使います。一般的な建材と比較して、耐火性能を維持するための定期点検やメンテナンスのコストが高くなる可能性があります。
・「メンテナンス費用」に関する記事はこちら 一戸建て住宅のメンテナンス費用の相場や対処が必要になる時期をまとめて解説! |
デザインが制限される可能性がある
省令準耐火構造は、耐火性能の基準をクリアするために仕様が細かく決められています。そのため、希望のデザインができなかったり、使いたい建材が使えなかったりすることもあります。
デザインや建材にこだわりがある方は、妥協しなければならない箇所が出てくる可能性がある点に注意が必要です。
・「防火」に関する記事はこちら 準防火地域とは?防火地域との違いや建ぺい率緩和規定について解説 防火扉(防火戸)の設置基準は?仕組みや機能も解説 |
まとめ
省令準耐火構造は一般的な住宅より建築費が高くなりますが、比較的ローコストで耐火性能を上げられる仕様です。火災保険や地震保険料も下げられるため、費用対効果も高いものと考えられます。
しかし、どうしても叶えたいデザインがある方は、省令準耐火構造とすることが難しいケースもあるでしょう。住まい作りでは、全ての希望が叶えられるというほうが稀です。費用や各構造のメリット・デメリットを把握して、じっくり比較・検討してみましょう。
この記事のポイント
- 省令準耐火構造と準耐火構造との違いはなんですか?
省令準耐火構造とは、住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫)が定める基準に適合した耐火構造のことです。
準耐火構造と言葉が似ていて混同しやすいため、それぞれの定義を「省令準耐火構造とは? 準耐火構造との違いは?」にてご紹介します。
- 省令準耐火構造の住宅にはどんな特徴がありますか?
外部からの延焼防止や各室の防火などの特徴があります。
詳しくは「省令準耐火構造の住宅の特徴」をご覧ください。
- 省令準耐火構造の住宅のメリットはなんですか?
類焼や延焼を防ぐ構造の省令準耐火構造の家は、火災に強いことに加え、次のようなメリットがあります。
詳しくは「省令準耐火構造の住まいのメリット」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
省令準耐火構造は、標準仕様とする住宅会社とオプション扱いの住宅会社があります。オプションの場合、設計が始まってから省令準耐火構造を希望されると、設計や見積もりのやり直しとなり、完成が遅れる可能性があります。「まだ省令準耐火構造にするか決めていない」という場合は、必ず打合せの初期段階でデザインや費用について確認しましょう。
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