ざっくり要約!
- 生活保護の条件のひとつは「活用できる資産がない」こと。持ち家が「活用できる資産」と判断されて生活保護が受けられない可能性がある
- 持ち家があったとしても必ずしも売却を指導されるわけではない
生活保護は、必要な生活費が得られない人を保護するための制度です。
生活保護の受給にあたってはいくつか条件があり、そのひとつが「活用できる資産がない」ことです。不動産は換価できる資産であることから、基本的には「活用できる資産」とみなされます。しかし、自己居住用の持ち家については、売却を指導されないケースもあるようです。
記事サマリー
生活保護とは
生活保護とは、「最低生活の保障」と「自立の助長」を目的に、生活に困窮している方に対して必要な保護を行う制度です。
支給される保護費
生活保護で支給される保護費は「最低生活費」から給与などの収入を差し引いた金額です。
最低生活費とは、生活に必要な最低限の費用で、年齢や世帯の人数などによって定められています。最低生活費を超える収入がある場合、保護費は支給されません。
保護の種類
保護の種類は、次の8つに大別されます。
種類 | どんな費用? | 支給内容 |
---|---|---|
生活扶助 | 日常生活に必要な食費や被服費、光熱費など | 基準額は「食費などの個人的費用」と「光熱水費などの世帯共通費用」を合算して算出。 母子家庭など特定の世帯には加算あり |
住宅扶助 | アパートなどの家賃 | 定められた範囲内で実費を支給 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費 | 定められた基準額を支給 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護扶助 | 介護サービスの費用 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産扶助 | 出産費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
生業扶助 | 就労に必要な技能の修得などにかかる費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭扶助 | 葬祭費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
手続きの流れ
生活保護を受けるまでの流れは、次のとおりです。
- 事前の相談
- 保護の申請
- 保護費の支給
申請すれば、必ず生活保護が受けられるわけではありません。申請後は、生活状況や預貯金、不動産などの資産、扶養の可否などが調査されます。福祉事務所は、保護の申請から原則14日以内に生活保護が受けられるか判断します。
支給が決定した後も、年に数回、福祉事務所からケースワーカーが訪ねてきて実態が調査されます。別途、受給中は収入の状況などを毎月申告する必要があります。
生活保護を受けるための4つの条件
生活保護費はどのような方に対しても支給されるわけではなく、資産や能力などすべてを活用してもなお生活ができない方が対象となっています。生活保護を受ける具体的な要件は、次の4つです。
1.活用できる資産がない
最低生活費が得られていない状況であっても、不動産や自動車、預貯金など活用できる資産があると判断される場合は、生活保護を受給することができません。
2.働けない・働いても生活できない
働ける能力があるにもかかわらず働いていない場合は、まず就労が求められます。生活保護は、働いていてもなお生活に困窮している方やなんらかの事情で働けずに収入が得られない方のための制度です。
3.年金など各種手当てが受けられない・受けても生活できない
生活が困窮している場合も、生活保護より先に年金や手当などの社会保障の給付を受けることが優先されます。生活保護が受給できるのは、社会保障の給付を活用しても必要な生活費が得られない場合です。
4.親族などから援助を受けられない
資産の活用ができない、働けないあるいは働いても必要な生活費が得られない、社会保障の給付を受けても生活が送れないという場合であっても、扶養義務者や親族からの援助が受けられる場合は、生活保護を受給するより先に援助を受けなければなりません。
以上、4つの条件を満たしたうえで、世帯収入が最低生活費を下回っている場合に限り、保護が適用されます。
生活保護受給のため持ち家の売却を指導される可能性がある
生活保護の要件のひとつに「活用できる資産がない」とあることから、持ち家のように価値のある資産を持っている人は生活保護の対象にならない可能性があります。
不動産は基本的に「活用できる資産」
不動産は換価することで生活資金に充てられるため、基本的には「活用できる資産」とみなされます。ただし、居住用の持ち家については、保有が認められる場合があります。
判断の基準は、持ち家の資産価値に加え、周辺エリアの持ち家の状況や処分のしやすさなど多岐にわたるため、一概にはいえません。
持ち家の売却を指導されやすいケース
持ち家の売却が指導されるかどうかは一概に判断できないものの、次のような持ち家は売却を指導されやすい傾向にあります。
- 居住していない
- 利用価値に対して処分価値が著しく大きい
- 住宅ローンが残っている
持ち家を売却した場合、転居費用や賃貸住宅の初期費用、賃料などが必要になることから、処分価値が低いと判断される場合は持ち家に居住したまま生活保護を受給できます。ただし、資産価値が高く、処分価値が利用価値より高いと判断される場合は売却を指導されやすいといえるでしょう。
また、処分価値が低いと判断されても、住宅ローン残債がある場合は毎月の返済が生活費を圧迫しやすいため、売却を指導されるケースがあります。
持ち家を売却さえすれば生活保護が受けられるとは限らない
先のとおり、生活保護の条件は「活用できる資産がない」というものだけではありません。したがって、持ち家を売却すれば生活保護が受けられるわけではない点に注意が必要です。
持ち家を手放したとしても、たとえばその他に活用できる資産があったり、親族からの援助が見込める状況だったりすれば、生活保護が受けられない可能性があります。
まとめ
生活保護の受給にあたり、活用できる資産である不動産は基本的に売却しなければなりません。しかし、持ち家は資産であるとともに住居であることから、必ず売却しなければならないわけではありません。ただし、一定以上の資産価値がある家や住宅ローンが残っている家、居住していない家は売却を指導される可能性があります。
いずれにしても、自身で持ち家の価値を判断することはできないため、自主的に売却したり、生活保護の受給を諦めたりする前に福祉事務所に相談しましょう。
この記事のポイント
- 生活保護とはどのような制度ですか?
生活保護とは、「最低生活の保障」と「自立の助長」を目的に、生活に困窮している方に対して必要な保護を行う制度です。
詳しくは「生活保護とは」をご覧ください。
- 生活保護を受けるためにはどのような条件がありますか?
生活保護費はどのような方に対しても支給されるわけではなく、資産や能力などすべてを活用してもなお生活ができない方が対象となっています。
生活保護を受ける具体的な4つの要件について、「生活保護を受けるための4つの条件」にて解説しています。
- 持ち家があっても生活保護は受けられますか?
生活保護の要件のひとつに「活用できる資産がない」とあることから、持ち家のように価値のある資産を持っている人は生活保護の対象にならない可能性があります。
詳しくは「生活保護受給のため持ち家の売却を指導される可能性がある」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
生活保護は、生活が困窮している方の最低生活の保障と自立の助長を目的とした制度です。持ち家の売却により今以上に生活が困窮すると判断される場合、あるいは処分価値が利用価値を下回っている場合は、持ち家に住みながら生活保護を受給することができます。持ち家の立地や状態、資産価値などによって判断は分かれるため、まずは福祉事務所に相談してみましょう。
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